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2022.04.29徐々に物語とつながっていくタイトルバックになっています
沖縄・やんばる地域で生まれ育った四兄妹の、1972年の本土復帰からの歩みを描く、笑って泣ける家族の物語「ちむどんどん」。
今回はタイトルバックを手がけた映像監督の森江康太さんが登場。CGアニメーションを駆使した映像へのこだわりや、そこに込めた物語への思いも伺います。
――タイトルバックを担当されるのは、「ひよっこ」(2017年度前期)に続く2度目ですね。決まったときのお気持ちをお聞かせください。
声をかけていただきとても光栄でしたが、朝ドラなのでプレッシャーも感じました。2021年の初頭に正式に担当することが決まり、当時出来上がっていたところまでの脚本を読ませていただいてから制作に入りました。
――タイトルバックの内容は、どのように構想されたのでしょうか。
脚本を読み、「ちむどんどん」は黒島結菜さん演じるヒロインだけではなく、両親の賢三(大森南朋)と優子(仲間由紀恵)の物語でもあるのだなと感じました。賢三が得意とする料理の腕前が暢子のその後の人生に大きな影響を与えるなど、親から子へ受け継がれていくものの様子が端々に描かれています。そこでタイトルバックは、時代を超えて紡がれる親子の絆を、サイドストーリー的に描いた映像にしてみようと思い、内容を練っていきました。
――具体的には、どんなストーリーになりましたか?
ドラマが進むに連れて徐々に物語とリンクする内容になっています。各シーンに込められた意味がすべて明らかになるのは、この物語の中盤以降ですね。みなさんからの反応がとても楽しみですし、すでにドキドキしています。「この場面にはどんな意味があるんだろう?」と想像しながら楽しんでください。
――制作にあたり、沖縄へ取材に行かれたと伺いました。現地で体感したことが映像に生かされた点を教えてください。
制作当初から、青い海や白い砂浜といったステレオタイプな沖縄の景色だけではなく、舞台であるやんばる地域の日常を描き出したいと考えていました。この土地は森が多く、雨も頻繁に降っていました。亜熱帯のジャングルのような森の中に静かに降りしきる雨を見ながら、この情景こそやんばる地域の日常だと実感しました。なので、雨のシーンは必ず入れたいと思いましたね。
結果的に、雨が降っているシーンが個人的に一番好きなカットに仕上がっています。縁側でたたずむ二人の間に流れるゆったりとした時間が、まさに自分の描きたかったやんばるの日常のように思えました。また、構図やカメラワーク、色味などもどこを見ても、映像屋としての好みが詰まったカットです。
――映像は全編フルCGアニメーションで作られていますが、沖縄の情景をCGで表現する利点はどんなところでしょうか。
背景をCGで作ることで、手描きのアニメーションでは表現しきれないディティールを描くことができることだと思います。風にそよぐ草や、木の枝、葉っぱ一枚一枚を動かすことで、やんばる地域の壮大な自然を少しでも感じていただけたらと思っています。
ただ、すべてをCGで描いたというわけではありません。火の粉が舞っていく星空や、雲は手描きの背景です。雨のシーンで縁側の向こう側に見える風景は撮影セットの写真をアニメーション風に加工しているんです。ちなみに星空に輝く星座にも、実は細かい設定があります。それぞれのシーンで表現したいことに合った作り方をしています。
――朝に放送されるドラマという点を意識された部分はありますか?
以前「ひよっこ」のタイトルバックを担当した際に、「映像に出てくる車や電車を見ながら、朝から子どもたちが喜んでいる」という声をたくさんいただきました。その経験から、たとえドラマの内容が分からない小さいお子さんが見ても、楽しんでいただける映像にしたいと思いました。ですので、豚やチョウのような親しみやすいキャラクターを登場させています。
また、沖縄取材の際、至る所にチョウが飛んでいてそれがとても印象的でした。今回登場するのは「アサギマダラ」というチョウです。2000キロもの長い距離を移動するチョウと言われていて、沖縄から東京に羽ばたいていく暢子と重ねました。
――ほかにも沖縄を象徴するさまざまなものが登場しますが、それぞれにどんな意図が込められているのでしょうか。
劇中でもよく登場する沖縄そばは、早くに亡くなってしまう賢三が得意とする料理です。ヒロイン・暢子はこの味を受け継ぐことになっていくので、親子の絆を表すアイテムとして登場させたいと当初から思っていました。このカットは月曜しか登場しませんが、これを見た視聴者の方に「沖縄そばが食べたい」と思ってもらえたらうれしいです(笑)。
そして、後半に出てくる黄色い花ですが、この花は沖縄三大名花の一つである「オオゴチョウ」という花になります。ぜひ、興味のある方はこの花の花言葉を調べてみてください。今作の朝ドラにぴったりの花言葉が出てくるはずです。
また、これ以外のカットで描かれているものも、ドラマの中盤以降に改めて見ていただくと、いまとは少し違った見え方になるはず。そこでハッとしたり感じていただくものがあれば、制作者冥利に尽きますね。
最後にタイトルバックのフルバージョンをお届けします。
主題歌「燦燦」が入ったタイトルバックはこちらでご覧いただけます。