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『インターナショナル』『HDリマスター』における総評漏れなどのスタイル修正
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『HDリマスター』において判定が「なし」に落ちている理由
ファイナルファンタジーX
【ふぁいなるふぁんたじーてん】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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2001年7月19日
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定価
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9,240円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:12歳以上対象 |
廉価版
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MEGA HITS!
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2003年1月16日/5,040円
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アルティメットヒッツ
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2005年9月8日/2,940円 |
判定
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良作
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ファイナルファンタジーシリーズ
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概要
『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリング第10作。略称は『FFX』『FF10』で、PS2の『FF』シリーズ最初の作品。
原点回帰をテーマとした前作とは正反対に、既存の『FF』の世界観やシステムが一新された。
本作のストーリー上の続編として『ファイナルファンタジーX-2』も発売されている。そちらは別項を参照。
あらすじ
豊かに反映する大都市ザナルカンド。
「ザナルカンド・エイブス」に所属する人気スポーツ・ブリッツボールのスタープレイヤーの少年ティーダは、試合中に突如謎の巨大生物に襲われる。
町中が大混乱に陥る中、10年前に失踪した彼の実父に代わり後見人としてティーダの成長を見守り続けてきたアーロンは、混乱に乗じてティーダを新たな世界へと導く。そこは大いなる禍い「シン」に脅かされる世界「スピラ」だった。
戸惑いの中、ユウナという少女に出会ったティーダは彼女がシンを打倒出来る唯一の存在である召喚士であることを知り、護衛役「ガード」として一行の旅に同行することになる。
その中でティーダは故郷ザナルカンドについての意外な事実を聞かされ、ひいては「シン」の衝撃的な正体について知ることとなっていく。
主な登場人物
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ティーダ
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金髪の美男子でブリッツボールのスタープレイヤー。10年前に確執を抱えていた父ジェクトを事故で喪い、更に母も後を追うように亡くなったため天涯孤独。父の友人だというアーロンに見守られて成長する。性格は明るく闊達で女の子たちにモテるが恋愛より父を超える名選手を目指していたのだが・・・。ルカでのアーロンとの再会後にユウナの正式なガードとなる。シンの正体を秘し、ユウナを待ち受ける運命をガードの中で唯一人知らずにつとめて明るく支えようとする。元々は泣き虫な子供だった。
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戦闘スタイルはワッカから譲り受けたチャップの形見の剣を使い、高速タイプの敵駆逐を得意とするもの。
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ユウナ
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まだあどけなさを残す黒髪の乙女。10年前にシンを倒した召喚士ブラスカの娘で将来を嘱望される新米召喚士。周囲からの期待に応えようと気丈にもシンを倒す覚悟を胸に旅立つ。その名は最初にシンを倒したとされる伝説の召喚士ユウナレスカに由来する。父のガードだったジェクト、アーロンを信頼して慕う。だが、老師シーモアからの求婚と彼の父の死の真相を知り更に苦悩するようになる。ワッカには隠しているがアルベドのハーフ。
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戦闘スタイルはエボンの各寺院に祀られた祈り子の化身となる召喚獣を喚びだして戦わせ、回復役も兼任する。
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ワッカ
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恵まれた体格とモヒカン頭が特徴の屈強な男。万年弱小チーム「ビサイド・オーラカ」の選手兼コーチ。性格は大らかで人懐っこく、人気人望ともそれなりにある。弟チャップの死に関与した機械とアルベド人を憎悪し、エボンの教えに忠実に生きている。浜辺で見つけたティーダの才能に惚れ込みスカウトする。ルカでの記念大会を最後に選手を引退し、妹分であるユウナのガードに専念すると決意する。
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戦闘スタイルはブリッツボールを武器として投げつけ、飛行タイプの敵に当てるというもの。
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ルールー
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スタイル抜群の妖艶な美女で衣装は喪服を彷彿とさせる。ビサイド島に移住してきて以来のユウナの姉がわり。シン討伐隊に参加した婚約者チャップの死により、その兄ワッカとは微妙な関係。キツイ言い方をすることが多いが苦悩するユウナを優しく見守る。いわゆるツンデレでチャップによく似たティーダに対し、冷淡で手厳しかったが徐々に解消する。
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戦闘スタイルは攻撃魔法を軸とし敵属性の弱点を衝くというもの。
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キマリ・ロンゾ
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ロンゾ族という獣人種の戦士。性格はとても真面目でユウナのことは少女時代から見守り続けている。ロンゾ族としては小柄な体格と折れた角など謎が多く寡黙。軽薄軽率なティーダを当初は見下していたが、同族ロンゾからキマリへの侮辱に憤るティーダと意気投合するようになる。戦闘スタイルは槍を使い敵を貫通し、龍剣で吸収した敵の技を習得模倣するというもの。
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アーロン
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隻眼の剣豪であり召喚士ブラスカの元ガード。親友ジェクトとの約束でザナルカンドに暮らしティーダの成長を見守り続けていた。シンやエボン、ザナルカンドの秘密を知るが多くを語りたがらない。ユウナのガードリーダーとしてルカから合流し、ティーダにだけシンの正体を明かす。
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戦闘スタイルは身の丈ほどの大剣により装甲の厚い敵を一刀両断するというもの。
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リュック
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金髪を無造作に束ね、舌足らずな独特の口調で公用語を話す美少女。アルベド人の娘で同族の仲間達と遺跡発掘による機械回収をしていた際にティーダと出会う。討伐隊とアルベド族の合同で行われた「ミヘンセッション」の壊滅的失敗後、召喚士連続失踪事件に関与し、幻光河でユウナを拉致しようとするが、失敗後に何を考えてかユウナのガードに志願する。性格は陽気で破天荒。
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戦闘スタイルはアイテムを敵から掠め取り、その場で合成して様々な効果を引き出すというもの。
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主な特徴
全般
一新された世界観と文明観描写
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前作『IX]]』における低頭身のデフォルメ調のキャラクターデザインから一転し、『VII』『VIII』のようなリアルな頭身の人物描写に戻った。
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人物描写・風景描写共によりリアルな写実路線が敷かれている。
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作風そのものは東南アジア風のエスニックな世界観を基調としたファンタジーで、近未来風の『VII』『VIII』、中世ヨーロッパ風の『IV』以前および『IX』のどちらとも大きく異なっている。
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寺院関係では梵字やサンスクリットに似たような文字を使ったりとオリエンタルな雰囲気を表現している。
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建造物、乗り物や住人の衣装、生活様式など人々の風俗や文化の表現に徹底してこだわっており、「種族間の違い」の描写が強調されている。
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中でも衣装は種族間の意匠の違いが顕著で、身体的な差異が小さい種族間でも遠くから一目見ただけで違いが一目瞭然となっている。
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本作の舞台は「機械」の使用を禁じられ、文明的発展が長きに渡って停滞している「スピラ」という世界。
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『VI』でみられた蒸気機関のような原始的な機械すら一部の種族を除き普及しておらず、『VII』『VIII』に見られた最新のエネルギー炉、スーパーコンピューターなどの未来的な超文明も登場しない。乗り物の動力に動物を使っていたり、エネルギー体「幻光虫」と水を媒体とする物体「スフィア」がテレビやビデオカメラのように機能したりと、前時代的文明にファンタジー要素が融合した独特な世界観になっている。
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本作の世界には様々な種族が存在し、その多くは世界全体に影響力を持つ宗教組織「エボン教」の寺院の庇護下で生活している。しかし種族毎に内情が様々で一枚岩ではなく、種族間や種族内の軋轢や差別といった重いテーマも扱われている。
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特に、機械の扱いを得意とする「アルベド族」は、『シン』の脅威に晒されるスピラを想い機械を正しく活用する人が大半にもかかわらず、「ご法度の機械に頼っている」という理由で寺院および他種族から差別・迫害を受けているという設定。
こうした種族間衝突もファンタジー的な世界観の中にリアリティを醸し出す要素となっている。
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彼らは独自言語「アルベド語」を使っているため、基本的に会話が成立しない(一定の法則に従って創作された人工語であり、吹き替えもそれに基づいて行われているため、プレイヤー側も聞いただけでは理解できない)。種族間の意思疎通の困難さを表現する要素であり、劇中アルベド語辞書を集めることで言語が次第に判っていくようになる。一種のやりこみ要素でもあり、全冊を揃えたセーブデータからコンバートしてはじめからプレイすることも可能。
キャラクターボイスの採用
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シリーズとしては初であり、イベントシーンはRPGでは当時珍しかったフルボイスで進行。戦闘時でもボイスがある。
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主人公・ティーダ役には当時青年俳優であった森田成一氏を起用。森田氏の声優デビュー作品であり、現在では『BLEACH』の黒崎一護役や『戦国BASARA』の前田慶次役で知られる同氏が、声優として活動するきっかけとなった作品と言っていいだろう。
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森田氏は『VIII』でモーション担当(ゼル役)の経験が既にあり、本作でも声に加えティーダのモーション担当を兼ねている。
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本作では、登場人物の名前は主人公ティーダ(と召喚獣)を除いて固定されている。任意の名前を設定できるそれらのキャラに関しては、名前で呼ばれることが無い。
映像技術
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「フェイシャルモーション」という技術によりポリゴンキャラクターにもムービーと遜色ないほど精密な表情をつけられるようになり、メインキャラによるイベントシーンの表現力と臨場感が大幅にアップした。
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フィールドもグラフィックはフル3D化された。
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また「アクティブフィールド」という技術により、同一マップにモンスターのいない街中エリアとモンスターのいるダンジョンエリアとを一体化したり、キャラクターのいる位置によってカメラワークが最適に調整したり、と精緻な演出が実現可能になった。
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障害物でキャラが見えなくなるなどカメラワークの悪い箇所は全く存在しない。
音楽
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前作までの植松伸夫氏も続投しているが、そこに仲野順也氏と浜渦正志氏を加えた3者による共作体制となった。植松氏の単独体制でなくなったのはナンバリング作では初めて。
シームレスイベントバトル
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ハードスペックの向上により、イベントシーンから暗転やロード無しでそのまま戦闘に入れるという、ボス戦でのシームレスな移行が実現された。
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一部のボスでは戦闘中に「話す」コマンドで話すことが出来るが、その会話でも暗転や場面の切り替わりといったものは一切起こらない。
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当時、RPGにおけるこのようなシステムの導入例はほぼなく新規性が高かった。
ゲームシステム
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前作までにみられた、フィールドに建造物のアイコンが立ち並ぶいわゆる「ワールドマップ」が廃止され、隣接するエリア間の移動を重ねて他のエリアへと移動する形になっている。
戦闘システム「CTB(カウント・タイム・バトル)」
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画面右上のアイコンで明示された行動順に従って進むバトルシステム。
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前作までの「ATB(アクティブ・タイム・バトル)」における「次の行動までの待機時間による行動順の違い」の概念だけを抽出し、リアルタイム性を撤廃しターン制に近づけたようなシステムで、感覚的にはシリーズで言えば『FFT』に近い。
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敵味方の2~3周の行動順が一覧表示されており、後々の行動順を踏まえて戦い方を組み立てやすくなっている。
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次に行動順がまわってくるまでの待機時間は、主に素早さのステータスと、そのとき選んだコマンドによって変わる。全体的に「強力な行動ほど、次の行動順までの待ちが長くなる」傾向にある。
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後に、類似の戦闘システムを持ったRPGが多く登場するようになり、PS2のRPGにおけるコマンド式戦闘システムの一つの主流とも言える形になった。
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ただし、似たような戦闘システムは本作以前にもそれなりに存在していたため、一概に本作だけの影響であるとは言い切れない。
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同時に戦えるメンバーは最大3名だが、控えのメンバーと戦闘中にいつでも交代できる。
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キャラと敵の相性が明確に存在し、状況に合わせてキャラを交代しながら戦うのが前提となっている。たとえば、物理攻撃が効きにくい敵は黒魔法使いのルールーに任せる、飛行しており攻撃の当たりにくい敵はワッカに交代してボールで叩く、など。
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戦闘不能になっても自動での交代はされず、戦闘メンバー3名全員が戦闘不能になってしまうとゲームオーバー。
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スフィア盤成長を考慮すると面倒でも全員一回ずつ行動させると戦闘後に全キャラにポイントが入る。
オーバードライブ
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「オーバードライブゲージ」という条件を満たすと溜まっていくゲージがあり、満タンになったゲージを消費することで大技「オーバードライブ技」が使用可能になる。
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『VII』の「リミット技」に似ており、初期状態では被ダメージがゲージ加算の条件でリミット技と同じ仕組みだが、後に「敵にダメージを与える」「味方を回復する」など様々なゲージ加算条件を習得し設定可能となる。
オーバーキル
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モンスターに大ダメージを与えて倒すと、獲得できるAP(後述)やアイテムが増加するというシステム。
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オーバーキルを狙うためには、オーバードライブ技を使ったり、属性攻撃で弱点を突いたり、後述の召喚獣を利用する必要があったりと、戦果を上げるための戦略性が求められる。
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そんなわけで結局ユウナとルールーがオーバーキルの鍵。
召喚獣
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シリーズ伝統の存在だが、本作での位置づけは過去作のような「強力で付加価値のある魔法の1種」ではなく、「パーティメンバーの代わりとして戦わせる」という従来作とは全く異なる特殊なコマンドに変わっている。
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召喚獣は一度に1種だけ召喚でき、召喚獣が戦っている間は他のパーティメンバーは戦線を外れ戦わない。システム的には『ロマンシング サ・ガ』の召喚と似ている。
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召喚獣のオーバードライブ技は従来作での決め技を基調としており、どれも強力でとどめのオーバーキル狙いにも適している。
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召喚獣が倒されてもパーティキャラが復帰するだけでゲームオーバーにはならないので、強力な攻撃への盾として活用することもできる。
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召喚獣もパーティメンバー同様に成長するため、ストーリーが進んでも活躍が可能。メニューの「そだてる」コマンドではアイテムを消費して任意の召喚獣を集中的に育成することも可能となり、どの召喚獣も最後まで活躍しうる。
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召喚獣の召喚時の演出やオーバードライブ技の演出は短縮することも可能。
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『IX』と違って、「ショート」に設定すれば確実にショート版の演出になり、また威力にも変化はない。
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システム面の他、『VI』『VIII』『IX』などと同様に召喚獣の存在そのものがストーリーに深く関わってくる。
成長システム「スフィア盤」
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「経験値」や「レベル」の概念がない、独自の育成システム。
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乱暴にいってしまえば、キャラごとにすごろくを進め、マスに対して指定のアイテムを消費して「発動させる」ことによりマスに設定されたアビリティやステータスが獲得できるというもの。
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戦闘によってAP(過去作の「経験値」に代わるもの)を獲得し、APを消費してコマを動かし盤面の道を進めていく。ただしすごろくとは異なりサイコロのようなランダム要素はなく、APさえ足りれば一度通った道を戻ることも出来る(一度通った道の再通過はAP消費が新規開拓の1/4となる)。
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キャラを成長させるタイミング、どの能力を成長させるか・成長させないかといったことがプレイヤーの任意に委ねられている。
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やり込みプレイヤーにとって自由度が高いシステムで、これまでのFFで見られた低レベル進行などの制限プレイ(縛りプレイ)に適した作りであるとも言える。
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CTB同様、後のRPGでも似たような成長システムが時折見られる。
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スフィア盤は全キャラで共通の盤面だが、自キャラには自分が発動したマスしか効果が得られない(他キャラ発動済みマスの効果を得るには自分も同じマスを発動させる必要がある)。
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キャラごとに初期位置が異なり、各初期位置を含む範囲が「スフィアロック」という通行止めによって大きく区切られ、当初は他エリアへ移動できないようになっている。
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よって一般的な進め方の場合、ストーリー終盤手前くらいまではキャラ別にほぼ決まった一本道のルートを進めることになる。途中で小さな分岐(寄り道)はあるものの、普通にゲームをクリアするだけならスフィア盤の進め方で迷うことはまずなく、誰がプレイしても似たような(初期の各キャラの方向性をそのまま伸ばしていったような)育成結果となる。
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パーティメンバーの1人であるキマリだけは、比較的早期からルート選択の自由度が高くなっているが他キャラと被りがちで遅いが堅いティーダとかになる。反面、ブランクスフィアに配置出来るアイテムは序盤から探せばあるので共通ルート配置だと一つで二人恩恵が受けられる。
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キャラ別に、スフィア盤上の一度通過したことのあるルートや、発動済みのスフィア(マス目)は明るく光るようになっている。これにより、キャラクターの強さを「数値」やグラフのみならず、スフィア盤上の明るさや色の規模といった「絵」でもある程度把握できるようになっている。
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ある程度ゲームを進めると、「LV(1~4)キースフィア」というアイテムが手に入り、これを使うとスフィア盤の通行止めを解除できる。スフィア盤上の他のキャラのルートや未知の領域に進入できるようになり、育て方の自由度が非常に高くなる。
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最終的には、スフィア盤のマスを書き換えるアイテムまで登場し、盤そのもののカスタマイズが可能になる。「何も無いマス」を新たにステータス上昇マスに変更したり、既存のマスをより強力な内容に書き換えたりと、やり込めばキャラをとてつもなく高いステータスまで成長させることができる。
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このシステムにより、開発側が「このイベント到達時点で想定される成長具合」を明確化してモンスターのパラメータなどを設定しやすかったこともあるのか、本作の戦闘バランスはシリーズでも比較的安定している方だが、回復手段が乏しくメンバーも少ない序盤の状況にしては強敵ということもある。
武器防具・アビリティ
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本作の武器や防具には「攻撃力」「防御力」などのパラメータではなく、様々な効果を持った「オートアビリティ」が付加されている。
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よって従来作の武器や防具とは役割が全く異なり、本作では純粋に「アビリティをセットするためだけの入れ物」のような扱いである。
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アビリティはパラメータ強化によって疑似的に過去作の装備品に近い役割を果たすものから、属性の強化や耐性、更にはエンカウント自体を無くすなどの従来作のアクセサリに見られたような便利系まで多種多様。
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改造
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ゲーム中盤辺りから行えるようになるシステムで、一定数のアイテムを消費する事によって、武器や防具に任意のアビリティを追加できる。
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『VII』のマテリアなどと違って、一度付けたアビリティは外せない。
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素材さえあれば自分の好きなようにカスタマイズする事が出来るため、戦略性の向上に一役買っている。
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さらに、終盤では完全に改造専用に特化した武器が入手可能で、自由度は高い。
ミニゲーム
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シリーズ本編でも重要な立ち位置を占める「ブリッツボール」は非常に良く作り込まれており、奥深い本格的なゲーム性、高い戦略性などから一躍有名になった。
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選手は育成が可能で、試合への出場を重ねることでステータスを上げたり、新たなアビリティを習得させたりできる。また、世界各地に選手候補がおり、それらをスカウトすることもできる。
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一方、シリーズ恒例の本編とはあまり関係が無いミニゲームも健在。
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ちょっとしたクイズからチョコボ操作の訓練、「タイミングを図って落雷を避ける」というシンプルだが集中力を要求されるゲームなど多岐にわたる、それらの多くは一見単純ながらやり込むと難易度が非常に高く、その見返りの戦利品も非常に充実しているという仕様。
ゲームバランス
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シリーズの中でも難易度は安定している方である。
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各キャラをちゃんと成長させていき、道中で覚えたアビリティや入手したアイテムなども使っていけば、余裕を持って戦えるようになっている。
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「召喚獣のオーバードライブゲージを事前に溜めておき、ボス戦になったら次々と召喚獣を入れ替えオーバードライブ技を次々に繰り出す」という非常に強力な戦法が「召喚ボンバー」の通称でほぼ公認されており、多くのボスに通用する。
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ただし中盤以降は敵の特徴に応じた戦略が求められるようになり、終盤まで適当に攻撃と回復を繰り返すだけで通るほど甘いレベルではない。
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「召喚ボンバー」への対策手段を持つボスや、初見殺しの行動パターンをとるボスも複数登場する。
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特にラスボスは、普通にストーリーを進めた状態だとかなりの強敵である。
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ストーリー後半の某ボスは、その初見殺しな行動パターンと見た目のグロさとにより強烈なインパクトがあり、トラウマボスとして名高い。
評価点
ストーリー・キャラクター
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CMのインパクトの強さゆえに恋愛要素が目立ちがちだが、そこに限らずシナリオ全般に対する評価は高い。
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ストーリーが異邦人ティーダの一人称傍白で語られているので置かれた状況がとても共感しやすい。恋愛要素も絡めた父と子の物語という点ではFF8と共通するが、抱いていた印象が少しずつ変化するのはとても丁寧。
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ティーダの父でユウナの恩人ジェクトやワッカの弟でルールーの亡き恋人チャップなど、人間関係の伏線と多角的な捉え方をしているので馴染みやすい。反面、チャップに似ているとルールー自身認めているティーダに対し、妙に当たりがキツいのは何故?(確かにツンデレですが)となる。
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「シン」という世界の脅威についても冒頭のザナルカンド崩壊やポルト=キーリカの悲劇とユウナの「異界送り」により災厄として理解しやすく、次第に判明するユウナの旅の目的の悲劇性とユウナがティーダを求めている理由が単なる色恋でなく、他と一線を画すムードメーカーとして決死行に不可欠だと判明する点もよく出来ており、ユウナ、ティーダ、アーロン、リュックが旅の仲間だからこそ言えない秘密を抱え葛藤する点も秀逸。
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序盤は明るく賑やかなムードが強調され、主人公の明るい性格ゆえプレイヤーによっては軽薄とも取られかねない言動も目立つが、次第にシリアスな要素の比重が大きくなっていき、序盤の各シーンの持つ意味合いの深さや台詞への印象も異なるようになり、再プレイする動機は深まる。
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後半は宗教紛争など現実世界の歴史とも重なる厳しい展開や、現実と幻想の挾間における葛藤のような重厚なテーマを描く壮大なストーリーに移行する。序盤の明るい雰囲気からの移行はきわめて自然に流れるように展開している。パーティメンバーの描写もエンディングのラストまで丁寧で、伏線もほぼしっかり回収されきっており、単に重苦しいだけではない爽快感も併せ持つ内容となっている。
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メイン・サブキャラクター共にストーリーを追うことに、内面の変化や成長、実情、思想が目に見えて変化していく。
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以下ネタバレ
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特に、エボンの教えに敬虔なワッカの描写などはわかりやすい。弟を亡くした過去に機械が絡んでいたことで日常的に機械を使用するアルベド族を強く嫌悪するようになった彼はエボンの教えに深く傾倒しており、当初は典型的な「保守的思想」の持ち主であった。アルベド族の気風から革新的思想(ワッカの視点から見れば反体制思想)を持つリュックに対しては、アルベドだと知ったとたんに態度を豹変させ、以後対立を深めていく。
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しかしユウナの出自に関するとある事実が判明し、また世界を冒険する中でエボン教の裏に隠された真実を目の当たりにして葛藤していくに連れて教条に凝り固まった思考に徐々に変化が生じ、アルベドや機械に対する敵意が氷解していく。
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他にも、ワッカの弟と恋愛関係にあり彼とよく似た風貌のティーダの出会いに戸惑うルール―、戦士の誇りを汚された屈辱に向き合おうとするキマリ、アルベド族ゆえの過酷な境遇にへこたれることなく前向きに希望を掴もうとするリュック、過去への悔恨を胸に仲間を導くアーロンなど、仲間1人1人にドラマが用意されており、成長や内面の変化を丁寧に描き出しているところも大きなポイントである。
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キャラクターボイスにより、イベントシーンや戦闘の臨場感が高まっている。
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特に、ティーダを演じた当時俳優だった森田成一氏は、声優としてはデビュー作故に演技の粗さを指摘する声はあったものの、ティーダというキャラ自体が作中で冒険者としての青臭さを強調される立場だったため、むしろマッチしているとの意見もあり好意的な意見も多かった。実際、氏はその後声優に転向し成功している。
//---クライマックスシーンのジェクトとの束の間の再会は、氏の熱演もあり多くのプレイヤーの涙を誘った。
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戦闘時のボイスパターンも非常に種類が豊富で、戦闘開始時やメンバーチェンジ時、全滅時に至るまでとにかく喋りまくってくれる。
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ストーリー進行の僅かな期間かつ特定の状況でのみ聞けるセリフなども豊富にあり、臨場感を印象付けている。
グラフィック
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グラフィックはPS2初期の作品とは思えない程にレベルが高く、スタッフの「PS2のスペックを限界まで使い切った」との自負も過言ではない。
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特に、前作『IX』までの段階で既に高く評価されていたムービー部分は、更なる劇的な進歩を遂げた。
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特に「水」の質感表現の品質は非常に高く評価されている。PS2発売から1年以上経過してから発売されたソフトではあるが、PS2が映像表現において持つポテンシャルの高さを広く世に知らしめた作品の一つと言える。
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また、作中で披露される弔いの儀式「異界送り」のムービーは、うねる様に動く水の質感表現に加えて本作の異国情緒あふれる世界観がこれでもかと美しく表現されており当時のプレイヤーを驚かせた。
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マップのグラフィックが3D化されたが、これをカバーするようにレーダーマップのシステムが全マップに導入され、移動の利便性はむしろ向上した。
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目的地やセーブポイント、建物の入口が視覚的に分かり易く表示されており、迷子になりがちなプレイヤーに優しい。
世界観
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当時のRPG全体で見ても非常に珍しい、シリーズ初となる東南アジア風の世界観も魅力のひとつ。
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日本や中国を含めた東アジアがゲームの舞台になるのは珍しくなかったが、東南アジア風の世界描写が前面に出たゲームはきわめて珍しかった。
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シナリオの根底をなす宗教描写や種族間の異文化など設定の作り込みと描写が緻密で、現実味溢れる世界観と深みのあるストーリーに繋がっている。
音楽
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折り紙付きの植松氏はもちろん、新規2作家の楽曲も含め評価は高い。「ザナルカンドにて」「襲撃」「いつか終わる夢」「シーモアバトル」などはシリーズの人気投票でも上位に入りやすい。
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特にオープニングで流れる「ザナルカンドにて」はムービーと大変よくマッチしており、有名アーティストによるカバーやコンピレーションCDへの収録も複数なされるなど、シリーズファン以外にも知られるところとなった。
システム全般
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PSというハードの宿命とでも言うべき問題点であったロード時間は格段に短くなり、ロードの遅さを指摘され続けた『VII』『VIII』『IX』に比べ格段に快適にプレイできる。
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ハードディスク「PlayStation BB Unit」にも対応しており、これを用いるとロード時間を更に短縮できる。
戦闘
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戦闘のテンポは、上記のロードの短縮もあいまって格段にスムーズになった。
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「戦闘開始からコマンド入力までが長すぎる」「魔法などのエフェクトが長すぎる」といった前作までの問題点はことごとく解消されている。
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決して、演出を単に簡潔で地味にものにしたわけではなく、映像や音声自体の演出の豪華さは保ったうえで、読み込みや共通モーションなどのしかるべき箇所がしっかり削減されている。
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また、雑魚モンスターは最適な攻撃手段を選択すればほぼ一撃で倒せるバランスになっていることが多く、この戦略性を要求するバランス自体もテンポの良さに大きく寄与している。
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前作まで指摘されていた召喚魔法(本作ではオーバードライブ技)の演出の長さ、およびその設定の不自由さも、本作ではコンフィグで任意の設定が可能となった。
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戦闘バランスも優れており、戦略の幅広さと、雑魚戦はサクサク進めるがボス戦は適度につまづきうるという適度な難易度を両立させている。
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本作ではシリーズ初となるバトル中のメンバーの入れ替えが可能で、これまでの作品にはなかった戦略性が発生した。
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プレーヤーの戦闘スタイルの幅が広がっただけにとどまらず、「仲間みんなで敵と戦う」という連帯感の演出としても一役買っている。
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ボス敵は個性的な戦術をとるものが多く、カウントタイムバトルや武器・防具の改造システム、メンバー入れ替えを最大限活かして対策することで有利に立ち回れるようになっており、高い戦略性を楽しめる。
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いわゆる「シームレスバトル」の採用により、物語と戦闘の一体感を出す事に成功しており、ユーザーを物語へと一気に引きこむスパイスとして大いに機能している。
ミニゲーム「ブリッツボール」
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前述の通り、高い戦略性と奥の深いゲーム性により、嵌る人はとことん嵌る。
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やりこむことで特定のキャラの最強武器とその強化アイテムを入手できるなど、報酬も充実している。
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スカウトできる選手の中にはライバルチームの選手以外にも、ビッグス・ウェッジといったシリーズ名物キャラや旅行公司のオーナーのリン、リュックのアニキといった本編に関わるキャラもいる。
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難点はメインシナリオで丁寧な操作説明をしておいて直後の試合にルーキーエースのティーダが欠場し、いきなり決勝戦からとなりルカゴワ相手にビサイド・オーラカが弱小ヘボチーム状態でティーダにパスが回せない。(磨けば光る逸材もいるというのに・・・)
賛否両論点
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原点回帰の前作とは打って変わった、また『VII』『VIII』ともまた異なる、様々な革新的な内容には賛否ありシリーズものの常である。
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従来の伝統だったATBの廃止には根強い賛否両論がみられた。
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戦略性は高いものの、『IV』以降受け継がれてきたリアルタイム性がなくなったことには批判の声がある。
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後の『X-2』や『XII』や『XIII』はATBとは異なるもののリアルタイムなシステムに回帰しており、今作のシステムを受け入れ難い層が無視できない程度に存在したことを伺わせる。
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ただしその一方で、リアルタイム性特有の煩わしさがなくなったことを評価する声も少なくはない。
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それまでお馴染みだったレベルと経験値、武器や防具のパラメータなどの要素が廃止されたり、召喚魔法の扱いが大きく変わったり、といった点には賛否合った。
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キャラクターボイスの導入など、演出面についても否定的な意見を持つ古参ファンはやはりみられた。
問題点
イベント関連
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ボイスで、主人公の名前が一切呼ばれない。
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収録が不可能のためやむを得ない問題だが、主人公の境遇が境遇だけに序盤は疎外感を強く感じさせられる。ストーリーがかなり進んで他のメインキャラクターが頻繁に名前で呼び合う中でもなお、重要な会話やムービーですら一度も名前を呼ばれないのには違和感を禁じ得ないとする声は根強い。
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一応、ボイスでは「キミ」「少年」「新入り」など多彩な呼称で表現する工夫がなされてはいるが、「名前を変更できなくていいから『ティーダ』と呼んで欲しかった」という意見も少なからず聞かれる。他人行儀で違和感を覚える。
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主人公と他者の会話ではこれによる理解への影響は少ないが、第三者どうしが主人公のことを話題にしている際は「あいつどうするんだろうな?」など漠然とした三人称のせいで誰の話をしているのかわかりにくい場面が散見される。
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ちなみに続編である『X-2』ですら一度として名前で呼ばれることがなく、ティーダは「キミ」「お前」等でしか呼ばれない。
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なお、ボイスの付いていないNPCの文字の台詞では入力した名前を呼ばれる場面も存在する。
ムービー
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ムービー、イベントシーンをスキップできない。
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音声を部分的にスキップできるシーンもあるが効果は微々たるもの。イベントシーンはあちこちに存在するので、「物語をもう一度楽しむ」、「アルベド語事典を完成させた状態から、序盤のやり取りやメッセージを正確に理解したい」という目的で再プレイする場合は特に気になる。
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ムービーの完成度が高い故に、通常のゲーム画面における低解像度版グラフィックの粗さが悪目立ちしやすい。
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ムービー以外の画面において、主要キャラクターには解像度の異なる2種類のグラフィックが用意されている。イベント用の高解像度グラフィックは上述の「フェイシャルモーション」により表情豊かだが、イベント・戦闘兼用の低解像度グラフィックはほぼ無表情で、これがイベントシーンでアップになってしまうとやや違和感があるとする声がある。
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左:低解像度グラフィック、右:高解像度グラフィック
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ラスボス戦の問題
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クリックで開く
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本作のラストバトルは「究極召喚獣 → 各召喚獣との連戦 → ラスボス」という3つのパートに分かれているが、最初の「究極召喚獣」以外は負けることのないイベントバトルで、本気で倒す必要のある実質的ラスボスは「究極召喚獣」のみ。
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一方、イベントバトルは演出の都合により所要時間が長く、それでいて絶対に負けないので頭を使う必要もなく、適当にダラダラ戦ってもよいという興ざめな展開になりやすい。
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敵の攻撃力が高めなうえ、こちらの攻撃を高確率で回避してくる。さらに、無限に復活するお供のモンスターが2体いて、定期的に召喚獣やラスボスのHPを回復させる。これらのせいで全体的に戦闘のテンポが悪く、冗長と感じるプレイヤーが多かった。
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パーティ側にもこのバトル専用の特殊な演出用一撃必殺技などあれば特別な爽快感もあっただろうが、そういった要素もなく、常時復活のおかげで負けないというだけでバトル自体は普通に地道にこなす必要がある。「召喚獣を1体ずつ召喚しては真面目に撃破」を何度も繰り返すことになり、作業的である。
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どうやら、当初の計画ではこの召喚獣との連戦の進行に合わせてスタッフロールを流す予定だったらしい。この計画が無くなって、それはそれで良いエンディングができたが、この戦闘自体が、感動的な流れに水をさしてしまった事はやはり残念。
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ラスボスに至っては割合ダメージ攻撃である「グラビジャ」くらいしか使用せず、仮に自動復活がなくてもまずやられないほど弱い。
ただし、これは「重力の扱いを得意とする矮小な存在」というラスボスの設定に符合した演出で、ラスボス本体となる存在のか弱さ、『シン』とラスボスの関係性などを示す重要な要素となっており、シナリオの観点では必然的な描写とも言える。
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その他
フィールドマップの削除とマップの一本道化
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ゲーム後半で飛空艇が登場し、一度行った町同士を自由に行き来することはできるが、それまでは決まったルートを進んでいくだけとなる。
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もともと聖地巡礼の旅だという位置付けなので仕方ないと言えば仕方ない。
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シナリオ進行段階に応じた行動範囲制限自体はRPGに一般的なもので、「特定の目的地を目指す」ことが物語の大半を占めるストーリーのため、ルート制約は必然的なものとも言える。
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しかし本作ではフィールドマップも削除されたこともあり進行がほぼ一本道に近く、終盤までは寄り道できるエリアが非常に少なく、当時から批判の声は少なくなかった。
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一応「ミヘン街道」の新道・旧道の分岐や、「レミアム寺院」のような隠されたマップや隠し宝箱もあるにはあるが、全体に隠しマップのボリュームは控えめ。
戦闘
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戦闘で1ターンも行動していないキャラはAPを獲得できないという仕様。
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全キャラをまんべんなく育てたければ、戦闘中にいちいち交代して「防御」などの適当な行動を1回は取らせなければならない。本作のパーティメンバーは7人おり、毎回の戦闘で全員を行動させるのは煩雑でもやらないと後で苦労する。
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通常、戦闘で勝つことだけを考えるなら、大体3~5人程度のキャラで十分戦える。そもそも交代する必要がないこともある。
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ストーリー中では使用キャラに制限のある展開の場面も何度かあるほか、特定のキャラを使わなければ攻略が難しいボスも散見され、キャラの育成不足により辛くなりうる場面が散見される。
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また育成が大きく遅れるキャラが出てきてしまうと、戦闘で使いにくいせいで育ちにくい、そのせいでさらに使いにくくなりもっと育たなくなり…という悪循環に陥る可能性もある。
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そこに各レベルのキースフィア獲得時期が絡むのでタイミングが合うと面白いようにスイスイ強力に育つが行き止まりにハマると正にドツボ。
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スフィア盤にて明確な役割を持たないキマリ(加入最後のリュックの代行役で「盗む」を使えるとミヘン街道から役立つが)や、攻撃手段に乏しく雑魚戦での役割が少なくなりがちなユウナが特にこれに当てはまりやすい。ユウナの場合、召喚獣バトルなど重要なイベントが多く、召喚獣の能力はユウナの能力に一部影響し、ユウナの所持アビリティしか召喚獣は学習出来ないので、面倒でも序盤から多芸多才に育てておかないと苦労する。
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継戦能力の鍵も回復魔法の揃った(揃えないと召喚獣まで苦労する)ユウナのケアル系、レイズ系頼み。高MPのルールーも攻守魔法に優れた賢者タイプに育成したいが寄り道が難しい。
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水中戦闘が可能なメンバーがブリッツボーラーのティーダ、ワッカとアルベドのリュックしか居ないのでこの三人の育成を怠ると苦戦する。
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最初にティーダと共闘するのに正式には最後に加わるリュックに対する成長補償が全くない(アーロンは必要ないほど端っから強い)上、幻光河の終盤で加わるので本格参戦は戦闘のないグアドサラムを経て雷平原からになるが、初期HPが500代のリュックは雷半減でも付けていないと敵先制時のサンダラ連発で即死する。ただでさえ雷に怯えるリュックは本当にお気の毒。
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対して雷平原では飛行生物がわんさか出現するのでワッカは独擅場となり、序盤から参戦しているので獲得装備も多彩なところにリュックの改造が加わるので不公平を感じる。
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いずれにせよ三人のうちの誰かを回復も出来る役に育てないと苦戦(散財)する。秀逸アタッカーのティーダ、低MP攻撃一辺倒多彩化するワッカはほぼ除外されるので、素早さの高いリュックにエスナやレイズ、ケアルラを習得させることになり遅れて加入の割に負担が大きい。
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そもそも敵の技習得用にMP回復効果のある龍剣を持ち、序盤から参加しているキマリを回復役に育て、泳げればこんなことには・・・。
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戦闘開始時のメンバーを複数バトルにわたって固定しておく方法がない。
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速度面を考えると先発メンバーはティーダ、ワッカ、リュックもしくはバ系魔法習得済のユウナが理想。最後に万を辞してアーロンまたはルールー投入でOVERKILLによる締めとなる。
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戦闘中に交代してメンバーの配置が入れ替わると、戦闘終了後もその配置のままになるのでうっかり戻しておらず、最遅最強のアーロンが先発メンバーに居ると戦闘が長期化しやすい。
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本作では素早いキャラや先制攻撃しやすくなるオートアビリティを持ったキャラを戦闘開始時メンバーにした方が有利である。しかし雑魚戦における敵との相性の観点でも、敵先述のAP稼ぎのためにも、頻繁に交替が行われるのが前提となっているシステムのため、オートアビリティの発動には戦闘が終わる度にメンバーの配置を組み戻す必要があり、煩雑である。
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単調な通常戦闘。
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戦略性の高いボス戦は高評価を得ている反面、通常戦闘は慣れてしまうと単調である。
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序盤は「この敵には有利をとれるこのキャラで攻撃する」といったメンバー入れ替えの工夫にも新鮮さが感じられるが、終盤手前くらいまでは同じパターンの繰り返しで済むことが多く、その面では単調ともいえ、戦闘の自由度もそこまで高いとは言えない。
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慣れた頃には仲間を入れ替えて攻撃するだけの単純作業と感じられやすく、飽きやすい。後述のモンスターのバリエーションの少なさも拍車をかけている。
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終盤はしぶとい敵が多くなるので、自分なりに工夫して戦う必要も増えてくる。
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召喚獣を活用できる場面が限られる。
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召喚獣自体は強く、上手く使えばボス戦や強敵相手に有利をとれるが、大半を占める雑魚戦は基本的にパーティメンバーだけで対処可能。召喚獣は1種でしか戦えず全体攻撃手段も限られる上、召喚の演出はショート設定であっても時間がかかるので、戦闘のテンポを悪化させるだけになりかねない。
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一方、前述の様に「AP獲得の為には各キャラを1回ずつ行動させる」必要があり、召喚獣に戦わせるシステムとの相性はあまり良くない。
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開幕から召喚獣で戦うと各キャラが成長できない。かといって全員が一通り行動し終える頃には勝利目前で、もはや召喚獣を使う必要がないことも多い。
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一方、召喚獣に頼りすぎるとボス戦が簡単になりすぎてしまうとの意見もあり、プレイヤーによっては召喚獣の使用に自ら制限をかける場合もある。
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戦闘における一部の敵味方の行動(モーション)が緩慢で時間が掛かり、戦闘のテンポを悪くしている。
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特にルールーの通常攻撃モーションの遅さはよく指摘される。
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武器・防具といった装備品の整理機能がない。
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キャラクター別に分かれていないこともあり、非常に散らかりやすい。装備・売買時は目的のものを探すだけで一苦労。
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インターナショナル版で改善された。
スフィア盤による成長システム
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人によってはやや複雑で手間に感じられる面もあり、従来のようなレベルアップによる自動成長の方が快適で良いという意見もある。
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モンスター訓練場をやり込むようになると、スフィア盤の成長システムに問題が出てくる(後述)。
キマリの不遇性能
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序盤こそ万能なアタッカーとして使いようはあるが、それも他のメンバーと役割が重複しており、「キマリでなければ対応しづらいという」という場面が基本的にない。
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キマリが戦闘で明確な役割を持たないことと、行動していないキャラにはAPが入らない仕様により、気が付いたら他のキャラと圧倒的なステータス差ができていることも珍しくない。ゲームシステムとの相性がとことん悪かった悲劇のキャラといえる。
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キマリは初見で上手く育てるのが難しく、普通に進めるとストーリーの中盤以降で中途半端な性能になりがちで、終盤にかけて全く使わなくなるプレイヤーが続出した。
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キマリは全メンバーで唯一、スフィア盤のスタート地点から一本道の終点までが非常に短い。このルートを習得し終えた段階では何の尖った性能も持たず、中盤以降は他の誰かのルートに合流する形で育成を進めることになる。
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しかし初見ではどのルートを選ぶとどのような性能になるかの把握は難しく、適当なルートを何となくうろうろする流れになってしまいやすい。
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またルート変更に必要なスフィアの入手個数が中盤まで非常に限られることから、今ひとつな育成状況だと気づいても、気軽なやり直しができない。
さ
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オーバードライブ技「敵の技」の性能も他メンバーより低い。他のメンバーにはないような「死に技」(別のアビリティの下位互換で、オーバードライブ技として使う意義が乏しい)が散見されるうえ、最強技の威力も他キャラに比べるとかなり見劣りする。
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従来の「敵の技(青魔法)」はMPを消費するだけでいつでも使用できたのに対し、今作の敵の技はオーバードライブゲージを消費する必要があり、使用できる機会が少ない。
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今作の敵の技は、いつでも使えてしまうとさすがに強すぎるが、オーバードライブ技としてはやや物足りないというどっちつかずの微妙な性能である。もう少し性能を強化するか多用しやすくした方が良かったのではないかと言われている。
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システムを理解して、役割を決めて計画的に育てていけば十分強キャラになりえ、最後まで活躍できる。
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各種やりこみ等では、育成自由度の高いキマリはむしろ重宝することが多いとされ、人によって扱い方が大きく変わるキャラといえる。
本編以外のやり込み要素やゲームバランス
本編以外の寄り道・やり込み要素には、簡単にゲームバランスを一変させてしまう高性能なアイテムなどが入手できるものが多い。
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後述のモンスター訓練場もゲームの中盤~後半あたりから利用できるようになるため、少し寄り道しただけでストーリー上のボス(ラスボス含む)達がまるで相手にならなくなってしまう可能性が高い。
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スフィア盤は全キャラで1つの盤を共有している関係上、完走する(全部のマスの効果を発動させる)まで育て上げると全員が同じステータスになってしまうという難点がある。
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ステータスでキャラごとの優劣が付かなくなるため、各キャラ固有のオーバードライブの性能の格差が目立つ。連続攻撃が強力なティーダやワッカ、強力なアイテムを生み出す「調合」が便利なリュックが強キャラとされ頻繁に使われる一方で、本編でダメージ要員として優秀だったアーロンやルールーは逆に攻撃面で物足りなくなってしまう。
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通常攻撃を素早く行う技「クイックトリック」が強すぎて、これを連発するだけでほぼ事足りてしまう。
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MPを999まで上げれば、前述のクイックトリックも連発し放題になる。
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さらにMP消費量を1にするオートアビリティや、MP消費量を0にするアイテムまで存在する。また、MPを全回復するアイテムも容易に稼げる。
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戦闘不能からの自動復活が可能になる魔法「リレイズ」や、戦闘不能になった味方を即座に復活させるオートアビリティ「オートフェニックス」により、攻撃力の高い敵との戦闘でも立て直しやすく、「死んでは復活してのゾンビプレイ」が可能となっており、適正ステータスならまず負けることが無い。
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これらにより召喚獣は攻撃役としての存在意義が皆無になり、ほぼ盾役専門となる。
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パーティメンバーと召喚獣の能力上限は同じなので、キャラを限界まで鍛えると召喚獣の立場が無くなってしまう。召喚獣1体で戦うよりも、鍛えたパーティメンバー3人で戦った方が遥かに効率が良い。
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例外的に魔法しか効かない敵も1種存在し、その敵との戦闘では、一部の魔法や召喚獣にも活躍の機会はある。
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ただし最終的には、魔力を鍛えたキャラで魔法を連発する作業になるので、やはり召喚獣は使われなくなる。
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キャラを強くしていく手段も「同じ敵を延々狩り続けてアイテムを集めるだけ」なので、作業感が強い。
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ただし単純作業の繰り返しでキャラをコツコツ強化していく行為には一定の中毒性はあり、本編とは全く異なる性質のゲームだと割り切れば楽しめないこともない。
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本作のバトル面でのやり込みの到達点である「モンスター訓練場」は、世界各地のモンスターを捕獲していくことで強大な敵と戦えるようになる、というものだが、作り込みの甘さが指摘されている。
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最終的にやり込むには全102種のモンスターを10体ずつすなわち1020体を捕獲する必要があるが、ひたすら同じエリアをウロウロして戦闘を繰り返すことになり、特に出現しにくいモンスターではそれが顕著で、作業的で面白味に欠けるとする意見は根強い。
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モンスター訓練場を攻略し始めると、それまでの優れたバランスの戦闘からは様相が一変し「ひたすら能力値を強化して毎回同じキャラが同じ装備でクイックトリックを連発する」が基本の、ワンパターンで大味な攻略法になってしまう。
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各キャラに用意されている最強武器「七曜の武器」(通常攻撃時に対象の防御力を無視し、ダメージ上限を9999から99999まで引き上げる)があれば、最終的にはどのキャラでも通常攻撃で簡単に99999ダメージを出せるようになる。
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このため、数多くのアビリティやオーバードライブ技が死に技になってしまう。本編で重要だった属性攻撃の概念も、実質的にあって無いようなもの。
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モンスター訓練場では敵のパラメータのインフレが激しい。
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本編だけなら戦闘バランスの優れたゲームといえるが、訓練場の状況だけから「『X』はインフレの激しいバランスの崩壊したゲーム」と評されてしまうことがしばしばある。
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しかし、その実態はただ体力が高いだけで「強い」というよりも「しぶとい」ばかりの敵も多く、前述の通り戦略性は低くワンパターンな戦闘になりやすいこともあり、作業感が強い。
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「最強の敵」とされる訓練場最後の敵はHP1000万を誇る一方、搦め手を使ってこないため対策は難しくなく、「HPが高いだけのデクの坊」と、シリーズ歴代の裏ボスでも最弱クラスで拍子抜けとの酷評を受けている。
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実際は、それより格下とされる「ネスラグ」という敵の方がパーティ強化が足りないとあっさり詰むためよほど強いとされる。
ミニゲーム
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全部で7種類存在する最強武器「七曜の武器」及び、それらをパワーアップさせるアイテムの中に、ミニゲームをやり込まねば入手できないものがいくつかある。
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ティーダ、キマリ、ルールーの武器に関するミニゲームは入手難度が異常に高いこともあり、別にミニゲームをやりたいわけではないプレイヤーからの批判が多く、本作の不満点として真っ先に上がることも多い。
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このうちキマリとルールーはやり込み要素に於いては戦力的に微妙なため、思い入れがなければ無視することも可能だが、アタッカーとして優秀なティーダはそうも行かない。
しかも彼の武器に関するミニゲームはトップクラスに難易度が高い。
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完成された七曜の武器は、入手の苦労に見合うだけの性能ではある。
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ストーリー中で試練の間というパズルゲーム風のミニゲームを数回行わなければいけない。
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基本的にスフィアを穴に嵌める事によって何かが起こるのだが、実際に嵌めて見るまで何が起こるか予想できないものも多いため、頭を使うよりも手当たり次第にスフィアを嵌めて見なければならない事も多い。またスフィアを嵌めた時の演出も短くは無いため、ただ面倒なだけになってしまっている感がある。
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「どの道もう一回来ます」を暗示させるかのように後戻り不能なのもなんだそりゃ。
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面倒さで言うなら上記の七曜の武器のミニゲームと比べれば遥かにマシなのだが、こちらは攻略に必須であるため、本作の最大の不満点として挙げるユーザーも多い。
その他
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以前のPSシリーズ等に比べ色違い等の敵が多く、雑魚敵のバリエーションが少ない。
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「エレメント系・プリン系」などにはルールー、「鳥系・羽虫系」などにはワッカ等、明確な役割分担で戦略を組むシステムと表裏一体ではある。
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また終盤には同種族でも巨大である、装飾がど派手など、外観上も飽きさせないようにとの工夫は見られる。
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ただしモンスター訓練場の強敵が、ほとんど既存のモンスターやボスの色違いであることには批判の声もある。おまけなので別にいいという声もあるが。
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訓練場最強のモンスターも例外なく既存のボスの色違い。当時の攻略本や雑誌ではモザイクなどで姿が隠されていることが多かったため、拍子抜けしたプレイヤーも多い。
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ただし、1体だけオリジナルデザインのモンスターがいる。本編で使用するはずだったが様々な要因で没になり訓練場専用にされたという経緯のためか、唯一パーティメンバーとの掛け合いボイスがあったり、戦闘で個性的な行動を取ったりなど、凝った仕様のボスである。これが最強の裏ボスだったらよかったのに、ともしばしば言われる。
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ゲーム批評で指摘されたが、PS2の型番によってはカメラワークが異なってしまう箇所がある。
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誌面で出されたのは初期ロットでの画面写真だったが、ゲームに支障は無いとしても映像としてはかなり残念になってしまう。
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これまでシリーズでは質の高いプリレンダムービーが主流であったので、このバグは、ハードの性能が向上したことによって引き起こされたともいえる。
総評
システム面では、本編以外のやり込み要素における練り込み不足や作りが粗い部分など手放しで賞賛できない箇所があるのも事実だが、新機軸のカウントタイムバトルを含め全体的に優れたゲームバランスは評価されている。
近未来とアジア文化を融合させたような『FF』のイメージを覆す世界観、奥深いストーリー面はシリーズ内でも高く評価されており、また最初から最後まで倒すべき相手が一貫していること、嫌味のない素直なキャラクター描写など、直近のリアル頭身FFに比べ「分かりやすさ」も兼ね備えた作りとなっている。
ストーリークリアまでの普通のプレイ体験は非常に洗練されており、十分に良作と言える作品に仕上がっている。
余談
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2011年にファミ通.comが読者を対象に行った「泣けるゲームソフト」アンケート調査ではダントツの票数を獲得し1位に選ばれている。
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2020年2月29日、NHK BSプレミアムにて放送された「発表!全ファイナルファンタジー大投票」において、作品部門で『VII』を抑え堂々の1位に輝いた。
ファイナルファンタジーX インターナショナル
【ふぁいなるふぁんたじーてん いんたーなしょなる】
発売日
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2002年1月31日
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定価
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8,140円
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象) |
廉価版
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アルティメットヒッツ
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2007年1月25日/2,940円
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判定
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良作
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追加・変更点(インターナショナル)
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音声が英語になった。それに合わせ、人名や召喚獣が英語表記になり、作中の用語や台詞が多少変更された。
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エンディングのスピーチ等大きく変更された部分もある。
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ゲーム中の文字や字幕の選択が可能。日本語・英語の2種類から選択できる。(字幕のみ英語にすることはできない)
付録DVD「永遠のナギ節」
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本編の後日談で、『X-2』に繋がるストーリーが展開されるムービー。
ゲームバランス調整。
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オリジナル版では弱過ぎると酷評された隠しボス「オメガウェポン」が、大幅に強化された。
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それ以外の一部のモンスターも能力値や行動パターンが修正され、全体的にオリジナル版より手ごわくなっている。
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オーバーキルで倒すと逆にドロップアイテム数が減ってしまうモンスターなどは、ちゃんと通常の2倍の個数のアイテムを落とすように修正された。
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オリジナル版で猛威を奮った技「クイックトリック」が弱体化。
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行動速度が半減(条件によっては実質3分の1ぐらい)、消費MPも増やされた。
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それでも依然として裏要素における主戦力であることには変わらない。クイックトリック弱体化により訓練場(及び後述の追加ボス)の難易度が多少上がっている。
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オリジナル版では必要無かったHP限界突破であるが、追加されたボスはHP限界突破がないと話にならないと言えるため極めて重要になった。
新アビリティ、新スフィア盤追加。
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スフィア盤はゲーム開始時に、オリジナル版と新バージョンのどちらを使用するかを選ぶ。
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新バージョンのスフィア盤では、ルート選択の自由度が大幅に広がり、最初から色々な進め方ができるようになっている。
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これによってオリジナル版とは多少異なるゲームバランスになるので、オリジナル経験者も楽しむことが出来る。
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ただし、スフィア盤の盤面の都合で極限まで育て上げるならオリジナル一択となってしまう。
新たな敵、ヘレティック(ダーク)召喚獣とデア・リヒターの追加
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ダーク召喚獣はゲーム終盤になれば世界各地に出現するようになる。これにより、無印版にはなかったいくつかの弊害が発生している(詳しくは後述)。
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いずれもゲーム本編には関係無い、やり込み要素的な位置付けで、ゲームクリアだけを目的とするならほぼ無害なもの。
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デア・リヒターのHPは驚異の1200万である。強敵なので心してかかろう。
評価点(インターナショナル)
自由度の高い新スフィア盤
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オリジナル版のスフィア盤は基本的に一本道であり成長の自由度が高いとはいえなかったが、新スフィア盤は複数のルートが繋がり合っている。そのため、少し寄り道してユウナに黒魔法を覚えさせたり、リュックにヘイストなどの補助アビリティを習得させるといった戦略的な成長を楽しむことができる。
アビリティ関連
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「パワーアタック」などのアビリティの追加により、スフィア集めが快適になった。
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同様の効果を持つアイテムはオリジナル版から存在しているが、こちらは序盤から使用できる上に消費MPも非常に少ないので、格段に扱いやすくなっている。
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オリジナル版では軒並み役に立たなかった「ピンチに○○」系アビリティであるが、瀕死状態になる条件がHP50%未満に修正されたことで使いやすくなった。
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特に体力50%未満を維持しておけば常にヘイスト状態になれる「ピンチにヘイスト」がかなり強力である。単純に戦闘不能状態になりにくくする「ピンチにリジェネ」も中々便利。
一部の仕様が快適化された。
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武器の並び順を変更できるようになった、一部の場所にセーブポイントが追加設置された など。
問題点(インターナショナル)
ダーク召喚獣の出現による弊害
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いくつかの地域に立ち寄ったり道を通過しようとしただけでダーク召喚獣と遭遇し、場合によってはそのまま強制的に戦闘に突入する。ダーク召喚獣はラスボスを遥かに上回る強さであり、キャラをかなり強化していないと即全滅させられてしまう。当然ながらラスボスと対等に渡り合える程度の能力では100%全滅が確実。
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そのため、ラスボス戦前に各地を寄り道するようなプレイヤーにとっては脅威の存在であり、事前情報も無いため、やや不親切。
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「試練の回廊のアイテム」「特定のオーバードライブ技」「特定の隠し召喚獣」「特定の七曜の武器をパワーアップさせるアイテム」の入手時期が遅くなる可能性がある。
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ダーク召喚獣の出現前にこれらを入手しておかないと、以降はダーク召喚獣を倒さなければ入手できなくなってしまう。ダンジョンの初回攻略時に入手しておかなければいけないものも多い。
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またビサイド村入口で登場する「ヘレティック・ヴァルファーレ」には不満の声が多い。
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思い出深い旅立ちの地であるにもかかわらず、足を踏み入れようとしたら登場→全滅となるなど。倒すまでビサイド村での会話などもできない。
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ヘレティック・ヴァルファーレの影に隠れがちだが、マカラーニャ寺院で出現するヘレティック・シヴァやエボン=ドームで出現するヘレティック・バハムートも同様の問題を抱えている。
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特にマカラーニャ寺院の試練の間は難易度が高く、最初に訪れた時点で宝箱をスルーしていると泣きを見る。
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モンスターの強さのインフレを加速させてしまっており、元々低かったラスボスの立場を更に無くしてしまっているとの意見も多い。
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ダーク召喚獣を倒せるぐらいまでパーティーを強化すると、今度はパーティーが強くなり過ぎてラスボスが全く相手にならなくなるという問題が発生する。モンスター訓練場はあくまでオマケ要素であり、必要無ければ全く関わらずにゲームを進めることができたが、ダーク召喚獣はストーリーだけを楽しみたいプレイヤーにとっても迷惑な仕様になってしまっている。
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クリックで開く
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ダーク召喚獣は、ゲーム中盤から反逆者となったユウナ一行に対して差し向けられた刺客による召喚獣という設定なのだが、ゲーム後半に入り反逆者の汚名が晴れた後でも容赦なく襲いかかってくる。
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特に不自然な点として、マカラーニャ寺院でヘレティック・シヴァを倒した際のイベントがある。シヴァを倒した後も反逆者としてそのまま追手に追われることになるのだが、画面を切り替えた後に寺院へ引き返すと、刺客の姿は影も形もなくなり寺院はいきなりユウナ歓迎状態になっている。設定に関しては色々と解釈できなくもないのだが、どうにも無理やりねじ込んだ感の強いものになってしまっている。
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違和感の大きい日本語字幕
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今作の日本語字幕は、無印版オリジナルの日本語テキストではなく英語版の文章をわざわざ再翻訳したものとなっている。この翻訳の癖がやたら強く、表現がオリジナルとは大きく異なっている。
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またワッカには「北海道弁で話す」というオリジナル版にはなかったキャラ付けがされている。これは「海外版の声優がハワイ訛りなのでそれに合わせたから」とのことだが、終始わかりづらい方言でしゃべり続けるワッカにはオリジナル版経験者でなくとも違和感を禁じえない。
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不自然な用語選択も多く、「御意」や「ナニユエに」、「新入りガード殿」など、エセ時代劇かという珍妙な和訳が散見される。英語版のニュアンスを尊重したのかもしれないが、これがシリアスなイベントや名台詞にも空気を読まず盛り込まれており、雰囲気ぶち壊しである。
総評(インターナショナル)
ゲームバランスの調整などがされており、ボリュームは無印版よりも増えており、全体的に快適になった。
しかし、追加要素に蛇足な物が多い点は否めず、ダーク召喚獣の追加、日本語字幕の変更…などにより無印版の完全な上位互換となりきれていない面もある。
もともとの無印版が良作で、大筋で同一内容の本作も十分に楽しめる作品ではあるが、追加要素や英語音声が必要無い人にとっては、PS2でプレイするなら無印の方がよいという人もいるかもしれない。
なお今現在追加要素を楽しみたいなら、グラフィックがより洗練され日本語音声も選択可能なHDリマスター版が適している。
ファイナルファンタジーX HDリマスター
【ふぁいなるふぁんたじーてん えいちでぃーりますたー】
対応機種
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プレイステーション3 プレイステーション・ヴィータ プレイステーション4 Windows Vista~(Steam) Xbox One Nintendo Switch
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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Virtuos
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発売日
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PS3/PSV
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2013年12月26日
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PS4
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2015年5月14日
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Win
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2016年5月13日
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One/Switch
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2019年4月11日
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定価(税抜)
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PS3/PSV/PS4
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パッケージ
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6,800円
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ダウンロード
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6,095円
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PSV 単体版
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パッケージ
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3,800円
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ダウンロード
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3,429円
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Win
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3,400円
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One/Switch
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パッケージ
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6,800円
|
ダウンロード
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6,080円
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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判定
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なし
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概要(リマスター版)
インターナショナル版をベースにしたHDリマスター移植版。インターナショナル版の付録DVD『永遠のナギ節』、新規ボイスドラマ『will』も同時収録。
PS3/PS4/Win/One/Switch版は『X-2 HDリマスター』との同時収録。PSV版は単品だが、『X-2 HDリマスター』とのツインパックでも販売されている。
HD化を担当したのは上海のVirtuos社。PS3/PSV版は初回特典として『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』で使用可能なユウナの衣装のダウンロードコードが付属していた。
特徴(リマスター版)
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音声は日本語。用語や台詞についてはインターナショナル版にあった珍翻訳は無くオリジナル版に準拠している。
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Steam(Win)版は英語ボイスも選べるのだが、英語等の字幕のときにしか適用されず、インターナショナル版のような英語音声/日本語字幕という組み合わせは不可。
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グラフィックの向上。PS3/PS4版は1080p出力に対応。
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約2/3(約60曲)の楽曲をリマスター&アレンジ。
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PSV版はタッチパネル操作に対応。
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マップ移動時に、回復魔法や回復アイテムを使ってパーティを全回復させる機能が利用できる。
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戦闘時に、召喚獣の演出を通常版にするかショート版にするかを切り替えられる(従来はメニューでのみ設定変更可能)。
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チュートリアルモードのスキップが可能。
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PS4版以降は更なるグラフィックの向上や楽曲の切り替えが可能。
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モンスターやNPCのグラフィックがPS3/PSV版と比較して向上している。
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楽曲はコンフィグでオリジナル版かリマスター版の2つに切り替えが可能になっている。
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Win版はPS4版の変更点に加えてオートセーブや、いわゆる公式チートであるゲームブースター機能が追加。
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ゲーム速度を2倍・4倍に変えられる他、キャラクター強化、エンカウント調整、オートバトル等を切り替えられる。
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キーアイテムを除くアイテム99個、全アビリティ取得、GIL最大なども行えるが、こちらは追加する形のため一度選ぶと元の状態には戻せなくなる。
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One/Switch版はPS4版をベースにPSV版の要素を追加。
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PS4版にあったグラフィック向上と楽曲の切り替え、PSV版にあったクイック回復とチュートリアルスキップが可能。
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一方、Win版のような各種ブースト機能は未搭載。
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Switch版は携帯モードのみタッチパネル操作に対応。
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序盤のゲームバランスが調整され、他機種より難易度が少しだけ上がっている。
賛否両論点(リマスター版)
グラフィック
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高画質になってはいるのだが、キャラの顔に関してはPS2版に比べて「顔に違和感がある」「PS2版の顔の方が良い」という声が多い。
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例として、PS2版のティーダは小麦色の肌をしているのだが、HD版では肌の色が全体的に白くなり瞳も強めの青になる等コーカソイド寄りになっており、かなり別人の印象を受ける場合がある。
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パーティメンバー以外のキャラはPS2版のものをアップコンバートしただけなので粗く、余計目につきやすいというのもある。
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ムービーの画面アスペクト比はPS2版の上下を切った16:9に。そのためやや狭く感じられる。
イベント
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日本語音声でありながら、キャラのリップシンク(口パク)は当時のインターナショナル版の英語音声に合わせたままなので、キャラの台詞と口の動きが合っていない。
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しかし、英語音声の方でもリップシンクは音声に合っていない。音声に合わせての細かな調整をせず移植されてしまったものと思われる。
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インターナショナル版で追加されたイベントシーン(ダーク召喚獣関連など)の音声は、日本語ボイスが新たに撮り下ろされたりしてはいないため、HD版では無声になっている。些細な点ではあるが、本編のイベントシーンでは基本的にフルボイスであった分違和感がある。
BGM
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(PS3/PSV版)高音質にはなったものの、楽曲のアレンジについては「PS2版のほうがいい」「原曲との切り替えができると良かった」といった意見が多く見られる。グラフィック同様に賛否が分かれる点である。
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これを受けてか、PS4版以降は全機種でオリジナルとアレンジの切り替えができるようになった。
ゲームシステム
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インターナショナル版そのままなので、ゲームバランス改良や快適性の向上(イベントスキップ機能追加など)といった改良点は無い。
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2013年の時代でありながら、未だにイベントスキップ機能もないことはよく批判される。
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一応、Win版のみゲーム速度自体の高速化で代用することは可能。
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一本道状態の序盤で獲得アビリティスフィアが少なすぎ、通過したのにアイテム足りなくて習得出来て居ないという頭の痛い状態に陥る。(高難度スフィア盤選択時)
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ちなみに同年3月14日に発売された『キングダム ハーツ -HD 1.5 リミックス-』では、全てのイベントが最初からスキップ可能になるなど、機能改善されていた。
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Win版ではゲームブースター機能でゲームスピードを最大4倍速、エンカウントをなしに、チートでステータスを最大にしたりオートバトルが出来るようになったため、大幅に快適性が改善されている。
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他機種にはない機能であり、後発のOne/Switch版にも残念ながら搭載されていない。
問題点(リマスター版)
液晶テレビによるミニゲームの高難易度化
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ゲーム自体より時代や環境の問題だが、オリジナルがブラウン管時代のゲームため、描画速度がブラウン管に劣る液晶テレビでプレイするとコンマ単位の緻密な操作を要する雷避け、蝶集め、とれとれチョコボが非常に難しくなっている。
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液晶テレビに合わせた難易度調整は無く、オリジナルそのまま。特に雷避けはゲームモードも無い一般的な液晶テレビでは無理ゲーに近い。
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クリアにはプレイスキルだけでなく描画速度の速いテレビを使用するなどゲーム外の工夫が必要で、ユーザーのリアル環境に左右されるゲームになってしまっている。
ボイスドラマ『will』
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厳密にはHD版と同時期に発売された『X-2』の後日談小説『FINAL FANTASY X-2.5 ~永遠の代償~』の後日談であると思われる。同小説の内容と合わせ、意地悪なまでに徹底した前作否定と取れる内容。
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『永遠の代償』で描かれた事件が切っ掛けで、一部の人物の考え方や人間関係が悪い方向に変貌している。これについてボイスドラマ内での説明は一切ない。
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『永遠の代償』では1000年前の戦争における様々な真実が明るみになり、前作全否定とはいかないまでも、やや後味の良くない内容となっている。更に『X-2』のベストエンドの感動をぶち壊しにする展開もある。
そしてボイスドラマでは、致命的なまでに前作を破壊する事件が起こり、新たな災厄と冒険の始まりを予感させるところで幕を閉じている。
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その後、続編の発表はない。
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『X-3』の製作が検討されていた時期があったためプロットが存在しており、『will』や『2.5』は『X-3』の導入だったようである。元々はボイスドラマの内容が小説『X-2.5』用のストーリーだった。
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もし仮に『X-3』の企画が再始動するとしても『VIIリメイク』完結後になると、当時の開発スタッフが公式インタビューで言及している。
ダーク召喚獣の改善がされていない
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インターナショナル版で最も酷評された要素であり、
結局不便な所が改善されておらずどうしても無印に劣っていると見られる。そのため無印よりも初見に対しかなりおすすめはしにくい。
総評(リマスター版)
インターナショナル版で不評だった点を改善しなかったり、キャラの顔などに(個人差こそあるが)違和感がある、と言った見過ごせない点もあるのは事実である。
しかしやはり最新機の美しいグラフィックで過去の名作を楽しめるのは素晴らしいことである。
本作は今までの完全版とも言える内容のため、まだやった事のない人はこれを手に取って最新機で色あせない本作を楽しむのがよい。
プレイの快適さで選ぶなら各種ブーストのあるWin版が抜きん出ているが、Switch版などでも充分遊ぶことが可能。
余談(リマスター版)
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2022年になって本作のパーティメンバーの一人である「ワッカ」を盛大にいじり倒した合作MAD動画が瞬く間にニコニコ動画にて300万再生を突破するなど思わぬブーム
と風評被害を巻き起こし、ネットミームと化すという珍事が起きた。
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特に、本作の広告の謳い文句「ティーダのコンボ気持ち良すぎだろ!」をもじった『コネクト』の部分は、その絶望的なまでに下品な歌詞から大きな話題となった。
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本作のファン以外の層からもSNS上などで多数言及される程の一大現象となっていたが、最終的にスクウェア・エニックスからの「著作権侵害」との申立により該当の動画は削除された。
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これに伴い、本作のSteam版の売上が伸びるという副次効果も起きた。
最終更新:2022年06月21日 08:49