黒王国物語
墜ちた先へ(1)
「ニコラ、殿……」
エルマの水晶玉が少しだけ亀裂が出来る。
エルマは、幼馴染みに起きた出来事を噛み締めた。
彼は死んだ。
故郷・ノールオリゾンで、親友に殺された。
やはり、彼を止めるべきだったか。
運命に抗っても、止めるべきだった――エルマは後悔しかない。
「ニコラ殿……、すまないんだな……」
エルマは泣き崩れ、声を荒上げて泣いた。
予言者としての自分を恨むしかない。
この時ばかりは、いや、これ以降も、エルマは恨み続ける――不運の予言を。
「ツツジの里での活躍、見事だったよ」
ダニエルはセシルを呼び、彼や彼の率いた軍の活躍を激励した。
ダニエルは彼らの活躍を信じていたが、この気運を加速し、シュヴァルツ王国の立て直しが上手く行けば良い――そう思った。
「ところで、考えてくれたかな?」
「ええ」
セシルのは宿題が出されていた。
二人の憎き天使教に仕返しする方法を――セシルは、重い口を開いた。
「私は、天使教を滅ぼしたいと考えています。あのような邪教、存在すら許さない。火災を起こそうかと」
総本山にある天使教の関連した建物を、燃やす――セシルは、天使教の存在を消してしまいたかった。
その言葉を聞いて、ダニエルはなるほど、と相槌を打った。
「あの宗教は存在してはならぬのです」
「そうだね。あの宗教は、人を不幸にする。エレン姫も君も……僕も、不幸になった」
例え、シュヴァルツ王国が悪名を轟かせても良い。
あの宗教は、エレン姫を裏切ったのだ。その代価を払わなければ――その事が内密に準備された。