以下はビリヤードにおいて発生する
物理現象についての説明。
ビリヤードにおいてキューという
棒で球体を撞く際にヒネリ=イン
グリッシュを入れると、手玉は
横に軌道がずれて進む。それを
業界用語でトビ(跳び)と呼んで
いる。
これは物理的に絶対に発生する。
この横トビを少なくする方法は
キュー先の構造を工夫する事で
トビを極端に少なくする事がで
きる。
だが、通常のソリッドシャフト=
ノーマルスタンダードシャフト
ではほぼトビが出る。
キュー先を軽くして、手玉を撞い
た時に早く横にキュー先が逃げる
構造にしたらトビは減少する。
このことはキャロム界では大昔
から発見されていて、キュー先
の保護の先角=フェルールを短く
する事でトビを減少させていた。
ポケットビリヤードの世界でも
トッププロなどには、短く軽い
先角に改造することでトビを
小さくさせる事が1980年代には
既に実行されていた。
そのようなトビという物理現象
は物理現象であるので必ず発生
する。
では、対処方法として、通常の
ノーマルソリッドシャフトで撞く
場合にはどうするか。
トビが少ないシャフトはキュー
先が向いた方向に手玉が進む。
トビが多いシャフトはキュー先
の方向とは逆にトビが出る。
ならば、キュー先を向ける方向
をずらすのだ。
この場合、支点となるレストは
真ん中でのポケットインの厚み
と同じど真ん中の位置に取り、
キュー先だけを撞点側に向けて
ずらす。
これがいわゆる「芯ずらし」と
いう技法だ。
必ず発生する物理現象に対応した
合理的な対処方法だ。
この芯ずらしの場合、トビが少ない
ハイテクシャフトなどはキュー先
の方向に手玉が進むので、この
芯ずらしは使えないし、使う意味
がない。ハイテク系のトビが少な
いシャフトではレストを平行移動
させて支点とキュー先と撞点が
的玉に向かって一直線になるよう
に位置取りして構えて撞く。
これらは物理現象に沿った撞き方
であるので、トビが大きいシャフト
での芯ずらしも、トビが少ないシャ
フトでの真っすぐ狙いも、どちら
も当たり前の物理法則に沿った撞き
方だ。
これはハイテクシャフトが登場する
以前から撞球界では理論として常識
だった。物理現象なのだから、個人
の感想や思念などは関係ない。
物を離せば落ちるように、それは
物理的な現象として存在するから
だ。
「俺は芯ずらしなどはやらない」
とか「そんな撞き方は変だ」とか
の私的思念は一切通用しない。
特定の条件下での物理現象につい
ての説明とその物理的な対処方法
を説明しているからだ。
芯ずらしを否定する人間は、トビ
の多いシャフトで私的自己思念に
沿って、キュー先を真っすぐに
向けてマックスヒネリをして的玉
をシュートインさせてみてくれ、と
言いたい。物理的に不可能だ。
特に逆ヒネリでやってみせてほしい。
絶対にできないから。
物理現象の前には、物理を無視した
個人的私的思念などは無意味なのだ。
ただ、世の中、物事が解かってい
ない人は結構いたりする。
ハイテクシャフトだろうがノーマル
シャフトだろうが(厳密にはトビの
少ないシャフトとトビの多いシャフ
トという分類)、芯ずらしなどは
せずにレストの平行移動で構える
のが正しい、などと説明する人が
プロにもいたりするのだから呆れる
というか困ったものだ。
物理法則や現実に発生する物理現象
など無視。
そして、そうした人はエフレン・
レイズ(正式発音はレイエス)の
撞き方を指して「ほとんどヒネリ
は使っていないと思う」などと
不見識な世迷言を公言したりする。
解っていないどころか、判っても
いない。現実に目の前で起きている
現象を現実現象として見る事ができ
ない。
これは駄目だ。なにもかもが。
エフレンの撞き方は、芯ずらしだけ
でなく、「スイープショット」と
いう特殊な撞き方をよく使う。
それは、最初厚みを取る時のみは
真ん中にキュー先を向けてストロー
クしているが、撞く瞬間に撞点を
変えて払うように撞くのだ。
それは時に上であったり上横で
あったりする。
また、最初から芯ずらし撞点に合わ
せてストロークしてから撞く場合
もエフレンは多い。特に下撞きの
場合は最初から合わせる。マックス
下横ヒネリなどの時は最初からの
合わせが多いが、下横でも掃くよう
にスイープショットする時もある。
多分、その前述の物事に昏い不明
な「指導者」「コーチ」であるプロ
は、エフレンが真ん中合わせで予備
ストロークをしている点のみを見て
「彼はヒネリを使っていない」と
感じたのだろう。感覚主体で。
だが、その後の手玉の動きを見れ
ばエフレンはイングリッシュを多用
しているのは明白だし、第一、撞く
瞬間に撞点をヒネリに持って行って
いるのは数えきれないこれまでの
エフレン・レイズの撞球プレーの
動画等から明白だ。
事実、現実、目の前の事象の真の
姿をきちんと明確に捉えられない。
これはかなり恐ろしい事だ。
脳内妄想の自己世界が認識の全て
となっているからだ。
ビリヤードの世界は、他のスポーツ
よりもなおさら物理現象が判りやす
く発生する種目だ。
ゴルフなども同様の系統にあるスポ
ーツ種目だろう。
オートバイの競技スポーツでも同。
絶対的に発生する物理的な現象に
対してどのように物理的に対応す
べく人間が知力と技術で克服する
かが問われるのがオートバイなど
の乗り方だ。ゴルフやビリヤード
の中心幹と非常に共通項が存在する。
物理現象の前には「気合」だとか
「勢い」だとかの思い込みは一切
通用しない。気合でカーブは投球
できないし、気合で剛速球は投げ
られないし、勢いでボレーシュー
トは決められない。
すべてスポーツは、物理現象をどう
人間の知力と身体能力で最適処理
できるかというのが内実だ。
体力自慢の脳筋処理はお話になら
ないのである。
撞球だけでなく、スポーツ上達の
コツ。
それは、現象をきちんと正確に識別
して読み取る事だ。
ビリヤードなどは特にそう。
球体は衝突したら反発するし、台上
では手玉の中心を撞けば、ラシャの
抵抗、湿度による影響はあるが、
ほぼ手玉と的玉の分離角度は90度に
なる。これはもう揺るがない物理的
な現象として存在する。
手玉の上を撞けば的玉との分離
角度は狭まるし、下を撞けば広が
る。
そうした現象は物理的現象であり、
「俺は上を撞いて手玉を引きたいから
上を撞く」などという世迷言が通用
しない「法則の世界」が撞球なのだ。
そうした物理的な現象が多く発生
するのが球体同士を衝突させる
ビリヤードというスポーツなので、
殊更に「現実に起きる現象」は
正確にその姿を見抜かないとなら
ない。
ノーマルシャフト等のトビが大きい
シャフトでもトビが少ない物でも、
また別な物理的現象が発生する。
それはヒネリを使うと的玉にも
回転がかかる、という現象だ。
そのため手玉と的玉の厚みは合っ
ていても外れる事が起きる。
これらを人間が予め予測して見
越して、補正をしてシュートを
決めるのがポケットインである。
横ヒネリにしても、どの片側半球
のどの部分でも同じトビや的玉
回転が発生するのではない。
斜めヒネリの時が一番的玉回転
がかかる。
トビ自体は真横撞きが一番大きい。
「玉を多く知る」事もビリヤード
上達の一つの方法だ。
ただ、その物理現象を理解したと
して、その対処方法を実現できる
かどうかは「実力」の問題になる。
だが、「知らない」事は対処方法
についても行き当たりばったりの
狭い経験則からしか解決法が得ら
れない。
スポーツは知力(運動に関する
人間の知力)を駆使しないと上達
は望めない。
地球上の生物では、人間以外は
スポーツをやらない。
まずは、きちんと現実を見る事だ。
そして、正確に判断する事。