この身はただ一人の穢れた血の為に   作:大きな庭

10 / 79
賢者の石の章終了。
五巻のダンブルドアの独白は、何度読んでも感慨深いものが有ります。

後、誤字の報告ありがとうございます。
今更この機能の使い方を理解したので、後で纏めて修正します。


今世紀で最も偉大になるべきでなかった魔法使い

 全くもって巫山戯けた話だ。

 〝英雄〟達を褒め称える老人の話を聞きながら、そう思う。

 

 ハリー・ポッターが賢者の石を護ったという〝秘密〟は既に流布されていた。

 誰が流したかなど、考えるまでも無い。

 

 ハーマイオニー・グレンジャーも、ロナルド・ウィーズリーも、最初に率先して自身の功績を声高に語る程愚かではない。賢者の石というのは、魔法界全体でも上から数えた方が早い程の叡智の結晶(アーティファクト)であり、学校に秘されていたというのは現実味が無く、何よりそれを巡る〝英雄的行為〟は禁じられた廊下の先──外部から事実上閉ざされた空間で行われた事だ。一年生がそのような明らかな〝法螺話〟を吹聴したところで、誰も信じはしない。

 

 本来であれば、それが真実であろうと誰も知り得ないし、決して真実の保証も為し得ない。

 ただ一人、それを実現させる権力と説得力を有する、間違いなく〝英雄〟一人を除いて。

 

 嗚呼、全くもって、全くもって筋の通らない話である。

 あの老人は、スリザリン生──中でも首席と最終(第七)学年の監督生の姿が見えないのだろうか。

 

 彼等彼女等は、その地位を有している事から、基本的に聡明だった。

 まあ監督生の方は、スリザリン寮内の秩序維持という都合上家柄等の方が重視されるのだが、一応優秀と言って良いのは違いないだろう。僕も多少の恩義があった。

 だからこそ、老人の流れが一体何処に落ち着くのか、それを予見してしまっている。その蒼褪めた表情からは、倒れていないのが不思議な位だった。

 

 六年だ。スリザリンは、これまでの六年間、寮杯を維持し続けて来た。

 

 しかし、彼等は今年、それを喪ってしまう。その挫折が、屈辱が、傷跡が、これからの彼等彼女等の社交界、経歴、そして出世にどれ程の暗い影響を齎す事だろうか。

 無論、スリザリンは声高にその失点をあげつらいはしない。寮杯を獲得する事が出来なかった歳上の偉大な先輩というのは幾らでも居るのだから、そうしてしまえばそれこそ要らぬ蛇を出してしまう事になる。

 

 けれども、連綿と続いてきた栄光を喪わせた者として、裏で嘲笑されるのは変わりない。

 たとえそれが恣意的な校長閣下の介入によろうとも、賢者の石を護るという偉業によろうとも、熾烈な減点主義の世界においては結果こそが全てなのだから。挽回が出来る可能性が有っても、それは遥か先の話で、栄光の筈だった出だしの躓きを無くすものでは無いのだから。

 

 アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアは、彼自身がグリフィンドールに選ばれた事を当然視し、また誇りに思っている。

 しかし、この瞬間の行いを見る限り、彼は、よりにもよって組分け帽子が今年度謳った〝手段を問わず目的を遂げる狡猾さ〟を体現しているように思え、それ故に蛇寮にこそ組分けされるべきように思えた。

 

 無論、その事は僕の校長閣下に対する〝敬意〟を喪わせるものではない。

 逆に好感や親近感すら抱かせるものだ。権力というのは、必要な時に用いなければ意味が無い。それが君臨すべき者として、〝英雄〟として正しい姿だ。

 

 そうして、校長閣下はネビル・ロングボトムにも十点加点した。

 それによって、スリザリン寮の点数を上回った。そして、そこら中で──勿論、スリザリン寮を除いて、歓喜が爆発した。レイブンクローやハッフルパフですらも同じような所を見るに、どうやら、我が寮は余程恨まれていたらしい。

 

 ただ、それらを耳にしながら、僕の思考は全く別の所に飛んでいた。

 すなわち、今回の加点劇の解釈について。

 

 あのドラゴン騒ぎの真実は僕にとって未だに解らない事だらけである。

 が、しかし、あれが賢者の石に纏わるもの()()()()()()()()、校長閣下は全てを元に戻しただけだ。つまり、ドラコ・マルフォイと三人組の深夜の馬鹿騒ぎにまつわる、先の五十点かける三イコール百五十点減点を無かっただけにしたに過ぎないのだ。

 となれば、純粋に校長閣下が加点したのは、ネビル・ロングボトムだけになるとも言える。

 

 つまり、校長閣下は、彼に対しても何らかの意図が──

 

「おうおう、喜びが爆発しておるのう。しかし、諸君。少しばかり待ちたまえ」

 

 老人は歓喜に沸く生徒が多少落ち着くのを見計らって、片手を上げた。

 

「儂の話は終わったと、まだ儂は一切言うておらぬ事に気付いてほしい」

 

 その時点では、これから先の展開を予想出来た者は居なかったに違いない。

 

「自らが渦中に飛び込む事だけが行動するという事ではない」

 

 瞬間、広間が不自然とすら言える程に一斉に静まり返った。

 グリフィンドール席は周りの友人達と肩を組み、また叩き合う恰好のまま凍ったように不自然に動きを止め、他の寮もまた同じだった。

 それは先程のように歓喜が爆発する予兆では無く、これから不吉が到来する予感故に。

 

「彼等四人は、勇気を、グリフィンドールを象徴する要素を正しく体現した。それは紛れもなく加点するに相応しい事じゃ。しかし一方で、この今学期に狡知を、スリザリンを象徴する要素を正しく体現した者がやはり居る。

 ──ステファン・レッドフィールド君」

 

 一瞬、何を言われたのか解らなかった。

 そして、理解が及ぶ前に、全寮生の視線が僕の方を向いていた。

 

「彼は賢者の石を──嗚呼、彼はそれが()()()()()()()()()()()()()()()()()()──自ら護ろうとはしなかった。彼は寮監であるスネイプ教授に、そして勿論他の教授陣に対しても、その大人としての知識と力に対して信頼を示した。しかし、それと共に、叡智に満ちた警告と助言を残したのじゃ。そして、それは確かに正しく、間違いなく今回の騒動を解決する一翼となった。

 よって、スリザリンにも十点を与える」

 

 前代未聞の同時優勝。

 そうであるのに、グリフィンドールは勿論、他二寮も静まり返ったままだった。

 

 栄誉を辛うじて確保したスリザリン寮の人間ですら、僕を見つめるだけで何も言わなかった。

 先程までそこら中に転がっていた楽し気な顔と笑い声は無く、表情を喪った顔と重苦しい沈黙が大広間を支配していた。

 

 ただ、寮監のみが(同類)を冷ややかに笑っていた。

 

 

 

 

 

 全てを振り切って、その場所へ赴いた。

 ガーゴイルも、螺旋階段も、獅子のノッカーの付いた扉も、何の支障にもならなかった。

 そして、今回の事件のフィナーレを大勢にとって不本意な形で締め括った老人は、生徒達の困惑など無かったように、校長室の真ん中に存在していた。

 

「一体何のつもりですか、アルバス・ダンブルドア……!」

 

 怒声が校長室全体に響きわたる。壁に掛かっていた肖像画達は、今は寝たふりをしておらず、僕の蛮行に対して眉を顰めていた。前の時には居なかった筈の美しい鳥──止まり木に止まっている不死鳥も、まるで不機嫌さを示すかのように首をもたげていた。

 

 もっとも、部屋の主は椅子に掛けたまま、穏やかに微笑みを見せていた。

 その事が、余計に腹立たしかった。

 

「僕は貴方に点数を恵んで貰おうと思った事は一度として無い! 貴方を信奉するグリフィンドールの生徒を使って貴方が何を企もうと構わないが、それ以外の人間について、まるで貴方の小間使いのように賢しく利用しようとしないで頂きたい……!」

「解っておる」

 

 老人は、表情を変えないまま重々しく頷いた。

 

「君がスリザリンの中で何とかバランスを持って、この一年間を過ごそうとしてきた事も。儂の行いはそれを破壊するであろう事も。その責は全て儂に有る」

「……であれば、何をしてくれるんです? 何もしてくれないんでしょう、貴方は。最後の最後、事がどうしようもなくなるまで貴方は動かない人間だ」

 

 無理矢理に怒りを鎮めつつそこまで言い切って、溜息を吐く。

 別に言葉の内容は完全な本心では無い。無論、獲得出来る物があれば、この老人から何等かを奪い取りたかったが、生憎それは直ぐに思いつかなかった。

 

 そして、結果からを見れば、あれは悪い事だけでは無かった。

 幾らスリザリンが忌み嫌う相手からの加点とは言え、寮杯を喪うという不名誉から逃れられたという事実は大きかった。スリザリンの首席、監督生は、酷く迂遠で直截的とは程遠い物であったが、それでも感謝を示したのは事実だった。故に、他のスリザリン生が、真正面から僕の行いを非難したり、問い詰める事は出来なかった。

 

 何よりこの老人が、明らかな虚偽を混ぜ込んだというのが救いだった。

 質の悪い事にその虚偽に気付く者が三名程――当然、その事実を既に知る寮監は除く――居るのは悩み事だったが、今考えるべきでは無かった。

 

「……僕の後には、寮監も怒鳴り込んできますよ。寮監は僕以上に怒り心頭だ」

 

 寮監は老人の策略に巻き込まれた僕を嘲笑するのに忙しく、老人の言葉に彼の功績も示唆されていた事に最初気付かなかった。

 しかし、生徒が寮監により口止めされていると強く主張すれば、矢面に立たされるのが誰かなど明らかだった。そして僕はそれをする事を躊躇わなかった。この老人はそれを見越して敢えてあのような言い回しをしたというのも、やはりまた明らかだったからだ。

 

 僕が口を割らない事にドラコ・マルフォイは強い不愉快を示したが、直ぐに引き下がった。

 別に僕から聞けなくとも、スネイプ寮監から聞けるだろうと信じ込んでいるのだろう。無論、あの寮監が馬鹿正直に真実を告げるとは思わない。精々彼をだまくらかす上手い言い訳を、大人の知恵により捻りだしてくれる事を祈るばかりだった。

 

 そして、老人もそんな寮監の現在に思いを馳せたのだろう、重苦しく頷いた。

 

「……そうじゃな。この一年間、セブルスには迷惑を掛け続けた。セブルスにもやはりその権利が有るし、後で誠意を尽くさねばならんじゃろう」

 

 迷惑を掛け続けた。

 それはハリー・ポッターを護り続けた事を含むのだろう。

 

 僕もクィディッチ観戦をしていた以上、ハリー・ポッターが箒の上で踊っていたのは見ていたし、またドラコ・マルフォイの様子から、罰則時には大冒険が有った事は察していた。僕が考える以上に、ハリー・ポッターという〝英雄〟はたった一年で幾度も死に直面し、また危うい所で逃れ続けてきたのだろう。

 

 何より、後半は寮監にとって御荷物がまた一つ増えていたのだから、堪らなかったに違いない。

 

「……その際には僕から感謝の言葉が有った事を告げておいて下さい。寮監が居なければ、僕は間違いなく死んでいた。それは疑う余地も無い事実です」

「そういうのは自分自身で言うべきものではないのかね?」

「寮監は、僕からのそれを受け取ろうとしないでしょう。寮監は、僕からの敬意を一切求めていない」

「……君達も、意外と複雑な関係に有るようじゃの」

 

 老人がそう吐き出すが、こればかりは理解されないのは承知していた。

 僕とて、説明し難い所が有るのだから猶更だ。ハーマイオニー・グレンジャーに対する態度、御互いが御互いに抱く嫌悪、それも理由の一つだろう。だが、今学年を通してどういう訳か、思ったのだ。僕は決して、スネイプ寮監と相容れるようになってはいけないのだと。

 あの背中に投げ掛けた言葉も、その一環だった。

 

 だからこそ、僕は問わねばならなかった。

 アルバス・ダンブルドア――今回の全てを知る者に対して。

 

「クィリナス・クィレル教授はどうなりました?」

「彼は死んだ」

 

 

 

 

 

 冷淡な物言いだった。

 そこに容赦は一切なかった。

 

「……君は彼を教授と呼ぶのじゃな。彼が邪悪で有る事を知った今でさえも」

 

 嘆かわしいというように軽く首を振る老人に、僕もまた首を振り返してやる。

 

「知っている今だからこそですよ。そして、僕が会話したのは、非魔法族の知識や常識を十分理解していた元マグル学教授であり、闇に対抗し続ける事を最後まで忘れなかった闇の魔術に対する防衛術教授だった」

「過大評価に過ぎるの。彼は特別を求めていた。邪悪の深奥にある教えを受ける事を躊躇せず、杖を用いず飛翔するという特徴的な技能を獲得し、杖無しで自在に魔法を行使出来るにようになった。十一歳から苦楽を共にした友であり、父であり、子である筈の杖を喪う事を些事と看做した。彼は力に溺れていた」

「溺れる事の何が悪いのです? 溺れているという事は、まだ沈んでいないという事でしょう? 彼は足掻いていた。その末路を覚悟しながら、尚耐えようとしていた。彼は自ら杖を、効率的に魔法を使う為の外部装置を遠ざけた」

「いいや。最初から彼にはそこまでの強さは無かった。塵のような存在に堕ちた邪悪に敗北する程に弱かった。彼の貪欲さと浅はかさは、邪悪の再来を招いた。そこに同情すべき点は無い」

「であれば、思い起こすべきだ。彼はトロールという危険物を制御しきり、尚且つグリンゴッツの金庫を破るという大罪を犯した訳だ。特に小鬼はヒトの策謀を聞いてくれるものではない。勿論、塵ではどうにもならない」

 

 僕は嘲笑と共に続けた。

 

「そんな邪悪と共に教授は一年も無駄に時間を過ごしていた。賢者の石を護るアトラクション如きに過剰な注意を払い、中々挑もうとしなかった。その間、服従の呪文や闇の物品を用いる事も無く、ハリー・ポッターも含め、ただの生徒一人も殺すどころか傷付けすらしなかった」

 

 老人の表情は微塵も動かなった。

 彼は心を閉ざしていた。閉心術のような魔術的意味では無く、大人だけが持ち得る豊富な経験と自身が正しいのだという強固な信念さでもって、僕の言葉を排除していた。

 

「第一、教授は明らかに取り憑かれていましたが、それは何時からです? 旅行先で黒い森に入った時ですか? それともグレートブリテンに戻ってきて、グリンゴッツ破りに失敗した後ですか?」

「……それを特定する事に、果たして何の意味が有るのかね? 彼が何時闇に取り憑かれようとも、闇に堕ちた事に変わるまい」

「大ありですよ。貴方は教授が弱弱しい邪悪に唆される人間だったとする一方、その邪悪こそが教授を強くしたとする。そこには矛盾があるでしょう」

「矛盾は無いとも。彼の精神が傲慢な割に惰弱で有った事と、彼の魔法力が才能に満ち強大で有った事は問題無く両立しうる。そして、その点において残念極まりない人間じゃった。それらが釣り合っていない者の破滅は必然と言えるからの」

 

 議論は平行線だった。

 僕は老人の言い分を認める気は無かったし、老人もまた同様だった。

 

 それでも確信した事が有った。教授があのような物に取り憑かれ、間近で見張られなければならなくなったのは、グリンゴッツ破りの後なのだと。そうでなければ、この老人は何ら誤魔化す必要は無かったのだから。

 

 つまり、そこまではクィリナス・クィレル教授は後戻りする事が出来た。

 

 そもそもの話、僕がグリンゴッツと賢者の石をヒントとして結び付けたのは、ハーマイオニー・グレンジャーに対する〝信頼〟が主であり、些か飛躍的な物で有った事は否定しない。しかし、かつての時も、明らかに指摘したこの今も、アルバス・ダンブルドアは何ら否定しなかった。

 となれば、グリンゴッツに賢者の石が置かれていたのは三人組の推測通り、事実であったのだろう。そして、グリンゴッツ破りが失敗した原因が、その金庫が当日には空になっていたからだという事は、当時の日刊予言者新聞で大々的に報道されていた。

 

 であれば、この老人の意図の下で、賢者の石は移された。

 その邪悪が迫っている事を悟ったからこそ、その行いは為された。

 そして、クィリナス・クィレル教授は、結果として闇の帝王に取り憑かれた。

 

「貴方は石をグリンゴッツから移した時点で、クィリナス・クィレル教授を殺していた訳だ。邪悪が迫っている事を知りながら、その邪悪の根本を滅ぼそうとせず、寧ろ高貴な石ころを護る事に終始した。一人の教授のような些細な犠牲を気にせず、闇の復活を防ぐ為に」

「君は少々儂に期待し過ぎておるよ。儂は全ての悪事を食い止められる訳では無い。そも、君とて、一人を救う為に賢者の石を渡せば良かったとは思ってなかろう」

「ええ。そんな馬鹿な事は思いませんよ。その代わり、貴方が今回の〝悪巧み〟を考えついたのが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であって欲しいとは思ってますが」

 

 グリンゴッツからホグワーツに移した。それは確定されたと言っていい事実である。

 しかし、それが何処も経由せず直接為されたのだというのは、確定された事実では無い。

 要するに、()()()()()()()、アルバス・ダンブルドアがハリー・ポッターを()()()()()()()()()()()()()()()石を移したという事は、誰も語ってはいないし、確認されても居ない。

 

 アルバス・ダンブルドアは一体どの時点で今回の事を計画したのか。

 賢者の石を秘する場所は、本当に最初からホグワーツだったのか。それは依然不明である。

 

 そしてやはり、この老人は慈悲と矜持を示す為に、真実を語るつもりは無いようだった。

 

「……あの場で、全てを語らなかったのは何故ですか」

 

 だから、わざとらしくとも話を変える事にした。

 この余りにも強過ぎる大魔法使いに、クィリナス・クィレル教授の心境は理解出来ないだろう。寮の違い云々では無く、生き物としての格が違ったのだから。

 そして、僕はそれが出来た。同じ程度の格でしかなかったのだから。何より彼の本音をぶつけられた者として――それを答えないままに終わってしまった者として、僕は彼を理解してやらなければならなかった。

 そして、それらは今言っても全てが遅い事であった。

 

 遣る瀬無さを振り切って、僕は続ける。

 

「賢者の石の護りが余りにも馬鹿々々しい事は置いておきましょう。ただ、上級生は当然に疑っている事は伝えておきます。何をしたのかいまいち不明なハリー・ポッターは別として、貴方の言によれば、ロナルド・ウィーズリーはチェス、ハーマイオニー・グレンジャーは論理。いずれも一年生に破れる程度ならば、大した事は無かったのではないかという事に」

 

 彼等は得意満面だろうが、冷ややかに見ている者は多かった。僕とてそうだ。

 

 チェスが創造的であった時代は、非魔法界では終わりの兆しが見えている。

『Deep Thought』と名付けられた〝能無し〟は、〝42〟という答えを出すに留まらず、既にチェスの最高位のタイトルを持つ人間を打ち破った。世界王者には敗北したが、いずれ敗北する時代は訪れるだろう。魔法界のチェス駒がある種の我儘さ──ランダム性を有しているのは確かだが、解けないもので無いとは確信している。

 論理とてそう。寧ろ、単純な論理こそが、彼等〝能無し〟の最も得意とする所である。

 

 今回の賢者の石の護りは、魔法族が見下す〝マグル〟ですら容易に超えられる程度の試練でしかない。非魔法族であれば、かの邪悪よりも余程上手く賢者の石をホグワーツから盗み取る事が出来ただろう。

 

 だが、その簡単さを老人に指摘する事は、今の本題などでは無かった。

 

「あの三人組とクィリナス・クィレル教授の間に起きた事は〝秘密〟でした。しかし、抜け落ちている事が有ったでしょう? 貴方がハリー・ポッターを褒め称える際、何と言ったか、貴方は本当に自覚しているのですか?」

「……流石に、そこまで耄碌しては居らぬとも。彼については……『その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え』た」

「何故、闇の帝王を退けたと言わなかったんです?」

 

 ヴォルデモート卿。

 自身が対峙した邪悪がソレである事を、僕は確信していた。

 本能が理解していた。闇の中の闇。理性と自制を残らず吹っ飛ばし、誰も行きついた事の無い領域にまで踏み込んだ、人知を超えかねない程の()の魔術の体現者。出会ってしまった以上、それがどんなに有り得ない事のように見えても、心が肯定してしまっていた。

 

 そして漸く老人は、僕の期待通りに、苦々しく悲嘆にくれた表情を浮かべてくれた。

 

「僕は彼が死んだと思っていた。ハリー・ポッターを危険に晒す真意が、理解出来ないでいた。だが、闇の帝王が生きているのであれば、それは全く別の話だ」

 

 勿論、アルバス・ダンブルドアが何故ハリー・ポッターを矢面に立たせようとするのかまでは解らないが、それでも、闇の帝王が彼を狙う事は明らかだった。

 闇の帝王にとって、彼は自身の失墜を招いた怨敵なのだから。

 

 であれば、これから歩むべき道筋も見えていた。

 

「貴方は魔法大臣になるべきだ」

 

 僕は言った。

 アルバス・ダンブルドアは小さく呻き声を上げた。

 

「コーネリウス・ファッジ現魔法大臣がどういう人間か僕は知りません。けれども、闇の脅威に立ち向かう存在として、貴方以上に相応しい人物は居ない筈だ。貴方は彼を今すぐ蹴落とし、グレートブリテンを纏め上げなければならない」

「……おお、ステファン。コーネリウスは、まだ二年程しか任期を務めておらぬ。それに、何より魔法大臣になる為には選挙が必要なのじゃ」

「任期? 最大七年の選挙さえ守れば、魔法大臣のそれには確たる下限も上限も無かったと記憶していますが? そしてたかが選挙が言い訳になると? やれば良いでしょう。全ての人脈と権威、政治力を費やして、如何なる手段を用いてでも」

「そう簡単に為せる訳では無い。下が上を容易くひっくり返してしまえば、その地位は権威も権力も喪ってしまう。事は、魔法大臣、魔法界の頂点なのじゃ」

「既に綺麗事が言える平時では無い、その事は貴方が解っているでしょう? そして頂点だからこそ、貴方は奪わねばならない。闇の帝王がそれを目指すからこそ、貴方は先にその地位を手中にし、占有し、脅威を排除し続けなければならない」

 

 闇の帝王の復活。

 それを真剣に受け止める者がどれだけ居るかは怪しいものである。

 

 グリンゴッツ破りに闇の帝王が裏に居ると囁きながらも、その本人が実行したとは誰も思っていない。グレートブリテンの魔法族は微妙で複雑な心情を抱いており、アルバス・ダンブルドアという英雄が語った所でその事実を信じられず──しかし今ならば、戯言をほざきだした老人の、最後の花道として頂点に押し上げる程度は是とするだろう。

 

 何なら〝生き残った男の子〟を選挙の顔(poster boy)にすれば良い。彼はその役割を喜んで果たそうとするに違いない。

 

 そして、一度権力を持った後で有れば、後はどうにでもなる。

 

「クィリナス・クィレル教授は不死鳥の騎士団について言及しました。それが魔法省の組織で無い事は想像が付きます。名称がマーリン騎士団に由来している事は明らかですから。故に、今度は同様の事を繰り返してはならない。グレートブリテン全体をもって、対抗すべきだ」

 

 相手がゲリラ戦法を用いてくるからと言って、こちらもそうせざるを得ないという事は無い。

 確かに苦労は伴うだろう。組織が巨大になればなる程に、身動きは鈍重な物となる。しかし、巨大であればある程に可能である事もまた有った。如何なるアルバス・ダンブルドアでも二か所に同時に存在する事が出来ないように、頭数というのは単純な力だった。

 

 そして、纏め上げるのは復活してからでは遅い。

 服従の呪文、磔の呪文。適切な人質、見せしめの処刑。恐怖、猜疑、そして利益。

 それらをもって、闇の帝王は当然に人の結束を破壊しようとするだろう。だからこそ、その前に、結束と団結を強固にしておかなければならない。今だ残党達が表立って動けず、スパイを多く入り込ませるのが難しい間に、万全の準備を整えておかねばならない。

 

 そう。

 

「――大いなる善の為に」

 

 今度こそ、アルバス・ダンブルドアは片手で覆った。

 死んだように身動ぎを止めたまま、そして暫くの間何も言わなかった。

 そこに大魔法使いは居なかった。あの時と、クィリナス・クィレル教授の時と同じだった。知識と経験によって形成された虚飾の皮が剥がれ落ち、肉体と精神を賦活していた血は抜け落ちて、彼を彼たらしめる本質が顕れていた。

 

 そして、老人は言った。

 

「権力を持つ儂は信用出来ぬ。儂は、それを求めはせぬ」

「────」

 

 僕は、何も言わなかった。

 

 権力。

 魔法魔術学校校長を、事実上グレートブリテンの全魔法使いに影響力を行使出来る地位を、彼は何と考えている? 

 その地位に四半世紀以上も君臨し続けている人間が、客観的に見て、権力にどんな態度を取っていると評せるだろうか? 

 

 だが。

 だが、この老人には言っても伝わらないだろう。

 

 そして今漸く、本質的に理解した。何故、他のスリザリンがこの大魔法使いを嫌うのかを。

 彼はそれが自身のマグル贔屓に基づくものだと信じているのかもしれない。実際その側面は有るだろう。けれども、嫌悪を抱いていても、敬意と尊重の念を抱く事は出来る筈だ。しかし、他のスリザリンはそうしない。出来ない。その最も決定的で、致命的な理由が今眼前に横たわっていた。

 

 そして僕は、やはりスリザリンのようだった。

 

「……何故、僕に何も言わないんです?」

 

 諦観と共に、僕は静かに、極めて穏やかに聞こえるように言った。

 

「貴方は僕より遥かに生きている。遥かに長くの経験を有し、膨大な魔法力を持ち、そして広範な知識と深淵なる叡智をその身に宿している。そんな貴方であれば、僕の無知で浅はかな言葉など全て跳ね飛ばせた筈だ。前に来た時ですらその機会は有った。なのに、何故、貴方はそのような態度を僕に取るのです?」

 

 それだけが、僕にとって理解出来なかった。

 どういう訳か、この老人は僕と真正面から向き合おうとしている。言葉を聞こうとしている。そして、それはこの老人にとって最も大事であろうハリー・ポッターよりも真摯な事は間違いなかった。

 

 王様の耳はロバの耳。近しく、大事な人間に喋れない事が、しかしどうなっても良いモノに対して容易く喋れるという事は得てして存在する。

 

 けれども、その〝穴〟として僕を選ぶ理由が、僕には解らなかった。

 

「……それはのう、ステファン。よりによって君がその名前を持つからじゃ」

 

 果たして、それに答える老人は。

 残酷な位に、憐れさを覚える程に、完璧な老賢者の姿を取り戻していた。

 

「数奇過ぎると思う。じゃが、前回スリザリンである君がよりにもよってその目的の為に此処に訪れた時、儂はそれを思い起こさざるを得なかった。勿論、会話してみた君は、彼とは異なっていた。けれども、その根底に在る激しさを見れば、それは儂にはやはり酷く似ているように思う」

「……余りに抽象的で、意味が解りかねますが」

「そのようにしているからの。気付かなければ、奇妙な一致でしかないのじゃから」

 

 僕の非難を、老人は当然のように受け止めた。

 

「しかし、半純血である儂にはその知識が有った。そして、その宿命を、思い起こさざるを得なかった。偶然の相似だと切り捨てられなかった。それと共に繰り返しては欲しくないと、彼のように贖いに生きる事になって欲しくはないと何処かで願っている」

「……願うだけですか、アルバス・ダンブルドアともあろうものが」

「それ以外出来ぬのじゃ。その力は最も強大で、同時にどうしようもないものであるからの」

 

 要するに、実質的に何も語るつもりは無いのだろう。

 この老人はこの老人なりに確かな根拠があるのは間違いない。けれども、手掛かりが余りにも無さ過ぎて推論する事は不可能であり、それ以上に読み解く必要性もまた見出せなかった。

 

 僕は踵を返そうとし、けれどもその前に老人に告げた。

 

「もう僕は二度とこの場所に来るような面倒な真似はしたく有りません。今回の件で懲りました。自分の力を過信し、周りの力を感じて、要らぬ事に首を突っ込むべきでないと。寮監の助けが無ければ、僕は間違いなく死んでいた訳ですから」

 

 力無き者、資格無き者は死ぬとクィリナス・クィレル教授は言った。

 そうだ。その言葉の通りに、彼は死んだ。アルバス・ダンブルドアが示唆するに、教授は闇の帝王の教えを正しく実現する力量を有しながら、しかし滅ぼされた。彼は己の末路をもって、正しく闇の魔術に対する防衛術の在り方を証明してみせた。

 

 アルバス・ダンブルドアの周りは死に塗れている。

 

 ジェームズ・ポッター。リリー・エバンズ。〝英雄〟の親である彼等ですら死んだ。

 彼等がホグワーツの首席だった記録は、今尚校内に輝かしく残っている。今の僕より年長で、知識豊富で、圧倒的に優秀である事は歴然としていた。しかし、死んだ。

 

 彼等は器が足りなかった。息子の成長を見届ける前に、闇の帝王の前に屍を晒した。世間はその見事な死に様を称賛するが、かと言ってそれと同様の末路を望まない。英雄的行為を無責任に称賛するのは、何時だってそれをしようとは思っていない凡人だけだ。

 

 スリザリンは違う。自己防衛の下、当然に、躊躇いも無く逃げる。臆病と笑われても、汚名を代価に生存を買えるのであればそれで良い。ただ愛の為に、それを行う。生きて、妻と子と共に笑い、涙し、その上で天に定められし時間を全うしたいと思っているから。

 

 そして、僕達が逃げた所で、それでも世界は上手くやる筈だ。

 今まで間違いなくそうであったのだし、この世には〝英雄〟が居るのだから。無責任な者が得するように、世界は出来ている。

 

「しかし、ステファン。

 君がスリザリンであるように、彼女はグリフィンドールなのじゃ」

 

 全てを見透かしたような大魔法使いの言葉に、僕は答える意義を感じなかった。

 僕は無視して入口へと、その樫の扉へと歩いていった。無理矢理入って来たのだから、無理矢理出て行く権利もまた同様に存在する筈だった。

 

 けれども、僕はもっと良く考えるべきだった。

 

 僕は好き放題言った。心の赴くままに、感情の奔るままに。

 しかし、そもそもそれを可能にしたのは──敢えて校長室へと招き入れるような真似をしたのは、間違いなくアルバス・ダンブルドア本人だった。

 

 であれば、彼の方にもまた僕に告げるべき事があったと考えるのが素直だった。

 僕は最初から勘違いしていたのだ。そして間違えていたのだ。あの加点劇は、決してスリザリン的では無かった。彼がグリフィンドールである以上、他の可能性を検討すべきだった。

 

 だからこそ、そうしなかったこそ、聞くべきでない事を聞く羽目になる。

 

「──言い訳と受け取ってくれて良い。儂は浮かれ過ぎたのじゃ」

 

 僕は足を止め、しかし振り返らなかった。

 もう二度と、そのような姿は見たくなかった。先の一度で十分だった。〝英雄〟を、その力量を、叡智を、それに対する敬意を心の底から疑ってしまう事などはしたくなかった。

 

「学生達の前に出た瞬間、彼を大きく褒め讃えたいという我欲に駆られた。最初に加点の事を口にした以上、もはや止められなかった。我に返った儂は、最後に君の事を思い出した。儂は多少の冷静さの表れとしてスリザリンにも加点し、前代未聞の同点優勝とした」

 

 それは冷静さとは言わない。

 その反論をするには、アルバス・ダンブルドアの言葉は弱々し過ぎた。

 

「君は儂の〝些細な〟計画が全て上手く行ったと考えておるのじゃろう。嗚呼、上手く行ったとも。上手く行きすぎた。儂は選択と挑戦の権利を与え、そしてハリーは見事に受けて立ってみせた。ヴォルデモート卿に真っ向から立ち向かってみせた。誇らしかった。立派な男だった。どうだと言わんばかりじゃった。じゃが……じゃが」

 

 絞りだすような声は、酷く震えていた。

 

「たった十一の少年が正しくそう出来ると、果たして誰が想像出来るかね? 彼はヴォルデモート卿といずれ対決するであろう。しかし、()()()()()()、今である必要は無い。その覚悟と勇気を持ち、自身の宿命を意識する事は、の。生まれながらにして英雄で有った者は存在せず、当然十一歳で違ったと言って非難する者もまた居らぬのじゃ」

 

 ……嗚呼。

 アルバス・ダンブルドアは、その言葉を告げる為に、僕を此処に呼んだのだ。

 

 この老人の策謀の全容は知れない。そしてまた、僕に明かす事も永遠に無いだろう。

 けれども、今学期に秘密の一端に、ある種ハリー・ポッターよりも深く触れた者に対して、その誤解を──全ての事象を掌握していたのだとされる事は我慢がならなかった。彼の策謀は、巨悪に直面させ、それが何たるかを実感させる所までで有り、恐らくはその恐慌を慰め、再起と発奮を促す事こそ本筋の計画だった。

 

 そして同時に、その事実に思い至らざるを得なかった。

 アルバス・ダンブルドアは、未婚であり、子供を──養子ですらも──持った事が無いのだと。すなわち、本当の意味で、彼はその()()()()()()()()

 

「──最後になったが」

 

 付け足された言葉は、先程までが夢であったかのように平静を取り戻していた。

 

 僕は漸く振り返った。そこに居たのは、やはり間違いなく〝英雄〟だった。

 彼にとって真に大事な者達が、他ならぬ彼に対して望み続けているのであろう、老練で悠然とした老賢者の態度だった。素晴らしき、一点の曇りなき大魔法使いの姿だった。

 

「君に加点した事が思い付きで有った事は否定しない。けれども、嘘を述べたつもりは無い。君は正義の下に、それも同時にスリザリンらしく行動した。それは正しく評価されるべき事であり、儂は願わくは、君が今後もそれを持ち続けて欲しいと思っておる」

 

 たとえ、儂等がゴドリック・グリフィンドールとサラザール・スリザリンのようになろうとも。

 

「……失礼します」

 

 何も残す事は無い。そう思っていたが。

 この世の誰よりも愛に対して真摯であり、その力を信奉していながら──しかし誰よりも愛に愛されていない魔法使いに対して、僕は敬意の言葉を残した。

 

 

 

 

 

 そうして、僕の一学年は終わりを告げた。




・クィリナス・クィレル
 クィレルは漏れ鍋において、ハリー・ポッターに挨拶し握手している(一巻・第五章)。また彼自身、グリッゴッツ後にヴォルデモート卿が「間近で見張らないと決心」したと述べている(同・第十七章)。
 そして奇妙な事に、原作において「大きな紫のターバン」「バカバカしいターバン」が言及されるのは組分け時点(同・第七章)。漏れ鍋時点においては,「青白い顔の若い男がいかにも神経質に進み出た。片方の目がピクピク痙攣している」と描写されるのみである。

・アルバス・ダンブルドア
 作中、彼の計画が常に成功し、またその言葉が常に正しかったと訳では無い。
 予言を伝えなかった結果シリウスの死亡、三大対抗試合の失敗、ジェームズ・ポッターに秘密の守人を断られる(三巻・第十章。恐らく、彼が「友を信じないのは、不名誉極まりないことだと考えていた」(七巻・第五章。ルーピンの発言)から)など。作中描写は無いが、純血思想的にはネビルが予言の本命であった事からすれば、やはりこちらも断られているかもしれない。
 また、分霊箱について、彼は誰にも(二人の友人を除いて)言ってはならないと告げたが、最終的にハリーは髪飾りの捜索についてDAに助力を求めたし、最も重要なナギニの破壊を招いたのはハリーがネビルにその殺害を託したからである。これは神秘部の戦い前のネビルへの低い信頼(五巻・第三十三章)とは対照的であるともいえる(但し、これらも彼の策謀の内であると解釈するのは可能であろう)。
 弟であるアバーフォースは、「兄が偉大な計画を実行しているときは、決まってほかの人間が傷付いたものだ」「秘密主義を母親の膝で覚えた・秘密と嘘をな」(七巻・第二十八章)と一貫して辛辣であり、彼を敬愛するハリー・ポッターですら、全てが終わった後「こんなに難しくする必要が、あったのですか」(同・第三十五章)と述べすらした。

 もっとも、その一方で誰もが知っている通り、彼は作品を通してヴォルデモート卿の殺害(そしてハリーポッターの生存)計画については完遂している。

・聖ステファノ
 キリスト教最初の殉教者とされる。
 主人公の名前がこれ由来なのは偶然。彼の名前は別の所から。バイオハザードも関係無い。

 なお、グレゴリオ暦における聖ステファノの日は、1月9日。
 それが誰の誕生日かは、ハリー・ポッターファンには言うまでもない。

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。