研修外国人向け保険、天下りの財団・企業が契約独占(読売新聞)
外国人研修・技能実習制度で、国の補助金などを財源に研修生の受け入れ企業を指導、支援する財団法人「国際研修協力機構(JITCO)」(東京都千代田区)が、旧労働省OBが歴代、社長を務める民間の保険代理店「国際研修サービス」(同)と、15年間にわたって、研修・実習生向けとして推奨している団体傷害保険の独占契約をしていることがわかった。
サービス社は昨年度だけで約2億円、機構も約1億円の手数料収入を得ていた。機構にも法務、厚生労働両省の幹部退職者らが役員として天下っている。他の保険代理店は「どこの保険代理店でもできる業務。民業圧迫にほかならない」としている。
機構関係者らによると、1991年9月設立の機構は、その約2か月後に設立されたサービス社と「外国人研修生総合保険」の団体契約を結んでいる。研修中などの事故や病気に対して保険金で治療費、入院費などを補償する傷害保険で、研修生らを被保険者として、受け入れ企業が保険料(標準型で被保険者1人年間2万7000円前後)を負担する仕組み。
機構が団体契約者として加入企業を募集。サービス社は、機構が徴収した保険料を、共同で保険を取り扱う損害保険11社の幹事社に納め、企業の保険金請求手続きも代行している。入管難民法に基づく法務省令によると、研修生は労働者と見なされず労働者災害補償保険(労災保険)の対象外のため、受け入れ企業に保険加入が義務付けられている。
昨年、新規入国した研修生は約8万3000人。機構の「外国人研修生総合保険」の被保険者は、この約7割にあたる約6万人で、10年前の3倍に増加した。90年に研修生受け入れ要件が緩和され、海外拠点のない中小企業も業界団体などを通じて受け入れが可能になったことによる、研修・実習生の急増が背景にある。これに伴い、損保会社からサービス社に、保険料の10%の手数料約1億8000万円、機構にも5%の約9000万円が支払われた。
サービス社は資本金1000万円、嘱託社員を含め従業員7人。4代の社長はいずれも旧労働省出身者で、役員4人のうちただ1人常勤している社長は、局長で退職した元キャリア官僚。機構との保険契約による手数料収入が、売り上げのほぼすべてという。
サービス社との保険契約について、機構は「(サービス社は)この保険の代理店業務を専門に行う目的で設立されており、ノウハウの蓄積がある」と説明するが、ある機構関係者は「実際の業務はどこの保険代理店でもできる。ほとんど営業活動をしていない天下り企業との独占契約は、一般の理解は得られにくい」と指摘している。

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