pixivは2021年5月31日付けでプライバシーポリシーを改定しました。
夕陽が次第に沈み夜の青が混ざり合う空を一つの戦車が勢いよく地上へと降下していく----------―
その最中、アキレウスはふと思った。
正直、これだけの高さを下って行けばビビるだろうと思っていた だが自分の腕の中にいるマスターとなった少女は顔色を悪くする所か まるでアトラクション感覚のようにしてこのスリルを味わっているように笑っているのだ。
「怖くねぇのか!?普通ならこんな馬鹿高い所から降りたら女は大抵悲鳴の一つや二つ言うぞ!?」
「ぜーんぜん!昔はもっと高い所から落ちた事あるしね!そうだ、街の近くに林か森ないかな!?」
「えっ。」
問いかけた問いに返ってきた返事にどう反応すればいいのか。 確か、あの空中庭園は約7500m上空を浮遊している。 普通に考えれば飛行機がその飛ぶ高さであり一般的に考えればそこから落ちる事は滅多に経験しない筈だ。
だが、マスターは「昔はもっと高い所から落ちた」とぶっ飛んだ返事をして来たのだ。 それには流石に「えっ」と思わず声が出てしまう。 彼女がいた世界では空高くから何かこう…落下する大会的なものが流行でもしていたのか。
考えてはいけない、きっと深く考えてはいけない。 まあ肝が据わった女は良い女が良い、そうしよう。
「…確か、街の少し外れに林があったからとりあえずそこに下りるとするか!」 「じゃあそこにしよっか!」
「よーし、マスター。しっかり掴まってろ!」
降下地点も決まった事だ。
マスターを抱える腕に力をこめながら、一方の方手は手綱を強く握る。 その意志を汲み取った愛馬たちは応えるかのように声を鳴らし速度を上げていく
今は赤の陣営の束縛もなくなり緊張の糸が解けただけなのかもしれないが マスターの瞳は年相応の少女のようにキラキラと輝く。 空中庭園でアタランテのフリをしていた時の冷静で淡々としてた時とは大違いだ。
「(生前にマスターと出会っていたら秒で口説いてたな、こりゃ。)」
そんな事を考えながら、アキレウスは戦車を奔らす。 そして人目に付かないように街から少し離れた林へ辿り着く
付近に誰もいない事を確認し此処まで乗せて来てくれた愛馬たちを霊体化させる。 一方のマスターは久方ぶりについた大地の感触を踏みしめていた。
「空の旅とかも良いだろうけど、やっぱり大地に足着けるのが一番だよねー。あっ、アキレウスは霊体化しなくていいよ。」
「いいのか?俺は本来こうして現界してるだけでかなりの魔力を消費するサーヴァントだぜ?それに…。」
「視られるかもって事でしょ?」
「…、ああ。マスターのその姿は知られてないにしても俺はバッチリアイツらに見られてるからな。」
そう、空中庭園にいる赤の陣営から遠視される危険性がある。 恐らくまだ自分たちが抜けた事に気付いていないとは思うが、その事に気付けば あのアサシン含め天草四郎は必死になって探すだろう。 おまけにあのアサシンは魔術にも精通し遠視なんぞお手の物。
本気になればこの街の隅々まで魔力を発する個所を監視することは可能だ。
「大丈夫、きっと探す事なんかよりもライダーとアーチャーが抜けて赤の陣営てんやわんやになるから。裏切った奴らがこんな近くの街に堂々と潜伏するなんて考えないよ普通。」
「あー…言われるとそうかもしんねぇな。庭園にいる俺のマスターだった奴等からは令呪は消えてるだろうし回路も切れてる。不具合で脱落したとかあの会議の後だから呆れて自害したとか考えるか。」 「多分ね。それとこの街はユグドミレニアの管理地、下手に魔術で遠視でもして黒側に気付かれたら空中庭園の存在バレバレになっちゃうし…。暫くイライラするだけだよ、きっと。」
あのアサシンがイライラし、天草四郎やランサーたちに八つ当たりするのが安易に想像できる。 そしてそれを煽るキャスター。
「まあ一応、魔力を感知されない様にこっちも対策はするけど。それと契約して分かった思うけど私の魔力量ならアキレウスが常に現界してても何ともないから大丈夫だよ。」
本来、アキレウスは通常のサーヴァント数体分の魂を誇る大英雄のサーヴァントだ。 並大抵の魔術師では一瞬で魔力が空になり満足に使役する事は叶わない。彼が戦えば干乾びる 先ほどまで契約していた元マスターたちもアキレウスを召喚した事もありそれなりの魔力の持ち主だったが。
新たにマスターとなった彼女は彼らとはとてもじゃ比較する事は出来ない魔力量だ
恐らく自分が全力で戦い、宝具の真名解放をしたとしても問題はない。
「マスターがそこまで言うなら…。」
マスターである彼女がそうしろと言うのであれば従う。 変な男に絡まれたりする危険性も無くなる訳だし アキレウスはそう自分に言いつけながら納得する。
「それじゃあ街に行って今日泊まる宿を探すか、上手く行って拠点探しでもしよっか。」
「了解だ、その前にちょっとタンマ。」
「?}
「この格好じゃ悪目立ちしちまうから…。」
そういうと彼は いつもの戦闘服から現代風のファッションを身に纏う。 どうやら霊基を少しだけ改竄し服装を変えたようだ。
「よし、どうだマスター。今時の若者っぽく見えるか?」 「凄い、アキレウス…私の知り合いと違ってファッションセンスある。あっこれつけといてね。」 「知り合い?なんだ、コレ…ただのブレスレットのようだが…。」 「あー、うん…こっちの話!ほら早く行って街の情報手に入れちゃおう!ブレスレットの事は後で話すね。」
林の中を歩きながら
前世の朋友であるギルガメッシュの残念すぎるファッションセンスを思い出す。 ライダージャケットとかはまだ良かった。 だが記憶が戻る前に出くわした時のあの赤いヘソだし理解不能なアレは強烈で。
「明日香ではないか!!今日も学び舎からの帰宅か、ご苦労!アレ?何故無視をする!明らかに目があったではないか!!」
「シリマセン、ヒトチガイデス。ワタシアナタシラナイ。」
「何故、片言!?」
あんなのに話しかけられたくなかった、他人のふりしたかった 真冬なのになんで腹出してるの?バカなの?そもそもよくそんなの売ってたな、よく買ったなお前レベルだった。
思えば昔から酷かったような。……忘れよう、頭が痛くなってきた。
「マスター、大丈夫か?顔色悪いが…」
「大丈夫、気にしないで。あっ、ほら街出れるよ。」
数分歩いていれば林を抜け街に出れた。 なんとも時代に流されていない歴史が色濃く残る街並みは新鮮だ。
此処が、トゥリファスの街。_____________
「アタランテも言ってたけど凄く綺麗な街だね。」
「俺もこの街に何があるかは分からないから誰かに聞かないとな。」
ただもう時間帯のせいか人通りが少ない。
周りからしたら私たちはただの異国の観光客にしか見えないだろう。 アキレウスの言う通り、私達はこの街の地形にはまだ無知だ
誰か詳しそうな人がいてくれるといいんだけれど。
「…!あの、すみません。」
とりあえず子連れのおばさんが歩いて来たので話しかける。
子供連れて買い物かごを持っているという事はこの街に住んでいる住人だ。
「あら、観光の方かしら?」
その人は快く立ち止まってくれて話を聞いてくれる。
「そうなんです。実は先ほど街に着いたばかりでして…」 「あらこんな夕方に?道は暗くて大変だったでしょうに。」
「それでこの近くに質屋と宿泊施設ってありますか?地図も失くしてしまって…」
「質屋?」とアキレウスが言うが気にしてはいけない。
「もちろんよ、昔からあるホテルが近くにあるわ。この通りを真っ直ぐそしてお花屋さんの所を右に曲がるの。そこから…」
おばさんは丁寧にホテルがある通りまでの道を教えてくれる。 どうやら此処から歩いて10分ほどの場所にあるみたいで、質屋もその通りに面してるらしい。 宝石専門に近い質屋らしく、よく世界中から宝石商がちょくちょく出向いてるぐらいの知れた店なようで… いい情報を手に入れてしまった。
「わざわざ道まで教えて貰ってありがとうございます。」
「いえいえ、トゥリファスは少し古めかしいけれど良い所よ。楽しんでね。」
おばさんにお礼をしアキレウスとともにその通りへ向かう。 その間に人がいない事を確認しお手頃のポシェットを投影し、その中にしこたまモノを仕込んでいく。
「まさか私が凛が考えていたことをする事になるとは…」
「ホテルは分かるが、どうして質屋なんだ?」 「だってアキレウス、考えてよー。私達この国のお金一円も持ってないんだよ?」
「あっ、そうか。」
「お金がないと宿にも泊れない、ご飯も食べれない。私他のサーヴァントと違って食事や睡眠必要だし。」 「…だよな、男ならともかくマスターは女だし風呂にだって入りたいよな。俺だってシャワーぐらいは浴びてぇ」
「だからお金を作る必要があります。」
「作る?…」
そこでアキレウスは気付いてしまった、
彼女のポシェットの中が何かこうゴツゴツとしたもので 膨れていっているのを。
「マスター、お聞きしますがその中身って?」 「えーっと金で縁取ったラピスラズリの腕輪に原石、それとダイヤモンドの指輪に原石にブルーダイヤのブローチ…金の延べ棒。」
ほらね。やっぱりその中身は宝石類や貴金属ですよ。 子供の頃の
「先生、ふと思うんですけどもし突然沢山の宝石が出て来たらそれをお金にして美味しい物食べたいですよね。」
「アキレウス。言うだけタダですからもっと言って想像力を働かせましょう。今日の夕飯は熊肉ですからね。」
師としたそんな会話を思い出す。 子供の頃思っていたことをマスターはいとも簡単にこなしてしまったのだ。
「鑑定書ないのは痛いかもしれないけど、世界中から宝石商が仕入たりしてるぐらいだから鑑定書なんぞなくとも簡単に見極めちゃうと思うんだよね、ほら私の投影精度は凄いし!」 「…マスター、最高過ぎ。」 「でもこういう宝石類を投影してお金にするのはこれで最後にするからねっ、あくまで潜伏している間の費用の為っ!」
_____なんで私が頼んでもやってくんなかったのよ!!ウチがどんだけ金銭的に苦しいか知ってる!?
脳内で赤いあくまが騒がしいが、状況が違うんだ凛。 遠坂が管理してた土地をあの外道神父が適当にやっちゃったのがいけないと思う。 結局アイツは遠坂家を金銭的にも苦しめて行ったのか…いやそもそも宝石魔術のコストが高すぎる。
それからの展開は早かった、質屋に入り。 トレーの前にどーんと並べた貴金属、そして宝石の原石たち。 質屋の店員たちが驚いた顔を見た瞬間、アキレウスは噴き出していた。
「鑑定書がないという事でしたのでっ、今から私達で鑑定の方を行っても!?」 「えぇどうぞどうぞ。それまでこちらで待っていても?」 「んぐ…ぶふっ」
焦るスタッフをよそに明日香はにっこりと冷静のままだ。 アキレウスは机に突っ伏し必死に笑いを堪えてる、あっ本当になんか子供っぽい。 宝石を奥に持って行ってスタッフ総出で鑑定が始まったようで
「なんだこのカラット!!」 「こんなデカいブルーダイヤ見た事ないぞっ、本物だ!」 「ひぃい、この腕輪何から何までとんでもない装飾だぞ!!」 「これは億で買い取っても全く問題ない!」
どうだ!伊達にあの王様の隣で溢れんばかりの財を見てた訳じゃないわ!! 日に日にどれだけ増えていく財宝を見て「もういいんじゃない?」と言った事か。 溜まるに溜まって行くお宝をしまう蔵がドエライ数になっていって あの金ぴかが困ったって話が…
ん?昨日もこんな話を思い出した気がする。
出されたオレンジジュースを飲みながら待つこと20分 アキレウスは調子乗ってブラックコーヒー飲んで吹き零してた。 ミルクとお砂糖貰う?と聞けば凄い速度で頷き「俺にはまだブラック早い。」と一つ学習した模様。
そしてお待ちかね、鑑定を終えた質屋の責任者がトレーと共に戻ってきた。
「おっ、お待たせ致しました。いやあ驚きましたよ、あんな宝石を一体何処で?」 「知り合いから頂きましてね。それで大体おいくらに?」 「えーとですね、こちらの金額で…」
ぱちぱちと電卓を鳴らしながら見せられた数字を見ても。 あまりルーマニアのお金の単位とかは正直ピンとこない、多分、この金額はとてつもないものなんだろうけども… それはアキレウスも同じようで「知識を与えられてはいるが、イマイチ分からん」との事。
「すみません、お聞きしたいんですけど。その金額ってこの街一番のお金持ちになっちゃいます?」 「なります。恐らくこの街の領主にだってなれますし首都の方でも十分に通用されるかと…。」
「そんなにいらないんだよなあ…。私達暫くトゥリファスに滞在したいだけなんで、そんなにいらないんですよ。普通に一軒家を現金で買えてあとは普通に生活に困んない額でいいんですが。あとあんまりこの辺りの物価分からなくて。」
そう言うと、丁寧にトゥリファスの平均的な月収と物価。家賃などの額を教えて貰った。 ルーマニアといえどトゥリファスは首都などから大きく離れてる事もあって物価は低いし、時代の流れに乗らないという事も加算され日本で言う、300万あったら沖縄の離島で大金持ちって奴だった。 それでもそこそこ良い家が買える額、生活用品とかも足りる額、この街で最低10年は何もしなくて良い金額で手を打った。 破格にも程があると驚かれたが、まあその宝石はどうせ本物に近い偽物だ。
交渉は無事に成立
換金した大量の札束を渡されたボストンバックにしまい 家を探している事を伝えると店長さんの知り合いの不動産にコンタクトを取ってもらい明日、物件を見に行く事が出来るらしい。 とても好調なスタートじゃないか。
近くのホテルで部屋を取り、今日はそこで一泊。 客室に入れば設備を確認する間もなく置かれていたソファに体を沈める。
多分、この二日間気が抜けたかったのが効いてるのか疲れが半端ない。 アキレウスも疲れたのか冷蔵庫から飲み物を取り椅子に腰を掛ける。
「マスター、疲れてるところ悪いんだが黒の陣営のサーヴァントについて教えてくんねぇか?」
「あぁ、うんそうだね。事前に対策しとかないと…。」
そうだ 私のサーヴァントとなったアキレウスには話す必要がある。 彼にとって一番相性の悪いスキルを持った弓兵があちらにはいるのだから話さずして戦う訳にはいかない。 戦力的にはどちらかというとランサーの存在があり赤の陣営が圧倒的だが現時点で黒の陣営には厄介なのが一点。
「まずバーサーカー、彼女は真名フランケンシュタイン。正確に言うと名も無い怪物、ヴィクター博士が作り出した機械人間。意思の疎通は出来るみたいだけど会話は難しそうだって。」 「赤のもそうだったけどバーサーカーってどうして会話してくんねぇんだろうな。アイツ、アッセイしか言ってくんねェし。」
狂化、がいけないんだろうけど きっと探せば普通に会話できるバーサーカーだっているよ、きっと。 フランケンシュタインの宝具は…確か、自爆系だとかアタランテは言っていたような。
「次にキャスター。真名アヴィケブロン…ゴーレム作りに特化したサーヴァントで…アレ?」
「どうした?」
バーサーカーの事に対してもそうだけど真名と宝具の性質は覚えてる。 でも結末はどうだ? 何かノイズが奔ったのかのように思い出せない。
赤の陣営側に監督役がいた時点でアタランテはある程度敵陣の脱落とかは把握していたしそれも話してくれていた。 ただ…フランケンシュタインとアヴィケブロンの最期はどうだったが思い出せない。
「気にしないで、大丈夫。次に…ライダーは、アストルフォ。宝具はバリエーション豊かでそれ次第で凄く化ける。」 「俺と同じライダーか、何に乗るかどうかちと気になるな。」
「ランサー、ヴラド三世。生前はルーマニアでワラキアの王様。簡単に言うと地元出身。サーヴァントに最も戦闘ボーナスが入る知名度補正があるからかなり手強いし、宝具が…すっごい串刺し系。でも神性持ちじゃない筈だから。」
そうアキレウスにとって天敵となるのが神性持ちのサーヴァントだ。 アキレウスの肉体は神性がないと傷を付ける事が出来ない、どんなに強くても宝具が凄まじくても それに神性が伴っていなければ彼にとっては流石に痛覚はあるだろうけど無意味。
「次にセイバー、ジークフリート。単純な強さでいうなら補正が入ってないランサーより強い。…だめだ、やっぱり全然思い出せない…。」
「思い出せない?大丈夫か?」
やっぱりだ、何故か思い出せる筈なのに。 それを思い出すことが出来ない。 間違いない…
「ごめん、なんか空中庭園にいた時よりこの世界に関する記憶が薄れてきてるっていうか思い出せないんだ、アタランテの最期に関わる重要な事と天草四郎の企ては分かるんだけど他のサーヴァントの末路とかそれまでの過程とか詳しいのが…。」
今の段階で思い出せるのは
・赤の陣営が大聖杯を奪取した後、黒の陣営とルーラーは手を組む。 ・黒のアサシンとルーラーが終盤のアタランテに大きな影響を作った ・黒側が終盤に空中庭園に乗り込む、ルーラーの前に憎悪に塗れたアタランテが立ちはだかる ・アタランテを止めに来たアキレウスが…アタランテを刺してアタランテの聖杯大戦は終わる。
これだけになってしまった。 あまりも断片過ぎて詳細までが思い出せない、アタランテは知る限り細かい事まで教えてくれた。 これだけの筈がない。
もしかして、私の記憶に制限がかかり始めた?
「流石に全てがマスターの知ってる通りに行かせないって事か。だとしても宝具と真名さえ分かっていればそれだけで十分だ。」
「気にすんな、アーチャーはどんな奴だ?」とアキレウスは言ってくれるが 問題はアーチャーなんですよ。 コーラを飲みながらアキレウスは聞き流そうとしてるけれど
「アーチャーはね、誠に言い難いんですけど。貴方のお師匠様のケイローンです…」 「ぶふぇえあ!!」
ほらやっぱり しかも見事に変な所にコーラが逆流したみたいで噴き出して涙目になってる。
「ちょっ、ちょっと待てマスター!先生が黒のアーチャー!?」 「うん。黒陣営では唯一の神性持ちだから、アキレウスが赤に残っていたら自然にケイローンがアキレウスと対決するしか無くなっちゃってた。」
「マジかよ…。いや強くなったところを見て貰いたいってのはあるが、敵対しなくてよかった…」 「でも向こうは容赦なく射抜いてくるかもよ?だってまだ敵だと思ってるだろうし。」 「ひぃっ…」
アーチャーがケイローンと知った途端、アキレウスは頭を抱えだした。 協力関係を結ぶまでに遭遇したら多分「こんにちはアキレウス、では踵に一発。」と矢のプレゼント 黒側でアキレウスの弱点知ってるのはケイローンだけになるだろうし必然か。
「踵狙ってくると思うか?」 「うん、バリバリ真っ先に狙ってくるだろうし多分神性持ちだから踵じゃなくてもダメージ通っちゃうでしょ。」
「だよな。しかも俺踵をやられたら速度7割落ちる上に不死性失って弱体化すんだぜ…。俺のアイデンティティ全部死ぬ。」
あくまで黒側だけの神性持ちはケイローンだけで。 赤側にはあと2人いる
「赤側のアサシンとランサーも神性持ってるよね?」 「アサシンは別にだけど…あのランサーはやり合うと本気にならないとまずいだろ?」 「ランサーの…カルナの逸話だと神を殺す必殺の槍があるからね。それじゃなくても性能的に頭おかしいサーヴァントだよ。神性絶対殺す系ランサー」 「……デスヨネ。俺とマスターが抜けた赤の陣営の主戦力だもんな、アイツ…。」
アキレウスの目からは涙が垂れた。 ちょっと心折れ掛けてたりする? いやでも庭園の時に黒のアーチャーの事言える暇無かったんだもの。 「やーい、お前の師匠。黒のアーチャー!」
「…俺、頑張る…。あっそういや赤のセイバーやルーラーは一体どんな奴だ?」 「セイバーは、モードレッド。アーサー王伝説に登場する円卓の騎士、アーサー王の嫡子で反逆したことで有名だよね。複雑ですわ…」
『ごはんがおいしいですね、おかわり下さい!』ともぐもぐしていたアルトリアの子供だなんて。 私どんな顔で会えばいいのか。アルトリアから全て遠き理想郷を渡されてるけど出したらキレられそう。 「お父さんと仲良くしてたんだよー、話聞く?」と言ってもキレられそう。 何をしてもキレられそう。
理不尽。
「で、次に…ルーラーはジャンヌ・ダルク。オルレアンの乙女で…聖女と言われたけれど結局、時代に世界に…人に殺されたって言うか…。」
『あの子たちを救えたはずだ!私に出来ずとも…!!聖杯ならば!!』
『この偽聖女!!子殺しめ!!』
『殺してやる、殺してやる…殺してやる…!!』
夢で聞いたアタランテの言葉の数々、これは全て一度目のルーラーに向けたもの。 アタランテが憎悪に身を捨ててまで憎しみを抱かせた裁定者 結局二人は分かり合えないまま終わってしまった。
「救えない事は分かってた、でも私はそれでも救いたくて仕方なかった。」
「でもあの聖女も正しかったんだ。あの子達を殺しあの戦いから解放してやる事も正しかった…。」
覚えている、アタランテが悲しそうに言っていた事を。 アタランテが魔獣となりルーラーを殺そうとした事も。 そしてその狂ったアタランテを止めたのが…アキレウスだ。 捨て身の攻撃で、最期は…
馬鹿だなぁ…お前は…。----------------------------
「マスター、あまり思い出そうとするな。そのルーラーは姐さんに大きく関わったんだろう?」
「うん…、でもね。終わりは決して良いモノじゃなかった、でも…間違ってなかったんだ。2人の思いは。」
誰も間違っていなかった。 願いも思いも間違っていない、ただそれはあまりも遠い理想なだけだけで叶えられない願いだっただけだ。 ルーラーの選択が人殺しだとしても、それしか子供たちを解放する方法は無かった。 だって…あの子たちはただの殺人鬼の霊基に深く刻まれてしまっているのだから。
完全に救ってあげることなんで、誰にも出来ない。
「マスターがそう思ってくれるなら一度目のルーラーも姐さんも報われるじゃねぇか。今回はマスターと俺がいる、最悪な終わりになんてさせねぇよ。」 「そう、だね。ありがと、アキレウス。」
そして問題は黒のアサシンだ。 アタランテにとって大きな分岐点でもあった存在、だが今回の大戦にはアタランテはいない 話によればアサシンがトゥリファスの街にやってくるのはまだ暫く先の事。
…どうにか救ってあげないと。 アタランテの願い通りまでとはいかないけれどそれに近い形で
「…それと、黒のアサシン ジャック・ザ・リッパーは訳有りでまだトゥリファスの街には来ない。彼女の事は向こうから手を出して来るまで放置しておこう。」 「訳あり、ね。そいつも姐さんに関係がありそうな言い方だがいいぜ。マスターの指示に俺は基本的に従うからな。」
これで、大方黒の陣営のサーヴァントの説明は終わった。 アキレウスにとっての障害は何と言ってもケイローンでしかないが 最悪出くわしたら猛ダッシュで逃げよう、いくら大賢者ケイローンでも最速の英霊を射抜くのは大変だろう。 さて一通り落ちついたらアレだ。 言ってしまっても良いんだろうが少し恥ずかしい
「ねぇ、アキレウス。」
「なんだ?マス…----------!?」
空中庭園にいる時からずっと思っていたのだ。 明日香は少し頬を赤らめながらアキレウスを見つめる、 突然、見つめられてドキリと胸が高鳴ってしまうアキレウスだが まさかこの短時間の間に俺の事を!?と邪な期待が出てしまったが その口から発せられた言葉は予想外だった。
「お腹空いたから、ご飯食べに行かない?」
「…あっ、はい。」
-------------------------------------
ホテルのフロントでこの辺りの美味しい店を教えて貰い 足早にその飲食店へと向かう メニューを見てすぐに注文をし 待っていればアツアツの出来立ての料理がテーブルに並べられた。
「おいしー!」
今、自分の前にいるのはマスターでも魔術師でもない。 ただのオムライスを頬張る年頃の女の子だ。仕草がなんとも愛らしい
「考えたら俺が渡したリンゴ一個だけしか食ってなかったんだもんな、そりゃあ腹減るわ。」
空中庭園の初日でリンゴを渡した時はあまり気にしていなかったが 彼女の事情を知った上で考えると、二日間での食事があのリンゴ一つというのは過酷だったろう。 その中で意識を集中していたら猶更空腹になる。
「リンゴくれたアキレウスが神様に見えたもん…。何度、あの神父に厨房はないの?って聞こうとしたか…。」
「まあ俺一応半神半人だし。あの男は受肉してるから食事必要だろうし庭園を探せばあるだろうが。あっこれ美味い」
基本的にサーヴァントに食事や睡眠は必要はない。 あくまで嗜好の範囲で取る者もいるが…
「麻婆豆腐とか作ってたら本当にあの外道神父と同じなんだけどなー…コトミネとか名前まで似てるし。」
外道神父、それは一体誰の事だろうか。 そして麻婆豆腐とは 聞いたら「アイツの場合はこの世全ての悪、溶岩みたいなの」と答えて来たので 彼女の世界ではそんな劇物が食されていたのかと不安になった。
「(この街って日本の調味料とか売ってるのかな?うーん、流石に投影魔術では…。)」 「(米粒が口の端に…舐め取りてぇ。)」
明日香はオムライスを アキレウスはラザニアを食べながら完全に別の事を考える。 アキレウスは自重しない。これはケイローンに叱られる事間違いない
「こういう家庭的な味、士郎のご飯を思い出す。」 「シロウ?」 「私の弟の方ね、アイツと同じ名前なの。文字は違うけど…」
「へぇ…マスター、弟いたのか。」
「うん、血は繋がってないけど凄く料理が上手だったの。あー、桜や凛も美味しかったんだよね。」
また食べたいなあ。笑いながらマスターは言うが。
義弟がいたという事はその大事な義弟を残してマスターは死んでしまったという事だ
それがどれだけ大きな決断だったのか、その時の気持ちを計り知る事は出来ない。
ましてや、その時の気持ちはどうだった?なんて聞く事も出来ない。 触れてはいけない部分だ。
きっとそれを聞いてしまえば、その時のマスターの覚悟を、今のマスターの存在の意味を冒涜する事になってしまう。
「そうか…、なあマスター。」
「なに?アキレウス。」
「デザート頼んでもいいか?」
「うん、いいよ。私も頼もうかなー。」
それを聞いて関係が崩壊するよりも マスターが泣く事の方が怖いな。
「そんじゃ俺は特製パンケーキ。」 「じゃあ私はストロベリーパフェにしよっかな。すみませーん!」
まだ彼女と出会って一日弱だがこの短い時間で十分だ。 俺が従うにふさわしい立派なマスターだと理解出来る、戦いでの強さなどではなく。 その勇者たる覚悟の強さがなによりの証拠だ。
「一体どういう事だ!?」
一方、「空中庭園」の玉座の間に怒りに震える女帝の声が響いていた。
「何故、ライダーとアーチャーが消えた!?この空中庭園から逃げ出したというのか!!」
セミラミスが感情のままに冷静さを欠き怒声を放つ様子を作家は面白話を聞くような形で見つめ ランサーであるカルナに関してはいつもの無表情のまま耳を傾ける。 セミラミスの鋭い視線はそのカルナに向けられた。
事の始まりは召集をかけても姿を現さないアーチャーとライダーを探してこいと命じられたカルナは 言われた通り広大な空中庭園を隅から隅まで探し 「二人の姿がない」と報告した事からだ。
焦りを感じたセミラミスの魔術で遠視を試みても庭園内に二人の姿を確認する事が出来ず。 更にシロウがマスターの様子を確認しに行ったが、 アーチャーとライダーのマスターの手から令呪の消失、繋がっていた回路が切られていた。 流石にこれには天草も頭を抱えるしかなかった。
「怒っても仕方がありませんアサシン。起きてしまった事は起きてしまったのです。 しかし一体どうやって我々に気付かれずに此処から姿を消したのかが疑問に残りますね。」
怒鳴り散らすセミラミスを落ち着かせるように天草は宥めるが ここで更に火に油をいれるのがトラブルメーカー第一位のキャスター シェイクスピアである。
「ライダーとアーチャーが駆け落ちしたとしたという点も有り得る!なんせ彼はアーチャーの事をやけに気にしておりましたからな!多くの女性を愛したアキレウスであれば無理に手を引いて…」
その瞬間セミラミスの眉間に更に皺が寄せられる 余計な事を言いやがって、と天草は思ったがすぐさまそれを否定する。
「いえそれは無いでしょう…アタランテは女神に純潔を、メレアグロスの失い結婚をしないと誓った狩人です。アキレウスから熱烈なアプローチを受けたとしてそれをすぐに了承し共に姿を消すとは考えにくい。それに二人ともにマスターとの契約を切り捨てています、単独行動を持つアタランテならまだしも数日は現界を維持出来ますが…アキレウスは魔力の消費が激しい、通常の英霊と比べ魔力を使う彼にとってマスターとの契約なしの単独顕現は自殺行為です。」
アタランテは月女神アルテミスに純潔の誓いを カリュドーン狩りの際に惹かれあっていたとされるメレアグロスを失い、生涯結婚をしない誓いを立てている。 その二つの誓いは後に無理矢理破られてしまったとされるが
サーヴァントと言えど、誓いを再び破るような事をするとは到底思えない。
「ではあの獣女が何かしたというのか、奴はただの狩人!魔術の心得はないというのに妾に一切気付かれること無く謀反を犯したと?」 「いえ、彼女が魔術を心得てないとは言い切れない。あくまで歴史というの伝承、人から人へ伝えられ真実ではない事もその際に練り込まれているものです。アタランテはアルゴー船で裏切りの魔女メディアと共に航海をしていた経歴もありますその際に魔術を教わったという事も考えられるのでは?彼女たちの時代のにおいて神はとても近しい存在でしたからね何らかの加護を受けていても不思議ではありません。」
アタランテに魔術の心得が仮にあったとする それでもアキレウスに関しては現界し続けている可能性は考えにくい どの道この2騎の消失に関しては油断していた自分の責任だ。
「クッ…!だがいくらこの空中庭園、そしてランサーがいるからと言ってもあのアキレウスが自害したのかは知らんがあまり大きな損失だ!!これでは今後の作戦にいくらなんでも影響が出る!」
そう、黒の陣営がサーヴァントを召喚し 傾向を見計らったタイミングでユグドミレニアに奇襲をかけるつもりでいた。 それはアタランテとアキレウスも作戦に組み込まれた上での計画だ。
カルナ一人に全てのサーヴァントを迎え討つ事をさせるのは厳しい。 シェイクスピアは滅法肉弾戦に期待は出来ない上、セミラミスは空中庭園を操り大聖杯を引きずり出す役目もある。 スパルタクスに期待は…思う存分暴れるだけ暴れさせても仕方ないだろう。
「その策も考えなくてはいけませんね…では私はマスターの皆さんと話し合ってまいりますので。指示があるまでみなさんご自由に過ごされていて下さい。」
セミラミスは感じた、庭園の奥へと消えていく天草を見て まだ何か策があるなと--------------- 多少動揺はしていたが伊達にあの無謀にも儚い願いを掲げた訳ではないという事か。 次はどんな手を見せてくれるか、この苛立ちを吹き飛ばすぐらいはしてほしいものだ。
だがそんな天草をカルナは疑問を抱きながら見つめていた。
----------何故、自分たちのマスターはあの男にだけ指示を出すような面倒なマネを? 自分たちに会わずしてあの男だけを信頼しているのは監督役という役職の為か? いやそこまで信頼してどうする、黒の陣営が潰えれば次に起きるのは赤同士での潰し合い 深入りする事も身を滅ぼす事に繋がるのではないだろうか? そもそもこの男は監督役でありアサシンのマスター、聖杯大戦の正式な参加者でもある。
もしやその事を疑問に抱いたあの2人は戦いを降りた。 だとして、裏切りとも取れるその行動を否定する事は自分には出来ない それぞれに進むべき選択肢がある、
たまたま彼らはそれを選んだだけの話だ。
それがせめて彼らにとって後悔が無い選択であればいい。______________
長く、暗い廊下を天草は焦る事も無く歩く。
彼はこの聖杯大戦の為だけに60年生き続けた。
生前生きた年月の数倍の長さを老いもせず過ごしたのだ。 唯一つの願いを叶える為に。
「必ず俺は大聖杯を取る。」
予想外の出来事が起きたならば それなりの対応をすればいいだけだ。
「まさかこんな序盤から使う事になるとは思わなかったが…」
怪しい笑みを浮かべたまま天草四郎は 決意を瞳に宿す。
そう、コレさえあれば赤の陣営…いや天草四郎時貞の勝利は確実であると。----------------------
ラストでこの世界トップクラスのズレフラグです。
まだそれが明らかになるのはあと2、3話は先かな…。
メレアグロスというのはアタランテと同じアルゴーナウタイのメンバーでカリュドーン狩りの中心人物です。
細かい事はwikiや諸説等でバーッと読みましたがアタランテに恋心を抱いていた人物でアタランテ自身もメレアグロスに悪い気は無くお互いに惹かれあっていたようです。
カリュドーン狩りで一番最初に猪に攻撃を与えられたのがアタランテで止めを刺したのがメレアグロス。
その時、彼は一番の手柄はアタランテだと猪の皮を剥いで彼女に渡します。→アタランテの宝具のアレ
だけど周りはその手柄はアタランテじゃなくてどうのこうのと言い合いになり争いになります。
その結果、メレアグロスは亡くなります。
メレアグロスと相思相愛だったアタランテは彼の死にショックを受けて結婚しない事を誓った(ここは諸説が色々ある模様。)
その後アタランテは国に帰ったら帰ったで父親のスタイリッシュ掌返しで「婚活(男は命がけの追いかけっこ)」する事に。
当然アルテミスへの誓いもありメレアグロスの事もあって乗り気ではないアタランテ。
駆けっこに負けた男はどんどん姐さんに物理的に射抜かれて死んでいきます。
個人的にはアタランテの夫になったヒッポメネスもある意味良いキャラしてんなと思うんですよね。
ヒッポメネスはアタランテに一目惚れして
嫌々負けた男たちを殺して辛そうにするアタランテを見て「やめさせてあげたい」と思っていたのかもしれないし。
普通に走ったら負けるから、奥の手の女神様から「黄金のリンゴ」を貰いそれを使ってアタランテの注意を逸らしどうにか追いかけっこに勝つわけで…。卑怯者と言われてもアタランテを解放してあげたかったのかなと…
大雑把にしか書いてませんが、メレアグロスやヒッポメネスの事をもうちょい詳しく見たいなって人は
「アタランテ ヒッポメネス」「アタランテ メレアグロス」と検索すると沢山出てきます。
おまけにアキレウスの父親のペレウスも「アタランテ ペレウス」と調べると少し?出てくるかと思います。
邪な部分は無事に息子に遺伝した模様。
5/14追記
ケイローン・アキレウスピックアップガチャ 結果
ケイローン ×2
不夜城のキャスター(3人目)
イバラギン(2人目)
ランスロット(2人目)
デオンくんちゃん(3人目)
パライソちゃん
エリちゃん(槍) (2人目)
イベント礼装全部出た
麻婆豆腐わんさか
以上。私の二万円は彗星の如く!疾風怒涛の福沢諭吉!!
今回のサブタイトルは①なので次回は②です。
ちょっとしたトゥリファスの街での生活パートにします