Project Story
データサイエンスプロジェクト
オムニチャネルマーケティングとデータベースマーケティングを軸に
銀行全体のデータ活用スキルの向上をめざす。
プロジェクトメンバー
デジタル戦略部
マーケティンググループ
グループ長
Y.K
デジタル戦略部
マーケティンググループ
ビジネスリーダー
B.M
デジタル戦略部
マーケティンググループ
ビジネスリーダー
M.Y
デジタル戦略部
マーケティンググループ
ビジネスアシスタントリーダー
Y.N
デジタル戦略部
マーケティンググループ
S.A
※紹介行員のインタビュー内容・所属等は取材当時のものになります
プロジェクト概要
神奈川県内を主として25万社、500万人を超える顧客データをはじめ、銀行が保有する多種多様なデータから意味のある関連性や法則を導き出すデータサイエンスを駆使して、より効果的なコンサルティング手法の検討・支援をおこなっているのがデジタル戦略部のマーケティンググループだ。
今回ピックアップしたのは、銀行のATM、インターネットバンキング、スマホアプリ、Webサイトなど、複数のチャネルを連携して個々のニーズに応じた情報を適切なタイミングで提供するための施策をつくるオムニチャネルチーム。そして、統計ツールとAIによるデータ分析で成果をあげているアナリティクスチーム。現在の取り組みと今後の展開について、グループ長と各チームのメンバーに語ってもらった。
オムニチャネルを活用したカスタマージャーニー設計の成果
横浜銀行が、ATMを軸とするオムニチャネルシステムを導入したのは2016年。その立ち上げに関わり、顧客データの可視化とアプローチ手法の高度化に貢献したYは、当面の課題として資産形成層と住宅ローン利用者へのアプローチを挙げる。
Y:「資産形成層のお客さまは働き盛りであり、営業店の担当者がなかなか接点を持てないのが現状です。これを打破するためにATM利用時にニーズを喚起してwebサイトへ誘導するという流れを作りながら、営業店担当者からのアプローチを強化しています。また住宅ローンは20~30年という長いお付き合いができるにも関わらず、ご契約後はお客さまと十分なリレーションが築けておりません。
お客さまのことをもっと深く知り、ニーズの喚起と能動的なアプローチを進める必要がありますね」
2019年度はAが中心となってカスタマージャーニー設計に取り組んできた。お客さまが商品やサービスを契約するまでの動き(行動、思考、感情)を時系列で見える化しお客さまとの接点を洗い出すことで、適切な情報を、適切なタイミングで、適切なチャネルにて提供するというものだ。
A:「サービスアドバイザー、個人渉外として7年間営業店に勤務した経験をもとに、お客さまが潜在的にニーズを抱えている状態から実際に担当者に相談をして問題を解決するまでのストーリーを可視化し、各施策に活かしています。営業店では対面でお客さまと向き合いましたが、この部署ではデジタルチャネルまで横断したコミュニケーションを考えることができます。自分たちが考えた施策がきっかけとなってお客さまの問題を解決できたときにやりがいを感じます」
もうひとつの課題である住宅ローン利用者へのコミュニケーションプランはNが企画した。
N:「住宅ローンの推進企画グループと支店業務の経験があるAの協力を得て、お客さま像を深掘りしてからPDCAを回しています。トライアンドエラーを繰り返した1年でしたが、手応えは十分。仮説に基づき、お客さまのニーズに応える商品を提供できていると認識しています」
人の意識が及ばないところへ瞬時に目を向けて新たなニーズを検知できる
AIの発展を支える技術のひとつであり、さまざまな分野で実用化が進んでいるディープラーニング。県内500万人超の預金口座の入出金や消費活動の履歴という、きわめて質の高いデータを得られる横浜銀行ではどのように活用しているのだろうか。
M:「私たち銀行が提供する商品に対するお客さまのニーズは、就職、結婚、出産、相続などのライフイベント発生時に特に高くなります。その時にAIツールでデータ分析をおこない、人では発見できないニーズを抽出するのが私の仕事です。
この業務において発揮されているAIの最大の特徴をひと言で表現すれば、『想像もつかない発見』ということになります。『資産家』と聞けば富裕層向けの金融商品を提案しようと考えるように、人は保有資産額などの想像のつくデータをもとに提案をおこないます。
AIは、このような“常識や経験”にとらわれることなく、人の想像が及ばないデータの関係性に目を向けてニーズを検知できます。その強みを発揮できた分野のひとつが教育ローン。家族構成や年齢といった想像のつきやすい情報を超えてニーズを見つけるのが得意ですね」
AIの導入は支店での営業活動支援、コンタクトセンターに蓄積された顧客情報の活用という面でも効果を上げている。しかし、万能ではない。Mも「頼りになるが扱い方は難しい」と説明する。
M:「ニーズの検知は、お客さまとのリレーションをデータに置き換えてAIに学習させるというサイクルを継続してはじめてできること。かなり手間のかかる手法です。また導入済みのAIの特性上、検知した理由を説明できないため、支店の渉外担当を支援する際にも『AIが“ニーズあり”と判断した』としか言えない。同僚の言葉を借りれば、『イノベーションは一足飛びに実現しない』といったところで、とても難しいところです」
カスタマージャーニー設計とディープラーニングのこれから
今後は、まだ活用していない行内の各種統計データや市場データを整備し、金融商品に関するお客さまの嗜好度の推定を可能にするなど、マーケティングの高度化に挑む。また、CX(顧客体験)機能の強化によってお客さま満足度を高めていく方針だ。
K:「カスタマージャーニーは現在、資産形成層へのニーズ喚起および営業店への顧客誘導と住宅ローン利用者への提案に限定されているので、今後は口座開設をしたばかりのお客さまや、他の年代のお客さまへの適用をめざします。AIもローン商品や投資型商品以外の分野へチャレンジしていかなければなりません」
Y:「カスタマージャーニーはこれからも進化を続けていきます。単に商品やサービスの契約を目的とするだけでなく、お客さまとの長期のリレーション強化につなげる等、できることはまだまだたくさんあります」
N:「横浜銀行はマーケティングにいち早く注目した地方銀行のひとつ。スタートから10年以上が経過しましたが、今後もお客さま目線にたったコミュニケーションの追及やデータ分析を高度化することによって、より選ばれる銀行になっていきたいですね」
A:「行内公募制度を利用して支店からこの部署へ来て1年。2020年度の目標は、オムニチャネルの特徴を活かして、日頃営業店担当者が接点を持てないお客さまにアプローチし問題解決の手助けをすることで、一人でも多くのお客さまに『横浜銀行を利用していてよかった』と思ってもらうこと。また、本部行員に営業店の実情を伝えることで各施策をより有意義なものにすることです」
M:「他行との差別化という点では、お客さまのニーズが最も高まった時に、希望どおりの商品・サービスを提案できるかどうかがポイント。柱になるのは、商品力と、行員の洞察力、そして我々が担っているデータの分析力。この3つだと思います」
K:「マーケティング理論の習得とビジネスへ展開できる人財を育成し、当行全体のデータサイエンスのスキルを高めることも我々のミッション。支店にはデータ分析で現場を支援したいという理系出身の行員も多いので、行内公募も積極的におこなっていきたいですね」