この記事は日経ビジネス電子版『マスクや自粛はいつまで 出口戦略なきコロナ対策で傷む日本経済』(5月18日)、『コロナ対策、行動制限に疑問符 ワクチン接種も異論相次ぐ』(5月19日)などの記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』5月23日号に掲載するものです。

ガラパゴス化した日本の新型コロナウイルス対策が、経済の大きな重荷となっている。各国が以前の生活を取り戻しつつあるのとは対照的に、日本では行き過ぎた規制が続く。政治がリーダーシップをもって終息宣言への道筋を示さなければ、国力を喪失する。

変異ウイルスは弱毒化し、重症化率は極めて低いが、日本の光景は欧米とは対照的だ(写真=左:共同通信、右上:AP/アフロ)
変異ウイルスは弱毒化し、重症化率は極めて低いが、日本の光景は欧米とは対照的だ(写真=左:共同通信、右上:AP/アフロ)

 4月半ば、人気アーティスト・きゃりーぱみゅぱみゅさんの単独ライブの会場は大歓声と笑顔に包まれた。ほとんどの観客はノーマスクで、ソーシャルディスタンスとは無縁。場所は米ロサンゼルスだ。

 翻って日本。きゃりーさんのライブ情報のホームページにはマスク着用や会話の禁止、「声を出しての鑑賞はご遠慮いただきます」との告知が並ぶ。5月7日夜、東京・渋谷のライブ会場から出てきた30代の女性ファンは「アメリカが羨ましい。一緒に歌いたかった」とぽつり。40代の男性は「マスクは任意でいいのでは。なぜここまで規制をするのか分からない」と残念そうな表情をみせた。

 直近の人口100万人当たりの新型コロナウイルスの感染者数(陽性者数)で日米では大差ない。累計の死亡率でも日本が米国を下回る。だが、日本では厳しい制限が敷かれたままだ。

 日本国内の5月10日の新規感染者数(7日間平均)は、約3万1500人と2月のピーク時から約66%減少。4月19日時点で重症者の割合は0.04%にすぎない。5月4日時点の重症者対応の病床使用率は15県で0%、23道府県で1桁%とひっ迫していない。最大でも宮崎県の20%だ。

 重症者のカウントの仕方では首をかしげたくなるリポートが、国立感染症研究所から3月に公表された。2022年1月の広島県のデータを基に症例を再検証したところ、重症患者の7割が実際は軽症・中等症であることが分かったのだ。コロナ死亡者についても、例えば交通事故が原因でもコロナの陽性反応が出れば「コロナ死」として数えられる。これは全国すべてでだ。統計は不自然と言わざるを得ない。

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