はばら・だいすけ
1964年生まれ、鳥取県出身。NHKでは、連続テレビ小説「マッサン」、「とんび」「かすてぃら」「昭和元禄落語心中」「NHKスペシャル こもりびと」などを手がける。

「マッサン」を書き終えた直後から、「もう一回“朝ドラ”をやってみたい」という気持ちがあったので、今回のお話をいただいて、率直にうれしかったですね。沖縄本土復帰も幼心にすごく記憶に残っている出来事なので、その50年の節目の作品を担当できるのは、やりがいがあるなと。

では“朝ドラ”としてどんな物語がいいだろうかと、制作陣と話し合う中で出てきたのが、『若草物語』というキーワードでした。

4兄妹の大家族を軸に料理を通してヒロインが成長していく  そんな話がまとまり始めたとき、黒島結菜さんがヒロインを務めてくださると決まったんです。

黒島さんは、お芝居でどんな球が来ても受け止めて投げ返せるし、物語の真ん中に立っていられる、魅力的な俳優さん。明るく素直な彼女のイメージをのぶに重ねて、黒島さんの自然体の魅力が出るよう描きたいと思いました。比嘉家の面々は特に、俳優さんのイメージを役に当てて書いています。

取材で訪れた沖縄で感じたことも、登場人物のキャラクターに大きな影響を与えました。最初の取材は、本島南部の戦争関連の場所から北の突端の岬まで本島を一周し、行く先々で地元の方にお話を伺ったのですが、何というか......日常の端々が優しいんです。皆さん、無防備すぎるくらい正直に、何でも答えてくれる。沖縄にハマる人たちは、こういう人柄、土地柄にひかれるのかなと、改めて思いました。

他にも沖縄の良さは多々ありますが、ことばもその一つ。劇中に出てくる沖縄ことばは、特に意味を説明していません。単語を知らなくても、誰かに怒りながら「ぽってかすー!」って言えば、何となく意味はわかりますよね?(笑)雰囲気で伝わればなと。

僕は、どの登場人物にも自身を反映して書くタイプなので、「マッサン」のときは、家の中では広島ことばで生活していました。同じように、今はずっと脳内がうちなーぐち(沖縄ことば)。物語のうねりとともに、登場人物と一緒にちむどんどんしたり、ブルーになったりしながら書いています。

今作に限らず、僕が常に描きたいのは“普遍的な人間愛”です。恐れずに誰かを信じること、生きるすばらしさ  見た方に「きょうも頑張ろう」と思っていただけるドラマを目指しました。ぜひ「ちむどんどん」からパワーをもらってください!

(NHKウイークリーステラ 2022年4月8日号より)