灰色の獅子【完結】 作:えのき
遅くなって申し訳ないです。
少しずつ書き貯めて投稿しました
文章が雑なのは大目にみてください
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いずれ修正します
数日後
「君の前の主人はどこの家だい?」
ウィルは椅子に座り、あらかじめ提出された書類に目を通す。彼は笑顔で受験生を見つめている。
その受験生は“屋敷しもべ妖精”、魔法使いの家で魔法使いに仕える事が至高であるという本能がある。そして彼らはより由緒正しき家で働く事を望む。
「エリューはコナー家という混血の家で仕えてました!」
「そうかい、君の得意なことはなにかな?」
「お料理でございます!」
そのまま温和な空気で面接は続く、そして彼は最後にとある質問をする。
「昔、レストレンジ家にいた“屋敷しもべ妖精”を探していてね。知らないかい?」
「エリューは知りません。」
そう聞かれたしもべ妖精は正直に答える。彼はその答えを聞き終えると面接は終わりだと言い放った。
「マリックは存じません。」
「エミーは知りません!」
「シモンは聞いた事がないです!」
「マリーニは・・・。」
「カインズは・・・。」
あれから何人も選考を続けるが彼の望む答えはなに1つ得られない。
それもそうだ。まるで何もない暗い洞窟の中から小さな糸を掴むようなもののである。しかも彼はここに糸があるとも知らずに探すしかなかった。
だが彼はその答えに辿り着くこととなる。
「知っておりますよ!あの変わり者でございますね!」
ウィルは一瞬だけにやりと笑う。ようやく自分のルーツを探る手掛かりを得た。
「その妖精の名前は?」
「セッケにございます。」
「今はどこに?」
「では手を掴んでくださいませ。」
彼はその手を掴むとその場から消え去った。
そして彼らはとても静かな暗い森にたどり着いた。ほんの少し木漏れ日の指す木製の家だ。まるで小人が住んでいるかのような大きさである。壁には赤や青のキノコ、苔が生えており怪しい雰囲気を醸し出している。
ウィルは今までに感じたことがないほど心が踊っている。この中にかつての自分を知るかもしれない者がいるのだ。
しかしウィルは冷静に優しい笑顔を浮かべ小さな案内人に視線をやる。
「これは試験なんだよ。もちろん主人の秘密を守るのも仕事だ。あとはわかるね?」
彼に目の前の部外者の同行を許す気はないらしい。
「はい、一切口外しません!」
「よろしい、結果は手紙で送るよ。」
ウィルは笑顔を浮かべて別れを告げる。すると案内人は小さく返事をしてその場から消え去った。結果はやる前から全員同じ不採用である。
そしてウィルは小さな一人ぼっちになる。目の前の小さな小屋を前に彼は大きく深呼吸をする。そして小人の住んでいるかのような扉の前に腰をかがめてノックをしようとした瞬間、それは自然と開いた
丸眼鏡をかけ、ぼろぼろの黒いスカーフを身につけた小太りの白い屋敷しもべ妖精だ。彼は持っていた棍棒を地面に落とす。鈍い音が2人の空間を響かせる。
とても静かだ。木々を間を風が通り抜ける音のみが聞こえる
「おぉ・・・なんと」
その風変わりな しもべ妖精は身体を静かに震わせ、そして2つの大きな瞳から水滴が溢れ出す。
「間違いない、
彼が腕を振るうと家は一瞬で肥大する。普通の人間の家のようなサイズとなった。
「さぁ此方へ、ウィリアム様。」
彼は涙を綺麗なハンカチで拭き、そして中へ招き入れる。
中は整頓されたあまりにも普通の家だ。風変わりな外観は人を寄せ付けぬ為のカモフラージュなのだと理解する。
「私はセッケ、老いぼれに御座います。」
2人は椅子に腰掛ける。そして彼はすぐに本題に入る。
「そうか、セッケ。聞かせてくれ。」
そしてウィルはずっと知りたかった過去を彼に問いかける。
「俺は母に、ベラトリックス・レストレンジに愛されていたのか?」
彼はずっと知りたかった。そして腑に落ちなかったのだ。
小さい頃、孤児院でずっと夢見ていた。いつか本当の両親が迎えに来て幸せに過ごせる。
だがいつからかそれは幻想だと思い至る。そして彼はマルフォイ家に引き取られ家族、そして友の愛を得た。
完全に本当の両親など忘れていたころ、自分に必要などなくなった時にふらりと現れた。
しかもその親は残忍で冷酷な殺人鬼だった。闇の帝王の配下として暗躍し、殺戮や拷問の限りを尽くして投獄されていたのだ
そして主人の復活と共に、脱獄を経てこの世に舞い戻った。
彼らは一見、自分の事を愛していないようだった。だが深く、そして深く知るたびにわからなくなった。
その真実を知るのはただ2人、そしてウィルは目の前の彼からしか得られぬ事だ。
「・・・とても複雑にございます。」
セッケは沈黙と共にそう答えた。
「俺は両親に捨てられ、忘れられていた。そして母には殺されかけた。」
セッケはただ静かに聞いていた
「さようでございますか、しかし確実に言えることは1つ・・・。いえ、それよりもお見せした方がよろしいな。」
セッケは自分の側頭部を指で触れると、くるくると青い記憶を引き出した。
「あれは秋の半ばの暗い夜でしたかな。貴方の全てをご覧に入れましょう。」
青い光を指に纏わせるとセッケはウィルの頭へ優しく触れる。しかしそれとは裏腹に一瞬だけ鋭い痛みが襲いかかった。彼は苦悶の表情を浮かべるも、叫び声は漏らすことはない
脳内が何かがぐるりとめぐるようだった
***
〜18年前〜
彼はとても広い豪華な部屋の中にいた。価値のありそうな歴史ある家具、シミひとつない絨毯やカーテン、一目で富裕層の屋敷の一室だとわかる。
「厄介なのがいるぞ、ムーディだ。」
数日前に出会ったロドルファス・レストレンジだ。以前より若々しく力強いように見える。若い時を見ても自分とはあまり似ていないように感じる
「ふん!奴の命日にするだけさ。」
一目見て彼は驚いた。あまりにも美しい女性だと思ったからだ。艶のある黒髪に雪のように白く美しい肌をしている。
ただ茶色の鋭い瞳だけは彼の知るのと同じように感じる。アズカバンに送られる前は血気盛んだったようだ。そして彼女はアズカバンでの15年間で老いて、病んで、やつれたことで美しさを失ったように見える。
彼は視線をふと床に向けると日刊預言者新聞のタイトルが目に入る。
《ロングボトム夫婦、廃人にされる》
この夫婦は彼の友人であるネビル・ロングボトムの両親の事だ。現在でも聖マンゴ魔法疾患障害病院で植物状態となって過ごしている。治る見込みもなく、自分達のただ一人の息子の事を認識する事すらできない。
そうさせたのは他ならぬウィルの両親のベラトリックスとロドルファス達であった。
“闇の帝王”がハリー・ポッターによって打ち破られ姿を消した為、配下の者達は主人の行方を捜し続けていた。ベラトリックスらは情報を集めるために敵対組織である不死鳥の騎士団に所属するロングボトム夫妻を拷問にかけたのである。
そしてその罪を犯した事、死喰い人である事から現在彼らは闇祓いに屋敷を囲まれているのであった。
「お嬢様・・・」
18年前のセッケである。今の風変わりな服装ではなく、ボロボロのシーツを身にまとっている。彼の手には高級なシルクに身を包まれた赤子がいる。
ベラトリックスは膝を曲げて腰を落とすと、とても魅力的な笑顔をみせてウィルの頬に優しく手を添える。そして名残惜しそうな表情を浮かべながらゆっくりと立ち上がる。
「セッケ、お前に仕事を与える。ウィルを安全な場所へ。」
そして彼女は身につけていた自由に黒いスカーフを渡した。
「そしてお前にこれを貸す。任務を果たしたらお前に与える。」
つまりは任務を終えればセッケを自由にするということを意味している。彼女はそう言うと屋敷に火を放った。息子がいた痕跡を消すためだ。
放たれた炎は激しく燃え盛る。そして高価な家具は焼き焦げて煙が充満していく。
するとその瞬間に壁が爆発するように砕ける。破片が飛び散る寸前にセッケはウィルを抱えてベッドの下に素早く隠れた。この狭い部屋で魔法を使えば魔力の痕跡を残して自分達がここに潜んでいると侵入者に悟られてしまうからだ。
「おやおや、ノックもしないのかい?」
煙の中から5.6名の人影が現れる。しかしベラトリックスは現在と同じように不敵に妖艶にニヤニヤと笑いながら闇祓い達をあざ笑う
「燃えたドアじゃノックもできん。」
地面から肋ほどの長さのある杖を持つ男がそう言い返す。まだ鼻と片目は欠けていない普通の容姿だ、マッド・アイ・ムーディ。闇の魔法使いを数多く捕らえて、アズカバンに収監された囚人の半分を埋めたという伝説がある
ベラトリックスは先手を打ち、素早く呪文を放つと闇祓いの一人を仕留めてみせる。その様子をベッドの下で見ていたウィルは母の奮闘を見てキャッキャとご機嫌になる。
だが攻撃の瞬間だけは隙が出て来る。ベラトリックスはムーディに武装解除を打たれて杖を弾かれる。
その黒い杖はコロコロと床を転がる。そして2人のいるベッドの下へとやってきてウィルの目の前で止まった。
妻が杖を奪われたのを見てカバーしようとムーディを狙ったロドルファスだったが、闇祓いの一人の武装解除によって杖を奪われてしまう。
「悪名高いレストレンジと言えども数には勝てん。“
2人は丸腰の状態でロープにより拘束されて動けなくなる。彼らにできることはただ侵入者を睨みつけることだけだった。
連行される2人にウィルは表情を歪めて泣き出しそうになる。しかしそれを察したセッケはウィルの口を塞いだ。声にならない音がベッドの下から微かに漏れる。しかし周囲が焼き落ちる音にかき消されて闇祓い達には届かない。
(耐えるのですよ、おぼっちゃま。このセッケめも耐えております。)
セッケはただ小さな口をせき止めて涙を堪えるしかなかった。そして闇祓い達が2人を連れ去るのを確認したセッケはウィルの口を黒いスカーフで覆って闇祓いに開けられた壁の反対側への出口へと走り出す。火の手の来ない方へとセッケは進み続けた。
「ウィルぼっちゃま!貴女様は愛されております。世間がどうお2人を思われようともその事実は変わりませぬ!」
セッケとウィルは煙を肺に入れてむせながらも何とか外へと辿り着いた。
そしてセッケは赤く染まる屋敷を横目に路地へと走る。そして人気のない脇道へ滑り込むと“姿くらまし”を使ってその場から去った。
***
ウィルは一瞬でその事実をまるで自分の思い出のように知った。これは過去の自分のではなくセッケの記憶であると推察した。
自分の知らないルーツを知ったウィルはあまり感情的にはならなかった。ここ最近の揺れていた彼ではないようだった。
「あれから君は僕を孤児院へ匿名で託したんだね?」
「さようです。」
セッケはそう答える
「・・・ですがあの日々は貴女様にとって地獄だったでしょう?申し訳ございません。私が現れればレストレンジ家との関係が勘付かれてしまうと思いまして。」
「いや、そのお陰で今の僕がある。」
ウィルは迷うことなくそう答える。どんな苦しい過去も、明るい記憶も今の彼にとっては必要不可欠な出来事だった。
「あの
ウィルは脳裏にある魔女の姿がボンヤリと浮かぶ。だが今は関係ないと思い直す
「そうか、セッケ。ありがとう。」
「その感謝は私のみに対して、ですかな?」
セッケはウィルの言葉のニュアンスを正確に捉えてみせる。彼の瞳には今までとは別人のように鋭くウィルの母親譲りの茶色の瞳を見つめる。
ウィルはその瞳からつい目をそらして理由もなく床をぼんやり眺める
「じゃあ・・・なぜ俺を迎えに来なかった?」
ウィルは素直に疑問をぶつけた。彼女達は脱獄してから一度たりとも自分を会いに来なかった。セッケを見つけさえすればすぐに自分へ辿り着いただろう。
「ウィルぼっちゃまを
セッケは無慈悲にその事実を告げた。そのあまりにも残酷な一言にウィルは溜め込んでいた感情の全てを露わに吐き出した。
「ほらみろ!両親は!俺に!愛なんて!ないだろうッッ!!!!」
ウィルの人生の中で出した1番の大声に部屋は微かに揺れて埃が落ちる。
「違うのです!少なくともお嬢様は坊っちゃまを愛しておりました!」
セッケは慌ててそう説明する
「アズカバンの獄卒の“吸魂鬼”は
貴方様が“例のあの人”より
ウィルはそれを聞き終えると足の力が抜けて、地面にへたり込んでしまう。そしてまるで小さな子供のように顔をぐしゃぐしゃにして泣き出してしまう。
そしてすぐにセッケの瞳にも大きな雫が溢れ出す。
「今宵は大いに泣きましょう、あの日の分まで。」