新しいGoogleアナリティクス「GA4」、概要と特徴、切り替えの注意点を徹底解説
アクセス解析ツールである「Google アナリティクス」。多くの企業で利用されており、皆様の会社も導入しているのではないでしょうか。
そんなGoogle アナリティクスに新しいバージョン、「Google アナリティクス4 プロパティ(以下:GA4)」が登場して1年半経ちました。また今までのGoogle アナリティクス(ユニバーサルアナリティクス、以下:UA)の計測停止が2023年7月1日(有償版は2023年10月1日)とアナウンスされました。
「GA4って聞いたことはあるけどなんか全然画面が違うんだって?」「今までのGAと何が違うの?」「導入することのメリットは?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではGA4の概要とその特徴、今までのGoogleアナリティクスとの違いや注意点を解説します。
GA4とは?
そもそもGA4とはGoogleアナリティクス 4プロパティの略称で、Googleのアプリ内計測ツール「Googleアナリティクス For Firebase」の機能を踏まえてリリースされた、新しいGoogleアナリティクスとなっています。
GA4として正式にリリースされる前に、その前身となるプロパティが2019年にアプリ+ウェブプロパティ(App+Webプロパティ)として発表されました。
そして、2020年10月に現在のGoogleアナリティクス 4プロパティとして名称が変更になっています。
GA4はアプリ+ウェブプロパティから引き続き、アプリ内計測とWeb内計測が可能です。
合わせてGoogleの機械学習モデルを活用した予測機能の導入、プライバシー重視のデータ収集を中心とした機能が搭載されています。
GA4の特徴的な3つの機能
Googleによる「次世代のGoogleアナリティクスのご紹介」ではGA4導入のメリットを以下のように発表しています。
Google アナリティクス 4 プロパティ(旧称「アプリ + ウェブ」)は新しいタイプのプロパティで、ユニバーサル アナリティクスと比較すると次のようなメリットがあります。
- プライバシーが重視され、今後起こりうる変化に対応可能
- 機械学習を活用し、カスタマージャーニーに関するインサイトをプラットフォームとデバイスをまたいで分析
- Googleの広告プラットフォームとのシームレスな統合が強化され、キャンペーンのパフォーマンスの最適化とマーケティングの ROI の向上を実現
少しざっくりとしていますのでもう少し解説すると、具体的なGA4における特徴として3つの機能があります。
1.ウェブとアプリを横断的に計測できる
2.Googleの機械学習モデルを活用した予測機能の導入
3.プライバシー重視のデータ収集
それぞれの特徴は以下の通りです。
1.ウェブとアプリを横断的に計測できる
GA4はプロパティ内に「データストリーム」という新しい項目が追加されました。
データストリームには「iOS」「Android」「ウェブ」の3つがあり、それぞれのデータストリームに分かれています。
これにより、Webサイト用のデータとFirebase経由で計測されたアプリ経由のデータを統合して計測することで、ウェブとアプリをまたぐようなユーザーの行動についても、同じユーザーとして認識することが可能になりました。
GA4で新たにアプリ計測が導入された背景として「アプリのニーズが高まったこと」が挙げられます。
コロナ禍における生活様式の変化により、モバイルアプリの重要性がかつてないほどに高まっています。
アメリカのデータAI企業data.ai社が2022年1月に発表した「モバイル市場年鑑2022」では以下のような数字の発表があり、モバイルアプリの存在が多くの人にとって欠かせないものになっていることが分かります。
・モバイルアプリに費やす時間は1日平均4.8時間もの時間をモバイルの使用に費やしている
・2021年には1分間に32万USドル以上がアプリストアで消費され、消費者の関心と経済の動きがモバイルに移行している
Googleもモバイルアプリニーズの高まりを察知し、アプリでの導線を大切にしていることが分かります。
2.Googleの機械学習モデルを活用した予測機能の導入
GA4では実装したイベントを元にGoogleの機械学習モデルを使った「予測指標」が導入されました。
これにより、ユーザーの今後の行動を予測することが可能です。
予測指標を使用すると、構造化されたイベントデータを収集するだけで、顧客についてより詳しく知ることができます。
具体的には、「購入の可能性」「離脱の可能性」を予測することができ、「収益予測」では、過去 28 日間に操作を行ったユーザーが今後 28 日間に達成するコンバージョンによってどれくらいの収益が見込めるかを予測することが可能です。
ただし、機械学習モデルを活用した予測機能の導入には、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
- 購入ユーザーまたは離脱ユーザーのポジティブサンプルとネガティブサンプルの最小数。関連する予測条件をトリガーしたリピーターが7日間で1,000人以上、トリガーしていないユーザーが1,000人以上必要。
- モデルの品質が一定期間維持されている。
- 購入の可能性と離脱の可能性の両方を対象とするには、プロパティは purchase と in_app_purchase の少なくともどちらか一方のイベント(自動的に収集される)を送信する必要がある。
Googleの機械学習モデルを活用した予測機能については、アナリティクスヘルプ[GA4]予測指標をご確認ください。
3.プライバシー重視のデータ収集
GA4はGDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などのデータ規制に準拠したツールになっています。
EUやカリフォルニア州に限らず、プライバシー保護の強化は世界的な動きになっていると言っていいでしょう。
2021年6月にGoogleもすべての広告において今後近い将来に個人を追跡しないことを発表(Cookie以外も停止)、2023年にはGoogle Chromeでもトラッキング用のサードパーティーCookieのサポート終了を発表しています。
現在はCookie情報のみでユーザーの行動を追うことが困難になってきています。
特にサードパーティのCookieが段階的に廃止される方向で進む中、GA4はデータ規制に対応した仕様となっています。
なお、Googleアナリティクスでは、データ保持機能を使用すると、保存されたユーザー単位およびイベント単位のデータがアナリティクスのサーバーから自動的に削除されるまでの期間を設定できます。
GA4の場合、ユーザー単位のデータ(コンバージョンを含む)の保持期間は最大 14 か月に固定されます(2ヶ月か14ヶ月の選択肢しかありません)。
GA4は今までのGoogle アナリティクスと何が変わったのか?
UAからGA4は非常に多くの変更がありました。
計測の仕組みから、画面から、取得できるデータまでGoogle アナリティクスの15年以上の歴史の中で最も大きな変化が発生しました。(そのため今回初めて、名称もGA「4」(第4世代)に変わりました。
プロパティが変わろうとGoogleアナリティクスを利用する本質的な目的は「流入改善とサイト改善によりコンバージョンを最大化すること」に変わりはありません。
ただ、考え方として「どのような参照元/メディア/キャンペーンがどのページにランディングした時にコンバージョンしやすいか?」というセッション単位ではなく、
高いエンゲージメントをもたらす「ユーザー」の初回訪問を獲得したのはどのメディアか?どのコンテンツに触れた「ユーザー」がコンバージョンしやすいのか?といったユーザーに基づく分析を可能にしたのがGA4です。
Webサイト運営者にとっての重要な変化は2つです。
1つは今まで取得に実装が必要だったデータが、管理画面だけで計測できるようになった。
もう1つは指標の定義が変わり、新たな指標が増減した。
どちらもWebサイト運営者にとって影響が大きい内容になりますので解説を読んでいただき、今後の運営方法について最後に紹介いたします。
自動で計測できる項目が増えた
GA4が自動設定で計測できる項目が以下の通り増えました。
1. スクロール数
ページの長さの90%まで辿り着いた時に自動で計測されます。しかし、多くのメディアサイトは関連記事や広告等が記事下にあり、記事の読了が80%くらいの位置で離脱してしまいます。
そのため、本機能では望むような計測ができないとみています。よって、これまで通り実装を伴いますが、任意の箇所でスクロール率を取得したり、読了率を計測したりするのが良いでしょう。
2. 離脱クリック
ユーザーが自社ドメイン以外のリンクをクリックした時に、どのページでどのリンク先のリンクをクリックしたかを自動で取得してくれます。
例えば記事広告でクライアントサイトへ誘導できた数や、別のGAが入っているコーポレートサイトへの遷移数なども見られます。
あくまでも自サイトから外部サイトへの遷移になりますが、自動で取得できるので便利です。
3. 動画エンゲージメント
自社サイトに埋め込んだYouTube動画の再生数や、何%まで再生したかなどの情報を計測できます。
現在はYouTubeのみの対応となっていますが、しっかり動画が見られているのか?またその閲覧がユーザーの行動に影響を及ぼしているのか?これらを把握するのに便利です。
4. ファイルのダウンロード
ユーザーがリンクをクリックしたファイルをダウンロードした時に、どのページでどのファイルが何回ダウンロードされたかを計測する事ができます。セミナー資料やIR情報などなにかしらファイルに対してアクションを起こして欲しい時にこれらのデータも自動で取得できます。pdf/xls/doc/ppt/txt/csv/zipなどを含め数多くの拡張子に対応しています。
今まで紹介してきた追加機能の公式ヘルプは以下URLからご覧いただけます。
Googleアナリティクスヘルプ「[GA4]計測機能の強化イベント」
指標の定義が変わり、新たな指標が増減した
GA4ではアプリの計測が追加されたことにより、今までのGoogleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス、UA)と計測指標が変更になっています。
今までのGoogleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス、UA)との指標定義の違いは以下の通りです。
計測方法の違い | ||
比較ポイント | 今までのGoogle Analytics | GoogleAnalytics4 |
データの計測方法 | ページ単位での計測の上、
セッション数値まで計測 |
全てイベント単位で計測 |
指標の計測定義 | ページビュー単位の計測 | 「直帰率」「離脱率」は廃止 →アプリのダウンロードやアプリからのサイト流入といったWeb以外の流入も計測可能 |
1. 初回流入専用のレポートが用意された
訪問ごとの流入元だけではなく、初回ユーザー獲得の流入元のレポートが独立して用意されました。
ユーザー獲得=ユーザー初回訪問時の流入元、トラフィック獲得=全ての訪問の流入元
サイトにとって新規読者の確保は大切です。こちらのレポートを利用することで簡単に新規獲得の効果を計測することが出来ます。
2. 直帰率がなくなりエンゲージメント率が追加された
GA4からは「直帰数(率)」(1ページだけみた離脱した数や割合)という概念がなくなりました。
ページやサイト全体の直帰率を見ることはできません。メディアによっては重視していた項目かもしれません。
ただ直帰率はユーザーの行動実態を正しく表していなかったのも事実です。
例えばメディアサイトで、最初に5行だけ出てきて「続きを読む」ボタンを押して記事本文のページに移動するサイトと、記事が最初から最後まで読めるサイトでは直帰率を比較することに意味がありません(前者のほうが必ず直帰率が低くなる)。またページ分割の有無によっても直帰率は大きくは変わります。さらに、5秒見て離脱した人も、5分見て離脱した人も同じ直帰扱いになってしまいます。
直帰率はわかりやすい数値ですが適切なものさしではありませんでした。そこでGoogleは(想像するに)この指標はあまり使うべきではないと判断して意図的に外したのでしょう。では、今まで見ていたサイトはどうすればよいのか?GAで見続けるという選択肢もあるでしょうが、GA4が新たに用意したのが「エンゲージ数(率)」になります。
エンゲージは「婚約」という意味でも使われますが、ここでは訪問時に「サイトと関係性を持った」という意味合いになります。以下のいずれかの条件を満たした場合、その訪問は「エンゲージがあった」と判断します。
- 滞在時間が10秒以上(この秒数は10~60秒の間で変更可能)
- 2個以上のイベントが発生した(例:複数ページ閲覧した)
- 閲覧したページやアクションがコンバージョン(成果)として登録していた
つまりエンゲージ数や率が高いほど、より関係を持てた回数や率が多いことを意味します。
直帰率とエンゲージメント率は逆の関係にあり、一般的に直帰率が高い=あまり良くない、というところが、エンゲージメント率が高い=基本的には良い、という考え方になります。新しい考え方に慣れていく必要があります。
3. 離脱率の定義が変更
ページを閲覧後に離脱した割合を見るための「離脱率」、こちらの定義もUAとGA4では変わりました。UAでは分母がページビュー数でしたが、GA4ではセッション数に変わっています。具体的な例で、ご説明します。 以下の3つのセッションがあった場合
- ページA⇒ページB⇒ページC
- ページA⇒ページC⇒ページB⇒ページA
- ページB⇒ページA⇒ページC
GAの場合のページAの離脱率
- ページAが最後だった回数=1回
- ページAのページビュー数=4回
よって、ページAの離脱率=1÷4=25%
GA4の場合のページAの離脱率
- ページAが最後だった回数=1回
- ページAが存在するセッション数=3回
よって、ページAの離脱率=1÷3=33%
こちらの変更に伴い、GA4での離脱率はUAより高くなります。サイトが悪くなったのではなく、GA4の仕様変更によるものだと覚えておきましょう。
4. セッションの定義が変わった
セッション(いわゆる訪問)の定義も変わりました。代表的なところとしては
- 日をまたいでもセッションが切れなくなった(UAでは日をまたいだ訪問は2セッション扱いになっていた)
- サイト外に出ても30分以内に戻ってくれば1セッションとしてカウントする(UAでは別サイトに移動して戻ってきた場合は別セッションとなっていた)
などがあげられます。特に2つ目の変更はメディアサイトにとっては大きいでしょう。ニュースアプリやニュースポータルサイトでの行き来などが多い場合、サイト全体のセッション数は減る傾向にインパクトを与えます。UAとGA4を比較した時に数値がずれる要因の1つでもあります。
GA4の設置は早めに対応、既存UAと並行した設置がおすすめ
GA4の特徴やUAとの違いについて解説してきましたがWebサイト担当者の皆様にとって、「実際、いつ頃切り替えた方がいいのか?」という疑問が出てくるかと思います。
以下、移行の際に気をつけるべき点と移行のポイントについて解説いたします。
UAで収集したデータはGA4では閲覧できない
UAとGA4はプロパティが異なるため、今までUAで蓄積したデータはGA4では閲覧できません。
また、今までのアナリティクスと同様、GA4のデータ集計は計測コードを埋め込んだタイミングから計測されます。
そのため、GA4でデータ集計を行いたい場合は早めにコードを埋め込んでおく必要があります。
UAとGA4の計測コードは並行して設置をしておくことが無難
前述の通り、GA4で計測されるのは「埋め込みコードを埋め込んだタイミングから」となってしまいます。
GA4設定のタイミングについては早い方が良いですが移行時の注意点も踏まえ、移行する際は現在のGoogleアナリティクスの設定は変えずに「新しいプロパティでGA4を追加」することを推奨します。
これには下記の理由が挙げられます。
- 導入してからデータの蓄積が始まるため、先んじて導入を進めておくことに大きなメリットがあります。機械学習はデータが蓄積されるほど精度が高まりますし、本格的に分析しようと前年度比較をしようと思ったときに先月GA4を入れたばかりであればそもそも比較することができません。
- まだまだ機能の課題は多いものの、今後Googleは世の中のプライバシー配慮への流れを踏まえて、GA4を中心にアップデートをかけていくため、それに備えておく必要があります。初期の段階で導入しておくことで本格導入が必要となった時に活きてくるでしょう。
こういった理由から全面移行の前に新しいプロパティとしてGA4を開設しておくことを推奨します。
まとめ
今回はGA4の特徴やUAとの違いや移行の注意点を解説しました。
機能的なメリットもあれば、仕様的な違いもあり、レポート画面も使い方を覚えないといけないのがGA4です。
しかし機械学習や自動分析などの機能も既に一部GA4には搭載されていますし、今後も更に便利になっていくことでしょう。
GAの計測停止のアナウンスもあり、計測の未来は間違いなくGA4になります。
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