pixivは2021年5月31日付けでプライバシーポリシーを改定しました。
アイツの姿を見た時、不思議に殺意が湧かなかった。 アーサー王を最も象徴するあの聖剣を父上以外が手にしていると言うのに。
あの黄金の輝き、世界を照らさんとばかりの希望の光。 同じだった、生前に見たあの輝きと。
父上――――――
その場にいないはずの父上の幻影が自分の目に映った。 そこにいるのは父上じゃない。
それなのに、ああどうしてだ。
どうして、あの女と父上が重なって見えるんだろう。
けれど、どうか
どうか
いかないで、
きえないで
おねがいだ、オレをおいていかないで。
聞きたいことがたくさんあるんだ、オレの知らない父上を 王じゃない父上の話をたくさん聞きたいんだ。
だから――――――
目を開けてくれ
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「安心なさいアキレウス、セイバーのマスターの見立て通り彼女に命の危険はありません。」
「ホントか、先生!」
「貴方が気を失っている彼女を担いで飛び込んで来た時は私もヒヤリとしましたが、ええ大丈夫ですよ。」
城塞に帰還したアキレウスは、すぐに師であるケイローンのもとに駆け込み 気絶している明日香を休ませる部屋を貸して欲しいと嘆願した。 その際、赤のセイバーとそのマスターもこっちに向かっていると言われた時は、若干騒ぎになったが
彼女に無理をさせてしまったのは自分たちのせいでもあると、フィオレは城塞の一室を提供し すぐさま魔術師やケイローンたちで彼女の容体を確認する事になった。
結果は、命に別状は無く眠っているだけだと。
「だが、あの嬢ちゃん暫く魔術は使えそうもねぇぞ。」
「魔術が使えないって…魔力の枯渇か?俺への供給は問題ねぇぞ。」
赤のセイバーのマスター、獅子劫界離は何とも言えない顔でそう告げた。 「こんな状態の初めて見た」と驚いたらしい。
「確かにアキレウスへの魔力供給の問題はありません、彼女の魔力は無尽蔵ですからね。」
ならば何故だと、アキレウスは自分の胸に手を当てる。 現界が保てないなんて事は以ての外、ましてや怠いなどの症状も自分には感じない。
「彼女自身の魔術回路がオーバーヒート寸前です、これが収まらないと魔術を行使するのは危険でしょうね。」
「例えるならエンジンが故障している車に無理矢理ガソリン詰んで走らせるって事か?」
「おいカウレス、俺のマスターがぶっ壊れた車って言いたいのか?あ?」
「例えだって言ってるだろ!?つまり今の明日香に魔術を使わせるのはダメで休息期間が必須って事だよな!?」
例えは間違っていない、莫大な負荷がかかっているパソコンに更なる処理をさせる事も同じだ。 カウレスの例えは決して間違っていない、が
アキレウスからしたらもう少し可愛いらしい例えで言えとの意味だろう。
「はい、カウレスの言う通り暫く休ませてあげれば時期に回復するでしょう。」
「了解だ。俺もマスターには休ませるつもりでいたからな…んで、あのチビ娘はどこ行った。」
「あ?ウチのセイバーの事か?アイツなら今嬢ちゃんの所にいるぞ、目が覚めるまで見てるって聞かなくてよ。」
アキレウスのモードレッドへの警戒心は未だに消えていない。 その言葉に眉間に皺を寄せたのを感じたのか『念のためジークも一緒です。』とケイローンが制する
「大丈夫ですよ、モードレッドは彼女に危害は加えない。私がそう断言しますよ?」
「なんでお前そんな事言い切れんだよ、アイツは…」
「それは彼女の様子を見に行けば分かりますよ、部屋に行ってあげてください。後でお茶でも持っていきますから」
「俺も言っておくぜ、あんなに縋ってるアイツ見んのは初めてだ。」
「……そうかよ。」
ジャンヌも諭すようにして、アキレウスにそう進言する。 マスターである獅子劫からも同じように言われ『何かしてたらぶっ殺すからな』とは流石に言えず。 言ったら速攻で師からパンチが飛んで来そうだとも思った。
長い廊下を歩く中、ふと思う
普通の聖杯戦争でマスターが魔術を使えない状態に陥っていたら危機的状況だが 幸い今自分たちは、黒の陣営と同盟を組みそのあたりのサポートも可能になっている
今はまだ休める、だが敵陣に乗り込んだ時はそうは言ってられない。 ヘラクレスが待ち受けている、マスターの負担はこの何倍になるかもしれないのだ。 限界を超えてしまえば、霊基も無事じゃ済まない。
俺の現界おろか彼女が消滅してしまう事だって―――――――
「いや、今はそんな事考えてる場合じゃねぇ…。」
余計なことは考えるな、もしそれで迷いが生じれば槍が鈍る。 それこそが命取りに繋がるかもしれない。
「祭り、行くって約束したもんな。」
必ず、この戦いを乗り越えて街の祭りに行くと決めたのだから。
「その後に交際に発展して結婚、マスターの国に住まいを構えて可愛い子供達と過ごすハッピーライフが待っている。」
シリアスを返せ? 知るかそんなもの! こちとらもう結婚式で先生が感動のあまり泣いてる所までは確定なんだよ!
いやあ、マスターの花嫁姿は美しいんだろうな。 俺たちの時代と違って華やかだろうし、ぐへへ…
予定が未定すぎる妄想が膨らみアキレウスの機嫌は打って変わり高まっていく。 生前は妻が居たと言ってもすぐに戦争へと加わる事になり 結婚生活含め育児生活もろくに満喫できなかった反動が来ている、そういう事にして欲しい。
部屋の前に着くと中から何か楽しそうな声が聞こえる。 ジークとそれにあのじゃじゃ馬娘の声…?それと、
「マスターッ、何もう起き上がってんだ!!?」
さっきまで気絶していたマスター(未来の妻)の声までするではないか。 思わず勢いよくドアを開け部屋に乗り込む。
そこにはベッドから起き上がり楽しそうにしているマスターが笑っていた。
「あっ、アキレウス。おはよう?」
じゃなくて
「駄目だろっ、しっかり寝て休んでおかないと!お前達も何起き上がらせて普通に話してんだ!」
彼には珍しくお説教モードに突入している。 巻き添えで怒られる形になったジークとモードレッドは少し不服そうだ。
「だってよぉ目が覚めちまったから折角だし話していた方が安らぐだろうし…?」
「むしろ明日香の方からあの後どうなったとか、隣にモードレッドがいたから説明を求めてきたぞ。」
「ごめん、アキレウス。だから2人は悪くないの。」
「ッ…なら仕方ないな(あと上目使い反則です。)」
「成程な、にんじ…いやお前、コイツにそういう…通りで…」
「にん?」
「おっと何でもねぇ、なあジーク。」
「えっ、ああ…そうだなきっと何でもない。」
何やら、じゃじゃ馬娘に変に察しが付けられた気もするし 変な呼び方をされかけた気が…?
「にしても、お前達やたら仲良くなってねぇか…?一応ついさっきまで敵対してたろ?」
「ああ、確かに一度モードレッドには殺されてるしバリバリ敵対してた。」
「おうぶっ殺したし、明日香とは結構マジでやり合ったけどな。でもちゃんと話してみたらいい奴でさ。」
「えーと、こういうのは昨日の敵は今日の友、と言うんだったかな?」
「昨日の敵じゃなくて今日の敵だったけどなー!」
「それもそうだな、流石はモードレッド。指摘が冴えているな。」
こいつ等の仲良くなるレベルときっかけがマジで分からん。 いや俺も懐に入られると親しくなってしまうが…いや、ちょっとお前ら疑いを持ってみた方がいいんじゃないか? 仮のも殺人の加害者と被害者だぞ?
「私も起きたらモードレッドが隣に居てビックリしちゃった、でもちゃんと説明してくれたし謝ってくれたよ?」
『私も謝ったけどね。』と楽しそうに談笑する二人を見ながらそう俺に話すマスター。 まあ…マスターが許したのならそれでいいか。
「暫く魔術は使えないのは少し痛いけど、でも体は割と元気みたいだから不思議だね。なんか申し訳ないなあ…」
「…気にすんなよ、その分俺がちゃんと傍で守るからさ。今までよりずっと。」
「えっ、あ、はい、うんっ、そうだね!」
えっ、軽く引いた?気持ち悪いって事? おかしいな、踵に攻撃喰らってない筈なのに凄い痛い。
「(一瞬だったけど照れてたな…頑張れアキレウス。俺は応援しているぞ。)」
「(ニンジンは完全に明日香にその気があると、面白い事になってきたな。)」
一瞬、明日香が顔を赤くしたのを見逃さなかったジーク。 そして心の中で完全にアキレウスの事をニンジンと言い切ったモードレッド。 軽く引かれて恋愛成就が遠のいたと精神攻撃を喰らうアキレウス。 何故か顔が火照って思わず変な反応をしてしまったと焦る明日香。
完全にこの空気は、少女マンガよろしく恋愛展開であり
「あら、明日香さん目が覚めたんですね。よかった、皆さん楽しそうで…お茶でもどうですか?」
はたまた、昼ドラよろしくなノリである。――――――――――――――――
「どの道庭園に乗り込む計画を準備するのに数日は掛かりそうですから丁度いい休息だと思ってく下さい。」
「あのなあ…」
「なんですか?アキレウス。」
動きは亀みたいに遅いあの城塞だからこそ、その時間があるんだろうがとアキレウスは思ったが 言ったら言ったで「じゃあ何か代案が貴方にあるのですか?え?」と反論されそうなので その言葉は温かい紅茶と共に流し込む。
「いや、何でもねぇです。砂糖くれ。」
「はい、どうぞ。」
「ジャンヌ、私にもお砂糖頂戴。」
「はいっ、…え?今、私の事…」
「だってもう、クラス名も何も隠す必要ない戦いになっちゃったし何時までもクラス名呼びしてもだから。嫌だった?」
「いっ、いえ!是非とも名前で呼んで下さいっ、久しぶりに名で呼ばれたのでビックリしてしまって…」
「まあ考えたら俺たちの真名も能力も何もアイツらに知れ渡ってるんだしクラスで呼んだ意味だよな。」
「同世代の子に名前呼びされると何だか年相応って感じがしますね、皆さんも私の事を名前で呼んで下さいね。」
「あっ、ああ努力する…。ジャンヌ?」
「…ジークくん!もう一回!」
「えっ?ジャンヌ…」
「もう一回です!」
「えー…。」
名前呼びに何やら歓喜を覚えたのかジャンヌは、何故かジークに何度も呼ばせている 流石のジークもこれにはドン引きである。 その光景を見てアキレウスもやれやれとため息を付いた。
「そんなに同世代に呼ばれたいものかねぇ…?」
「ほら、ジャンヌの場合は一番女の子って時期に戦争に参加していたから…そういうの経験してないんじゃないかな?」
「そっか、コイツもそん位の歳でか。」
「うん。この位の年頃の女の子は青春だってしたいし、はしゃぎたいんだよ?」
「へー、父上もはしゃいでたか?」
「食べ放題バイキング行ったり、新都の方でショッピングもしたし、私の学校の制服も着て楽しんでた!」
「エンジョイしてんな父上…。学校の制服?」
「うん、私の学校の制服。着てみたそうだったから着せてみたら凄い似合ってた。」
「父上ェ…」
「魔術が使えたら投影出来るんだけどね。」
「ダメだぞマスター。絶対に、魔術、ダメ。見たいけどダメ。」
「わっ、分かってるよ!流石にいくらなんでもやらないって!」
「なっ、慣れるまで今まで通りルーラーで呼ばせてくれ…!」
「仕方ありませんね、では一日一回で練習していきましょう。」
「向こうは向こうで、どうなってんだか…もしやルーラーの奴、ジークの事…。」
ジャンヌのジークに対しての接し方、世話焼きっぷりは お姉ちゃんぶりたいとは少し違う気がしなくもない。
好きな子程、構ってあげたい的なアレだ。
「(聖女様も、確かに年頃の娘っつーわけだな。)」
「…アキレウス、何か今変な事考えませんでしたか?」
「別に?まあお前さんも頑張んなって事ぐらいかね?」
「良く分かりませんが、もう時間も遅いですし皆さん休みましょう。お話はまた明日という事で。」
「えー、オレもう少し明日香と話してぇよ。それに心配だしよぉ…」
「ダメです。貴方も魔力を消費してるんですから睡眠を取って少しでも回復に努めて下さい。折角、部屋を用意して貰っているんですから。」
「俺は、以前使わせて貰っていた部屋があるからそこで休むよ。」
「そうだそうだ、マスターの事は俺が見てるからお前らは自分の部屋で寝やがれ。」
「じゃあ皆、おやすみ。また明日ね。」
時計が示す時刻は既に深夜を示している。 本来サーヴァントは食事や睡眠を必要としないが、今日は各々が消耗し少しでも回復に専念するのが正しい。 「おやすみ」と挨拶を交わしそれぞれが部屋を退出していく。
必然的に残るのはこの部屋のベッドにいる明日香と そのサーヴァントであるアキレウスのみ。
「ほら、マスターも寝ろって。」
「えっ、でもアキレウスは?あのソファじゃ多分休めないよ?」
比較的、彼女に宛がわれたのは広めのベッドと テーブルとソファが二つ備え付けられている部屋だった。 部屋の広さの割には、少し殺風景とも見えるが… 体格に恵まれているアキレウスにはあのソファでは十分な睡眠は取れないだろう
「俺は良いんだよ、それにこんな遅くに他の部屋用意してくれなんて頼めねぇし。」
生前は戦いに赴いた野営地で雑魚寝も珍しくなかった彼にとって睡眠を取る場所は大した問題じゃない。 とはいえ、最近はサーヴァントでありながら人間らしい生活をしてしまっているが 今夜ぐらい寝ずに彼女を見守る事なんて造作もない。
「そうだ、このベッド大きいから詰めれば二人で余裕に寝れるよ!」
「ここは大人しく俺のいう事聞いて、寝てくれ………
一瞬、自分の耳を疑った。
「いっ、今なんて…?」
聞き間違いではないだろうか? いや、まさか。まさかマスターが同じベッドで寝ようなんて そんな俺の妄想みたいな事をいう訳が無い。
「大きいベッドだからさ、詰めて寝ればアキレウスも寝れるからって…。」
よっ、嫁入り前の娘がなんて事を言いやがるんですかーッ! いや確かに街では一緒に屋根の下で暮らしてたけど其処は流石にお互い別の部屋で寝てたぞ!? いっ、嫌な訳ではない。むしろ女と寝るなんて戦争中に腐る程した事でもあるが…
心の準備ってもんがあると思うんですけど!? いや寝たいけど!
「いやっ、その一緒に同じベッドってのはあのだな…」
「あー…嫌だよね?私今日結構汗かいたりしたのにお風呂入れてないし…ニオイとかあるかもしれないもんね?」
「バッカ!マスターはいつだって良い匂いしてっから!それに俺だって今日風呂入ってないし!?むしろ俺の方がニオイとかあんじゃねぇかって思ってるぐらいだから!決してマスターと寝たくない訳じゃねぇぞ!?」
思わず言っちまった。 なんだコレ、俺本当に童貞みたいな事言ってるぞ 冗談抜きでこんな所をヘクトールとかそういうった奴等に見られたら死ぬぐらい恥ずかしいんだけど。
「じゃあ、寝よっか。」
「…はい。」
おいおい、なんでだ。いきなりなんだこの展開は…! 交際にも発展してねぇってのにベッドで同衾!? よいしょって言いながらマスターが壁際に詰めだしたぞ…。
俺も普通に電気を消して完全にその流れだよ!
いや、違うぞ。今夜はそうじゃない、ただ隣で寝るだけだ。 落ち着けよ俺。仕方なく今日は止む負えずだ。 決して厭らしい事とか、アレだとかじゃねぇぞ。
ついさっきまで、気絶して倒れてた女を襲う程俺も飢えてねぇっての… そもそもだ、そんな事してみろ、先生に即怒られる。
「座に還される未来が見え…」
「アキレウス、どうしたの?寝ないの…?」
「いっ、いや寝るぜ!?そ、そんじゃあ失礼しまー…す。」
ゆっくりとベッドの中に体を潜らせる。 確かに詰めても二人ぐらいは横たわる事が出来た、だが
月明かりだけが差し込む、薄暗い部屋で 男女が同じベッドの中で一緒に寝る。その状況は本当にどうかアレである。
「(せめてこういう事するなら、俺から誘うべきだっただろ!ホントに情けねぇ…)」
「こうして誰かと一緒に寝るの、久しぶりだな…。」
「は?誰と寝たの、いつ?ちょっとそこ詳しく。」
もはや大英雄(笑)にまでなっているのではないだろうか自分のヘタレっぷりは。 だが、彼の精神を更に揺るがすのは明日香である。 その言葉は流石に追求せざる得ない。
「前世はギルとよく一緒の布団とかで寝てたし、子供の時も士郎と寝てたよ?アキレウスは?」
「あっ、そっちか…。俺はまあ、その…久しぶりと言えば久しぶりだけどまあ…色々ありまして…。」
「だよね、モテモテだったもんね。綺麗なお姉さん達とさぞかし…。」
「史実とかそういうの残ってるから本当に俺らプライバシーもクソもねぇな!」
「ホントそれ。特に昔になればなる程、事実と伝承がグチャグチャになって別物だったりね。」
「流石、俺の時代より前の人間の言葉は重みが違う。」
『イシュタルはもっと酷く書かれれば良いんだけどね』と物騒な事を言っている。 マスターは、アレだ。イシュタルいう存在に対してはかなり辛辣だ。 言う時は目が完全に笑っていない、まあそれでも好きだから良いのだが
だがやっぱり、彼女から出てくる前世での人物の名前はそのイシュタルと、
ギルガメッシュ―――――――――――
彼を語る上ではエルキドゥは欠かせない エルキドゥを語る上では彼は欠かせない。 互いに唯一無二の朋友、なのだから仕方が無い事なのだが
明らかに、ギルガメッシュの方は転生した朋友に恋をしていただろう。 話を聞く分には戦う結果にはなったがマスターの事をかなり大事にしていたようだ。 マスターもやっぱり大事だったみたいだし…?
しかも一応、男と女だしな…
「アレ、だよな?マスターとそのギルガメッシュはデキて無かったんだよな…?」
「うん。記憶が戻る前も凄く仲良かったけど私とギルは朋友だよ?ナイナイ。」
「言ったじゃん、前に。今まで恋人は出来た事無いって。」
「まっ、まあそうなんだけども。一応確認の為に…?」
「確認も何も子供の時以来、男の人と寝るのはアキレウスが初めてだよ?」
「ンッ」
だから今の言い方と上目遣いは反則だと何度言ったら分かるの、ねえ! こんな密着した布団の中で何言ってくれるの!あーもうこの子は!!
「一緒の布団に寝てる俺が言うのもアレだが、マスターはもう少し男に警戒した方がいいと思う…!」
「え?私だってそんなにホイホイ男の人と寝たりなんてしないよ!?」
「そうじゃなくてっ、もしだぞ!?もし俺が…マスターに変な事したらどうすんだよっ?」
「んー…変な事、ねぇ。」
「もしだけどなっ、もしされたらとか考えてちょっと警戒心を…」
「でもアキレウスは私が嫌な事はしないだろうし、ちゃんと順序は守ってくれそうだよね。」
「そりゃあマスターが嫌がる事はしたくねぇけど…、俺が言いたいのはなー…」
「でもアキレウスにならそういう事されても良いかな。」
もう少し自分が女性だという意識を持ってくれよ、そう続けて言おうとしたのだが。 マスターの言葉がそれを遮った。
俺になら変な事をされてもいい。
へにゃと笑いながらそう言った、その後すぐに『おやすみ』と言われ 背を向けられる形で壁の方を向かれてしまった。
え?え?と困惑する俺を置いて、規則正しい寝息が聞こえる。 早い、寝るの早すぎる…!いや、違うそうじゃない!
「じょっ、冗談でもそういう事言うなっつーの…」
顔に熱が集まり火照るのが嫌と言う程分かる、今の呟きは多分聞こえてないだろうが… 正直、すぐに抱こうと思えば抱ける状況にいる。 手を伸ばせば触れられるし、覆いかぶさる事だって出来る。
それ以前に俺にそういう事をされても良いって言ったのはマスター自身だ。
なったらなったで、言葉の責任は持ってもらおう
だとしても流石に今日の連戦続きで疲れ切っている彼女にそんな手荒な事は出来ないが…
だが…少しずつではあるが俺の事を男として意識してくれて来ているのだろうか。 抱えた時も赤面したり、密着して来たり…明らかに今までと反応が違う。 そんな風にされたら、誰だって…
「(期待しちまうじゃねぇか…)」
一瞬だけ、想像した。 自分に抱かれる彼女を。
何も身に纏わず、素肌を晒し自分に抱かれ恍惚とした表情をする彼女を。―――――――
……とりあえず、寝るか。 このまま悶々とし続けていたら本当に襲いかねない。
いつの日か、お互い同意の上でそういう事が出来る関係になれれば良い。
そう願いながら、アキレウスは瞼を閉じた。
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「そうじゃなくてっ、もしだぞ!?もし俺が…マスターに変な事したらどうすんだよっ?」
変な事、それは恋愛経験が乏しい私にも分かった。 ましてや一応魔術師の家系であったし、それぐらいの知識はある。 つまりは、性行為で間違いないと思う。
前世と比べてやっぱり人間味は増したし恥じらいとかも人並みにはあるとは思っている
アキレウスが私に、仮にもし欲情して来たのだとしても その時はその時だし
だけど不思議な事に、嫌な気はしない。
そりゃあいざ裸を見られるとなれば恥ずかしいという感情は湧き上がるとは思うけれど
彼にならそういう事をされても、そう思った。
「でもアキレウスにならそういう事されても良いかな。」
思わず、口に出してしまった。 これはちょっと恥ずかしい。驚くアキレウスに『おやすみ』と背を向けて布団に潜りこむ なんだか今日の私は変だ、彼にお姫様抱っこをされたとき紅くなったり 彼の顔を近くで見て、美形だと感じたり……今まで一緒に居てこんな事は無かったのに。
寝よう、寝て落ち着こう。
ああ、今日の私は本当に変だ。
「ん…、目覚まし鳴ってねぇな…。まぶし…」
窓から差し込む朝日、小鳥の囀る音でアキレウスは目が覚めた。 ぼんやりと覚醒しない意識の中、そういえば昨日の夜から城塞にいるのだと思い出し 布団を捲ろうと体を少し起こすが
「(アレ?体が上がらない…それに…)」
布団の中で何かが自分に密着し 胸元あたりに何か柔らかい感触が伝わってくる、
なんだコレと未だにぼーっとしている思考回路で布団の中を手探りで確認し
「(丸い物が二つ…?すげぇ柔らかいし、ずっと触ってられる…)」
何度も形を変えるように、揉みしだいていく内に ああ昨晩自分はきっと何かクッション的な物をベッドに仕込んで寝たのだろうと自己解決し そういや、マスターは昨日何処で寝ていたんだっけか?と考えながら更に揉む力を強くした
「んっ…!」
その瞬間、布団の中から甘い声が室内に響いた。 同時に動かしていた手もピタリと止まった。 続けて言うのであれば、冷や汗も出始めた。
そしてハッキリと意識が覚醒した。
「(そういや、俺…昨日マスターと同じベッドで寝てたよな…!?)」
昨晩、一緒のベッドで就寝した事を鮮明に思い出し 急いで確認の為唯一自由の効く足で掛けられている布団を蹴り飛ばす。
「っ、さむ……」
昨晩は、お互いに距離を保って寝ていた筈なのに 何故かアキレウスにぴったりと抱きつく形で寝ている明日香が布団の中にはいた。 突然、布団を剥ぎ取られたせいか若干の肌寒さは感じたようだが未だ目を開ける様子はない。
「(ホァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?)」
声が出ない叫びがアキレウスの中で木霊した 何が起きているのか僕には分かりませんと誰かに抗議をしたい所だが 生憎その相手はどこにもいない。
冷静に脳内で状況の整理を始め
「(おっ、落ち着け!えー…これはまずどう見ても俺からというよりマスターから抱きついて来たのであって俺は手を出していない!きっと多分!抱き枕か湯たんぽ代わりにしてただけだよなー!だよなー!!…えっ、でも待って。)」
だとして、さっきまで自分がボーっとしながら揉みしだいていた正体は…
「(えっ、えっ…俺もしかして…)」
寝ぼけてたとはいえ、コレもう手出してるのに違いないじゃん!訴えられたら勝てないレベルじゃん! もう滅茶苦茶揉んだし、あんな声出させちまったよ!やっちまったよ俺! 不可抗力とは言え寝ている女にやっちまったよ!!
頼むマスター、実は起きていてバッチリ覚えてましたとかそういうオチはやめてくれよ。 各所から大変な襲撃に遭いそうだ…!
「(とっ、とりあえず離れて何も無かったという体を装おう…!誰かが来る前に!誰かが来る前に!)」
先生なんかがマスターの様子を見に来たら大変だ、主に俺が大変な事になる! これはフラグじゃねぇぞ。断じてフラグなんかじゃねぇ! ゆっくりだ、起こさないように離れさせなければ…。 これでマスターも目が覚めちまったら完全に終わるからな…!
自分の腰に回されている彼女の腕を解こうとアキレウスが手を伸ばした時 コンコン―――――――と部屋のドアをノックする音が聞こえた もうアキレウスからしたら死へのカウントダウンな上に
「あばばばばばばば…!」
「入りますよ、アキレウス。」
「はわわわわわ…!!」
それは最も今ドアを開けて来ないで欲しいと思う人物の声音で
ガチャリと開く音はもう、GAMEOVERの効果音以外何にでも無い。 これでもかというぐらい汗が溢れ出し、全身がガタガタと恐怖で震え出した。
「おはようございます、アキレウス。彼女の様子を見に来ましたよ、貴方も一晩中ご苦労様でした。紅茶を持ってきたので飲んでくださ…――――――――――――」
ケイローンは、彼女の様子を見に朝早く失礼を承知で部屋にやってきた。 一晩中、見守り続けている愛弟子の事を想い気が安らぐであろう紅茶でも飲んで貰おうと 温かい紅茶が入ったティーカップが乗ったトレーを片手に、ドアを開けた
だが、すぐに言葉を失った。 爽やかな笑顔をもピシリという音を立てて固まった
『おう、おはよう先生。マスターなら大丈夫ですよ、…紅茶?先生の作る物は何でも美味いから嬉しいぜ!』
普通に考えて備え付けのソファーに座る弟子を想定していた。 だが目に映るのはベッドから体を中途半端に起こし顔面蒼白なのかもうよく分からない程混乱している弟子。 そしてそのベッドにはもちろん、昨日倒れるまで疲労しきった彼のマスターが寝ていた筈。 彼の横に彼女が眠っているのが見えた瞬間、スッと何かのスイッチが入った
「センセイ…オハヨウゴザイマス…ハハッ、ハハハ…イイアサデスネェ」
片言の弟子を無視しながらケイローンは冷静に紅茶が乗ったトレーをテーブルに置き、ズカズカとベッドへと迫る。 固まった笑顔が崩れる事は無い、だが声のトーンは完全にお怒りモードなのは間違いない。 そして恐怖に怯えるアキレウスを余所に、眠っている明日香を慣れた手つきでアキレウスから引きはがし寝かせる
「まだ休んでいて下さいね、食事は後でお持ちしますよ。」
そう優しく囁き布団を掛け直し頭を撫でる
その後すぐに閉じていた瞳が薄らと開き
「!?」
アキレウスをまるで子犬のように掴み宙ぶらりんとさせる。 持ち上げられた当の本人は「ヒンッ」と情けない声を出し、恐る恐る師の顔を見た。 まるで氷のような笑みを浮かべた死を見た時
あっ、終わったと静かに悟る。
「さあアキレウス、行きますよ。言い訳ぐらいは聞いてあげましょう。」
お仕置きの時間だ、大説教の時間だ。 俺終了のお知らせだコレ。踵に全力パンクラチオンの刑かもしれない、死んじゃうかも。 不可抗力だったんですとも言えずに、こくりと頷き
何処に連れて行かれるのか分からないまま、ケイローンに掴まれて宙に浮いたまま アキレウスは部屋を後にした__________________
タイトル候補が『エロ同人になるかと思った!?残念、全年齢です!』だったのは内緒だよ。
アキレウスピックアップ大爆死しました。
バレンタインイベント、笑うぐらい素材が集まった。
いし うま