Foovo Deep

二酸化炭素からタンパク質を作る英ディープ・ブランチ、アイスランド国営電力会社と提携

 

二酸化炭素を原料に持続可能で高品質な食品・飼料用タンパク質を開発するイギリス企業ディープ・ブランチ(Deep Branch)は、アイスランドの国営電力会社Landsvirkjunと基本合意書(MOU)を締結した。

提携では、ディープ・ブランチの最初の商用生産施設をアイスランドに建設する可能性について検証する。

この工場は、二酸化炭素と水素から作られたディープ・ブランチの単細胞タンパク質Protonの生産を拡大するための実証実験に使用され、2027年の稼働を予定している。

ディープ・ブランチ、アイスランドに工場建設を検討

Proton 出典:Deep Branch

以前、ディープ・ブランチは最初の商用生産施設の候補地としてノルウェーを検討しているとしていたが、今回の発表によりアイスランドを有力候補地として検討していることが明らかになった。

オランダでのパイロット工場建設に続き、ディープ・ブランチは現在、今後5年以内に建設する商用生産施設の候補地を検討している。

候補地の選定では、飼料生産者や水産業者など下流市場におけるプレーヤーに近いかどうかに加え、同社の連続発酵プロセスに必要なエネルギー源である水素を入手できるかが、重要な検討材料となる。

二社の提携では、ライフサイクルアセスメント(LCA)と技術経済性分析(TEA)を実施し、これらの結果は年末までに提供される。LCA、TEAの結果も候補地の選定に寄与する要因となる。

脱炭素化を進めるアイスランド

左はディーブ・ブランチCEOのPete Rowe氏 出典:Deep Branch

アイスランドはエネルギーシステムの85%の脱炭素化をすでに実現しており、豊富な再生可能資源を利用して、最初の完全なグリーン水素経済を実現する可能性を秘めている。

Landsvirkjunは水力、地熱、風力の再生可能エネルギーのみで発電するアイスランド最大の国営電力会社であり、水力発電所を15箇所、地熱発電所を3箇所、風力発電所を2箇所運営している。

Landsvirkjunは水素を利用する産業や潜在的な投資家と協力して、アイスランド経済の脱炭素化とエコ産業化された経済の発展で主導的役割を果たすことを目指している。

「アイスランドは再生可能資源への独自のアクセスにより、フードシステムの新しく革新的なソリューションを推進するうえで大きな役割を果たせると信じている。

ディープ・ブランチが持つ独特の生産プロセスは新しい循環の機会を創出し、アイスランドの陸と海を拠点とした急速に拡大する養殖産業に価値を生み出せる点で、最適なパートナーだ」(LandsvirkjunのSigurdur Markusson氏)

穀物高騰の影響を受けない持続可能なタンパク質生産

Proton 出典:Deep Branch

単細胞タンパク質は微生物タンパク質とも呼ばれ、細菌や酵母など微生物の体内に含まれるタンパク質を指す。糖類・デンプン・メタンなどを原料に微生物を発酵タンクで培養して得られたものが、単細胞タンパク質となる。

通常、メタンや糖類をエサに使うが、ディープ・ブランチは二酸化炭素を使用する。

ディープ・ブランチのほかにも、二酸化炭素を活用した代替タンパク質の開発は加速している。

フィンランドのソーラーフーズはすでに商用生産施設の建設を開始しており、2023年上半期には商用生産を開始するとしている。アメリカのNovoNutrientsは二酸化炭素、水素、微生物を原料に「牛タンパク質と同品質のタンパク質」の生産に成功したことを発表、日米で連携して性能の検証を進めている。

牛肉1kgの生産には11kgの穀物が必要となるなど、畜産肉の生産にはその何倍もの穀物を用意する必要がある。穀物の栽培には広大な土地が必要となるため、限られた資源では高まるタンパク質需要を満たすのは難しい。

空気中に無尽蔵に存在する二酸化炭素を使ってタンパク質を作ることができれば、輸入に頼ることも、広大な土地を使用することもなく、地元で効率的にタンパク質を生産できる。気候変動や、穀物高騰、地政学的な要因による輸入制限などの影響を受けることなく、安定したタンパク質生産を期待できる。

大手飼料メーカーと提携、フードシステムのダイレクトな脱炭素化を促進

出典:Deep Branch

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Deep Branch

 

***無料レポートプレゼントのご案内***

無料メールマガジンに登録いただいた方限定で、 

国内外の培養肉・魚開発に取り組む企業をまとめたレポート2報を無料でお配りしております。

●全101社

●全23ページ

の無料レポートです(2022年3月更新版)。

登録は1分で終わります(下記画像をクリックするとページにジャンプします)。

 

>> <<

関連記事

  1. ミツバチを使わない「本物のハチミツ」を開発する米MeliBio
  2. インポッシブルフーズが今秋に植物チキンナゲット発売へ
  3. ネスレがFuture Meatと協業して培養肉参入に向けて準備
  4. 代替肉の米インポッシブルフーズが約560億円を調達、調達総額は2…
  5. イスラエルの培養肉・代替肉企業6社まとめ
  6. 代替肉のネクストミーツが新潟に代替肉の自社工場を建設、2022年…
  7. 【12/17】熊本発の植物肉スタートアップDAIZ社セミナー開催…
  8. 中国の培養肉業界の今をクローズアップ-2021年11月-【政策/…

おすすめ記事

「発酵」で免疫力のある代替母乳の開発に挑むアメリカ企業Helaina

代替タンパク質の領域では、微生物を活用してタンパク質を作る精密発酵と呼ばれる技術…

牛を手放し「型破り」な転身を実現したイギリス農家と、それを支援するRefarm’d

畜産農家のなかには、古くからのやり方はよくないと思いながらも、ほかに生計を立てる…

海藻由来の代替タンパク質を開発する米Trophic|大豆に代わるタンパク質源の「主役」となるか?

植物ベースの代替肉といえば、大豆、えんどう豆などが主流だが、数年後には、海藻が主…

タイソンが出資するNew Wave Foodsが代替エビをアメリカの飲食店で発売

アメリカのスタートアップ企業New Wave Foodsは、アメリカの飲食店で植…

ブロックチェーンを活用して透明性の高いサーモン養殖に取り組むKvarøy Arctic

国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の養殖魚生産量は1990年から2018年…

微生物発酵でシーフードを開発するAqua Cultured Foods、2022年の市場投入を目指す

アメリカを拠点とするAqua Cultured Foodsは、微生物発酵技術によ…

ニュースメルマガ登録で無料レポートをプレゼント

▼聞き流しフードテックニュース▼

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/06 18:17時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/06 11:58時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,881円(06/06 23:23時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(06/06 14:17時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています