渦中の吉川赳氏は雲隠れ 連絡も取れない中、自民党県議団が辞職勧告

山崎琢也、菅尾保、中村純、床並浩一
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 【静岡】18歳女性に飲酒を勧めたり、現金を渡したりしたと報じられ、自民党を離党した吉川赳衆院議員(40)=比例東海ブロック=。説明を求める声が高まるが、これまでに応じる構えはない。参院選を目前に控え、雲隠れを続ける姿勢に「身内」からも辞職を突きつけられた。(山崎琢也、菅尾保、中村純、床並浩一)

 14日、自民党県連は、急きょ、役員会と県議団の議員総会を開いた。説明責任を果たすよう重ねて呼びかける岸田文雄首相に対し、一向に応える様子を見せない吉川氏に批判が続出した。参院選の公示が近づいていることもあり、影響を心配する出席者からは即時辞職を求める意見が相次ぎ、県議団は全会一致で辞職勧告を決めた。

 問題発覚後、県連は対応に追われた。党が静岡選挙区に擁立する立候補予定者(50)とツーショットで写った「2連ポスター」をはがすことを決め、本人と連絡が取れないなか、支部を中心に関係者が各所を駆けずり回った。

 元環境相の細野豪志衆院議員を相手に選挙区では連敗を重ね、比例区で復活や繰り上げ当選してきた吉川氏。ともに選挙を戦ってきた支援者からも、説明責任を果たさない姿勢に批判が寄せられているという。

 県連の良知淳行幹事長は「辞職をしっかりと突きつけろという一致団結した声をもらった。吉川議員へその声を届ける」と話した。

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 JR富士駅近くにある吉川氏の地元事務所は、シャッターが下ろされ、ひっそりとしていた。のぼり旗などはなく、事務所であったことを示す痕跡は見当たらない。

 近所の人によると、10日までは窓に参院選立候補予定者と並んだ2連ポスターや岸田首相のポスターが貼ってあったという。それも13日には、すべて撤去された。「土日に取り払ったのだろう。昨日、今日(13、14日)と人の出入りは見ていない」。

 後援会関係者も肩を落とす。「本人はやめないようだ。離党して誰も首に鈴をつけられなくなったが、後援会の存続は難しいだろう」と話した。

 近くの会社に勤める50代の男性は「週刊誌報道が事実ならみっともない。比例復活で議員になっているのだから、自民を離れたら議員も辞めるのが当然だ」と話した。

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 野党各党は与党の「敵失」に批判を強める。

 立憲民主県連の渡辺周代表は「言葉を仕事にする公人、政治家として、指摘された内容について本人が説明すべきだ」。国民民主県連の岡本護幹事長は「比例当選の議員が党を離れた場合は辞職すべきだ。自民も公党として説明責任を果たしていない」と批判した。

 参院選静岡選挙区に立候補を予定している現職と新顔計7人のうち2人は女性。その1人は「18歳に対してやってはいけないことをしたのでは。心に傷をつける行為で同じ女性として許せない」と話した。

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 吉川氏の自民離党で空席になった党衆院静岡5区支部長のポストについて、自民県連は城内実会長が当面の間、職務を兼務する人事案を固めた。承認を求めて近く、党本部に上申する。

 5区には、吉川氏と小選挙区で激しい選挙を戦い、昨秋に入党が認められた細野氏がいるが、参院選まで時間が限られる中、良知幹事長は「県連会長に引き受けてもらうことが参院選に向けて一番良いと判断した」と話した。