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小津安二郎や大林宣彦の世界へ 尾道で映画ロケ地巡り

ロケ地案内図を広げたら、突然……

渡船で尾道側に戻りました。次はどこに行こうかと、大林宣彦監督の尾道三部作などのロケ地案内図を広げました。

大林宣彦監督作品のロケ地案内図。こういう案内図が作られるのは尾道ならではです
大林宣彦監督作品のロケ地案内図。こういう案内図が作られるのは尾道ならではです

すると、突然、男性の声が。「映画のロケ地に行くんかね?」。男性は帽子にサングラス、マスク姿。鼻しか見えませんが、70歳くらいでしょうか。「どれどれ」とロケ地案内図をのぞき込むと次々に説明をし始めたのです。尾道初心者の私は困惑しながらも親切に報いるべく「なるほど」「そうなんですね」と相づちを打ち続けました。

男性は「変わったり、なくなってしまったりしたところが多いけえ」。私は「なにしろ大林監督の『転校生』は40年前ですたい」と応じました。すると、男性は「いやいや、50年前じゃ」と断言。えっ、「転校生」の公開は1982年で、ちょうど40年前ですけど……。思い込みの強い男性と、尾道のロケ地事情にまるで弱い私。こんな劇的な出会いがこれまであったでしょうか。私は男性に丁寧にお礼を言って、その場を離れました。

おのみち映画資料館 昼食には中華そば

男性の出現で少しシナリオが狂いましたが、「尾道 ロケ地探訪の旅」はここから佳境にさしかかります。

おのみち映画資料館を訪ねました。尾道ゆかりの映画の資料がたくさん展示されていました。

入り口に映写機が置かれている、おのみち映画資料館。入館料は一般が税込み520円です
入り口に映写機が置かれている、おのみち映画資料館。入館料は一般が税込み520円です

昼時だったので、中華そば店ののれんをくぐりました。尾道といえば、尾道ラーメンが有名ですよね。もともと中華そばを提供する店があり、その後、尾道ラーメンが登場して今に至っています。古い店ほど「中華そば」の名前で提供する傾向があるそうです。

中華そば。麺の上にはチャーシュー、メンマ、ネギが。税込み650円でした
中華そば。麺の上にはチャーシュー、メンマ、ネギが。税込み650円でした

中華そばの麺は柔らかく、スープも優しい味。麺をすすりながら、何かと心配な日中、中台、米中の緊張関係もこの麺のようにほぐれてほしいと祈りました。

坂道や石段を歩いて古寺めぐり

さあ、お腹も膨れたので、古寺めぐりに出発しましょう。寺の中にロケ地があるのです。寺は観光地図に示されているだけで25カ所も。山の斜面にあるので、寺に行くには坂道や石段を上らなければなりません。古寺めぐりの石柱を頼りに歩き始めました。

古寺めぐりの石柱。寺の場所が矢印で示されています
古寺めぐりの石柱。寺の場所が矢印で示されています

尾道で撮影された映画には狭い路地や、坂道、石段がよく出てきます。それを追体験することになりました。まず、かなり傾斜のある石段が。

さっそく石段を上りました
さっそく石段を上りました

と、思ったら、今度は下りの石段が。

石段を下りる途中には、横方向に石畳の路地がありました
石段を下りる途中には、横方向に石畳の路地がありました

次は、下ったらすぐに上る石段です。

上ったり、下ったりの石段
上ったり、下ったりの石段

寺の境内にはアジサイが咲いていました。

寺の境内に咲いたアジサイ。初夏を感じます
寺の境内に咲いたアジサイ。初夏を感じます

山上からの絶景を満喫 千光寺山ロープウェイ

千光寺山ロープウェイの駅があったので、休憩も兼ねて山頂を目ざすことにしました。

千光寺山ロープウェイ。料金は大人が往復で税込み700円です
千光寺山ロープウェイ。料金は大人が往復で税込み700円です

山頂駅に着くと、展望台がありました。らせん状の坂を上り下りするユニークな構造です。

ダイナミックな形状の展望台。右上から後方に伸びているのが展望スペースです
ダイナミックな形状の展望台。右上から後方に伸びているのが展望スペースです

東方には、尾道と向島とを結ぶ新尾道大橋が見えました。

新尾道大橋が見えました。いい眺めです
新尾道大橋が見えました。いい眺めです

そして、西方には遠くに瀬戸内海の島々がうっすらと見えます。

尾道の市街地、向島の後方には島影が
尾道の市街地、向島の後方には島影が

「転校生」の撮影地 御袖天満宮

寺めぐりを再開しました。そして、御袖(みそで)天満宮に到着。大林宣彦監督の「転校生」が撮影された場所です。幼なじみの中学生の男女の心が入れ替わってしまい、戸惑いながら学校や家庭で過ごしていくうちに、二人の間に友情とも初恋ともつかぬ温かい感情が生まれる物語。天満宮のこの石段を二人がもつれあうように転げ落ちた結果、心が入れ替わったのでした。

「転校生」で重要なシーンとなった石段。ここを二人は転げ落ちたのです
「転校生」で重要なシーンとなった石段。ここを二人は転げ落ちたのです

男の体になった女子を演じた尾美としのりと、女の体になった男子役の小林聡美。二人の熱演を懐かしく思い出す方も少なくないのではないでしょうか。心入れ替わり映画の金字塔ですよね。

再び歩き始めると、石畳の坂に猫がいました。

昼下がりの石畳の坂。猫がのんびり寝そべっていました
昼下がりの石畳の坂。猫がのんびり寝そべっていました

「東京物語」ゆかりの場所 浄土寺

浄土寺に到着しました。ここは小津安二郎監督の「東京物語」が撮影された場所なのです。映画の終盤では、老夫婦の夫を演じる笠智衆(りゅう・ちしゅう)と、戦死した次男の妻を演じる原節子とが石灯籠(いしどうろう)の前で言葉を交わす場面があります。

「東京物語」が撮影された浄土寺。後方に見えるのは多宝塔です
「東京物語」が撮影された浄土寺。後方に見えるのは多宝塔です

私は笠智衆化していく自分に気づきました。頭髪はもともとそっくりだったのですが、動作と話し方が緩慢になっていったのです。抑揚のない声で「やっぱりあんたはええ人じゃよ。正直で」。原節子の幻影に向かって映画の中のせりふをゆっくりと語りかけたのでした。

宿で地穴子丼、じゃこ入りサラダに舌鼓

日も傾いてきました。ホテルに戻り、併設の飲食店で尾道名物の地穴子丼を食べました。穴子独特のカリッとした食感がたまりません。

地穴子丼。税込み1780円でした
地穴子丼。税込み1780円でした

地元産のじゃこと大根のサラダも。どちらも疲れた体にしみいるおいしさでした。

じゃこと大根のサラダ。税込み640円でした
じゃこと大根のサラダ。税込み640円でした

尾道の映画撮影地をピックアップし、時にはクローズアップして紹介した今回の「尾道 ロケ地探訪の旅」。いかがでしたか。アップダウンの激しい坂道や石段に音を上げて、道中はあっぷあっぷ。でも、おかげさまで無事にクランクアップしました。

尾道観光協会
http://www.ononavi.com/jp/

後藤鉱泉所
https://www.facebook.com/maru5.gotokosensho/

千光寺山ロープウェイ
https://mt-senkoji-rw.jp/

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

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