pixivは2021年5月31日付けでプライバシーポリシーを改定しました。
まるで、怪獣映画を見ている気分だ。
その巨体は優に100mを越え、城塞を遥かに超える大きさを誇っている。 これはもうゴーレムなんて存在では無い。 明らかに別格の規模だ。
「だけど、こんな大きさの物を動かすには材料も魔力もアヴィケブロン自体にあるとは…」
石材や土、その全てに神秘性が含まれていないと成立しそうもない構造。 それはユグドミレニアに用意させていたとして 何よりこんな魔力を食い荒らさんとばかりの代物を動かす動力、即ち炉心たる存在が必要なレベルだ。
例えば、魔力回路を保持している魔術師…が最適な部類だろう。
ならば猶更、アレは宝具と言っていい存在なのか。
「ジーク、それにアストルフォも…!アキレウス、あそこに下りて!」
地上ではジーク、ルーラー。アストルフォ、カウレス、フィオレ達が対峙していた。 そして高所から見下ろすようにして弓を構えている、ケイローン。 その顔はいつになく険しい
「----------------成程な…了解だマスター、舌噛むなよ!」
師の表情から何かを感じたアキレウスは巨人を一度強く睨むと マスターからの指示された地点へと着地する。 頼もしい加勢が来たのかジーク達は安堵を浮かべた
「ジーク、私たちが来るまで何か分かった事は?」
「巨人が…ホムンクルスを捕食した、というより…取り込んだに近いな。」
「…やっぱり、大の魔力食いか。ならホムンクルスだけじゃないサーヴァントや私たち魔術師もアイツにとってはエサでしかないね。」
「直に触れたら、一溜まりも無いか…」
まあ流石に武器越しなら大丈夫だろうけども直触れはマズイ。 某掃除機メーカーもビックリな程の吸引力で吸収されてしまうだろう。
「…ジークだったな、俺のマスターが世話になったようでありがとな。」
「あっ、ああ…その節はどういたしまして?」
「さっきはその…、挨拶する余裕があの時無くてだな…?」
「気にしないでくれ、俺もあの後結構大変だったから。」
何やら男の子同士で会話をしているようだが、深入りはやめておこう。
「ほら早く、ジークくん達は下がって下さい!此処はサーヴァントである私たちの役目です。」
「何を言っているんだルーラー!俺も戦う!」
「いやそこに関してはルーラーには同意見だ、マスター。お前も一緒に下がってろ。」
「でも、アキレウス!アレは…!!」
「分かってるさ。先生の顔見たら、アレに何が組み込まれて動いてるかぐらい。」
「俺だって内心、結構アイツにキレてるぜ?」とアキレウスは槍を手に構える。 弟子である子達を実の親のように愛し育んだケイローンにとって弟子とは掛け替えのない存在。
その
「君が、彼の言っていたライダーのマスターか。」
しかし、アヴィケブロンはそれを気にする素振りなど見せずに 視線を地上に居る明日香へと向け、仮面の奥から問いかける。 彼、というのは間違いなく天草四郎の事でいいだろう。
だが、それにいち早く反応したのは彼女を背に隠すようにして乗り出したアキレウスだ。
「彼からは君を殺さずに連れて来るように、そう指示されていてね。」
「悪いが、こっちは渡す気なんざ更々無いぜ。残念だったな。」
「いやなに、話をある程度聞いては来たのだがこうして初めて見ると君は実に優秀な魔術師だと思ったんだよ。そして」
「…キャスター、それ以上口を開くな。」
もはや、アヴィケブロンに対して激しい憤りを隠せないケイローンは 地を這うような声で彼を制そうとする。
「なんだ、アーチャー。庭園の時と言い、感情に任せるとは君らしくも無い。」
「あの子を騙し、殺した裏切り者に怒りを覚えずに居られる程私は出来た存在じゃない。」
「怒りは頂点、という事かね?かつての
「黙れ…」
完全な挑発だ、アヴィケブロンはケイローンが抑えている感情を煽り爆発させようとしている
「私を師として慕うロシェを、昔の自分と弟子達と重ねていたか?そんな彼を殺した私に怒りを?」
必死に耐えているというのに、火に油を注ぐ事に近い事を平然と行う。 何が目的だ、そこまでして彼は何がしたいというのだろうか。
「そして、君は悟ったんだろう?私が先程彼女に何を言おうとしたかを。いいぞ言ってやろう。」
「黙れッ、それ以上口を開くな!!」
もし、彼より先に君を見つけていれば迷う事なく君を炉心にしていただろう。__________________________
怒髪天を衝く、とはまさにこの事だ。
ケイローンにとって彼女は窮地を救ってくれた恩人
そして
弟子の最愛の人までをも貶す、それが彼の堪忍袋の緒を切らせた
怒号と共に放たれた矢は迷わずアヴィケブロンの頭部へと突き刺さる
避ける事も、ましてやゴーレムを用いて防ぐ事も彼はしなかった
致命傷となる一撃をすんなりと受け入れたのだ
その異常とも言える行動はその場に居た全ての者に困惑を齎した
「アレだけ挑発していたのに…キャスターは何をしようとしてるんだ!?」
カウレスの言う通り、全くその行動の意味が理解出来ない。 これではただ、殺されに来ただけではないか。
それに彼が消滅してしまえば、あの巨人も一緒に消える。
自分のマスターを裏切り殺してまでしたのに、そんなあっけない終わり方だというのか?
「キャスター…ッ、貴方は…-----------------------」
「これでいい、私自身も私自身が疎み続けた不完全な人間だった。裏切りの代価として当然の末路だ。」
「本当に貴方は殺されに来ただけ、なのですか?アヴィケブロン。」
ジャンヌの問いかけに、アヴィケブロンは「そうだ」と肯定する。 だとしても謎が残り過ぎる。
ならば…
「なら、このゴーレムは何の為に!?貴方が裁かれたかっただけであればマスターを殺す必要は無かった筈なのに…」
「愚問だな。彼を炉心にした後に気付いたのだ、我が希望を叶えたと同時に自身の愚かさを知った。それだけだ」
だが胸騒ぎが収まらない、これだけで終わる筈が無い 徐々にアヴィケブロンの存在が綻び始める 本当に消滅する流れではないか
「任せたぞ…『
任せた、その言葉はまるで巨人に後を全て託したかのような…-------------------
そう言い残しアヴィケブロンは消滅----------------いや、巨人へと取り込まれて逝った 術者が消滅しても尚、その存在が綻びる事は無い。
「おい…アイツ、消えねえぞ…!?」
「やっぱり…!アレは術者が死んだ所で意味は無い、起動さえしてしまえば存在し続ける…!」
完全に聖杯戦争の枠組みから外れた存在------------------
眠りから覚めたかのように産声となる咆哮を上げ、その巨大な腕を振り下ろす 全てを滅ぼさんと潰さんとばかりの力を籠めそれは放たれた
「っ------------------」
だがそれは一つの旗によって防がれた
「さあ早く!サーヴァント以外の皆さんは退いて!!」
「ルーラー!」
その細腕からは考えられないほどの筋力を発し 巨人の攻撃を一身に防いでいる …やはりかなりの負担が来てるのか若干震えているが
「この巨人は世界を無差別に変化させ現実を変容させる存在…聖杯戦争の枠を超えるもの、即ち私の敵です!」
「ハッ、俺らに喧嘩売って来てんなら、俺たち全員の敵だろ。そのまま抑え込んでな、ルーラー!」
「普通は逆だと思いますが…ッ、ええコテンパンにやって下さい!アキレウスッ!!」
「おうよ!」
アキレウスは動きが封じられている巨人の左手から駈け上り あっという間の頭部へと到達する、
そして
「そらよっ、喰らっとけ!!」
剛腕から放たれた強烈な槍の一撃は、彼の数百倍の大きさを誇る巨体を揺るがせた。 だがそれも一瞬、まるで痛みをもろともしない動きで再びその腕を振るう
その動きは、アキレウスにとっては遅すぎる。 瞬く間に彼はそれを避け再び巨人の肉体へと着地する
再度、頭部を目指し駆け抜け
「ルーラー、どうやらコイツは一発じゃ足りないみたいだぜ!」
「そうでしょうね!だったらさっきの倍はくれてあげましょう!一先ず城塞から離しますよ!」
アキレウスに集中していた巨人の隙を付き、ジャンヌも反対の腕から駆け上がって来た。 更なる追撃をさせまいとケイローンの弾丸の様な矢が巨人の動きを封じる
「良いですよ二人とも!そのまま行って!!」
互いに目で合図を送り、タイミングを合わせ大きく得物を振りかぶる
「はぁああああっ!!」
「せぇええいっ!!」
二対の強烈な一撃、それは凄まじい衝撃を叩きこんだ。 体制を一気に崩した巨人は森の茂みへと後退する
「逃がすかっ!!」
「僕は空から行くよ!何かあったら念話で言ってね!」
逃がす訳にはいかない、巨人を追うようにアキレウスとジャンヌ達は森へと向かった アストルフォは上空から援護をする為、ヒポグリフと共に空へ飛び立つ こんな所で彼らを見守る訳にはいかない、向かわなければ…ジークも同じようで そう思い足を進めた時だ
「待って下さい!何処に向かおうとしてるんですか!?」
だが、それを止めた者がいた。 フィオレだ。
「何処って、あの巨人の所だよ。アキレウスやルーラーが戦ってるのに私たちだけ此処で待ってるなんて出来ない!」
「確かにそうですがっ、アレは私たち魔術師が敵う相手ではありません!傍に行くのは自殺行為ですッ!」
「だが彼等だけじゃ危険だ!さっきの攻撃も衝撃自体はあったが傷一つ付いていなかった!」
「そっ、…それは…」
ジークの言う通り、アキレウスとルーラーの攻撃を受けても 傷の一つも付いていなかった。 ただ出鱈目に殴っても意味が無い、傍に行って弱点を見つけないと…。
「何か、アレの能力を知っているの?」
「もし何か知っている事があるならば教えてくれっ、対策が見つかるかもしれないっ!」
「ですが…っ」
「…二人は早くあちらに向かって下さい、道中私が知る限り能力をお教えします。私は此処から援護を。」
「アーチャー!彼女がいくら強いと言っても危険過ぎます!何を言っているのですか!?」
「そうだよ、アーチャー!姉ちゃんの言う通り危険だ!」
「今は手段を選んでいる時間が無い!周囲が完全な楽園と化してしまえば手立ては無くなります!さあ早く!」
「ありがとう、ケイローン…行こう、ジーク。」
「ああ…!」
フィオレやカウレス達が、私たちを向かわせたがらないのを見ると 厄介な能力があるのだろうと察する事は出来たが ケイローンの焦り様から見て時間が無いのは明白だ。
それに楽園という言葉が出ていた、周囲が完全にそれと化してしまえば手遅れとも ルーラーが言っていた世界を無差別に変容させる存在
ならば、アレは完全な自律式固有結界。だったら-----------------------------
「ッ、おいルーラー!アレさっきよりデカくなってねぇか!?」
「気のせい、と言いたいですが事実です!」
「成長する宝具なんて聞いた事ないんだが…ッな!!」
攻防を繰り広げていく内に、アキレウスの中で違和感が生まれていた。 明らかに巨人の体格、そして反応速度が先程より増している。 気のせいだろうと思っていたが、自身の速度に付いて来た時点で嫌な予感が的中した
「それに…ッ、一切俺たちの攻撃が効いてねぇし砕いたと思ったら直ぐに再生しやがる…。」
「ええ、彼は『原初の人間』の再現…!存在する時間が長ければ長いほど成長し周囲の楽園化の力は強まります!」
「楽園がある以上は其処に血を流す者はいない、ってか。傷なんぞ最初から無かった事になる。」
「ですから、完成する前に彼を倒さないと…!!手に負えなくなってしまう…ッ」
存在する時間が長ければ成長し、戦闘力は向上 地に楽園がある限り無傷に等しい。
だがそれでも未だ完成には至っていない…?
「もしこいつが完成したら、どうなる…!?」
「最悪ですよっ!完成に至ってしまえば、この存在は…
あー、聞くんじゃなかった。自分で聞いておいて激しく後悔する。 本当に此処で仕留め損なえば聖杯大戦、よもや天草四郎を倒す所じゃなくてなってしまう。 それだけはダメだ、あの男は絶対に負かして泣かせてコテンパンにしてやると決めているのだから
奥の手ではあったが、此処は一気に決めるべきだ。 出し惜しみをする余裕なんて今の自分たちには無い、ここは盾を…----------------------
「ルーラー!アキレウスッ、無事か!?」
「ジークくん!?どうして此処にっ!?」
まだ明かしていない、宝具の使用を考えた時 城塞にいた筈のジークが姿を現す
「お前…!危ねぇからマスター達と下がってろって言っただろ!?」
「俺も彼女も2人だけに任せていられなかった!それの文句は後で受ける、先に言わせてくれ!すまない!」
「そんな堂々と謝るか普通…!---------------おい待て、俺も彼女
聞き逃す訳が無かった、いや聞き逃せなかった。 今ジークは「彼女も」と言った。それはつまり…
「マスターもこっちに来てんのか!?何で止めなかった!今日、これ以上戦わせたら…!」
今の彼女に戦わせるのがどれだけ負担な事か! どうせ止めても来るだろうとは薄ら思ってはいたが其処は周りの人間が殴ってでも止めるだろう 誰だって分かって居る筈だ今一番疲労しきっているのは彼女だと
「すまないっ、でも…!」
『アキレウス、私が彼女をそちらに向かうよう要請したのです。すみません。』
「ッ、先生…!」
やり場の無い怒りをジークにぶつけかけた瞬間、師であるケイローンからの念話が入る
『彼女が今日どれだけ莫大な力を使ったのを重々承知しています、…ですがそうでもしなければ巨人は倒せない。分かりますね?』
ごめんね、でも状況が状況だから我慢しろよ?なっ?と圧の掛かる声音だ。 これは逆らってはいけない、変に反抗してはいけない。お仕置きが来る
「マスターに何かあったら責任とって下さいよ…!マジで、いやホント!」
『…その時は私の持つ知恵を全て授けてあげます。流石に教え子の想い人には手は出せませんしね?』
「責任ってそっち!?手を出すのそれだけはダメだからマジで!まだ俺も手は出してないからっ!」
「やっぱりアキレウスは彼女を大事に想っているんだな…、素敵だと思うぞ。」
「先生ッ!この念話マスターには繋がってねぇよな!?」
「ジークとルーラーと貴方だけにしか繫げてませんよ。ご安心を」と先生が言うが おい今軽くジークが、まだ手出してないの?ドンマイ。みたいな情けの目をしていたの知ってるからな
「あの!!何か策は見つかったんですかねっ!?私っ、もうそろそろ…キツイのですが!!」
俺たちが茶番を繰り広げている間、どうやらルーラーが巨人の攻撃を防いでいてくれたらしい。 滅茶苦茶震えてる、アレはキレているぞ。 先生も焦ったのか、咳払いをして誤魔化そうとしているが多分後で文句を言われるパターンだ。
『…ただしチャンスは一度だけです。皆、よく聞いてください。』
--------------------------------数分前
アキレウスやジャンヌを追う為、森の中を走っていた二人に ケイローンから叡智の光の能力の説明を受けながら、あの巨人を倒す方法を聞いたのだ うわー、何その能力とかー…うわー…と頭を何度抱えたくなったことやら。
『簡単に言えば、彼が大地から離れている時こそが最大のチャンス。その最中は再生も行われないのです。』
「そうか…!あの巨人は楽園があるからこそ能力を行使している、その大地から離れてしまえばそれが出来ない…!」
「でもケイローン、つまりあの巨人を宙に浮かせるか転ばせないとダメって事だよね?しかも…」
『はい、そしてその浮いている最中に霊核である頭と心臓を同時に破壊しなければいけない。』
「激ムズ案件では?」
『私もそう思います、ですが其処はお任せを。アキレウスとルーラーなら足の一本は確実に砕いてくれるに違いない。』
「もう一本は?」
『そこも策はあります、そうでしょうライダー?』
「うんっ、そこは僕にお任せ!」
「うわっライダー!凄くスレスレ飛行だな…!ヒポグリフの脚が着きそうだ!」
スレスレ低空飛行よろしくと急降下して来たのはアストルフォだ。 頑張れヒポグリフ耐えろ、ヒポグリフ。
「僕の宝具はね、触れた個所を強制的に霊体化出来るんだ!つまり転ばせられる!この作戦に持ってこいでしょ?」
「凄い能力じゃないか、流石だライダー!」
「で、その後は私とジークでアレを叩きのめせって事かな?ケイローン」
『察しが速くて助かります、ジークにはジークフリートとなり宝具を発動して欲しい。』
「それは可能だが…、明日香には何を?」
『投影できる宝具で何か一気に雌雄をつけられる物はありますか?例えば対城宝具とか…』
ありますよね?あると言ってください。とケイローンが急かしてくるが まあ、あるにはある。あるんですよ、そこはちゃんと。
「そうだねぇ…、アーサー王の聖剣ならそれにピッタリかも。」
『素晴らしい!そういう答えを待っていました!エクセレント!』
多分、ガッツポーズ決め込んでんだろうなと思う程、ケイローンのテンションが高いけれど 聖剣はちょっと他の宝具とは系統が違う代物だから負担もその分来るが 威力に関しては申し分ない、なんせ神造兵装なのだから。
「ただしジークは正面から、私は背面から宝具を放たせて。じゃないとマズイかも…」
『それは構いませんが…理由を聞いても?』
「ジークの宝具も私のも攻撃範囲が大きすぎて一方から同時に放つと、巨人を吹っ飛ばす所じゃなくなる。」
「成程、前後からお互いの宝具を巨人にぶつけて緩衝剤代わりにして相殺という事だな。」
アルトリア曰く『範囲が大きすぎるあまり、船を緩衝剤にしましてね…?』と 気まずい顔で言っていたので間違いない。 確実に仕留めるならその方が良い筈だ、自然破壊もなるべく最小限に収めたい。
『分かりました、それで行きましょう。』
「それじゃあ私は少し巨人から離れた所に待機するから、タイミングが来たら合図を。」
「了解した、じゃあ俺はルーラー達の所に向かってそちらから準備をする。」
「それなら明日香は乗っていきなよ!言ってくれれば其処で下ろしてあげるから!」
『ええ…頼みましたよ、二人とも。あー…絶対にアキレウスに怒られますねコレ。』
まあ、何とかなるでしょうと。ケイローンが呟き念話を閉じる。 ジークと別れ、ヒポグリフの背に乗り飛び立つ。
「うわ、さっきよりも大きくなってる…。」
上空から見た巨人は先ほどよりも更に成長をし、強さを増しているようにも見える。 ちょっとアヴィケブロン貴方なんて物を作ってくれやがりますか。
いや結構マジで。
「大丈夫だよっ、僕たちで力を合わせればあんなのイチコロだって!まあ僕転ばせるだけなんだけどね!」
「いや結構転ばせるのも大変だよ!?アレ!」
「なんとかなるって!でも、大丈夫なの?今日、赤のセイバーと戦った時に相当魔力を使ったんじゃない?」
「どうにかなるよ。うん、きっとどうにか出来る。頑張れ私、頑張れ私。」
「うへぇー、僕が言うのもなんだけど君も結構アレだねー!シャルルマーニュに好まれそうだよ!」
それはどういう事だろうか? きっと良い意味で言ってくれてるに違いない、そうだと言ってほしい。 とりあえず、丁度良い降下地点を見つけたのでそこで下ろして貰い、タイミングが来るまで此処で待機だ。
「まあ、無茶…だろうなあ。」
だが、このぐらい無茶をしないとヘラクレスを倒して天草を止める事なんて出来ない。
この世界を救う事は出来ない
そう今はただ考えろ、思い出せ
あの黄金の剣を振るう彼女の姿を。 あの黄金の光を―――――――――――――――――
輝ける命の奔流を…―――――――――――――――――
この手に、造り出せ―――――――――――――――――
放たれる魔力の粒子が徐々に形を繕ってゆく
原則として、神造兵装の投影は不可能――――――――そう
神造兵装が、神造兵装を扱えない訳が無い。あくまで原則は原則でしかなくそれを破る例外も存在する。 その一つが自分自身がかつて神造兵装そのものであった事。
そして自身が視た物、そしてその使用者と縁があったそれが条件だ。
だからこそ、あの聖剣を造れる。
『マスタァァア…?』と地を這うような声が聞こえた時点で、もうそれは誰からのか分かってしまい
さてと、どうやって誤魔化して乗り切って彼の機嫌を損ねない様にするべきかと考えたが
『来るなと言って来ないタイプの人間じゃないとは承知していたが、流石に今のお前の疲れ切った状況じゃ周りの人間は意地でも止めるだろうと思っていた俺がバカだったぜ。』
『その代わりコレが終わったら一歩も歩かせないからな!』と念押しの長台詞(ノンブレス)が続く
「あっ、はい。巨人倒し終わったら流石に休みます…こっちは準備OKです…」
『…作戦の事は先生とジークに聞いた、巨人の脚ぶっ壊すのは俺とルーラーに任せろ』
「うん、それさえしてくれれば…後は私とジークで木端微塵にしちゃうね。」
跡形も残さないよ、そう笑って言えば『物騒だが、文字通りにしてくれよ?じゃないと困る』と 困った様な声音が聞こえる。
『終わったらそこにいろ、迎えに行くからよ。』
「…うん、待ってる。すぐに来てね?」
流石に立っているのも辛いしぶっ倒れるだろうから、地面とこんにちはする前に早く来てほしい。 そういう意味で言ったのだが『ン゙ッ゙、分かったすぐに行く!』と何故か耐えたような返事が来た…。 何か変な事を言ってしまっただろうか。とりあえず念話を切りいつでも放てるようにしておこう…。
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「ッ、アキレウス、彼女はなんと?」
一方、巨人の隙を作りだす為攻防を繰り広げているルーラー側はあと一歩のところまで来ていた。 アキレウスに彼女の準備は出来ているかと聞いてもらう為に 今日何度目かの巨人の攻撃を一身に受け止めていたルーラーが彼に尋ねた。
「準備完了だそうだ!!(俺のマスターが可愛いッ!!)」
「どうしたんだアキレウス、顔が紅いぞ!後何かが聞こえる!」
彼は胸を押さえ何かに悶えていた、それを心配するようにジークが駆け寄っているが 今はそんな事より早く決着を付けたい。その後にちょっと彼の師に戦闘中マスターと会話し悶えるのは如何かと問いたい
だが良い返事は聞けた、彼女の聖剣の準備は出来ている。―――――――――――――――
「では皆さん…やりますよ!ジークくん、変身を!宝具を放つタイミングは私たちが告げます!!」
裁定者の宣告、それはその場にいるサーヴァント全てに告げられた。 その言葉は彼らの意識をより一層と高まらせる 先程まで悶えていたアキレウスも目の色を変え、槍を手に巨人の前に立ちはだかる
「お前さんの何処が原初の人間の再現なんだか俺には理解出来ねぇが、それも終いにしようや。」
そこを退け、我ら英雄が進む道を遮るのであれば蹴散らすのみ。 俺はお前なんかを相手にしている暇はない、その先を行かなければ。 あの大英雄、あの男がその先にいる。
止まる訳にはいかない
「退きな、
一瞬、それで巨人の両腕は吹き飛んでいた。 先程までは打って変わって速度が増しているアキレウスにジャンヌは驚きを隠せなかったが これは好機。腕を無くし再生するまでの時間巨人は何もできない
「いけっ、ライダー!!」
それを、彼も見逃さなかった。 操る幻馬は空中から勢いを付け急降下し、狙うは一点。
お世辞とも強いサーヴァントとは言えないと自己評価を下していたが 彼の強みはその宝具の豊富さ、使い方次第では一瞬で形勢を覆せる存在。 装飾の施された馬上槍、その突出した能力はここぞと言う時に輝く
その名は―――――――――――――――――
「
その槍の攻撃を受けた対象は無条件に膝から下が霊体化される。 巨大な体を残る一本の脚で支えるなど不可能な話。 一閃を喰らった巨人はバランスを崩しよろめく
「行きますよっ、アキレウス!!」
「ああ!木端微塵にしてやるぜ!」
残る一本の脚、旗と槍が確実に仕留めに入る 全力の力を籠め鋼鉄のような硬さを持つそれに一撃を加える 響く轟音と共に亀裂が奔り砕け散る巨石
これで巨人を支えるモノは全て崩れた。
さあ、これで終いだ
大剣を携える2人に相棒が合図を送る
「了解だ!」
「いくよ、ジーク!」
それに応えるかのように黄金と蒼の光が双方から溢れだす。
術者から真名と共に解放される光の斬撃、大地を揺らしながら その光は一直線に空中で身動きを取ることが出来ない巨人へと向かう
前後から放たれ、巨人に互いに衝突する事により交わる極光の柱。 それが空高く雲をも突き抜けて光臨した。
そして、それが収束した時其処には何も残っていなかった。
「すっ、すごーい!ねえルーラー!これ僕たちの勝ちだよねっ!?」
「ええ…!巨人は完全に消滅しましたっ、皆さんのおかげです…!」
その意味は、つまり巨人は消滅し自分たちの勝利だという事。 英霊状態を解除したジークもジャンヌたちに駆け寄り勝利を喜んでいる。
自分もすぐに喜び合いたいのだが、彼女の元へ向かわなければ
「アキレウス、何処へ?」
「マスターのとこ、終わったら迎えに行くって約束してっからな。」
「では、私たちは城塞へ戻っていますから。彼女とアレでしたらゆっくり戻ってきても良いんですよ?」
「なら、お言葉に甘えてそうさせて貰うぜ。また後でな。」
冗談ですよ、早く戻ってきて休ませてあげましょう。とジャンヌ言われたが それもそうだと思いながら、マスターの元へとアキレウスは足を進める。 斬撃の位置からしてそうは離れてはいないだろうからすぐに辿り着く
「マスター、お疲れさん。今そっち向かってるぜ。」
道中、念話で労りの言葉を掛けながら向かっていると伝える。
「マスター?聞こえてるか?」
だが、数秒経っても返事が返ってくる事は無い。 何度か呼びかけてみても反応は見られない
「マスター…?マスター、返事しろっ、マスター!!」
様子がおかしい、焦りを隠せないまま 走る速度を上げ彼女の元へと駆け抜ける。 どうか、どうか無事で居て欲しい
それだけを願いながら、ただ走る。
「オイッ、しっかりしろ!オレはお前に聞きたい事が山ほどあんだっ、目ェ開けろよ…オイッ…!」
だが目に飛び込んできたのは、赤のセイバーの腕の中で意識を失い気絶しているマスターの姿
一体どういう状況だと問いたかったがアキレウスに今、その余裕は無い。
「ッ、お前…庭園に居た…!」
「テメェ…赤のセイバーッ、マスターに何しやがった!?」
「なっ、コイツお前のマスターだったのかよ…!?オレは何もしてない!」
「してねぇ訳があるかってんだ!お前とマスターがやり合ったのは聞いてる、負けた腹いせか!?それでも騎士か!?」
「負けてねェよ!退いてやっただけだ!!」
モードレッドはアキレウスの登場に驚いたが直ぐに自分は何もやっていないと否定する。 だがアキレウスからしてみれば、彼女とモードレッドが戦い合い宝具まで使用する程までになったという次第 聖剣を使い終えた彼女を後ろから襲ったという考えが真っ先に浮かんでいた。
「なあ、マスター!どうにかこの男に言ってやってくれよ!」
槍を持って殺しに掛かって来る勢いのアキレウスに流石にモードレッドもお手上げだ。 頼みの綱は自身のマスターに託された。
「えっ、ああ?俺かよ…まあいい、まあセイバーの言う通り今この子が気絶しているのには俺らは関係ねぇぞ。」
近くに止まっていた車から何かの薬品を取りだして、こちらに向かってきたのは厳つい風貌の男 何もしてませんと表すかのように両手を上げ、降参のポーズを見せる。
「さっきのデカブツの様子を見ようとしてこのあたりに来たら、この子があー…その…なんだ?」
「父上の…、聖剣を使う所を見て駆け寄ったんだ。だけどその後すぐにコイツ倒れて…」
「そういう事だ、分かったか兄ちゃん。」
「ッ、分かった。だがマスターに怪我させたのは別の話だからな、セイバー…。」
「勝手にしろ、今はお前よりコイツのが重要だっつーの!」
「ふむ…、サーヴァントへの魔力供給自体は問題なさそうだな。詳しい事は後だ、この子を休ませる場所は?」
「ユグドミレニアの城塞、そこが拠点だ。アンタ…、マスターの事診れんのか?」
「多少はな、それじゃあ兄ちゃん先にこの子連れて城塞へ行ってくれ。俺たちは車で向かう。」
「…オラ、マスターを返しやがれ。このじゃじゃ馬娘。」
「俺を女扱いすんじゃねぇっ!ったく…だけど命に別状ないみたいだしまあ…良かったな。」
乱暴なやり取りだが、何も無いよりはマシである。
モードレッドからマスターを受け取り、大事に抱きかかえる
「(温かい…大丈夫だ、生きてる…)」
伝わる体温を感じ、彼女が無事に生きている事を確認し一先ずは安堵の表情を浮かべ 早く温かいベッドでゆっくりと休ませてあげたい、 そう思いアキレウスはまだ夜の明けない深い森を走った
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一体、何年ぶりに涙を流したのだろう。
願いを叶える為に感情なんてものは、とうに捨てたとばかりに思っていたのに ましてや悲しみや怒りは特にそうだ。最期のあの瞬間に自ら捨てた、はずだった。
「…ッ、あの娘は…!なんだ、あの地獄の様な光景は…!」
記憶を覗き終え、彼女の大半を見終えた彼らは呆然とする者もいれば絶句する者。 はたまた、瞳から涙を流す者もいた。
「凄い…ッ、凄い物を吾輩は見てしまった!!これは筆が止まらないに違いない、吾輩は創作へ向かわなくては!!」
興奮を抑えきれない劇作家の言葉も彼の耳には入らない。 ああ、どうしてだ。どうして彼女はあんなにも報われないんだ。
自分が信仰する神も
自分が欲する聖杯も
そして彼女が生きた世界も
「あんまりだ、こんなの…」
誰も彼女を救ってあげる事はしなかった。 あんなに命懸けで事を成したというのに。 好きなだけ利用するだけして切り捨てたじゃないか
「っ、シロウ…しっかりしろ…今のは流石に我もあんまりだとは思うが…」
そしてあの地獄はまるで…―――――――――――――――――
やはり彼女は俺の元にいるべきだ。
同じ苦しみ、悲しみを分かり合う俺でなければ…
救えない―――――――――――――――
「救ってみせる…必ず、貴方を…俺が…」
嗚呼、また怒りを感じる事になるなんて思いもしなかった__________________
みんな、13日のアキレウスピックアップよろしくな。(更新遅れた、ごめんね。)