【独自】 事務方は反対していた!78億円で303人 大阪コロナ施設「吉村知事」のゴリ押し発言録を入手

現代ビジネス編集部

最初から大失敗がみえていた

週が明けた8月30日の月曜日には、インテックス大阪である所有者・松井一郎大阪市長にあてて、「新型コロナウイルス感染症の医療体制の確保について」という書面を送付した。現代ビジネスが入手した文書「令政第1166号」には、はっきりこう記されている。《つきましては、大阪市所有の、大阪国際見本市会場(インテックス大阪)の活用について検討しておりますので、ご協力いただきますよう、よろしくお願いします》と、インテックス大阪の活用に協力を要請した。この時点で「野戦病院」設置がほぼ決まったのだ。

松井一郎市長に送付された文書松井一郎市長に送付された文書

それから4ヵ月。インテックス大阪で予定通り野戦病院「大阪コロナ大規模医療・療養センター」は開設された。2022年の1月31日から無症状・軽症者用、2月15日から中等症用の運用がはじまった。

患者向けしおり「中等症病床のご案内」より患者向けしおり「中等症病床のご案内」より

鳴り物入りで設置された同センターだが、大阪府のホームページによれば今年3月1日の時点で同センターは1000床中42人の利用で、利用率はわずか4.2%だった。一方、ホテルを使った宿泊療養は、利用率22%だった。既存の宿泊療養であっても、十分に空きがある状態だったのだ。

その後も利用率は伸びず、4月1日になると同センターの利用率はさらに下がり2.1%。利用可能な運用病床も減らされることになった。

今年3月に同センターで治療を受けていた府民の一人はこう証言する。

「国際展示場ですから、天井が高くて、普通の体育館が3つ、4つが入りそうな広さでした。そこをパーテーションで区切って「病室」にしていました。といってもベッドと小さなテーブルがあるだけで、天井はそのままだから、寒かったです。

広い空間ですから、夜になるとシーンとした中に少し音がしただけでも、けっこう響きます。利用者も少なく、看護師さんらもとても暇そうでした。ガラガラなのがバレたらまずいのか、スマホで写真撮影したところ『消して下さい、禁止です』と叱られました。二度とあんなところで治療を受けたくないですね」

患者向けしおり「中等症病床のご案内」より患者向けしおり「中等症病床のご案内」より
 

前出の大阪府幹部が語る。

「インテックス大阪は国際展示場です。震災や大きな台風で甚大な被害、壊滅状態というのならまだしも、コロナに感染した人が発熱や頭痛でなどで治療にくるのに、だだっ広い国際展示場をあてるというのは、最初から大失敗がみえていた。パフォーマンス好きの吉村知事に使われただけです。

我々事務方としては、このような中身のないスカスカの箱を多額の税金を投入してつくるよりも、既存病院の病床拡充やホテルでの宿泊療養施設の拡充など、現実的に機能する方策を考えていました。大規模療養センターをやるにしても、ハコありきではなく、中身をしっかりと詰めたうえで、それに見合うハコを決めてやるべきでした」

薄ら寒い「野戦病院」を作ったものの、誰も利用しない──そのパフォーマンスには膨大な税金が投じられることになったが、吉村知事がそこまで焦った理由は他にもあった。そもそもこの提案を持ってきたのが「関経連」であったことだ。

吉村氏が代表を務める大阪維新の会の地方議員はこう語る。

「昨年の一番の政治課題は、10月31日投開票の衆院解散総選挙でした。自民党最大の支持母体は経済界です。関西の財界トップ・関経連の提言は無視できなかった。

目立つのも好きな吉村氏だが、関経連の提言を受け入れることで、選挙戦を有利に運ぼうという思惑があったのだと思う。『維新も頑張っている』という姿勢を見せ、経済界を味方に引きつける明確な形が必要だった。それが提言にある同センターの実現だったのです」

2025年には大阪・関西万博が予定され、その後には大阪IR構想が打ち出されている。吉村氏にとって、関経連のバックアップは欠かせないものだった。

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