「天使のはらわた」などで知られる映画監督、劇画家の石井隆(いしい・たかし、本名石井秀紀=いしい・ひでき)さんが、がんのため5月22日午後7時53分に自宅で亡くなっていたことが分かった。75歳だった。

石井さん初監督作品「天使のはらわた 赤い眩暈」(88年)で初主演し、以降「ヌードの夜」(93年)、「GONIN」(95年)など多くの作品でタッグを組んだ竹中直人(66)が10日、所属事務所を通じて追悼文を発表した。

以下、竹中のコメント全文。

 

石井隆監督はコンプレックスの塊でした。ぼくが電話をすると、「ぼくなんかの映画なんて、誰も観たいなんて思ってないですよ」ってそんな哀しい事ばかり言います。すぐに子供のようにいじけるんです。石井監督から前向きな言葉など一度も聞いた事がありません。でもぼくはそんな石井監督が大好きでした。とても愛おしい人でした。石井監督の現場スタッフはみんな石井監督の熱意を受け止めようと必死です。石井監督は納得がゆくまで画づくりとライティングは徹底的に作り上げていくので現場ではどんどんスタッフは追い込まれていきます。でも、スタッフは石井隆という人間を、深く信頼し、石井監督のためなら…と必死に作業を続けていきます。あるカットが上手く撮れると、石井監督の何とも言えない少年のような笑顔がとてもチャーミングで。その顔を見られるととっても嬉しかった。

本来の優しい石井監督の顔が現れるんですね。本当に最高の映画監督でした。悔しいです。あまりにもかなしいです。でも、石井監督はもっともっとつらくて悔しかったと思います。もっともっと映画を撮りたかったと思います。やりきれない思いでいっぱいです。悔しい思いでいっぱいです。石井隆監督の作る作品にずっと参加していたかったです。

竹中直人