大量の大麻を所持し、逮捕されたフジテレビの敏腕局員。彼を信頼して大事な撮影を任せ、私生活でも行動を共にしていたのが中居正広だった。ジャニーズ退所後、孤立を深めつつあったTVスターが頼っていたものとは――。
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3月19日午後、河津桜が咲き乱れる河川敷にタレント・中居正広(49)の弾んだ声が響き渡った。東京都荒川区の汐入公園に集結したのは、20年以上の付き合いがある男性ヘアメイクやスタイリスト、撮影スタッフなど20人余り。ステディカムを携えた一同は、さながら“チーム中居”のようだ。その日、中居は有料ファンサイトのオリジナル動画の撮影に励んでいた。
「はい小林! 帽子取って。OK、マスク取って。3、2、1、ゴー! OK!」
和気藹々とした雰囲気の中、中居から名指しで呼ばれる刈り上げ頭の男。笑い声が起こる中、男がカメラに向かって猛ダッシュすると、中居は嬉々として声を張り上げた。
フジテレビ局員の小林正彦(38)が逮捕されたのは、6月8日のことだった。
「小林は東京都江東区の路上で約80グラムの乾燥大麻を所持していたとして、大麻取締法違反容疑で警視庁城東署に現行犯逮捕されました。友人が運転する車に乗っていた際、警察官に職務質問されたことがきっかけでした」(社会部記者)
この小林の逮捕は、ジャニーズと深い付き合いのある芸能関係者の間に衝撃を走らせた。彼こそ長年、中居の“右腕”として信頼を得ていたテレビマンだったからだ。
SMAP解散から5年半。今年8月で50歳になる中居は今、苦境の淵に立たされている。20年以上続く冠番組「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS系)は存続の危機に。
「同番組の平均世帯視聴率は年々低下しており、6月10日放送回は6.2%で民放5局で最下位。GWに放送された2時間スペシャルも4.8%と最下位が定位置になっており、局内でもお荷物扱いされています」(TBS局員)
今年3月には、中居が司会を務めていた「中居大輔と本田翼と夜な夜なラブ子さん」(TBS系)が終了。目下、テレビのレギュラー番組は「ザ!世界仰天ニュース」(日テレ系)、「中居正広のキャスターな会」(テレ朝系)を含め、わずか3本にまで減っている。
中居は空いた時間をどう過ごしているのか。
「最近はコロナ禍で趣味の雀荘通いもできず、仕事で外出する以外はほぼ自宅に引きこもっていたようです。野球中継や映画を見ながら酒をガブ飲みするので肝臓の数値が悪化し、1〜2カ月禁酒してはまた酒を飲む、という不摂生な生活を送っている。今は体重も過去最高の63キロまで増えているそうです」(芸能記者)
そんな中居と対照的なのが、別々の道を歩み始めた「新しい地図」の稲垣吾郎(48)、草彅剛(47)、香取慎吾(45)の3人だ。今年4月、Eテレで待望のレギュラー番組が始まり、完全復活を印象付けた。
彼らを支えるのは、SMAPの元チーフマネージャー・飯島三智氏である。旧知の芸能関係者が飯島氏に「中居くんは合流しないのか」と尋ねると、彼女はこう口を濁したという。
「中居は“テレビの人”。うちに来てもねぇ……」
一方の中居自身も、確執のあった木村拓哉(49)を排除する形となる「4対1の構図に見られることはイヤだ」と周囲に常々、話しているという。
仕事が減っていく一方で、中居は他のタレントのように、YouTubeやインスタグラムなどで情報を発信することは一切なかった。ITオンチという理由もあるが、何より「限られた仲間としか仕事をしたくない」というデリケートな性格によるものが大きいという。
「中居さんと付き合うのはすごく難しいんです。自分が司会の番組では本番直前まで楽屋から出て来ず、お弁当を食べながら台本が真っ黒になるまでビッチリと進行を練り込む。共演者が楽屋に挨拶に行こうとすると、中居さんのマネージャーから『ちょっと今は……』と止められるほどです」(制作スタッフ)
そんな閉じこもり気味の中居が、「独立して2年。今年50歳だから、このようなタイミングなのかな」と、4月1日に満を持して開設したのが、「中居ヅラ あの子たちに…、」という公式ファンサイトである。
「入会費1000円、月額100円という格安のサイトですが、ファン向けに公開した動画の制作費は300万〜500万円はかかっている。スタッフは20人以上いるし、ステディカムを使うなんて半端なことではなく、その辺のYouTubeとは訳が違います」(IT業界関係者)
「中居さんはこだわりが強い」
このサイトの立ち上げに合わせるようにフジテレビの退職を決め、動画制作の重要な役割を果たしていたのが小林だったのだ。
1983年、千葉県で生まれた小林は法政大学工学部を卒業後、フジテレビに入社。バラエティ畑を歩み、AD時代には「森田一義アワー 笑っていいとも!」を担当している。
「小林は学生時代にDJデビューを果たした“パリピ”。入社後もクラブに入り浸っていた」(フジ局員)
転機となったのは、その後に配属されたバラエティ番組「SMAP×SMAP」。同番組を通じて知り合った中居に見出され、“師弟関係”を結んだのだ。
「スマスマはフジの中でも別格のバラエティ番組で、予算が桁違い。毎週水、木の朝10時〜夜10時まで撮影を行い、膨大な素材をもとに1時間の番組に仕上げる。出演者とスタッフは家族のように結束が固く、中でも中居さんは茶目っ気のある小林を弟のように可愛がっていた」(番組関係者)
20年3月に中居が独立してからも二人の蜜月関係は変わることなく続いた。
「数年前、小林は中居さんとフランス旅行に出掛けていました。滅多にプライベートを明かすことのない中居さんが、恋人であるダンサーの武田舞香さんを彼に紹介したことも。『中居さんと舞香ちゃん、その友人の女優・松本まりかちゃんと食事に行った』と話していたこともあります」(小林を知るフジ関係者)
小林は局内で、中居の寵愛ぶりをこう顕示していた。
「中居さんは気難しい人。本当に信頼している人にしかオフショットを撮らせない。俺は信頼されているから、プライベートでいつでもカメラを回せる」
3月19日、カメラ機材をレンタルした小林は、公式ファンサイトのオリジナル動画を撮影するため、現場である汐入公園に向かった。小誌が独自に入手した映像には、悪ノリした中居に命じられた小林が遊歩道を全力疾走する冒頭のシーンが収められていた。
「LINEをやっていない中居さんは小林と携帯電話のショートメッセージで連絡を取り合っていた。3月23日には作業部屋に中居さんが赴き、入念な動画チェックが行われた。小林はなかなかOKがもらえず、『中居さんは細かい部分のこだわりが強い』と嘆いていました」(制作関係者)
小林らが制作したオフショット満載のメイキング動画が順次公開されていくのは5月以降のこと。一方で小林には“もう一つの顔”があった。古くからの仕事仲間が証言する。
「彼が違法ドラッグに傾斜し始めたのは、20代半ばだった10年ほど前から。大麻のほか、LSDなどのケミカルドラッグにも手を出していた。独身の彼は最近、ホテルを転々とする生活を送っていましたが、大麻の臭いが部屋に残らないように必ずベランダのある部屋をチョイス。『LSDを舌の上で溶かして観覧車の夜景を見るとキラキラしてスゲーんだ』と興奮した様子で語っていたこともある」
生活は荒み果て、やがてドラッグとギャンブルの無限ループに陥っていった。
「彼は局員ら数十人から借金を重ね、その金をインターネットカジノなどのギャンブルにつぎ込んでいたのです。1000万円単位の返済が滞り、会社に知られることになった。“不良社員”として現場を外され、デスクワークになっていましたが、ほとんど仕事らしい仕事をしていなかった。最近は地元千葉のハーレーダビッドソンの店舗や、セレクトショップのPR動画を制作するなど“闇営業”ばかりしていました」(同前)
東京・六本木の高級しゃぶしゃぶ店。中居が同店に小林らスタッフを招き、打ち上げを行ったのは4月1日のことだ。動画内の音楽を担当した「RIP SLYME」のDJ FUMIYAも参加していた。
「小林は『打ち上げのときの中居さんは楽しそうで、終始ぶっ飛んでいてヤバかった』と話していました」(前出・フジ関係者)
中居から手伝いを依頼
その頃、小林は親しい局員に対し、フジを退局する意思を表明している。
「39歳になる7月までに退職したい。事務作業だけではつまらない。もっと現場で仕事がしたい」
5月、小林は退社届を提出。有休を消化中に捜査の足音は迫っていた。
「逮捕に至ったのは職質がきっかけですが、実は4月以降、捜査当局には小林の大麻使用に関する情報が寄せられ、交遊関係を含め内偵捜査が進められていたのです」(前出・社会部記者)
逮捕の四日後、小林の実家を尋ねると、父が苦渋の表情で取材に応じた。
「本人と面会できましたが、退社のことも知らなかったし、青天の霹靂です。小学校は地域の野球部に所属し、中学校ではバスケ。根性あるって言ったらあれですけれど、小学校から高校までは皆勤賞。でも、家族には仕事のことはほとんど話さないんです。不規則な仕事で実家にほとんど帰っていなかったし、色々なところに泊まっていたようです」
右腕の逮捕という事態を受け、いま中居は何を思うのか。6月13日午後1時、中居はラジオ収録のためニッポン放送を訪れた。約1時間半後、収録を終えて姿を現すと、40、50代を中心とした女性ファンら約20人が一斉に手を振る。だが、中居は一瞥もすることなく、俯き加減で送迎車に乗り込んだ。その後、帰宅した自宅マンションで記者が声をかけるも、一言も発さずマネージャーと玄関に入っていった。
中居に小林との関係について取材を申し込むと、代理人弁護士がこう回答した。
「動画の撮影、編集については所属事務所から映像制作会社に委託しており実際の撮影等も制作会社が行っていましたが、中居から小林正彦氏と他のテレビ制作会社スタッフにも個人的に手伝いを依頼したとのことです。(小林には)食事代と交通費を渡しております」
小林とフランス旅行に行ったこと、交際相手の武田を交えて食事をしたことについては「プライベートな事柄ですので回答いたしかねます」と答えた。
今後の捜査状況について捜査関係者が語る。
「小林が所持していた80グラムという大麻の量は、個人で使用するにはあまりに多い。売買に関わっていた可能性もあると見て、警視庁本部の薬銃対策課が捜査支援に乗り出し、共犯者や売買組織の中枢へ向けた捜査が行われています」
信頼していた右腕が、中居の新たなチャレンジの足を引っ張ることになった。
source : 週刊文春 2022年6月23日号