黒王国物語
再起を懸けた戦い(1)
ノールオリゾン国城。
一人の剣士と、一人の銃士が訓練に明け暮れていた。
「ニコラ君、そんな隙だらけじゃ、敵にやられるよ?」
「馬鹿アレック、てめェの剣の使い方荒いんだァ。少しは練習しなァ?」
フェルナンドの命により、ツツジの里の襲撃が行われる。
その為に、兵士達は訓練しているのだ。
「ニコラ君、なんか目に隈出来てない?」
「気のせいだァ、アレック」
訓練の休憩時間。
アレックはふと、ニコラの眼鏡越しに見える隈を指摘した。
しかし、気のせいだとニコラは言い、口を濁した。
先日の夜の事。
ニコラはとある商人に金を渡していた。
「これで、密売を頼むぜェ?」
ニコラは金で、商人を買っていた。
「ふふふ、麻薬を密売するなんて、貴方も悪ですな……」
商人は薄笑いし、その事を承諾していた。
ニコラは考えた。
麻薬をノールオリゾン国民に売り、麻薬を国民の間で流行らせる。
上手く行けば、莫大な医療費がかかり、ノールオリゾン国の国政が少しだけだが危うくなるだろう。
全ては、シュヴァルツ王国の為。
セレナの願いなら、親の自分は毒になる――ニコラはそう誓った。
マクスウェル邸。
その場で、エレンは目が覚めた。確か、女性に菓子をもらって食べた瞬間、気絶した――なんとか自分は無事だったようだ。
「エレン姫様、大丈夫?」
エレンが倒れたと聞いて、夫であるダニエルが駆けつけた。
良かった、とダニエルは安堵した。
「いない」
ふと、エレンは気付く事があった。
お腹の子がいない、その感覚をエレンは知った。
「ダニエル様、いないの。赤ちゃん、いない……」
「エレン姫様、守れなくてごめん」
ダニエルはエレンに胎児がいなくなった事を告げる。
混乱しているエレンを、ダニエルは抱きしめるし事か出来なかった。
「ダニエル様、私がいながら、申し訳ありません」
フェイはエレンの子が流れた事に責任を感じていた。
あの時、目を反らしていなければ、人の不振な動きに気付けていたのに。
「君を責める事は、多分、エレン姫様が望んでいないよ」
「ですが、ダニエル様……」
「でも、今は……ごめん、君の顔を見たくないかな」
ダニエルはそう言い、フェイの元から離れる。
自分は何という事をしてしまったのだろう――エレンに合わせる顔がない。
フェイはその事に悔やむしかなかった。