■小児科医・森戸やすみ先生の子育てQ&A
Q.新型コロナワクチンは子どもも打つべき? 副反応は大丈夫?
A.重大な副反応の報告はなく、接種したほうが安心と考えられます
先日、「子どもも新型コロナ(mRNA)ウイルスワクチンを接種したほうがいい」と発信したところ、「年配者を守るために子どもが犠牲になるのか」というような反応が返ってきました。確かに高齢者がワクチンを打つと死亡者が減り、若者がワクチンを打つと感染者を減らせます。でも子どもがワクチンを接種したほうがいいのは、第一に子ども自身を守れるからです。
子どもは、大人に比べると新型コロナウイルス感染症にかかりにくいのは事実です。でも、まったくかからないわけではありません。いったん新型コロナウイルス感染症になってしまうと、合併症を起こすこともありますし、重症化した場合は後遺症が残ることもあります。海外では小児の死亡例もありますし、日本でも最近10歳未満の基礎疾患のない子が重症になったというニュースがありました。また、今後もどんな変異株が出てくるかわからず、打てる手は打っておいたほうがいいと考えるからです。ファイザー・ビオンテック社製、モデルナ社製のmRNAワクチンは、新型コロナウイルス感染症の発症を95%前後も防ぎます。もちろん重症化も防ぎます。
「mRNAワクチンは怖いもの」「不妊症になる」といったデマによって不安になっている方は、ぜひ『こびナビ』の「ワクチンQ&A:みなさんへ」、厚生労働省の「新型コロナワクチンQ&A」を読んでみてください。ワクチンの仕組みや成分、安全性についてわかります。
新型コロナ(mRNA=メッセンジャーRNA)ワクチンは、 ウイルスの設計図(遺伝情報)を用いたワクチンです。 生ワクチンではないので接種したことで感染することはありません し、他人を感染させることもありません。 ファイザー社の臨床試験では、12〜15歳の2260人のうち、 ワクチンを接種した群では0人、プラセボ群では16人がCOVI D-19(新型コロナウイルス感染症)を発症し、 高い効果があることがわかっています。一方で、 2回接種後の副反応は、発熱(19.6%)、頭痛(64.5%) 、倦怠感(66.2%)といった症状だったようです。
ごく稀にアナフィラキシー反応のあった人がいます。 日本ではファイザー・ ビオンテック社製のワクチンで100万回に7件、 モデルナ社製は100万回に1件が報告されています。 激しいアレルギー反応は早くに出るため、接種場所で対処します。 アナフィラキシー、 アナフィラキシーショックで亡くなった人はいません。
厚生労働省 新型コロナワクチンの副反応疑い報告について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou-utagai-houkoku.html#001
血栓症は、mRNAワクチンでは報告がありません。心筋炎は、 ごく稀に報告されています。高齢者よりは若年者、 女性よりは男性の2回目に多く、アメリカで2回目接種後の12- 29歳男性では100万人に40.6人の頻度です。 軽症で終わり、死亡者はいません。心臓の専門家は「 若年者では新型コロナウイルス感染症にかかった場合にも心筋炎に なることがあり、新型コロナウイルス感染症にかかった場合には、 ワクチンを接種した場合よりも、 はるかに高い頻度で心筋炎がみられる。こうしたことから、 ワクチン接種により感染の重症化予防を図るメリットの方が圧倒的 に大きい」と言っています。とはいえ、接種後、 数日以内に胸の痛み・息苦しさ・ 動悸などが生じた場合は心筋炎の可能性も考えて受診しましょう。
厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0079.html
ファイザー・ビオンテック社製とモデルナ社製のmRNAワクチンは12歳以上が接種できます。こうした制限があるのは、 その年齢以上しか治験(実際に大人数に接種して安全性と効果を確かめること)が終わっていないためですが、今後はさらに小さな子どもも打てるようになるでしょう。
接種可能な年齢の子どもはみんな打ったほうがいいというのが私の意見ですが、心配なことがある場合はぜひかかりつけ医に相談してみてください。どうしても接種したくない場合、子どもの新型コロナウイルスの8割は保護者からの感染なので、せめて保護者や周囲の大人が接種してほしいと思います。また、持病のあるハイリスクな子どもが新型コロナウイルスにかかると命にかかわりますので、ぜひ受けてください。
<今回のポイント>
○ 子どももワクチンを接種したほうがいい
○ 現在は12歳以上
○ 今後は低年齢でも接種可能になる見込み
○ 特に持病のある子どもは早めの接種を
※この記事は2021年8月1日現在の最新情報をもとに作成しています。