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水耕栽培、養液栽培と農薬//有機農法的水耕栽培、養液栽培 [有機農業/食物にする生命との付き合い方]
№09-08 2009年2月小針店で印刷・配布した「畑の便り」の再録
スーパーでは、ミズナなど様々な養液栽培の野菜が売られています。温室ハウスなどで植物の生長に必要な養分は化学肥料を溶かした液肥・培養液で、それを循環させて与える栽培方法です。
発泡スチロールの板、スポンジなどの根を張るための培地を用いた固形培地耕と培地を用いない水耕栽培、噴霧耕とがあります。培地に土を用い、液体肥料をチューブなどで補給するものは、養液土耕といい養液栽培には含めません。
なぜなら、作物と土、根と土壌微生物が織り成す生態系が、培地栽培や水耕栽培にはなく、養液土耕にはあるからです。化学肥料の養液栽培では水中の根に根毛が見られません。
根に取り付く病害虫に脆い
養液栽培は土作り、施肥の技能・手間が省けるとか、冷暖房をすれば一年中栽培できて計画的販売が可能とか、外食のファミリーレストラン内に装置を設置して店内で、お客さんの目の前でレタスなどを栽培できるとか、閉鎖性が高いので病気が出にくく無農薬栽培が可能などの利点もありますが、多くの欠点もあります。その一つが、病原菌が入ると蔓延、慢性化しやすい。
栽培前にハウス内や栽培装置の消毒をおこなう。床をコンクリ張りにしたり、施設に入るには着替えるなど土ぼこりなどで病原菌を持ち込まないようしています。そのように密閉度をたかめ消毒して、無菌状態を保とうとしています。が、栽培施設がいったん病原菌に汚染されると入られると、天敵生物もいないので、非常にもろい。
葉や茎を外から食べ荒らす病菌、害虫は、普通と同じ農薬散布で対処できますが、最大の弱点は根に取り付く土壌性のもの。病原菌、その胞子などが循環する培養液に混じって、作物だけでなく栽培装置、施設全体を循環し広がり発病・汚染します。根腐病の発生は80%以上だそうです。
そうなると殺菌消毒しますが、至る所に広がった病原菌を全滅させることは難しい。例えばスポンジ状の培地を完全に消毒することは不可能です。それで、しばしば、病害発生を繰り返します。
つまり養液栽培の要点は、培養液の殺菌です。その方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
銀で殺菌
つまり養液栽培の要点は、培養液の殺菌です。その方法にはどのようなものがあるのでしょうか?草刈真一さん(大阪府環境農林水産総合研究所)の資料などを基にまとめてみました。
加熱殺菌は安全性、殺菌効率、確実性は高いのですが、燃料代がかさむ。資材の殺菌には使われていますが、培養液消毒では少ない。
紫外線は、安全性、病原菌の種類を問わず効果がありますが、培養液が濁りが多いと効率が低下します。紫外線ランプの電気代もかさみます。オゾンは上水道でも用いられている、安全性、殺菌効率、確実性は高い方法で、塩素より殺菌力、安全性が高いのですが、装置が高く、高額の設備投資が必要です。
砂を使った緩速ろ過が一部で用いられています。砂による濾過作用と砂中に棲息する微生物の作用で病原菌が抑制され発病にいたりません。しかし大量の培養液に処理にはむきません。砂の代わりフィルターを用いる、フィルターは銀でコーティングして銀の殺菌力も利用します。これは、安価で導入も簡単ですが、フィルター交換の手間が新たに生じ、多発する施設や病気によっては効果がない。
最も普及しているのは、オクトクロスという農薬。培養液に使える(登録してある)たった一つの農薬です。ポリエステル製に布に銀を結合してあり、1トンの培養液に30cm×100cmのこの褐色の布を浸します。
銀は金属元素中最大の殺菌力をもち30~50ppb(十億分の一)濃度で効果を発揮します。液に浸すと銀が放出され、約16時間後にこの濃度になります。使いやすいし、多発する根腐病に有効で、合法的に使える農薬なので多用されています。ただ頻発する施設や発生すると全滅に近い被害になる青枯病や軟腐(なんぷ)病などには効果がありません。
無農薬が可能といわれてますが、青枯病や軟腐(なんぷ)病などが発生したら①その時栽培していたものは廃棄し、施設全体を隅々まで消毒して、新たにやり直す②普通栽培で使われているが、水耕栽培では合法的には使えない農薬を使い、栽培終了後に念入りに消毒などなど、どちらにせよ完全に殺菌はできません。つまり、新規就農者が飛びつきやすい敷居の低さがあるが、潜在的にリスキーで、借金をせおって撤退する例が多いのです。
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