4月29日に笠松競馬で開催されたウマ娘とのコラボレース「シンデレラグレイ賞」。実はレース本番の15時間以上前から、舞台裏でもう一つの〝熱戦〟が繰り広げられていた。記者が出遅れながらも戦いの断片をたどった。
■オグリキャップの〝共演〟
ゲームや漫画、アニメなどで話題の「ウマ娘」とのコラボで注目を集めた。降りしきる雨の中、レースが終わると鳴りやまない拍手。笠松競馬はこのところ不祥事が続いていただけに、温かな拍手の雨に胸が熱くなった。ファンの〝聖地〟でもある人気スポット、オグリキャップ像の傍らには、漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」の主人公「オグリキャップ」の等身大パネルが並び立ち、笠松ならではの共演でファンを喜ばせた。
笠松競馬の開門予定時刻は午前10時30分。事前の取材で「来場者が多ければ10時ごろ開けるかも」と聞いていたため、早めの午前8時ごろ競馬場に到着。すぐに後悔した。正門から延びた行列が、すでに競馬場の外、木曽川の堤防にまで達していたからだ。「完全に出遅れた…」
■堤防に達した行列
最後尾から行列に沿って歩くこと数百メートル、300人ほど数えたところでやめた。その間も行列はどんどん延びていた上、午前8時20分ごろに急きょ門が開いたからだ。急いで先頭へ向かう。
来場者のお目当ての一つは、先着1500人に配布された「オリジナルクリアうちわ」。主要キャラクターのオグリキャップとタマモクロスが描かれている。ちなみにこの「2人」の等身大パネルがオグリ像のそばに立てられ、記念撮影する人でごった返した。
■深夜から行列
開門して場内に行列は進んだものの、まだ待機した状態で、うちわの配布はない。行列の先頭にいたのは、専門学校に通う東京都の19歳男性だ。聞けば、夜の1時から1人で並んでいたという。初めての笠松競馬に「楽しみすぎて寝られなかった」とうれしそう。馬券を買えない世代が多く訪れたのも、今回の特徴だろう。
2番目は地元の男性2人連れ、その次は茨城県から来たという男性だ。競馬場によると、実際には前夜の午後11時ごろ、少なくとも1人の来場者がいたが、他に誰もいない様子を見て離れたらしい。午前5時ごろまでは50人程度が並び、始発後にどっと押し寄せたようだ。開門した時点で、約1200人(笠松競馬場発表)が並んでいたという。
ウマ娘のグッズを身に着け、無事にうちわを手に入れたファンの表情はみな明るい。ウマ娘が好きなわが子のために、あわよくば自分も…という記者のもくろみは、堤防まで延びた行列を見た瞬間に打ち砕かれたが、「笠松に来られて良かった」と話す人たちを見ていたら無念さはどこかに消えた。
■記憶にない大入り
笠松競馬場によると、当日の入場者数は4600人超。年末開催を除けば「ちょっと記憶にない人数」と担当者。かつて3万人を超す時代があったとはいえ、コロナ以前のにぎわいを取り戻した1日となった。
ちなみに、馬券にはレース名として「ウマ娘シンデレラグレイ賞」と印字され、発売場所や競走実施場の欄には「笠松競馬場」。ファンにとっては記念の1枚となっただろう。私も購入してみた。幸い換金する必要もなく、思い出として保存できる結果となった。