【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話   作:SunGenuin(佐藤)
(感想でピンクフェ○モン思い出す人多くて芝)
これが本日1話目!!
次話から新キャラ増えちゃ→う↑
騎手の名前が出たけど影薄くて泣きそうなので次話でどうにかします(ほんとかな?)
あと白毛馬の歴史とか調べてたら大変、
このサンジェニュインとか言うウッマ、史実白毛馬たちの歴史的記録を奪ってしまう……!
(二次創作なので許してほしい)
今度被害者一覧でもつくるか……
新馬戦、2着で終わったサンジェニュインです。
ぐやじい~~!!!!
「ずいぶんな大泣きだな」
「すみません目黒さん。なんか目に砂埃入っちまったかな……」
「いや、単純に負けたのが悔しくて泣いてるんだろう。芝木くん、あとはこっちでやるからもう休んでいいよ」
「いいんですか?」
「ああ。また今度頼むよ」
「わかりました。……サンジェ、またな」
おー、おつかれ、またな、芝木くん。
俺がそう嘶くと、芝木くんは小さく笑って去って行った。
彼は俺の主戦騎手ってヤツになった芝木くんという若手の騎手だ。
目黒さんと合流するまでの間、ボロクソに泣いていた俺の涙を拭ってくれた。
2000メートル走った後も俺が大爆走したこともあって、芝木くんもグッダグダのヘロヘロ状態だと言うのに、文句のひとつも言わないどころか、よく頑張ったなと撫でてくれるような優しいやつだ。
すまんな芝木くん、俺の逃亡劇に付き合わせて……。
いやこれ俺が謝るやつじゃないわ、俺のケツ追っかけ回してた牡馬どものせいじゃない?
そもそもと言えば、レース中から俺のことをガン見していたあの馬のせいないんですけど。
思い出すだけで涙出そう!!
── 阪神5R新馬戦は芝2000メートル
パドックでは枠順的に最終だったこともあって、俺のことを気にしていた牡馬はいなかった。
大人しく、姿勢よく、顔も上げてしっかり前を向いて歩いていたのが好評だったようで、俺の評判はそこそこ。
その割には人気はあまり上がらず……というのも、俺が夏生まれでまだ調教が完成していない疑惑が立っているらしい。
失礼な、こちとら厩舎にきて3ヶ月でほぼやること終わった馬やぞ!!
後は白毛が馬券に絡んだ記録があんまりないらしく、目黒さんが言うには、俺と同じ突然変異の白毛馬・シラユキヒメが1度馬券に絡んだくらい、のようだ。
まあ白毛の総数がそもそも少ないからそこら辺は仕方ない気もするけど。
ちなみにこのシラユキヒメ、白毛だけでなく、父馬も俺と同じである。
パドックが終わって返し馬、ここで他の牡馬たちが完全に俺に気づいたようで、ちょっぴり騒がしくなった。
各自の鞍上がなんとか手綱を取ってくれていたので、俺に飛びかかったり、俺をガン見して動かなくなったり、というのはなかったのが一番嬉しい。
俺がいるせいでレースが壊れる、とか言われたくないもんな。
だが問題はゲート入りする時に起きた。
「4番ゲートにディープインパクト入ります」
ディープインパクト。
鹿毛の馬体が静かに黒を帯びる、小柄な馬。
── 親父が惚れて、家庭捨ててでも追っかけた牡馬
その本人、もとい馬である。
エエエエ!?ディープ!?ディープインパクトなんで!?
そう思いながらも、ゲートが開いたと同時に脚が前へと動く。
条件反射でゲートスタートが切れるよう、ずっと練習した成果がココに来てはっきりでた。
ありがとうゲート練習、やってなかったら完全に出遅れてた!
先頭に7番アキノセイハを見据えた時点で、1コーナーを曲がりきる前に交わしてハナを取る。
鞍上の芝木くんには「ペースが早すぎる」と一瞬ブレーキをかけられたけど、ソレを押し切って走り続けた。
「サンジェ……体力持つのかッ?」
持つんじゃない、持たせるんだよ!!
自分でも速いペースで走っていた自覚はあった。
だが、ここで脚を緩めて中段につけて見ろ、間違いなく馬群に飲み込まれた後、俺を気にして前に出れない馬もろともズッブズブの展開やぞ!
それに、あのとき中段先行していたディープインパクトのあの視線……お、思い出すだけで脚が勝手に早くなっちゃう~~!!
「突っ切るか……もう少し踏ん張ってくれサンジェ!」
パシン、と芝木くんが鞭を振り落とす。
芝木くんが馬をシバくってフフ、激ウマギャグじゃんね!!
今は笑えんけどレース後にドッカンドッカンの場面やぞ!!
脚に力を入れ、ゴールへと一目散に駆けていく。
目黒さぁん!!テキ!!それから一口馬主の兄ちゃん姉ちゃん!!
1着キメたるぞってエエエエ!?ディープ!?ディープなんで!?
── 4馬身は離したつもりが真横にディープインパクトがいた。
な、何を言っているかわからないと思うが、走っている俺にもわからない!!
この馬の末脚やべえんだなあ!?
「頑張れサンジェッ!差し切れ!」
一度は差し切るも残り100メートル、最後ほぼ同時にゴール板を抜けたみたいだけど、写真判定によるとハナ差わずか8センチという非常に惜しい負け方をした。
ぐやじい、ぐやじい~~!!!!
だがゴール後の俺にとって一番重要なのはそこじゃなかった。
『そこの君!!待ってくれ、ッハァ、名前を、名前を教えてくれ……!!』
『あああああ!!!!来ないでよおおおお!!!!』
『キレイな馬体だな……ハァ……ハァ……トモ、トモダチに……!』
『ヒィン……!!』
鼻息の荒さがレース直後の疲れによるものか興奮によるものか区別できなかったけど、たぶんどっちもあったんだろうなあ。
牝馬のタイペルラとセン馬のコンバットマニア以外の7頭が俺を追っかけてきたのだ。
火事場のバ鹿力が出たのか、それともいつものハードな調教が功を奏したのか、俺は誰にも捕まることなく走り続けた。
1頭また1頭とペースを落としていくなか、ゴールしてすぐに騎手を振り落としたディープインパクトだけが最後まで俺を追っていた。
……これ何が一番怖いって、7頭の中で先頭で俺を追っていたディープインパクトがずっと無言だったことだよ。
ようやくディープもペースを落として厩務員たちに連れて行かれたあと、俺もようやく走るのをやめた。
最後にはブモブモ泣いてしまったため、芝木くんが、検量室に戻ってからは目黒さんがずっとタオル片手で俺の涙を拭いてくれていた。
……ごめんよ目黒さん、絶対勝つって信じてくれてたのに。
「そう落ち込むなよ。今回は惜しかったけど次がある、次は勝てるよサンジェニュイン」
うなだれる俺の鼻筋をなでる目黒さんはいつも通りだった。
ていうかやっぱり言葉が理解できてるのわかってない?
「目黒さん、大変です~!」
「こら、サンジェニュインの前だぞ、声量落として」
「す、すみません……サンジェもごめんね」
気にするな、と鼻を鳴らす。
ちょっと着崩したスーツ姿の若い男は、本原厩舎の厩務員の一人だ。
今日は目黒さんのサポートに来ていて、馬運車の手配やら何やらをしてくれている。
ちょっとおっちょこちょいな兄ちゃんだけど、本当に馬が好きなのがわかる仕事ぶりなので俺も大好きだ。
ニコニコしてるところとかタカハルっぽくて謎に安心するしな。
「それでどうした?馬運車が遅れているのか?」
「それなんですけど、来る途中でパンクしちゃったらしくて……」
マジかよ。
こっからどうやって帰るんだ?徒歩か?
まあ目黒さんくらいなら俺が乗せて帰れるけど……馬って道路走れる?
疲れてるからさすがにちょっとは休憩させてほしいけどな。
「テキには言ったか?」
「ハイ、言いました。……あのぉ、ソレでなんですけど」
男がモジモジしててもかわいくはないぞ、はよ言って。
「沼江さんがですね、馬運車、一緒にどうかとおっしゃってまして……」
ん?それって……。
「沼江さんってディープインパクトの先生じゃないか」
「エエその、馬主さんもオーケーだしてるらしく……帰る先は同じ栗東なんだからと」
それってディープと同じ車……密室……牡馬2頭何も起きないはずがなく……?
……いやだああああ!!!!
アイツとまた同じ空間にいるのやだやだやだ!!
追ってくる目がガチだったんだぞ、もうカネヒキリくんの視線の圧とかまだかわいいレベルの鋭さだった!!
アイツと密室に入れてみろ、意味深レジェンドレース開催、ディープインパクトここでも圧勝!!だぞ!?
うわあああこんなところにいられるか!!俺は馬房に戻らせてもらうッッ!!
アッ戻る馬運車がないんだったわ……!
「どうどうサンジェニュイン」
「ま、まあ嫌がりますよね……アレされたあとだと……」
「うん、そうだな……沼江さんが用意した馬運車はもう確認したか?」
「ア、はい!中見ましたけど、2頭立てでちゃんと仕切りもありましたし、僕ら乗るスペースもありましたよ。さすが売れっ子というか、最新のボディでしたね」
「ならいいんじゃないかな……サンジェニュイン、ほら落ち着けって、話を聞いてくれ」
うおおおおいやだああああ!!
うおおん、ん?
「いいかサンジェニュイン、馬運車は確かに密室だし、2頭立てだから不安に思うだろうけど、ちゃんと真ん中に仕切りがあるから大丈夫だ」
本当か?それ仕切り破かれてレーススタートッ!てならないか?
「馬運車には俺たち厩務員も乗り込むから、何かあっても助けられるよ。少なくとも2頭きりじゃないから怖くないだろ?」
……まあ2頭だけで乗るわけじゃないなら、大丈夫、か?
いやでもなあ、ディープインパクトってば鞍上の人間振り落としたじゃん、制止聞かなそう。
あんな狭いところで暴れたら止めに入った目黒さんもケガしそうだし、それはやだな。
「強いストレスになるのはわかってる。でも何よりも早く、お前を馬房で休ませてやりたいんだ。頼むよ、今日はディープインパクトと一緒に乗ってくれないか」
目黒さん……そんなに俺のことを思ってッ!
わかった、そこまで言うなら俺も腹をくくるわ。
まあ馬体は俺の方がデカいしな!最悪この鍛え上げられた後ろ足で蹴り返してやるわ!
うん、ヘーキヘーキ!
「ヨシ、じゃあ早速行くか」
おうよ!
ほれ若手くん、俺の手綱引いて早く。
「……僕、馬に言葉で理解させる厩務員初めて見ました。ていうか人の言葉理解してるっぽい馬も初めて見ました」
それな。
「よーしよしディープインパクト、うん、そっちじゃなくて隣ね!そこサンジェニュイン号のスペースだから!」
あああああ!!!!この馬ずっと目が血走ってるよおおおお!!!!
やっぱり降りる!!徒歩で帰る俺!!
「なんとか入った……じゃあ出発お願いします」
降ろしてよおおおお!!!!!
新馬戦から2日が経った。
ディープインパクトとドキドキ♡馬運車で2頭旅!を終えてから2日だ。
マジで怖かったしどちゃくそ疲れた。
その日は飼い葉も食べる気になれず爆睡し、起きた頃には朝日が昇っていた。
「おお、今日は飼い葉食いもいいな」
「食べっぷりイイですねえ……それに写真で見る以上に白い!」
昨日は何もする気が起きなかったけど今日は腹減ってるんだわ。
あとめっちゃ食ってめっちゃ鍛えてパワーつけるんだよ。
次はあの馬を蹴り飛ばす!!絶対だ!!
それよりテキ、後ろの怪しいおっちゃんは誰だよ。
「史上2頭目、白毛馬のJRAレース馬券絡み……イイ記事になると思います。今回は取材を許可していただきありがとうございます、本原センセイ」
ほ?
「サイレンスレーシングからも許可が出ましたので」
「一口馬主からしても夢を見れるレース運びでしたし……それでは普段の調教の様子と、過ごし方、それから今後の目標の3本仕立てでお願いします!」
「それはいいんですけど、馬は臆病なので声量とカメラのフラッシュだけ、気を遣ってもらえれば」
よく見るとおっちゃんの腕に「西スポ」の文字があった。
どっかのマスメディアのようだ。競馬情報とかが載っているやつかな?
いつの間にか横に控えてた目黒さんに手綱をひかれて馬房を出る。
とりあえず写真写りがいいようにポーズきめとく?
「今日なんですけどね、併せ馬の予定があるので、午前中はソレを先にやります」
「ほうほう、併せ馬!厩舎にいる2歳馬はサンジェニュイン号しかいないと聞いていましたが」
「ハイ、ですので他の厩舎に協力をお願いして併せ馬をします」
ん?俺以外に2歳馬っていないんだっけ?
それより併せ馬か、併せ馬ってそれ相手はカネヒキリくん?カネヒキリくんなんだよね?
そうじゃなくても相手も2歳馬なんだよな?
ねえテキ、ねえ目黒さん、まさか3歳馬とか言わないよね?
そうだったら新聞に載せられる写真とかねえぞ!!
牡馬に興奮する牡馬をお出しすることになっちゃう~~!!
「あ、見えてきましたね」
「おお、あの子が今日の相手ですね」
もうちょっとゆっくり行かないか?
あと距離を、距離を取ろうよ、ねえ、ねえったら目黒さん!
「コチラ取材で同行している笹島さんです」
「笹島です!前回の取材以来ですかねえ」
「おや、ご存じで」
大柄の馬体がのっそりと振り向く。
これが栗毛なら駆け寄っていたが、光に照らされる毛並みは黒鹿毛で、目はギラギラと燃えていた。
「ええ。ラジオたんぱ杯2歳Sは実に見事でした。今後注目の1頭ですよ ── ヴァーミリアン号は」
サンジェニュイン 牡2
新馬戦2着で惜敗
それ以上にレース後にケツ追われたのと2頭立て馬運車がトラウマ
今後脚質に関係なく逃げ馬になるしか選択肢がない(確信)
ディープインパクトさん 牡2
他の馬がキレイだなんだ愛を叫んでいるなか、
終始無言のままトップスピードで主人公を追っていた
視線の圧がカネヒキリくんを上回るレアケース
馬運車ではしゃぎ主人公にトラウマを刻みつける
カネヒキリくん 牡2
併せ馬を望まれているが未だ再会できていない
ダートデビューするための訓練を積んでいるとかいないとか
そうこうしているうちに新しい馬が併せ馬に選ばれちまったぞ
ヴァーミリアン 牡2
芝の重賞も取っているが、
後にダート適正の方が高いと判明するやべえ馬
カネヒキリくんに並ぶほどのダート賞歴を持つことになる
ギラギラした状態で併せ馬に参戦
目黒さん ヒト族 男
完全に主人公がヒトの言葉を理解しているとわかっている
手綱も鞭もいらねえ、言葉で言うこと聞かせるんだよ!
なんだこれ?
若手の厩務員 ヒト族 男
先輩厩務員が言葉で馬を操作し始めて戦慄している
芝木くん ヒト族 男
2003年度JRA賞最多勝利新人騎手を取ってる何気にすごい騎手
こいつの話は次話でする
テキ ヒト族 男
最近影が薄い
笹島 ヒト族 男
取材のおっちゃん
すでにヴァーミリアンを取材済み
次話で登場した後の出番はない
6/15 追記
文章に加筆修正を行いました。
完全素人ニキの愛馬名アンケート
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 サニードリームデイ
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 サンシカカタン
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 タイヨウノムスコ
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 ブライトサニーデイ
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