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フジ「ポップUP!」パワハラで被害者が自殺未遂していた

「週刊文春」編集部

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「『ポップUP!』のチーフプロデューサー(以下、CP)のXさんがアシスタントプロデューサー(以下、AP)のAさんにパワハラをしていた疑惑で、聞き取り調査や会議が行われました」(フジテレビ社員)

 4月スタートの情報バラエティ番組『ポップUP!』は佐野瑞樹アナ、山﨑夕貴アナがMCを務める。

「曜日ごとに小泉孝太郎さん、前田敦子さんなどが出演。前田さんはXさんがオファーした」(番組スタッフ)

前田敦子はX氏がオファー

 だが船出はとても順調とは言えない。世帯視聴率は1%台で、同時間帯の番組の中で最低と苦しい状況だ。さらに辛いのが過酷な労働を強いられるスタッフ。

「直前まで放送されていた『バイキングMORE』は約150人のスタッフがいたが、『ポップUP!』は約100人。長時間労働は当たり前で、1週間以上帰っていない人間もいます」(同前)

 X氏は編成畑が長く、2019年に情報制作局に異動し、『めざまし8』などを担当。今回、CPに就いた。

「元華族でもあり、スタッフは陰で『天皇』と呼んでいる。お気に入りの女性スタッフを自分の机の周りに置くので、『竜宮城』と揶揄されていた」(別のスタッフ)

 そのX氏の標的にされていたのが、APのA氏だ。

「A氏は芸能事務所の窓口担当で、ゲスト用に台本を作って事務所に確認するなど、仕事は多かった」(同前)

 X氏とA氏は同い歳だが、X氏はフジ社員でA氏は制作会社社員である。

「XさんはAさんに『エース』『先輩!』と言い、カロリーメイトなどを買いに行かせていた。『全然働かないから、仕事振ってもいいよ』と女性スタッフに言ったことも。Aさんが帰ろうとするとXさんが『仕事も碌にしてないのに帰るの?』と一言。Aさんはしばらく局に泊まっていた」(同前)

 小誌はスタッフのグループLINEを入手。X氏は〈Aさん奮闘促しキャンペーン中〉とA氏を小馬鹿にした書き込みをしていた。

スタッフ間のLINEでA氏を笑いものに

 事件が起きたのは、5月12日の夜のこと。X氏はいつも以上にA氏を叱責していた。前出の社員が語る。

「Aさんの入稿した番組表の原稿がXさんは気に入らなかったようです。XさんはAさんに『入稿先業者に電話しろ!』と、営業終了後の業者に何度も電話をさせた。そして『明日、何度も電話してすみません、と謝罪しておけ』と言い捨てた」

 だがその数時間後――。パワハラに耐えかねたA氏は、社内で遂に自殺未遂を起こしてしまったのだ。

「朝、Aさんがふらふらの状態で廊下を歩いていました。70錠以上の薬を飲んだというのです」(同前)

 その後、ある局員が労務管理担当に「Aを気にかけてやって」と助言。労務管理担当はA氏に話を聞いた。

「Aさん自身もディレクターやADから、仕事が辛いと相談を受けていた。自身が受けるパワハラだけでなく、後輩の悩みも抱え込んでいたのでしょう」(同前)

 そして22日、A氏は自宅で大量の薬を服用し、2度目の自殺未遂をしてしまう。異変を察知した局員が救急車を呼び、A氏は一命をとりとめ、2日後に退院。今は休職中だ。

 A氏の自宅を訪ね、パワハラや自殺未遂について確認すると、言葉少なに「事実です」と認めた。

自殺未遂発覚後に行われたアンケート

 実はパワハラの標的はA氏だけではない。女性APのB氏も被害者の一人。

「彼女は制作スケジュール管理を担当。放送前日にXさんのチェックが必要なのですが、Xさんは『後で、後で』と追い払い、4時間待たされることも。毎日のように帰宅は深夜に。彼女もいま休職中です」(同前)

 A氏が自殺未遂をした翌日から、X氏には労務管理担当や情報制作局局長による聞き取り調査が行われた。派遣スタッフにはハラスメントに関する調査もあった。旬報法律事務所の佐々木亮弁護士が語る。

「ハラスメントを管理すべき立場のX氏がパワハラを行うのは問題。会社も安全配慮義務を怠ったと言える。A氏の医療費の支払や、精神的苦痛に対する慰謝料を支払う責任も生じ得ます」

 X氏を電話で直撃すると、「会社に連絡してください」と言うのみ。フジ広報は概ね次のように回答した。

「(パワハラ等について)当社の認識と異なる内容が含まれていますが、CPの言動等に関し、詳細を確認しているところです。働きやすい環境を整えることは、すべての番組で重視しており、当該番組でも適切なあり方を検討しております」

 情報バラエティの舞台裏で、笑えない出来事が起こっている。

source : 週刊文春 2022年6月16日号

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