コミックマーケット99アフターレポート


会場
東京国際展示場東京ビッグサイト
全館

会期
2021年12月30日(木)~31日(金)

サークル数
参加サークル数 2万


入場者数
30日(木) 55,000人
31日(金) 55,000人


更衣室登録数
 男性女性
30日(木)355人1,176人
31日(金)398人890人


献血数
30日(木) 288人
31日(金) 265人


コミケット公式発行物
コミックマーケット99 イメージビジュアル Hiten
紙袋(大)ERIMO


出展企業数
91社


マスコミ取材
 コミックマーケット99取材申込一覧

(2022年2月14日データ部分公開)


 冒頭にあたり、2019年冬以来2年ぶりのコミックマーケットの開催が無事行えましたことにつき、サークル、一般、企業、準備会スタッフ、全ての参加者のご協力に心から感謝いたします。今回のアフターレポートにおきましては、いつものようにコミケット99(以下、コミケットの開催表記はCXXとします)についてのことだけではなく、C97以降の2年間の流れも振り返りたいと思います。

【C98の中止とエアコミケ】

 2020年1月以降世界中での流行が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、2月26日・3月10日に出された政府による大規模イベントの自粛要請もあり、C98の開催については、3月15日の発表において、「中止または延期を含め、通常と同様に開催できないという判断をせざるを得ない可能性」にいったん言及しました。
 この間C98の開催の可能性について、準備会内部だけでなく会場等とも検討・調整を行いましたが、政府及び東京都による大規模イベント等に関する自粛要請の強化及び延長等によってイベント再開の目処がつかない状況が続きました。3月19日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言や3月24日には東京オリンピック・パラリンピックの延期も発表される中、断腸の思いではありましたがC98の開催中止を決断し、3月27日にこれを発表しました。既に、サークル当落通知は発送済であり、コミケットカタログの印刷も進んでいる状況でしたので、この時点での開催延期は混乱が生じると判断し、開催中止という形を取りました。
 なお、4月7日には、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に、政府から新型コロナウイルス対策特措法に基づく「緊急事態宣言」が発出され、4月16日には全国に拡大しました。5月25日の緊急事態宣言の解除まで政府の強い自粛要請により、開催規模やイベントの種類を問わず、イベント開催が極めて困難な状況となったのはご存じの通りです。

 開催中止にもかかわらず発売したC98カタログ(冊子版。DVD-ROM版は発売中止)につきましては、多くの方に購入のご支援をいただくと共に、開催中止に伴う当選サークルのサークル参加費については、多くのサークルの皆さんに、繰越や寄付の手続きをしていただきました。大変感謝しております。また、繰越や返金において、一部金額を減額させていただいたことにつき誠に申し訳なく、重ねてお詫び申し上げます。
 また、こうしたコロナ禍の状況においても、他の同人誌即売会、同人誌印刷会社、同人誌専門書店、Webサービス等関連する皆さんと一緒に、同人文化の火を絶やさず、この困難な状況が改善に向かった時に、作品を発表し、形となった同人誌等を手に入れることができるようにと、『がんばろう同人!』という名の下に、各社・各団体が様々なプロジェクトを実施しました。
 コミケットもその一環として、リアルなイベントとしてのC98は中止となったものの、「コミケット98」という証を残すべく、「エアコミケ」を実施しました。Twitterのハッシュタグ機能を活用しつつ、C98を開催するはずだった2020年5月2日~5日を「当日」、5月1日を「設営日」として、事前・事後も含め、公式Twitterアカウント(@comiketofficial)にて、いつも通りに「エアコミケ」としてのC98を開催する企画を中心に行いました。これまでもコミケット当日に会場に来られない方々が、Twitterを中心としたSNS上で「エアコミケ」を自主的に楽しんでいらしたわけですが、こうした草の根活動を準備会としてもサポートしようというものです。開会・閉会等のアナウンスをTwitterで行ったり過去の当日写真を公開したりと、さまざまなTweetを発信し、多くの参加者の皆さんにTwitter上でご参加いただき、大いに盛り上がりました。この他、本来はC98に合わせて販売するはずだった紙袋やリストバンドを、一定の条件で配布したりもしました。
 
 また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛で、広く協力が得られにくい状況となっていた献血についても、従来と同様に全国の献血ルームでの「コミックマーケット98献血応援イベント」を実施しました。ご協力いただいたカバー株式会社、株式会社コロプラ、株式会社Cygames、株式会社ブシロード、株式会社ピラミッドの各社さんには感謝申し上げます。

【C99の開催延期とエアコミケ2】

 C98の中止決定後も、どういう形であればコロナ禍において、2020年冬にコミケットを開催することができるのか……? 一日当たりの参加人数や開催日程の制約、会場の「対応指針」に規定されている開催にあたっての各種の条件、新型コロナウイルス感染症の流行状況等を考慮し、政府、東京都、会場の動きも見据えつつ、開催形態の大幅な変更を含め検討を重ねました。

 しかしながら、2020年半ば時点の状況においては、1)東京ビッグサイトのホール毎の最大収容人数は大幅に制限され、コミケットの開催には参加者の人数があまりに少なくなってしまうこと、2)東京2020オリンピック・パラリンピックの開催延期に伴い、2019年のように東展示棟が使用できない状況の代わりに4日間開催に延長することは、年末の曜日を考慮すると日程が非現実的であること、3)求められている新型コロナウイルス感染症対策を講じたとしても様々な問題が生じる恐れがあること等、開催にあたり解決すべき課題への対応が極めて容易ではないことが予想されました。たとえ2020年冬にコミケットを開催することができたとしても、参加者の皆さんに満足いただくことができない開催となってしまうであろうことが懸念され、これを払拭することができませんでした。その結果、C99を2020年冬に開催することは困難であるという結論に至り、2020年7月12日に、開催の延期を発表しました。
 その代わりに、C98の中止時に「エアコミケ」を開催したのと同様に、2020年12月21日(1975年のこの日、第1回のコミケットが開かれました)、30日、31日に「エアコミケ2」を行いました。「エアコミケ2」では、若手の準備会スタッフを中心メンバーとして、これまで準備会がほとんど取り組んでこなかった動画配信に取り組み、事前からも含め様々な番組をYouTube上で配信しました。それ以外にも、エアサークル申込を行い、Circle.msの協力を得てエアコミケWebカタログを公開し、サークルさんの同人誌の作成意欲に繋げるような試みをしたり、エアコスプレエリアを設けてコスプレイヤーの皆さんに参加いただいたり、「エアコミケ2献血応援イベント」等を実施したりしました。


 こうした<エア>での試みの一方で、「エアコミケ2」の時にはコミケットはちょうど45周年を迎えることもあり、せっかくならば<エア>だけではなく、45周年を記念して形に残るものも作りたいとの想いから、『コミックマーケット45周年記念イラスト集・COMIC MARKET 45th Anniversary Book』を発行しました。過去45年のコミケットにおいて、サークル参加、あるいは同人誌の発行、同人誌への執筆参加等をされたことのある、マンガ家、イラストレータ、アニメータ、コスプレイヤーの皆さんに幅広くお声がけし、現役サークルの方からお久しぶりの方まで、総勢205組もの方々にお集まりいただき、本当にありがとうございました。

【C99の開催決定と再延期】

 2020年9月には政府・地方公共団体によるイベント規制の緩和があり、感染症対策と社会経済活動の両立を図る方針が打ち出されました。同人誌即売会も再び各地で開催され、回を重ねる毎に参加サークル数、来場者も増えてきました。2020年12月での開催を延期した後も、C99をどうやったら安全に開催できるのか準備会内では議論を重ね、2021年GWにC99を開催する旨の発表を2020年11月17日に行いました。この日程は2021年GWにコミケットを開催するための準備を考えると正直ギリギリで、しかも、未だ不安定な社会情勢ではありましたが、前へ進もうと開催準備に臨むことを決断しました。
 開催にあたっては、引き続き国・東京都・東京ビッグサイトの感染症対策のガイドラインや指針に沿って充分な対応を行わなければなりません。1)1日数万人程度という参加人数全体の制限、2)出展サークル専用通行証の枚数の削減(3枚→2枚)、3)机と机の間隔を空ける、4)一般参加者のチケット制と抽選、5)更衣室の入れ替え制とコスプレイヤーのチケット制や抽選等、2021年冬の開催時において行った感染症対策の大枠は、ワクチン接種及びワクチン・検査パッケージを除けば、この段階でほぼ固まることになりました。また、これまでサークル参加に必要だった参加申込書セットは、冊子版を購入しなくてもオンライン申込時にPDF版を同時購入することでサークル申込を可能としました。参加者の負荷軽減の観点から青海展示棟の使用は見送り、4日間開催を前提としたサークル募集を行いましたが、その後、様々な検討の結果、会期を3日間とすることに変更しました(12月20日)。

 2020年12月10日には、東京ビッグサイトを会場とする同人誌即売会等の主催団体が事務局となっているDOUJIN JAPAN 2020から『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における同人誌即売会の開催ガイドライン』が公開され、C99はこのガイドラインに基づいた感染症対策を前提として、さらに開催準備を進めていくことになりました(なお、このガイドラインは、大規模な同人誌即売会を主に想定したものです。これは、規模の異なる同人誌即売会全体に統一的なガイドラインを作ることは難しく、また、大規模同人誌即売会の想定する様々な感染症対策が、小規模な同人誌即売会にはオーバースペックとなって負担とならないように、という配慮もありました)。

 しかし、2021年1月7日に2回目の緊急事態宣言が発出される状況となり、2月7日には1か月間の期間延長が行われました。2月26日に政府から出されたイベント開催制限では、緊急事態宣言解除後の4月11日までの経過措置期間として、1日の総来場者数の上限が1万人という制限が定められました。これは準備を進めていた計画の想定参加者数を大幅に下回っており、この数字ではC99の開催は困難と言わざるをえません。その後、3月5日には東京都を含む1都3県に対する緊急事態宣言が2週間延長され、併せて発表されたイベント開催制限では、2月26日付とは異なり経過措置期間の終了時期が明示されませんでした。つまり、この段階ではGWの総来場者数の見通しが立たないことが明らかとなり、直前に開催を断念し中止や延期をした場合は、参加者や関係者の皆さんへ大きな影響を及ぼすことになります。また、サークルの当落公開後に延期等の発表を行うことは、サークルの皆さんの同人誌の製作作業の負担等となることも考え、本来のサークルの当落発表日である3月8日に、再度の延期と2021年冬の開催を目途とすることを発表しました。
 4月12日には、開催延期に際してのサークル申込の取扱を発表し、再延期後のC99への申込の継続を選択せずキャンセルを希望される方は、Circle.msのコミケWebカタログサークル向けからキャンセル手続きをしていただきました。また、C99再延期の代わりとして、予定していた開催日を軸に書店・企業の皆さんを中心に「エアコミケ3」が開催された他、5月下旬~6月末日にかけて「エアコミケ3献血応援イベント」を実施しました。

【C99の新日程と事前準備】

 2021年5月以降は、東京ビッグサイトでの複数の同人誌即売会が無事に開かれており、多くのサークルや参加者が再び集まるようになりました。特にDOUJIN JAPAN 2020の各幹事団体の主催の同人誌即売会は、DOUJIN JAPAN 2020の感染症対策ガイドラインに基づいて開催され、クラスターの発生もない運営が行われました。しかし、夏の段階では東京都に4回目の緊急事態宣言が発出中で、デルタ株の市中感染が急速に拡大している状況でもあり、政府や東京都の定めるイベントの開催制限についても未だ収容率や上限人数に制約があり、会場の定めるガイドラインも厳しいものとなっていました。

 一方で、新型コロナワクチンについては、接種者の感染や重症化が大幅に減少することが海外で明らかになり、2021年6月には、2021年10月から11月までに希望者全員への新型コロナワクチン接種終了を目指すとの方針を政府が明らかにし、新型コロナワクチン接種の普及に伴い、現状のイベントの収容率・上限人数の制限を見直す機運が高まってきました。こうした中、多くの不確定要素が残ってはいるものの、新型コロナワクチンの接種等により社会状況の改善が見込めると判断し、2021年冬開催までの準備期間も考え、2021年8月2日に、C99の新日程とサークル申込についての発表を行いました。サークル申込については、以前のC99に申込いただいた場合、基本的に申込は継続となっていましたが、新日程にあたり、配置辞退や既申込情報の変更を受け付けました。また、この時点からの新規サークル申込の受付も行いました。

 2021年8月時点では、来場者の新型コロナワクチン接種について言及するイベントは、ほとんどありませんでした。もちろん新型コロナワクチン接種は、最終的には個人の判断に委ねられるものであり、準備会として参加者の皆さんに接種を強制するものではありません。とはいえ、公衆衛生の観点から、接種のリスク、ご自分と周囲への恩恵等を総合的に検討いただき、特段の理由がない場合はできるだけ事前に新型コロナワクチンの接種を済ませてコミケットへ参加いただく方針をいち早く打ち出しました。

 2021年11月には、新型コロナウイルスの感染状況も落ちつき、政府のイベント開催制限の方針も「5000人又は収容人数の50%いずれか大きい方」に緩和されました。これを受けて、東京ビッグサイトのガイドラインも改訂され、準備会が計画してきた規模での新C99の開催が可能となったことを11月12日に発表しました。ここで、1日当たりの総来場者数を約5万5千人程度とし、適切なマスク着用の徹底、こまめな手洗い・手指消毒、3密(密接・密集・密閉)の回避等の感染症対策に加え、「ワクチン・検査パッケージ」を導入するとともに、政府の技術実証にも参加することを併せて発表しました。つまり、参加者の入場にあたり新型コロナワクチンの接種証明(予防接種済証、ワクチン接種証明書または接種記録書(全てコピー可))あるいはPCR検査結果証明の確認を必須とさせていただくこととしました。これは、1)新C99の参加者数が従来の数分の一ではあるものの、2021年では国内最大級のイベントであるため、コロナ禍におけるイベント開催を取り巻く厳しい状況をふまえ、通常求められる以上の対策・対応を自主的に取る必要があること、2)感染者が増加傾向に転じた場合になっても可能な限り開催できるように可能性を高める必要がある、と判断したためです。その他、冊子版カタログの発行は行わないこと、展示ホールの使用形態(東京オリンピック・パラリンピックが2021年9月に終わり、12月には東展示棟が戻ってきます)等の発表も行いました。

 上記と同日に一般参加者及びコスプレイヤーへのチケット販売についての概要案内を、11月16日には詳細案内を公開しました。コミケットとしては初めてアーリー入場チケットを設けた他、一般入場チケットとともに、いずれも混雑回避を目的として、受付時間はそれぞれランダムとしました。
 チケットは、一次販売(抽選制)・二次販売(先着制)に分けて販売しましたが、二次販売は、一次販売での抽選の結果をお知らせした後、キャンセル等が発生した場合に実施する位置づけのものであり、当初から数量を確保して実施する形ではなく、残余分を余らすことなく少しでも参加者の皆さんにお届けしたい、と考え実施しました。二次販売も一次販売と同様に抽選とすることも検討しましたが、日程的な余裕がさらに必要なこともあり、先着での販売を行うこととなりました。
 こうした事情については、チケット販売サイトの運営会社に対しあらかじめ申し入れを行っており、運営会社側も、アーリー入場チケットの二次販売時は、サーバの増強を行ったため問題は起きませんでした。しかしながら、一般入場チケットの二次販売においては、更なるサーバ増強を行っていたにも関わらず、想定を大きく超えるアクセスがあったため、販売中に追加増強を実施する過程において一時的なメンテナンスを行った旨の報告を受けています。こちらについては、一般参加者チケットの入手を希望していた皆さんに、ご迷惑おかけしましたことをお詫びいたします。

 12月1日には、ワクチン・検査パッケージの詳細を公開しました。1)一般参加者、サークル参加者の皆さんにそれぞれ準備していただくもの、2)参加者の皆さんに円滑に入場してもらうための「TOKYOワクションアプリ」の導入のお願い、3)ワクチン・検査パッケージの手順・内容、接種証明又はPCR検査結果に関する説明、4)ワクチン・検査パッケージを実施する理由、等を詳細に説明しました。

【コロナ禍の政府・東京都・国会議員等への申し入れと調整】

 この2年間、コミケットもDOUJIN JAPAN 2020事務局の一員として、政府との様々な話し合いに参加したのですが、最初のハードルは、「同人誌即売会を所管するのは、どの官庁なのか?」というそもそもの問題でした。展示会業界を所管するのは経済産業省であることは以前より決まっていたのですが、産業としての同人誌即売会は、これまで官庁とのお付き合いはほとんどなく、むしろ避けてきたところすらあります。コロナ禍に直面するにあたり政府へ支援をお願いしようにも「窓口はどこなのか?」という問題が生じたわけです。こちらについては様々な調整の結果、文化庁が所管ということになり、例えば、前述のDOUJIN JAPAN 2020として定めた「新型コロナウイルス感染症流行下における同人誌即売会の開催ガイドライン」の担当官庁になっていただいていますし、ARTS for the future!(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)においても、同人誌即売会を支援対象としていただいています。また、J-LODlive(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)は、経済産業省が所管ですが、同人誌即売会を支援対象に含めていただきました。こうした取組にあたっては、山田太郎参議院議員、藤末健三参議院議員の働きかけが大きく力添えになりました。

 コロナ禍において、山田・藤末両議員には、折に触れ関連産業を含めた広く同人誌業界の苦境に心配りをいただきました。加えて、お二人が所属されている超党派のマンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟(会長:古屋圭司衆議院議員)へは、DOUJIN JAPAN 2020事務局として、度々陳情を申し上げ(2020年3月、10月、2021年3月、9月)、それぞれの時点での同人誌業界の実情や要望をご説明し、2020年10月には、坂井学内閣官房副長官(当時)、2021年4月加藤勝信内閣官房長官(当時)へ申し入れをする機会をいただきました。
 特に、藤末健三議員には、2021年8月にDOUJIN JAPAN 2020が主催し、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室をはじめとする関係省庁・自治体にご参加いただいたラウンドテーブルの開催に多大なご協力をいただきました。この会議がきっかけとなり、新C99におけるワクチン・検査パッケージの技術実証への参加が実現することになり、新C99を開催できる見込みが大変明るくなりました。
 また、山田太郎議員には、新C99開催直前に関係省庁との会合を設けていただき、2021年GWの緊急事態宣言発出に伴う同人誌即売会の開催中止のようなトラブルが新C99で起きないようにと、対処の枠組みを作っていただきました。
 この他、東京都への申し入れでは、鈴木晶雅都議、荒木千陽都議に大変お世話になった他、栗下善行都議(当時)には、東京都及びその関連する展示会場において、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったイベントへの会場費返還の実現にご尽力をいただきました。

 このように様々な形でコミケットだけでなく同人誌業界の支援にご尽力いただきました関係各位、関係省庁、東京都、東京ビッグサイトには厚くお礼申し上げるとともに、共に交渉にあたったDOUJIN JAPAN 2020事務局の各即売会主催団体にも感謝いたします。

【C99の概要と設営日】

 2年前の2019年に開催したC96とC97は、東京オリンピック・パラリンピックの影響で東展示棟の貸出がなく待機場の利用にも制限があり、西・南展示棟にサークル、青海展示場に企業ブースを配置し、4日間開催という形での開催となりました。新C99では、2021年夏で東京オリンピック・パラリンピックが終わり、東展示棟が戻ってきたこともあり、東1~6ホール、西・南展示棟1階にサークル、西・南展示棟4階に企業ブースを置き、2日間の開催となりました。東8ホールと会議棟1階を更衣室とし、東7ホールと東京ファッションタウンビル横のG1駐車場は、一般参加者の検温、ワクチン・検査パッケージの実施、チケットの確認のために使用しました。

 2日間のサークル数は約2万サークル、コスプレ更衣室の利用者はのべ3千人弱、参加者数はのべ11万人。2021年開催のイベントとして国内最大級の規模ではありますが、東京オリンピック・パラリンピック以前の3日間開催時ののべ約50万人以上の規模からすれば大幅な減少は否めません。とはいえ、コロナ禍での2年ぶりのコミケットとしては、「今できる形」での開催のため、感染症対策に主眼を置き、安全係数を高く見積もる必要があったことは、ご理解いただければと思います。

 感染症対策のための連絡先確保として、設営日の設営協力者の皆さんにも事前登録をお願いしましたが、ピーク時で900名近い設営協力者に参加いただき、10時頃から机の位置を決める「測量」、12時頃からは机を並べる「設営」を行い、約5,000本の机、約10,000脚のイスを設置、サークルスペースを作りました。ご協力ありがとうございました。加えて、サークルスペースの机上には、両日ともDLsiteさんにご提供いただいた消毒用ウェットティッシュとマスクのセットを配布し、サークルさんには自スペースの消毒をお願いしました。



【入場とワクチン・検査パッケージ等】

 一般参加者のチケットは、来場時の混雑回避のため購入順でも当日の先着順でもなく、チケット毎にランダムに受付時間枠が割り当てられる設定としました。これにより、早くビッグサイトにやって来るメリットはなく、深夜来場者もほとんどいなくなり、りんかい線の「始発ダッシュ」もありませんでした。その反面、お友達同士が一緒に並んで開場を待つようなことができず、コミケならではのリアルコミュニケーションを楽しめなくなったり、ふらっとコミケットに行くことができなくなる等、敷居が高くなってしまったりと、新しい課題が生じたりもしています。

 ワクチン・検査パッケージの技術実証は一般参加者を対象として実施し、東7ホールとG1駐車場に全68レーンを設置、平均20秒で「検温~ワクチン・検査の確認~チケット確認~リストバンド配布」という一連の流れを実施することができました。参加者アンケートでも約9割の方が「思ったよりも短かった」と回答しており、スムーズな運用が行えたと考えています。サークル参加者向けにも同様に74レーンの確認窓口を設置し、接種証明またはPCR検査結果を確認しました。イレギュラー対応は2日間で約300件、様々な代替手段で救済できたケースもあれば、入場をお断りせざるを得なかった場合もありました。現場の運用で得られた様々な知見は、コロナ対策推進室へ報告書として提出しており、政府の『ワクチン・検査パッケージに関する技術実証』最終報告においてもC99の実証内容に言及されています。



 また、「体温測定を3回目でやっと通過できた」というSNSへの書き込みが、当日話題となりました。準備会が参加者向けに使っているのは基本的には非接触型検温器で、誤差が生じることもあるため、初回で37.5度を超えた方は、異なる製品の非接触型検温器で2回目の計測し、それでもなおこの方は37.5度を超えていました。そこで3回目に脇窩体温計での計測を行い、37.5度を超えていなかったので入場を可としたというのが、実際の流れということになります。この中で一番正確な計測を行えるのは、最後の脇窩体温計ですので、対応には問題があったとは考えていません。

 この他、マスクの着用を行わないことをSNS上で広言されていた参加者については、入場時にはマスクをつけて入場されており、入場後にマスクを外して会場を回られていました。準備会よりマスクの着用をお願いしましたが応じていただけず、その後、他の参加者とマスクを付けない状態での会話を始めたので注意を行い、再度の要請にも応じられないとのことでしたので、ご退場いただきました。

【当日】

 12月30日午前10時、「ただいま!」の一言から開会宣言が、東京ビッグサイトに響き渡りました。コミケットの理念には「すべての参加者にとってハレの日であることを願い」という一節がありますが、その願いが天に届いたかのような冬晴れの暖かい一日となりました。1日目は、マンガ・アニメ・ゲーム系及び男性向のサークル配置で、特にソーシャルゲームのスペースが賑わいました。


 2日目は、前日より少し風は強いものの、この日も冬晴れで、創作系、ギャルゲー、デジタル(その他)、VTuber、評論・情報、メカミリ、コスプレ、男性向というジャンル構成で、VTuberジャンルが引き続き大きな盛り上がりとなりました。閉会後には共同代表と参加者での反省会が行われ、今回の総括と質疑応答を行いました。理念にもある通り、コミケットは一般・サークル・スタッフ全ての参加者が「相互協力により運営する」場です。この反省会も2年ぶりとなりましたが、お互いの顔が見え、生の声が聴こえる「リアルの場」の意味を改めて感じることとなりました。

 サークルさんと準備会のやりとりで大きく変わったのは、参加登録カードと見本誌の提出です。感染症対策のため、これまでの当日朝の準備会スタッフの巡回・回収はなくなり、必要事項を記載した専用の袋に見本誌を入れてサークル窓口に提出することで、サークル受付・見本誌の提出という形となりました。その他、サークル向けには、開催規模がいつもと異なる中、サークルさんが新刊を発行しやすい環境を整えるため、同人誌専門店に在庫を直接預けられる「委託受付回収所」を設置することで、搬出の負担軽減を図る取組を行いました。



 コスプレエリアは、東7ホール・東8ホール外・庭園・屋上展示場の4ヶ所に設置しました。前述の通り、感染症対策による更衣室の収容人数の都合上、一般・サークルのコスプレも抽選制で当選者数を限定したこともあり、ゆったりとコスプレを楽しんでもらえたようです。特にレセプションホールの更衣室は、備え付けの机・椅子をそのまま利用できたことがコスプレイヤーの皆さんには大好評でした(次回は東8ホールの更衣室にも設置予定です)。撮影も、コスプレエリア内に限り、会話は控えマスクを着用しない時間を最小限とした上で、マスクを外しての撮影を可能としました。一方で、コロナ禍前のコミケットに比べて、1日あたり1/3~1/5という更衣室の収容人数は、多くのコスプレイヤーさんに抽選洩れをお願いしたということでもあり、こちらについても大変申し訳なく思っています。この他、東7ホールのコスプレエリアには、出展企業とのコラボによるコスプレ背景の設置等、新たな撮影スポットを用意したりもしましたが、次回以降もこの試みは続けて行く予定です。

 西・南展示棟4階に配置した企業ブースでは、感染症対策を目的とした臨時の措置で、各ブースの基本のサイズを拡張したこともあり、スポーツカーの展示等の従来よりも大仕掛けなものもありました。スポーツドリンクの無料配布や持ち帰りのメロンパンラスクの販売等、コンテンツ系に限らない出展の広がりは続いており、従来の企業ブースの枠組みにとらわれない出展企業の試みが今後も続いてほしいと思っています。とはいえ、やはりコンテンツ系企業の人気は高く、参加者数が制限された中でも一部ブースでは、トラックヤードまで待機列が伸びたりもしていました。

 また、冬の開催ということもあり、会場周辺と全国の献血ルームで「コミックマーケット99献血応援イベント」を実施しました。ご協力いただいたカバー株式会社、株式会社ブシロード、株式会社ピラミッドの各社さんには感謝申し上げます。

 このように1日5万5千人という参加者数は、コロナ禍においては少なくない数字ではあるのですが、東京ビッグサイト全ホールを使うコミケットとしては、かなり余裕がある数字であったのも否定できない事実です。次回C100に向けては、1日8~9万人の参加者を受け入れられるよう、調整や検討を現在も続けています。
 感染症対策に対する全ての参加者のご協力により、新C99を契機としたイベント内の感染は発生することなく終了し、コロナ禍においてもコミックマーケットがしっかり感染症対策を実施した上で開催できることを、コミックマーケット内外に示すことができ、C100の開催に繋げることができました。本当にありがとうございました。なお、一部の準備会スタッフが会場外かつ会期外の行動により新型コロナウイルス感染症に感染したことは、参加者の皆さんに当日及び開催前後の懇親会、会食の自粛等をお願いしたにも関わらず、この要請に反した行動から発生してしまったと考えられます。重ねてお詫びいたします。

【最後に】

 前回C97の最終日のTweetにおいて、「理念の通り『継続』を目指し、自由な表現による『ハレ』の日を盛り上げつつ、しなやかに、したたかに生き残っていきます」とつぶやいたわけですが、それからおよそ2年……。この言葉の通り、コロナ禍というかつて無い困難を乗り越え、無事新C99を開催できたことは、言葉に尽くせぬ喜びでした。とはいえ、参加者の皆さんと再び有明の地でお会いすることができた一方で、感染症対策の収容人数制限による抽選で参加いただけなかった方、様々なご事情で参加できなかった方が多数いらっしゃることも認識しており、大変申し訳なく思っています。

 次回は記念すべきC100となり、新C99の様々な状況を踏まえて、より多くの皆さんに参加できるよう準備を進めている最中です。そして、C100は確かに一つの大きな節目ではありますが通過点でもあります。遠くない将来にコミケットがすべての参加者を受け入れ、気軽に参加できる「マーケット」としての姿を少しずつでも取り戻していけるよう、関係各方面との調整を進めていきます。コロナ禍で、様々なコミュニケーション手段が変化していく中、コミケットというリアルな「場」の重要性、大切さを、2年ぶりの開催で皆さんと改めて分かち合った準備会は、この「場」の継続という理念を下ろすことなく、皆さんと一緒に進んで行きたいと思います。引き続きよろしくお願いします。

(2022年6月15日本文公開)


[Since: Feb.14 2022] [Last Updated: Jun. 15 2022]