週刊文春 電子版

北海道 野球部監督35歳が英語教師47歳を“W不倫殺人”「心中しようと…」

「週刊文春」編集部

NEW

ニュース 社会

「釧路に行ってくるね」

 北見緑陵高校教諭の宮田麻子さん(47)は、5月29日の日曜日、家族にそう告げて北見市内の自宅を車で発った。だが、約2時間半後に目撃されたのは、帯広市内の野球場。そこにいたのは、12歳下の妻子ある男性教師だった。

「妻からのLINEが昨夜から途絶え、家に帰ってこないんです」

 北海道警に宮田さんの夫がこう相談したのは翌30日のこと。聞き取りの過程で真っ先に浮上したのが帯広農業高校教諭の片桐朱璃(しゅり)容疑者(35)だった。

片桐容疑者

「片桐と宮田さんは、3月まで同じ高校で教員として働いており、宮田さんの夫は以前から2人の“関係”を疑っていたようです」(道警担当記者)

 片桐は31日に行われた任意の事情聴取で「何も知りません」と関与を否定したものの、

「罪悪感に苛まれたのか、翌日になると態度が一変。『宮田さんの死体を車で運び、スコップで穴を掘って埋めました』などと供述を始めたのです」(同前)

 道警が供述に沿って帯広市内の雑木林を調べたところ、土中から宮田さんの遺体を発見。片桐は死体遺棄の疑いで逮捕された。

宮田さんが埋められていた雑木林

 2人が今年3月まで勤務していたのは、北海道北東部に位置するオホーツク管内の美幌町にある道立美幌高校だった。先に赴任したのは片桐の方で、2013年春から「農業」の担当として教鞭をとっていた。当時を知る教え子が言う。

「網走出身で酪農学園大学の大学院を出た片桐先生は、いつも穏やかで怒らない人。地域資源応用科の先生で、ビーフジャーキーのような加工食品の作り方を教えてくれた。若い先生だったので女子からも人気があって、全員の生徒を下の名前で呼んでくれるから、とても親しみやすかったです」

2人が6年間ともに過ごした美幌高校

 片桐は自身が高校球児だったこともあり、野球部の監督としても熱心に部員を指導していたという。

「野球の練習中はちょっとだけ厳しくて、エラーをすると怒鳴ったりすることも。でも基本的には優しくて、練習試合の帰りに『みんな頑張ったから奢ってやるよ』と、ソフトクリームを部員全員に買ってくれたこともあった」(元野球部員)

 卒業後の生徒とも交流を絶やすことなく、同窓会にも率先して参加していた。美幌町の歓楽街にあるカラオケバーの店主が語る。

「ウチの店には年に1、2回来てくれて、最後に来たのは今年の1月5日。いつも飲み放題5000円のコースで、夜10時頃に2、30人の教え子を連れて来て、飲んで歌って深夜2時頃に帰っていく。お酒は嗜む程度でしたが、教え子に囲まれて、いつも嬉しそうにしていましたよ。フレンドリーな感じで教え子に『しゅり〜』と呼び捨てにされたりもしていました」

 一方、被害者の宮田さんが赴任してきたのは3年後の16年春。釧路出身で高校時代はテニス部の主将を務め「文武両道の優秀な子」(知人)だったという。美幌高校では英語教師として教壇に立ちながら、美術部の顧問を務めていた。教え子が語る。

「宮田先生はめっちゃ優しくて、美人。お母さんみたいな安心感があるから、『ママ』って呼ぶ人もいた。授業も楽しくて、私たち生徒が『ゲームやりたい』って言っても、『いいよー、その代わり明日はちゃんと授業するからね』って感じで応えてくれる人。多分、先生の中で一番好かれていて、綺麗だから男子からも人気があったと思う」

生徒に人気があった宮田さん

 服装は黒系のワンピースにカーディガンを羽織っていることが多く、「指輪はしてなかったけどネックレスをいつもしていた」(同前)という。それでいて、

「ゆるキャラが好きみたいで、美術部で砂絵をやったとき、先生は『私もやろ〜』って言いながら、リラックマの絵を上手に描いていました」(元美術部員)

 職員室の机は常に整理整頓されており、

「机の上には、前任校の生徒との集合写真と共に、体育教師の旦那さんと2人の息子さんの4人で撮った写真が飾られていた記憶があります」(元同僚)

 共に生徒から慕われ、笑顔を絶やすことのなかった2人。学校内では「仲は良かったけど、特別な関係には見えなかった」(同前)という声が多い。

 だが、ある捜査関係者はこう断言する。

「男女間のもつれが原因にあるのは間違いない」

 宮田さんが赴任してきたばかりの頃を知る教え子も言う。

「あれは16年の夏が終わる頃。2人がデキているという噂が校内で広まったんです。現に、片桐先生の黒いファミリーカーの助手席に、宮田先生が乗っている姿が美幌町内で目撃されていたんです」

 以後、2人の関係は“公然の秘密”のようになっていったという。

「だから今回のニュースを最初に聞いたとき、殺されたのは宮田先生なんじゃないかって直感的に思ったんです。そしたら、やっぱりその通りで……」(同前)

 前出の元同僚もこう語る。

「宮田先生は美幌高校に赴任してからまだ6年しか経っていないのに、この春、片桐先生と同じタイミングで異動になった。学校側も2人の関係に気が付いていたはずです」

 片桐のことが在校中「大好きだった」という前出の元美術部員が明かす。

「なつぞら」のモデルの高校で

「あるとき美術部の部室で宮田先生に『片桐先生めっちゃイケメンで、私のタイプ〜』って言ったら、宮田先生も『イケメンで優しいよね』って同意してくれて。その流れで『私、片桐先生と大学が一緒なんだ』って少し自慢げに教えてくれました。2人とも普段は物静かだけど、私が落ち込んでいると空気を読んで声をかけてきてくれる。2人はどこか性格が似ていました」

 片桐は幼い頃に両親が離婚しており、看護師の母親と長く2人で暮らしていた。一回り年上で生徒に「ママ」と呼ばれる宮田さんに母の面影を重ねたのか、いつしか2人はW不倫の罠にすっぽりと嵌まり込んでいた。危うい関係に変化が訪れたのは昨年5月のこと。

「片桐先生と、小学校の先生をしている奥さんとの間に女の子の赤ちゃんが産まれたんです。これを機に、片桐先生は子育てを優先して奥さんの実家に近い帯広に転勤希望を出したと聞いています」(学校関係者)

 転勤先は、NHK連続テレビ小説「なつぞら」のモデルにもなった帯広農業高校。野球部は昨夏、39年ぶりに甲子園に出場しており、これからさらに強くなっていくはずのチームだ。

 これで6年に及ぶW不倫に終止符を打ち、やり直す――片桐はそう思っていたのかもしれない。しかし、

「片桐が野球部の副部長として練習試合に同行していたその日、宮田さんが市営球場に現れました。試合が終わった午後5時過ぎに、片桐と宮田さんはお互いに車を運転して落ち合い、日付が変わった後、宮田さんは殺されています」(前出・道警担当記者)

 目下、道警は殺人容疑での再逮捕に向け更なる捜査を進めている。

「死体遺棄の疑いで2日に逮捕された後、片桐は事情聴取に対し『心中しようと思ったが、死にきれなかった』などと供述しており、宮田さんは絞殺されるのを素直に受け入れていた可能性がある。事実、宮田さんに、目立った外傷や抵抗の跡はなかった。ただ片桐は遺体を埋めるためのスコップを購入しており、心中がどこまで本気だったか疑われる」(前出・捜査関係者)

 片桐の、新天地での家族3人でのリスタートは、はかない夢と消えた。

source : 週刊文春 2022年6月16日号

文春リークス
閉じる