「ハナジマイズム」に学ぶ 新たな時代の地域になくてはならない店をつくる方法
(有)花路 代表取締役 花島 路和 氏(JMG会長/2018年PR現代「新春フォーラム」より)
JMGジュエリー専門店ハナジマ 2018.07.01会社概要
会社名 有限会社 花路
店名 ジュエリーハナジマ
社員数 5名
売場面積 11坪
所在地 東京都江戸川区西葛西6-18-8(地下鉄東西線「西葛西」駅・南口徒歩2分)
営業時間 10:30AM〜7:30PM 月曜・火曜定休
ホームページ http://www.8740.jp
地元だけでなく、銀座や日本橋などの百貨店やジュエリーショップを利用するお客さまも多い「ジュエリーハナジマ」は、地下鉄東西線「西葛西」駅・南口から徒歩2分の好立地に位置する。
朝の開店時から客足が途絶えることなく、店内はいつもお客さまで賑わっている宝石店、それが「ジュエリーハナジマ」です。
開店して今年で15年目の「ジュエリーハナジマ」は、江戸川区西葛西という立地で、なぜこんなにも顧客に愛される店づくりができるのか。 Webサイトからの来店予約が売り上げの45%を占め、顧客のリピート率が実に90%と驚異的な数字を出す同店の強みとは何なのか、今回の「新春フォーラムジュエリー分科会」にて、そのポリシーと経営理念について、お話をしていただきました。(文・嵯峨紀子)
(有)花路 代表取締役 花島 路和 氏(JMG会長/2018年PR現代「新春フォーラム」より)
ショップコンセプトは 「お客さま参加型エンターテインメントジュエリーショップ」
まずはじめに国内の宝石店の現状についての問題点として、
・お客さまに対して、ドキドキをつくれていないのではないか。
・リフォームビジネスの問題点として、まだまだ預かり方が雑なお店が多いのではないか。
・今後は独自のオリジナルジュエリーが作れないと店舗の運営は難しくなるのではないか。
などの分析を述べられ、それぞれ自店での取り組みと対策を詳述されました。
「お客さまを楽しませる」とはどういう接客なのか、最大の特徴について花島氏は、このように語ります。
「お越しいただいたお客さまにはまず最初に、最高峰の5,250万円のラザールダイヤモンドをご覧いただき、3,200万円のダイヤモンドのリングをつけて差し上げます。それからお探しの商品をゆっくり選んでいただきます。これらの品は、誰にでも買える商品というわけではありませんが、最初に良いものを見ると、不思議と自分が本当に欲しいものがわかるようになるのです」
さらに花島氏は、ブランド店などでよくある光景として、「入口を閉ざし、SPを立たせ、お客さまの値ぶみをするようなところがありますが、あまり良いことではない」と言います。
「どのお客さまに対しても、店で一番良いものを見てもらうことこそがおもてなしではないでしょうか」
ほかにもお天気の良い日に表へ出て、陽の光の下でダイヤモンドを見ていただく、暗室でメレダイヤのたくさん入った箱を見ていただく、などダイヤモンドの品質の高さを実感してもらうためにさまざまなアプローチで一緒に楽しむのだそうです。しかも全力で。
そのお客さまだけに似合うジュエリーを作りたい
リフォームビジネスについては、ジュエリーハナジマではオーダー&リフォームでの売り上げが約75%と高い数字を維持しています。売り方の特徴を伺うと、
「うちではオーダー、リフォーム、既製品、買い取り、買い替えを組み合わせることができる、フルスペック型販売システムに取り組んでいます。要するに“なんでも屋”を目指しているのです」
宝石を“売る”感覚ではなく、一人一人のお客さまに、その人に一番似合う、その人の普段の生活の中で美しく見えるものを、ご自身で選んだ石で作る、その人だけのジュエリーを作りたい、と話します。
そして固定客づくりのポイントとして、
「他社より、絶対美しい輝き! その輝きの違いを知っていただき、他店で買い物がしたくならないようにする工夫をしています。デザイン料やオーダー料無料でオリジナルデザインのジュエリーが作れる楽しさ、年一回のサイズ直し・新品仕上げサービス、宝石セミナーご招待、作品写真のデータプレゼントなどなど。さらにお買い上げ金額の5%の〈お楽しみ券〉のプレゼントをしていますが、これは値引きよりも再来店のきっかけになります」
褒められて、役に立って、喜んでもらえる
経営理念も経営方針もすべては「お客さまの喜びのため」。接客するということは常にロールプレイングしているようなものなのだから、一番いい先生はお客さまなのだと言います。
「経営についてはすべて兄(「株式会社ハナジマ」代表の花島素人氏)に教わったことばかりですが、お客さまが喜んでくだされば、利益は後からついてくること、問題があればその問題以上の答えを引き出すこと、すべては社長の責任であることなど、宝飾店を営むに当たって一番基本的で、一番大切なこと。それらすべてを兄に教わりました」
社員育成、チームワークづくりのための交流会
人材育成についてお伺いしたところ、「ミニジマ会」という社内での会合を月1回は開いているとのこと。とある社員の提案で始めたという会合で、毎回飲んで食べて、不満も要望も、お互いにすべて洗いざらいはき出してしまう会だそうです。
「ミニジマ会を始めてから、社内の風通しが非常に良くなりました。社内での決まりごとや役割分担、接客上のことなど、なんでも皆で決める方式です。一人で考えて一人で決めるより、他人の知識を取り入れて決めるほうが、間違いは少なくなりますよね」
ちなみにハナジマ会というのもあり、こちらはお客さまをおもてなしする会です。
ウェブサイトは第二の店舗
ウェブサイトを見て来店するお客さまが、売り上げの45%を占めるWeb戦略については、eコマースでのリピート買いを目指していると言い、ご自身の買い物について以下のような体験を紹介していただきました。
「先日『グローバルスタイル』というアパレルブランドで2着4万8,000円のオーダースーツを注文したのですが、価格に対する満足度の高さに驚きました。ここはネットで予約をして採寸に訪れる人が多く、ゆくゆくはAIでの受注を考えているそうです。現在も来店客には徹底した接客で、ゆったりと買い物が楽しめますが、AIを取り入れることで、さらに実店舗での接客を充実させたいようです。これは非常に参考になりました。
ウェブサイトは新規顧客の獲得と企業理念・企業イメージの発信、信用作りのため有効かつ重要な手段。第二の店舗として、来店しなくてもオーダーや買い物ができるリアルとバーチャルの融合を目指しています」
講演後の質疑応答で、HPからの新規客が東京からと地方からのどちらが多いのかについて問われると、東京のお客さまが4割、地方からが6割としたうえで、
「地方からはるばるお越しになるのに、銀座などではなく、都心から外れた場所にある店を選ばれるということは、お客さまが地元で満足できないからお越しになるのです。東京のお客さまでも、デパートでお作りになって不満を持たれた方が、初めからハナジマさんへ来ればよかったとおっしゃってご来店になる。地方の宝飾店では、もっと地元のお客さまを掘り起こすことができるはずだと思っています」
とのお話がありました。
当初、銀座の一等地への開店準備を進めていたという花島氏。お父上の看病のため、銀座での準備資金を投げ捨てて、現在の地にお店を開くことにしたそうです。しかしコンセプトは変えませんでした。現在行っているお客さまへのサービスはすべて、銀座で開業していても同じことをしていたとのことです。
結果的に地域のお客さまはもとより、ネットで探し当てて来店なさるお客さまや、口コミでのお客さまなど、遠方からも西葛西を目指して来店するお客さまが後を絶たない状況であるそうです。
宝石を愛し、家族を大切にすることと、お客さまに喜んでもらうことは花島氏にとって同一平面上にあるのだということ。それこそが成功の鍵であり、お客さまの喜びなくしては宝石店は成立しないのだと教えていただいたお話でした。
「ハナジマイズム」に学ぶ新たな時代の地域になくてはならない店
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「ジュエリーハナジマ」が会長を務めるジュエリー専門店の情報協業グループ「JMG(ジュエラーズ・マインドグループ)」については、どうぞこちらをご覧ください。
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