【徹底検証】多機能ディレイの頂上決戦!「BOSS DD-500」「strymon TIMELINE」「Eventide TimeFactor」を比較
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「Eventide TimeFactor」
メーカー希望小売価格: (税込) ¥75,900 (税抜 ¥69,000)
販売価格: (税込) ¥64,570 (税抜 ¥58,700)
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デジタル・アウトボードの名機として名高いH3000など、プロユースのスタジオ・イクイップメントを手掛けてきたEventideが、36年間という長い歴史の中で培われた技術を結集させたのがTimeFactorです。
2007年に発売されたモデルですが、今なおペダル・ボードに組み込んでいるプロ・ギタリストは多く、まさに多機能ディレイ・ペダルの最高峰として君臨しています。
というわけで、改めてそのポテンシャルを掘り下げていきたいと思います!
外観
幅は190mmと3モデルの中でもっとも大きいですが、奥行きは122mm、高さは54mmと僅差。
重量はDD-500と同じ1.0kgですね。
ノブは上段左からMIX/Delay MIX/Delay Time A/Delay Time B/Feed Back A/Feed Back B。
下段左からEncorder/Xnob/Depth/Speed/Filterという構成です。
筐体中央のディスプレイにて、選択中のモードやパラメーターが表示されるようになっています。
高級感溢れる外観も魅力です。
機能性
特徴は何と言っても2系統の独立したディレイで、本体ノブでA/Bふたつのディレイ(タイム/フィードバック/レベル)を設定することができます。
さらに異なるセッティングにしたAとBをブレンドでき、各ディレイの音量バランスも調整することができるため、非常に個性的なディレイ音を奏でることができるのです。
Encorderスイッチではディレイ・モードの切り替え、TAPモードのオン/オフ、プログラムのセーブを行うのですが、押しながら右のスイッチを押すことで、MIDI機器の設定やバイパス機能の選択などが行えるシステム・モードに入ります。
このバイパス機能は、リレーを用いたトゥルーバイパス/DSPバイパス/リレー+DSPから選択することが可能になっています。
一番右のフット・スイッチを長押しすると、プレイ・モード/バンク・モードが切り替わります。
モードごとに各スイッチに割り当てられる効果が変わり、プレイ・モード時は左がオン/オフ、中央がリピート、右がタップ・テンポの設定になります。
バンク・モード時は、左がバンク・プリセット1のオン/オフ、中央がバンク・プリセット2のオン/オフ、左がバンク・アップになります。
最長12秒のモノラル・ルーパー時には、左がダビング、中央が再生、右が停止という割り当てです。
入出力端子は2イン/2アウトに加え、USB端子、エクスプレッション、外部スイッチ用の入力、MIDIイン/アウトを装備。
アウトプットの左側とインプットの右側にミニ・スイッチが搭載されていますが、これはアウトプット/インプットのインピーダンスで、アンプに接続する場合やライン接続するときなど、接続状況に応じてインピーダンスを調節することができます。
USBはパソコンからのプリセット操作は行えませんが保存は可能です。
パソコンとの互換性はDD-500やTIMELINEのほうが一枚上手と言えるでしょう。
サウンド
ディレイ・モードは全9種類で、Digital Delay/Vintage Delay/Tape Echo/Mod Delay/Ducked Delay/Band Delay/Filter Pong/Multi Tap Delay/Reverse。
どのディレイ・モードにも共通して言えることは、非常にクリアではっきりとしたサウンドです。
これは原音が忠実に出力されているためだと思いますが、かと言って温かい音が出せないかというとそうではなく、ディレイA/Bのブレンドや調整次第でマイルドなディレイ・サウンドも作り込むことができます。
個人的に気に入ったサウンドはBand Delayですね。
モジュレーション系のフィルターを備えたディレイで、ブリッジ・ミュートを絡めたパワーコード・リフに似合うスペーシーなサウンドです。
デモ音源解説
(サウンドクラウド音源入ります)
●Band Delay:フィルターを備えたディレイです。フィルターの共振度、カット・オフ周波数、フリケンシー・モジュレーションのスピードなども調整できます。
●Digital Delay:ディレイAとB、それぞれに独立したディレイ・タイムとフィードバックを設定できます。非常にクリアなディレイ・サウンドです。
●Mod Delay:コーラス・エフェクトなど、モジュレーション効果を用いたディレイ。爽やかで広がりのある揺れです。
●Tape Echo:テープ・エコー独特のヒス・ノイズだけでなく、ワウ・フラッターをもシミュレートしたディレイ。心地良い揺らぎです。
●Vintage Delay:アナログ・ディレイとデジタル・ディレイ をシミュレートしたサウンドです。ビット・レートを落とした、ローファイで温かみのある音を作りました。最後はペダルをホールドしています。
頂上決戦の結果はいかに!?
操作性で言うとDD-500、TIMELINEがやや優勢。
特にDD-500は大きなディスプレイを搭載しているため、緻密なエディット時にパラメーターがわかりやすい。
また、ホールドやワープなどを割り当てたりと、CTLスイッチの機能幅の広さには目を見張るものがあります。
サウンド面では、TIMELINEはドライ&エフェクトの音の分離に優れており、クリアでありながら自然な太さのあるサウンド。
TimeFactorは上でも書いた通り、クリアかつはっきりとしたサウンドです。
32ビットという高音質を実現しているDD-500も負けておらず、音質はもちろんですが、何より他エフェクターでは出し得ない唯一無二のサウンドであることが、今回の比較で改めてわかりました。
3モデルとも、得意分野やサウンドが確立されているため甲乙はつけ難いですが、高級ディレイ・ペダルのTIMELINEとTimeFactorに比べて、価格を抑えながらも素晴らしい機能とサウンドを実現したDD-500は紛れもなく名機と呼べるでしょう。
文/溝口元海