あかねとなお　２

「あっ、そうだ」

「……変な所でやめんな」

「忘れてた！」

「パンいちで何しとるん…　何やそれ？」

「じゃーん！　防水シーツ」

「防水シーツ？」

「そう！　ベビー布団に敷くやつ。西松屋で798円だったんだ～」

「何に使うん？」

「今から敷いて使うに決まってるじゃん！
　この前、敷き布団まで染みて大変だったんだから！」

「だって、それはなおが…」

「母さんにも、どうしたのか聞かれたんだよ！
　なんであかねが汚したか説明するのに苦労したよ」

「直球もええ加減にせぇよ！　一体なんて言うたんや！？」

「今度汚したら母さんに、
　あかねはもう14なのに、まだ漏らしますって言えばいいの！？
　あかねはまだ14なのに、もう漏らしますって言えばいいの！？」

「…『もう』と『まだ』を入れ換えただけで、こんなに意味が違ってくるんやな」

「日本語ってすごいよね」

「ここは突っ込まなあかんとこやけど…　いや、これは感心するわ～」

「で、どっちよ？」

「…どっちもあかんやろ…JK
　つーか、なんでウチ前提なん！？」

「だいたい汚すのはあかねでしょ」

「いや、それは…　なおが無理矢理する、から…」

「嫌だった？」

「い、嫌っていうか…」

「…よかったんでしょ？」

「…。
　…っていうか、それじゃあ小っさ過ぎやろ」

「えっ！？　あたし、腰の所だけ敷けばいいと思ってたんだけど…」

「えっ！？　あ、いや…えっ！？」

「もっと大きい方が良かったんだ！？
　全身ぐちょぐちょになってもいいように！？」

「いや、ち、違…」

「全身ぐちょぐちょになるぐらい、あたし頑張るよ！」

「頑張らんでええ！」

「いっぱい出して！」

「出せるか！！」

「あかね～っ！！」

「待てっ！！　落ち着け！！
　あっ……
　もう…　あ…　ダメやて……」

「ダメ、なの…？」

「ダメや…ない、けど…
　…ほんま…　あ…ぁ…　あかんて……っ…」



「ほらぁ、やっぱり敷いといてよかったでしょ？
　でも今度は、介護用の防水シーツ買っとくから、ねっ？」

「…買わんでええ…」