インフィニット・ソード
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SCENE8「飛来する一角獣」
前書き
ユニコーンソード書き直します
「はぁ!? そんなの聞いてないわよ!!」
早朝、仮設部署内より受話器を片手に叫ぶヒステリックなネイナがいた。
何事かと周囲は一斉に彼女へ視線を向けた。
「ネイナ博士、何事ですか?」
慈も、とっさに聞いてきた。彼女がここまで怒るとなると尋常な話ではない。
すると、ネイナは彼女の方へため息をつきながら振り返ると、
「それが……国連軍が新型の『ソード』をデーター収集のためにペンタゴンからこっちへ来るそうなんですよ」
「なに――?」
そうなると、今後の予定にも支障が出るし相手先との打ち合わせもあるから仕事量が倍になる可能性もある。
「今後も、次々に新しいソードがIS学園へやってくるんだそうですって」
「どうしてまた――」
「IS学園の連中の顔を本機で蒼白にさせるようね。面白そうだし私もやってみたいけど――よりにもよって次来るのが強襲戦術に特化した『ユニコーン・ソード』なのが頭の痛いところ」
ユニコーン、それを聞いて周囲のメンバーはざわめきあった。
「おいマジかよ?」
「ユニコーンだって――?」
「やばい、『悪夢の一角獣』が来るのか……」
そんなメンバーの深刻な様子を見た慈は首をかしげるも、続けて彼女に訊ねた。
「ユニコーン、そのソードはいったいつ来るのですか?」
「今日……」
「え?」
「今日よ! 今日、それも来て早々に学園のクラス対抗戦に参戦するんですもの」
「それはいきなりですね――しかし、見たところ予定ではなくユニコーン事態に何か原因があるように思えますが、あの機体に何かあるんですか?」
「あの機体はネクストワン専用機として開発されたもので、IS同様に二次移行システムが搭載されているのよ。それがパイロットであるネクストワンの意思と力で発動されて、目標を確実に破壊するまで暴れまわるという、凶暴な野生本能を携えた機体よ」
「なるほど、一度激情を起こしたら相手が死ぬまで暴れまわるというやつですな」
「二次移行の使用後は長時間の整備が求められるから嫌になっちゃうのよねぇ……それと``例の事件``でトラウマになってて誰もあの機体に近づきにくいのよ」
頬をペンの後ろ先でぽんぽんつっつく彼女はやれやれというような顔でまた溜め息をついた。
「例の事件?」
それに慈は気にかかった。
「そう、前にペンタゴンが襲撃にあった際にユニコーンが迎撃に向かったのよ。それで――」
「失礼します。博士、そろそろアリーナでクラス対抗トーナメント戦が始まるぜ!」
部屋へボブ整備長が入ってきて、彼女へ知らせに来た。
「あ、じゃあそろそろ来る頃かしら?」
「ああ、着ちまうか――礼の暴れ馬が」
ボブ整備長も当然面識があるようだ。
「主任、貴女も今から一階のテレビで例のユニコーンを見ておいたほうがいいですよ」
と、ネイナは進めてきた。
「そりゃあいい、主任の嬢ちゃんも一緒に来な」
ボブからも言われ、もちろん慈は断る理由なんてなくそのまま彼らと共に一階のテレビへ向かった。
テレビ周辺はネオファリア全メンバーでにぎわっていた。
「大尉と准尉は二回戦目に出ますね」
「そういえば、ユニコーンの初戦相手って誰ですか?」
「中国の代表候補生だと」
「ああ、中国か――スキャン盗撮されなければいいんですが」
「それやった時点でパイロットにキレられて瞬殺だぞ」
「えっと、ユニコーンのパイロットって誰だ? あの機体、ネクストワンじゃないと癖が強いってことで結構テストパイロットの出入りが激しいだろ」
「確か――現パイロットがオリムラって言わなかったか?」
「なに?」
その苗字に彼女は当然引っかかる。オリムラ――それは、織斑の姓か?
――オリムラ、何者なんだ?
険しい視線をテレビ画面へ向けつつもクラス対抗戦があと少しで始まろうとしていた。
*
アリーナには凰の専用機、「甲龍」が既にカタパルトから発信後、フィールド内の低空へ浮上し続けていた。あれから、数分経っても一夏の機体は一向にカタパルトから現れようとしないのだ。それに対して彼女は次第に苛立ちを募らせていった。
「んもう! あいつ何やってんのよ!?」
男がIS乗りになったことで周囲は賛否両論の嵐であるが、本当に男がISを乗りこなすことができるのかと疑問抱き始めてしまう。
まぁ、どうせ男がISにのるってことだから最初は慣れない操縦でテンテコマイなはず。ここは幼馴染のよしみとして千冬さんが動くまでじっと待っていよう。
一方の観戦室でも千冬は一夏が一向に彼専用のIS「白式」に搭乗して現れないことに怒りのいら立ちを感じていた。そんな彼女を横目で山田も焦ってしまう。
「あの馬鹿者! いったいどこで何をしておる」
「やはり、シミュレーション通りにはいきませんか――」
「まったく、恥をかかせおって。山田先生、すこし席を外してくる」
「はい、何かあったらお知らせしますね」
「ああ、じゃあ行って――」
その時だった。千冬が席から立ち上がろうとしたところで山田はレーダーから何かの巨大な機影を感知。それは、あのソードの同じ全長を持つ巨大な機動兵器の影である。
「お、織斑先生! レーダーに巨大な機影が……」
「なに?」
「この反応は……ソードですッ!」
「なんだと――しかし、ソードは現状ネオファリアの2機しきか確認されていないはずだ!」
「ソード機影、降下速度からして予定時間が――今!?」
山田はその眼鏡越しの瞳で観戦室の窓辺を見下ろした。
アリーナより、観戦室の生徒たちは上空から飛来した謎の機影に注目を集めている。それもそのはずだ、何せあれは――
「准尉! あれを――」
「あれって……ソード!?」
待機室より、天井につるし上げられていたモニターからそのアリーナの現状を目に彼らも状況が把握できずに驚くばかりだ。
「とにかく、ネイナに連絡だ!」
すぐさま、パイロットスーツの懐から携帯を取り出して彼女へ連絡を取った。
「ネイナ! 別のソードがやってくるなんてこと聞いてないぞ!? それに、寄りにもよってありゃあ……」
電話越しからネイナの声が聞こえてきた。
『私に聞かないでよ! ペンタゴン本部の上層部が勝手に決めてきたんだから』
「そもそも、『ユニコーン』に乗れるパイロットなんているのか? あんな暴れ馬を乗りこなせるような奴なんて――」
『パイロットが見つかったから、じゃないの?』
「とりあえず、こいつは非常事態だぞ。どうすればいいんだ?」
『クラス戦は続けるけど、とりあえず今回の所だとソードの活躍はユニコーンだけにしておくわ。今日のあなた達は非番ってことで』
「まぁいいけど――そりゃそうだな」
『当たり前でしょ。ソード同士が遣り合ったらIS学園なんて島ごと消滅よ? おそらく、デモンストレーションとしてユニコーンは一回戦だけやるだけで、あとは切り上げるそうだから』
「わかったよ、じゃあ部署へ戻っておくぜ俺らは――あ、そうだ! 准尉にもユニコーン見せてから帰るわ」
そう言って、携帯をしまった大尉は待機室のベンチに据わってモニターを眺めた。
「帰る前に、ユニコーンっていうもう一体のソードをお前さんも見ておけ」
そういって、大尉はたばこの一本を取り出して口にくわえた。
「ユニコーン?」
「ああ、ネクストワン専用機だ」
「ネクストワン――」
興味と好奇心が湧き出た彩夏は、モニターを見つめた。
「あれ? 確か――」
そう、たしかこの対戦は凰という機能転校してきた中国の代表候補生と一夏が大戦する予定で、本来ならばソードではなく、一夏の専用機が登場するはずなのだ。
「大尉、ユニコーンのパイロットはご存じですか?」
何か、予感をたてた彼は大尉へ訊ねた。
「いや――俺はそのへんは詳しく知らねぇな。なにせ、あれはさっきも言ったようにネクストワン専用機だ。誰もが乗り回せるほどの機体じゃないため、パイロットは入れ替わりが激しいんだ」
「まさか――」
ありえない、けっしてあの少年がパイロットだなんて予想できなかった。
しかし、それでも彼の中にネクストワンと共に宿るニュータイプとしての直感が働いた。空から飛来するあの機体から発せられる気配は紛れもなく……
「ッ!!」
気づいてしまった彼は、その大尉へ振り向いて、
「すみません! 外で見てきてもよろしいですか?」
「好きにしろよ」
「失礼します!」
彼は待機室を出て外のアリーナの観戦席のエリアよりいくつか点在してるうちの一つの入口から出てきて、上空に映る白いソードをその肉眼でしかと確かめた。
*
飛来するおその巨大な機動兵器のシルエットは、太陽を背に受けながらアリーナの地へ降り立った。それは全くにもISとは対なる巨大な機動兵器の存在であった。
目の前へ立ち塞がるように様に現れたその機動兵器に凰は予想外の相手と絶句した。
全身白一色で統一された基地で、頭部には印象的な角を思わせるような突起状のトサカが頭聳え、それ以外は全体的に顔もバイザーで覆われたのっぺりとした実にシンプルなフォルムを保っていた。珍しいことに背中にはSE式重火器兵装が積んでいない事である。
「な、何よ! このデカ物!?」
「俺だよ、凰」
その白いソードから聞こえた第一声は、観客席のエリアにいる彩夏の目を丸くさせる。
「い、一夏……なのか!?」
上空に浮上し続けるユニコーン・ソードから放たれた声はあの織斑一夏の声であることが観戦する生徒たちやそのた全員に知れ渡った。
「うそ、あのソードのパイロットって織斑君なの!?」
「オリム―、嘘じゃないよね!?」
「ありえない――だって、織斑君には専用ISがあるじゃない! どうしてソードなんかに!?」
生徒たちの混乱も当然のことだし、なによりも、
「嘘だろ、一夏……!」
動向を開いて、静かに混乱する千冬のに山田も同様に彼女の弟がソードに搭乗している事実が信じられなかった。
「どうして――ソードは国連軍の新兵器ですよね? それが、どうして民間人の一夏君が!?」
「くっ……!」
耐え切れなくなった彼女は試合の一時中断を発令させようと緊急放送として声を荒げようとするが、
「待ってください! 織斑先生」
山田が彼女を引きとめると、掛かってきた受話器を差し出した。
「ネオファリアからです!」
「ネオファリア……慈の仕業か!?」
一気に感情が高ぶった彼女は山田からひったくるように受話器を取ると、一気に声を荒げだしたのだ。
「IS学園教員の織斑だ!」
『千冬か――』
その声は偶然にも反論する相手である慈であった。
「キサマァ、これは何の真似だ!」
『真似だと――どういう意味だ?』
しかし、受話器越しの彼女はいたって異例性であった。
「ふざけるなッ! お前達ネオファリアは私の弟に何をさせたんだ!?」
「――ああ、一夏君のことか?」
「そうだ、この人でなしめ……!」
「……」
そんな感情まみれになた千冬に対し慈はため息をついてメンバーたちが群がるテレビより、ユニコーンと甲龍の対峙する映像を見ながら、こう答えた。
「すまんが、私も最近こちらの主任になった故、あの機体にお前の弟が搭乗しているなど思いもしなかったのだ。それに、この要因はネオファリアよりもペンタゴン本部に言わせてもらわないと困る。あそこはISの研究開発をやめて、現在ではソードの開発と研究に力を入れいてるのだ」
「お前の差しがねではないというのか?」
『そうだな、よってお前に『人でなし』と呼ばれる筋合いは私にはないということだ』
「くっ!」
受話器を乱暴に戻して、千冬は再びアリーナの状況をみると、既に二体の兵器はそのフィールドの内部でドッグファイトが始まろうとしていた。
「一夏! 今、この場で謝るんなら優しく``痛めつけて``あげるわよ?」
怖いもの知らずの凰は目の前に対峙する白い人型機動兵器へ訊ねた。
「本当にお前ってやつは残忍だな。そんなんだから友達ができないんだよ」
現に凰の友人ならぬ、子分だったのは一夏と彼の友人の何人かぐらいだ。彼女は女子ながらに凶暴で、小学校の頃は六年のガキ大将を半殺しにしたものであり、その噂が広まってご近所付き合いも最悪なうえ、客も減って行き、結局大赤字で中国へ帰ったのだ。
「余計なお世話よ!」
「そういうことだから、これまでの仕返しもユニコーンで晴らすから謝るのはそっちの方じゃないのか?」
「あっそう、それじゃあ……とことん容赦なく痛めつけてあげるわ!!」
「本性を見せたか、バーサーカー!」
一夏は、操縦桿を握りしめて本機ユニコーン・ソードへ叫んだ。
「行くぞ、ユニコーン!」
白い一角獣は、片手にビームサーベルを握りしめた。本来ならソードでは試作中である中距離ライフル、ビームマグナムを使いたいところだが、あんなものを使えばISなんて一発で蒸発させてしまうため、危なっかしくて仕様が禁じられている。
対する凰は、取り出した双剣「双天牙月」を連結させて一本の薙刀へ変形させると、一直線にユニコーンへ突進していく。
「ゴキブリにはソード特性の殺虫剤だ!」
ユニコーンの白い頭部より20ミリビームバルカンが突っ込んでくる甲龍にばらまかれる。
「誰がゴキブリですって!?」
たかが副兵装などと侮って、双天牙月を左右に円陣を描きなら振り回してそれらを弾き返そうとするが、ソードから放たれたビームバルカンはISが持つ従来の副兵装とは桁が違う。
20ミリのビームバルカンの威力はすさまじく、ヒジキ返したと思ったらその勢いに押されて逆にこちらが弾き飛ばされそうになるぐらいで、体制が崩れた。
「くっ――!」
バルカンから逃げ回りながら徐々にユニコーンの周りを何度も旋回し続け、それをユニコーンも同様に身を反転しながらバルカンで追い続ける。
――距離を取ることはわかってるよ。
そう、一夏は既に凰の攻撃手順はわかっていた。この日のために中国のネットワークへハッキングして甲龍のデータを拝見させてもらったんだ。
いつもは中国が国連軍に向けて性懲りもなくハッカーを送ってくるのだから、そのしっぺ返しをしたまでである。
「中国のIS、代表候補生専用機『甲龍』は日本の打鉄より安定なパラメーターを殺して、接近戦に特化した勇猛タイプってやつか。しかし、それだけじゃない――」
「もらったわ!」
瞬間、勝ち誇ったかのような表情へ変わった凰は甲龍の両肩に装備された双方のユニットをユニコーンのバックパックへ向けて撃ち放った。
……しかし
巨大な空圧の叫びと共に、何かが弾かれた音だけで効力は失われた。
「う、うそ!?」
中国のIS技術によって開発された衝撃波兵器「龍咆」をこの至近距離で命中させれば、相手を地上の地面やアリーナの壁へ貼り付けにすることぐらい簡単だ。
しかし、それが微風のような風をユニコーンの背中へ送ったような程度で終わってしまったのだ。
「こんちくしょおぉ!!」
やけになった凰は、双天月牙を振り回してユニコーンへ切りかかるが、
「ッ!?」
それは一瞬であった。巨大な壁にさえぎられて長刀の刃は弾き返されてしまった。それもそのはずだ、何故ならユニコーンはSEシールドを展開しているからだ。
ハンデとしてシールドは使用しないことになっていてもなお、一夏はだけは「本気」であった。
素早く背後から忍び寄る巨大な掌が甲龍を纏う彼女を掴み捕らえた。
「は、はなせこのぉ!」
掌で無意味な抵抗を続けるも、そんな彼女を掴んだユニコーンの手は大きく地上に向かって振り下ろした。
「お前だけは落とす!」
力任せに地上へ投げだされた甲龍は安定力を失ってそのまま地上へ真っ逆さまにたたきつけられた。
これは、まさに一方的な暴力である。成す術の無いISの姿を前に観客の女子たちは騒然としていた。
勝者は当然一夏である。彼と彼のユニコーン・ソードの雄々しい姿に周囲は賛否両論の声が飛び交っていた。
「へぇ~ユニコーンか、また面白いソードが出てきたね」
そんなアリーナから遠距離より学園のオブジェの塔から見下ろす、あのフードの少年が再び現れて、そのアリーナの戦況を見ていた。
「たしか中国の『龍砲』っていうやつ、アメリカから盗んだ技術じゃなかったか? まだ試作段階の兵器を勝手にパクっちまうからああなるのにね」
だから射程も短いうえに連射性もないのはそのためだ。そもそも本家のそれは兵器ではなく防御システムである。機体の使用エネルギーを保つために気体を取り入れて衝撃はの壁を飛ばしてミサイルや銃弾などの実弾兵器を防ぐためなど、またビーム兵器を無効化するために研究が続けられている「試作候補」に過ぎないのである。それを中国政府が兵器として運用させてしまったのだから、自業自得だ。
「まぁいいや、こっちはこっちでそろそろ``アレ``をだそうかな――ん?」
そのとき、フードの少年はアリーナへ飛来するもう一体の機影を確認した。
「チッ! あのウサギ婆――まぁいい、婆の玩具を先に壊して出番を横取りしてやるか」
片手に握りしめている端末を、少年は握りしめた枯であるが、
「――いや、まてよ?」
そんな単純なことをするよりも面白い事を思い出した彼はフード越しの口元を緩ませた。
「クックック――ウサギ婆、テメェの玩具を俺がカッコよく改造してやるよ? もちろん操作はこっちのもんだがな」
場面は変わり、アリーナでは再び上空から新たな機影が確認された。
土煙を上げて飛来したそれは、黒いシルエットに巨大な両腕部を持った――ISである。
「織斑先生!」
観戦室より、山田が叫んだ。
「くぅ……一夏に続いて今度は正体不明のISか!」
山田はとっさに緊急放送を観戦席に広めだした。
『正体不明のISが出現、生徒の皆さんは急いで非難してください!』
「何がどうなってんだ!?」
観戦室の入り口付近に立つ彩夏であるが、そんな彼の背後からキース大尉が駆け付けた。
「准尉! お前も避難誘導を一緒に手伝え」
「はい!」
二人は生徒たちを安全な場所へ非難すべく誘導に参加し、彼の誘導する場所へ多くの生徒たちが駆けこんできた。
「皆さん、おちついてください! 慌てずにおさいないで」
「大尉、准尉!」
その場所へ、急いで慈が駆けつけに来た。
「主任?」
彩夏は居かけよってくる彼女へ振り向いた。
「二人とも、すぐにもソードを展開してユニコーンの支援につけ!」
「何が起こった!?」
大尉が問うと、
「乱入してきた正体不明のISにブルーティアーズ戦の時と同じ異変が起きたんだ」
「なんだって!?」
彩夏は、胸騒ぎを覚えた。
*
「あれは――IS? しかしどうして……」
アリーナへ乱入してきたその黒いISはこちらへ両手から展開した砲口を向けだした。
「なるほど――」
彼個人の予測からして、こんな玩具を送り込んだ犯人は大抵察しが付く。
「あの人――俺がISよりもソードを選んだことに相当キレてんだな」
しかし、容赦はしない。
黒いISから放たれる両腕部からの光弾の数をSEシールドで吸収しながら、頭部のビームバルカンで反撃に出る。
相手は動きが若干襲うのか、狙いはつけやすく、数発の撃ち放ったウチの何発かがISの片腕に命中して、巨大な腕部の片腕が吹っ飛んだのである。
「……やはりか――」
損傷した、そのISの腕部をスクリーンで拡大してみると、その個所からは機械のようにバチバチと千切れたケーブルがショートする光景と、そのケーブルが幾本も垂れ下がっているのが見られた。
「あの人のことだ、こんなしょうもないことするのは」
呆れた一夏はとどめを刺そうとした途端。
「!?」
黒いISに突如異変が起きた。これまでダメージを受けてびくびくと小刻みに震える機体が、突如苦しむかのように体を激しく震わせてその頭部が上を向いて叫ぶように機械音が鳴り響いた。
そして、前回と同様に黒い液状な物体がISの足元から発生し、それを容赦なく機体ごと取り込んだではないか。
黒いスライムに飲み込まれた黒いISは、徐々に形を変えていき、それはソードと同じ全長を持つ巨大なコング型の機動兵器に変わってしまった。
両腕部は同じように武骨で脚部以上に巨大だが、その腕部にはいくつも重火器が供えられ、指先の一本ずつに砲口が目標を捉えていた。
巨大な五本の指先から一斉に放たれるビーム砲の柱を咄嗟に回避したユニコーンは咄嗟のビームバルカンで反撃に映るが、ビームの銃弾は変わり果てた黒いIS……黒いコングにはダメージらしき損傷を与えられなかった。
「ビームマグナムは装備されていない――あとはバルカンと手持ちのビームサーベルだけか」
そんな予想外の展開に陥ってしまう一夏であるが、ただもう一つの切り札だけがこのユニコーンには残されていた。
しかし、本機のセカンドシフトシステムははリミッターを解除することによって周囲に膨大な被害を及ぼしかねないほどの力を有している。その、野生の本能を解き放つ覚悟は今の自分には――いや、今は戸惑う時間はない。
初めてそれを行う一夏であるが、彼はこの場で初のセカンドシフトへ移行する決意をした。
「無限に繋がれる野生の可能性……ユニコーン、お前の本当の力を見せてやれ!!」
その言葉に答えたユニコーンはこれまで封じられていた本来あるべく姿と力を解き放った。
機体の周囲に風が吹き荒れ、起動音が急激に高鳴ると共にユニコーンの各アーマーの溝から赤い光が駆け抜ける。
瞬時に白い装甲はスライドで展開していくにつれ、機体全体から赤いフレームが露出していき、それは全体を駆け巡る赤い血潮のごとくであった。
頭部に聳える一角を思わすブレードは縦に割れて、それらは左右へと開かれるとV字状のアンテナに変わった。顔面はバイザーと共に裏返され、その頭部の奥から現れたのはツインアンの眼光を光らす野獣の素顔である。
ユニコーン・ソード・デストロイドモードという野獣の姿となった本機は両手にビームサーベルを握りしめ、眼光を散らしながら一直線に目の前のコングへ向かって突進しだした。
それを、迎え撃つコング型の両腕部の弾幕もすさまじいはずが、幾度も放たれる太いビームの柱を、身を転じながらかわし、駆け抜けていくユニコーンの野獣性を抑えることはできなかった。
「うおおおおおおお!!!」
地面をけり上げ、コングの頭上へとびかかるユニコーンは両手の刃でコング型の片腕を斬り飛ばした。その衝撃は予想以上の波動を周囲に与え、アリーナと一体化していた観客席の各椅子の列はバラバラに崩れ乱されていき、アリーナの大地に巨大な地割れをとクレームを作らせ、地割れはアリーナを真っ二つに割りだしてしまった。
もはや既にアリーナとしての機能をは失われ、ただの廃墟となった半壊したアリーナの果ては想像を絶した。
片腕を奪われ、後ずさるするコング型にもその影響はあり、自身のユニコーンを見つめる視界には砂嵐が生じ始める。そして次に木津田頃には、腹部へもう片方に握るビームサーベルの先が深く貫いていたのだ。
「ッ……!!」
武骨な頭部より赤い眼球を点滅させながら、コング型は徐々に活動を停止させていく。
地響きと共にコング型は全身に亀裂が走ると、粉々に崩れ落ちてしまった。
辺りは静寂に包まれ、同時にユニコーンのデストロイドモードも同じように活動時間が終わりをつげ、展開していた各部の装甲が露出していた赤いフレームを覆い隠していき、頭部も元のバイザーに覆われた一角獣の姿へと戻ってしまった。
「おわったか――ん?」
しかし、戦闘を終えたのも束の間、こちらへ複数の機影がレーダーに映った。それは、先ほど倒したコング型と同じ黒いISの編隊であったのだ。
「また来やがったのか! あの人は本当にしつこい!!」
しかし、
複数の編隊は瞬く間にレーダーがから姿を消したのだ。
「どういうことだ?」
それも当然である。
後から駆け付けたタイラント改とハイペリオンの二機によって瞬く間に黒いISの編隊は全滅させられたのだ。
ハイペリオンのSE式ビームアックスが数体の黒いISを斬り裂いて、タイラント改のビームさベルが次々と黒いISを斬り裂いて蒸発させていく。
「味方か! ハイペリオンとタイラント改、彩夏さんとキースさんだな」
敵のISを殲滅させた二体は、ユニコーンが立つ半壊したアリーナの地面へ降り立った。
「こいつは派手にやったもんだな? ユニコーンさんよ」
タイラント改は辺りの惨状を見渡した。幸いにもこれに巻き込まれた生徒や教員はゼロなのが救いである……いや、凰がいるのを忘れていた。
「正体は君なんだろ? 一夏君」
ハイペリオンより、彩夏の声が訪ねてきた。すると、それにこたえてユニコーンのコックピットハッチが開かれると、そこにはパイロットスーツを着た一人の少年が姿を現した。
「えへへ――ばれちゃいましたか」
ヘルメットを脱ぐと、その素顔はやはり織斑一夏であった。
「当然だよ。そんなことよりも、織斑先生がカンカンだぞ?」
「ああ、姉貴のことはどうだっていいですけど――ユニコーンが俺の専用機ってことに納得しくれるかどうか……」
「ISに乗れるっていうのは事実なのか?」
と、キースが訊ねる。
「ええ、一度起動したんですけど。俺はISよりもソードが好きなんで」
「しかし、どうやってソードのパイロットに……」
彩夏がそれを聞こうとしたのだが……
「一夏ァッ!!」
地割れだらけのアリーナの地面へ大股で歩いてくる千冬が見えた。
「あ、やべっ」
「待つんだ」
空へ逃げようとするユニコーンの片腕を、ハイペリオンの片手が捕まえた。
「このことはちゃんと君の姉さんにも教えておけ。あの人は君の言う通り、面倒な人だからな」
彩夏に言われて、しぶしぶ一夏はユニコーンから降りた。
後書き
次回
「一夏の軌跡」
次回は今作のもう一人の主人公一夏編をとりあえず書きます。
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