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この作品「告白」は「スマイルプリキュア」「NISSANコンビ」等のタグがつけられた作品です。
告白/あまね**の小説

告白

4,288文字9分

【第1話/全9話】あかねちゃんとなおちゃんの付き合い始めを妄想して書きました。甘酸っぱい気持ちwになってくれたら嬉しいです。妄想は止まらず、現在5作品同時進行で執筆中…。頭の中のイメージを文章にするって難しいですね…。■□■□「告白」が、小説ルーキーランキング 72 位に入ったとの連絡を頂きました!読んで下さったみなさん、評価して下さったみなさん、本っっ当にありがとうございます!!また、ありがたいタグまで(泣)嬉しい!実は恥ずかしながら、最初から続きものにしようと考えていました…。小学生の作文みたいな文章で恥ずかしいんですが、お時間のある方は、お付き合い頂けると嬉しいです。■□■□

2012年5月5日 15:31
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「ウチまで送ってもらってゴメンね」
重くない?と、あたしより華奢なあかねに尋ねる。
「かまへんで。こんなにたくさん、か弱い女番長には持たせられへんからな」
「何それ、褒めてんの?けなしてんの?」
二人でわざと肩をぶつけあって笑う。

何日もかけてお父さんの味を追求し、ついに隠し味を突き止めたあかね。
今日、無事に町内会長さん達をもてなすことができた。
晴れ晴れとしたあかねの笑顔。
あたしも嬉しかった。
自分のことのように、すっごく嬉しい。

会長さん達が帰ってしまって、みんなで片付けようとしたとき…

「あ~、しもた~」
「あかねちゃん、どうしたの?」
「お好み焼きの生地、作りすぎたわ」
「え、そんなにたくさん?」
「もったいないから、みんな持って帰ってや」

今から焼くからなと、鉄板に油を引き始める。

あたしには分かる。
余ったんじゃない。
ずっとみんなが手伝ってくれたからって、
今日お礼する為に、きっと最初から用意してた。
だってほら、それぞれの家族の人数分焼き上がってる…。

「できたで!温かいうちに持って帰り」
「わぁ、なおちゃんのいっぱ~い!」
「大家族ですものね」
「あたし、こんなにたくさんいいよ!まだ下の子たちは、1人1枚なんて食べないもん」
「ええって。食べない分はラップに包んで冷凍しとき。ちょっと味は落ちるけどな」
「でも…」
「一番下のこうたくんも、肉の部分外せば手に持って食べられるから便利やろ。
 日曜日の昼御飯はこれでキマリやで」

ニカッと笑われると、もう断れない。
「…ありがと」

ほんと気が利く子。
普段はおどけてばかりで、何が本当か分からなくなるぐらい冗談ばっかり言うけれど、
本当にみんなのことを良く見てる。

あたし達だけじゃない。
クラス全員のことを大事に想っていて、誰かに何かあれば敏感に察知して、
さりげなくフォローに回る。
がさつに振る舞ってるけど、人の痛みの分かる繊細な子。
あかねがそんな子だから、クラスのみんなからも慕われていて、
転校してきてすぐにクラスになくてはならない存在になった。

あたしはなんでも思ったことをストレートに言ってしまうから、色々と失敗することもある。
その度に何回もあかねに助けられたっけ。

「1人で全部持ったら重いやろうから、半分持つわ」
そんなわけで、あかねと並んでウチを目指してる。

「あかねってさ」
「ん?」
「あたしのこと、すぐ女番長って言うけど」
「ん~」
「ほんとはそんな風に思ってないよね」
「…うん」
「ありがと」
「ん」

なんで、とか聞かないのが、あかねの優しいところ。
たぶんあたしが話したくなるまで待つのだろう。

その後はお互い無言だった。
でも、嫌じゃない。
人によっては沈黙に耐えられず、妙なテンションでしゃべり続けてしまうこともあるけど、
あかねとは無言でも気にならない。
自分を取り繕わなくてもいい、ありのままでいられる、
なんというか…空気みたいな存在。ないと死んじゃうみたいな…。
死んじゃう、みたいな…?

ぼんやりと考えていたら、いつの間にかウチの前。
あがって行ってと誘ったけど、あかねは夕飯時やしと遠慮した。

玄関まで出てきたウチのお母さんに今回の一連の話をし、
「なおのお陰で、ほんま助かりました。
 なおがおらんかったら、今日はあないに上手くいかんかったわ~」
と恥ずかしいぐらい褒めてもらった。

「ほな、明日学校でな」
と帰るあかねを追いかけた。

…もう少し、一緒にいたい。

「待って!」
「どしたん?」
「あー…、オムツ!こうたのオムツがもうすぐなくなりそうだから買いに行くの!」
「財布ももたんと?」
「…」
あかねはちょっと笑って、それ以上聞かなかった。
あたしはどうしようか迷ったけど…
あかねの横に並んで歩いた。

もう辺りはすっかり茜色。
見るもの全てが茜に染まっている。

河川敷に差し掛かる。
あかねがいつも、橋の下で一人バレーの練習をしている所だ。

あかねがいない時に、こっそり橋の下に降りたことがある。
壁に信じられないぐらいの数のボールの跡が残っていて驚いた。
今回のお好み焼きの一件でも思ったけど…
本当に、努力家なあかね。
でも絶対に努力している所を人に見せないし、ひけらかしたりしない。
同じ運動部として尊敬してる。

「なお」
急に呼ばれて、我に返る。
「ありがとな」
「ううん!あたし何にもしてないよ。さっきだって、あたしのこと褒めすぎだよ。
 今回のことは、あかねの努力の賜物じゃない!」
あかねが立ち止まる。
「今回のことだけやあらへん」
「じゃ…じゃあ、あたしも、あかねにありがとうを言わなきゃ」
「え?」
なんだかあかねの雰囲気がいつもと違って、あたしが先にしゃべりだしてしまった。

「あたし…みんなから女番長って呼ばれること、気にしてたんだ」
あかねが河川敷の斜面に座る。
あたしもそれに習った。

「あたしがこんなだから、女の子から騒がれることもあるし、男子からはからかわれるし…」
あかねは赤くキラキラ光る水面をじっと見て、あたしの言葉に集中しているようだった。
「みんなのイメージに、あたしが合わせなきゃいけないような気がして、
 かっこいいあたしでいなきゃいけないような気がしててね…」
「苦しかったんやろ?」
あかねと目が合う。

「ウチ、分かってたよ。転校してきたときから、ずっと」
鼻の奥がツンとした。
「最初に会った時から、この子無理しとるんやろな。苦しいやろなって思ってた」
…泣きそう。
「でもウチもみんなに便乗して、女番長言うてたもんな。…ゴメンな」
「ううん。あかねに言われても、嫌じゃなかったもん」

ちょっと申し訳なさそうな顔をして、あかねが水面に目線を戻す。
あたしはその横顔を見て…見とれてしまった。

あかねって…
きれいなんだな。

いつもクルクルと表情が変わるから、よく分からなかった。
こうしてみると、顔立ちが整っていて、まつげが長く猫のように大きな目。
柔らかそうな髪の毛も、夕日に彩られてさらに赤みを増し、輪郭が白く光っている。
炎の化身だけあって、赤色がよく似合っていた。

「ウチも、なおにありがとうを言わなあかん」
あかねが近くにあった小石を投げた。
「ウチ、大阪からこっちに引っ越してきた時にな」
「うん」
「みんなとは仲良うするけど、特定の仲良しは絶対作らんと思っとった。だってな…」
あたしも、あかねの言葉に集中する。
「別れる時に、つらいから」

あかねの横顔を見た。
あかねは遠くに見える橋の方を見つめ、何かを思い出しているようだった。
なんで引っ越してきたのかは詳しく聞いたことがない。
大阪で、友達とのツライ別れがあったんだ…。
悲しかったんだろうな…と思う前に、その友達に嫉妬している自分に驚いた。

…なんで!?
あかねが悲しんでいるのに、なんであたしこんな気持ちになってるの!?
そんな気持ちを顔に出さぬよう、胸に手を当てる。
こんなのあかねに失礼だ。

「特定の仲良しはいらんと思っとったけど…なおに、出会ったんや」
「あたし?」
「なおは不思議や。
 ウチ元々人とおしゃべりするのは好きやけどな、
 合わん人とは沈黙に耐えられんで、妙なテンションでしゃべってしまうやろ?」

…あ。

「なおとは無言でも気にならないんや。
 自分を取り繕わなくてもいい、ありのままでいられる、
 なんというか…空気みたいな存在っていうか。
 あ、おらんでもいいっていう意味じゃなくてな…」

「ないと、死んじゃう、みたいな…?」
あかねが驚いた顔であたしを見た。

「あたしもね、同じこと思ってたよ…
 あかねがいないと、死んじゃう」

あかねの頬に涙が一粒伝った。

「ゴメン!泣かせちゃった!?」
「なおだって、泣いてるやん」

ポタポタと涙の粒が顎から落ちて、あたしの膝を濡らした。
あかねが慌てて、あたしの目の下を親指で拭う。
あかねに触れられて、頬が熱くなり、心臓が高鳴った。

あかねは、大阪でツライ別れを経験した。
今一緒にいることも、永遠じゃない。
明日、もし、あかねとの別れが来たら…!?


血の気が引いた。


「あたしと、付き合ってください!!」


えっ!?
今なんて!?
なんで告白してんの、あたし!?

あかねも、大きな目をさらに大きくして、あたしの顔を見てる。

どうしよう!!
お願い!!
今こそ、緑川さん、ええボケやで~って言って!!
あたしは、たぶん相当みっともない顔で、あかねの言葉を待った。

「やっぱり、この気持ちは親友に対してじゃないんかな」
「…」
「ウチも、なんなんやろって、ずっと考えてた」
「あかね…」
「ウチも、なおがおらんと死んでまうねん」
あたしは瞬きもできずに、あかねの朱色の瞳を見つめた。

「いつかなおとの別れが来るかもしれん。
でも、その時に後悔しないように、なおとの時間を大切にしたい。
それが『付き合う』っちゅう手段になるなら…」


プリキュアに変身する時みたいな、真剣なまなざしで…

「ウチと付き合うて下さい」


あたしは、自分でもビックリするぐらい、泣いた。

しゃくり上げながら聞いた。
「女の子同士だけど、変じゃないかなぁ?」
「みんながどう思うか分からん。
 でも、ウチが変やないと思うから、変やない」
「みんなに知れた時、嫌われないかなぁ?」
「そん時はそん時や。ウチにまかしとき」
「あかねぇ…」

あたしは両手で顔を覆って、小さい子みたいに泣いた。
あかねはあたしが落ち着くまで、ずっと背中をさすってくれた。


この気持ちは、恋だったんだね。


こうしてあたし達は、この日から付き合うことになった。

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