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沖縄名産のお酒といえば「泡盛」。沖縄の宴会では必ずと言っていいほど飲まれるお酒ですが「クセや香りが強いお酒」という認識が広まっていて、高い度数のワケや原料や製造方法、古酒(くーす)との関係や、焼酎との違いはあまり知られていません。
そこで今回は、知れば知るほど美味しく楽しく飲める!泡盛の基礎知識をお届けしたいと思います。
泡盛といえば「度数が高い強いお酒」というイメージが広がっています。その影響か沖縄県民も「お酒に強い」イメージが一般的ですよね。ではなぜ沖縄名産の泡盛は度数が高いものが多いのでしょうか?それには「沖縄県民の好み」以上の立派なワケがあるんです。
というのも、沖縄といえば夏は最高気温31度、冬でも19度ほどしか気温が下がらない言わずと知れた南の島です。冷蔵技術もない時代から、南の島でお酒を腐敗させない工夫として、高いアルコール度数を維持する知恵が生まれました。
また高いアルコール度数のお酒には、思わぬ副産物がありました。
「古酒(くーす)」という熟成によって美味しく、香り高く変化する世界的にも珍しい楽しみ方が生まれたのです。
お酒には、できたてのフレッシュな状態が美味しいものと、年月をかけて長期熟成させることで価値が高まる2つのタイプがあります。
泡盛は、できたての状態では味・香り共に荒々しく、年月が経つほどに旨さが増すお酒。これを古くから沖縄では「古酒(くーす)」と呼び、珍重され、愛されてきました。基本的には「熟成3年以上の泡盛」が古酒の定義とされていて、古くは甕(かめ)や壺に貯蔵して、お酒を熟成させて楽しんでいました(詳しくはコチラ)。
高い度数のアルコールは「ものを溶かす」効果が高く、このため度数が高い泡盛には、熟成成分がたっぷりと溶け込んでいます。ウイスキーやブランデーは高いアルコール度数で樽の成分が溶け出して香りや味わいが変化するのを「熟成」と表現しますが、泡盛はお酒自体に熟成成分がたっぷり含まれており、時間経過とともにお酒の香りや味わいが変化します。
琉球王朝時代には、200年〜300年熟成の古酒があったとも言われ、平均寿命も現代よりはるかに短かった昔は「古酒(くーす)は次代に継ぐもの」として、大事にされてきました。香り高く、奥深い旨みを生み出す古酒は、こういったワケで古くから沖縄で愛されてきたわけです。沖縄戦によって、残念ながらほとんどの古酒が失われましたが、沖縄人の古酒への愛着はこういった経緯から深く受け継がれています。
泡盛はこの「古酒(くーす)づくり」を元に設計されており、泡盛の美味しさは古酒の美味しさを知ってこそ本当に理解できる…とも言えます。。
泡盛は、単式蒸留焼酎に分類され、その中でも特に『米こうじと水を原料』として造られたお酒を「泡盛」と言います。米こうじについても「黒こうじ菌を用いたものに限る」という条件がさらに付いており、定義はカチっと定められています。
業界内ではさらに深掘りして、
次の4つの条件が揃ったものを正式に「泡盛」と呼びます。
・原料が、「米麹(こめこうじ)」であること
・麹が、「黒麹(くろこうじ)」であること
・米麹の割合が、100%(全麹・ぜんこうじ)であること
・蒸留方法が、単式蒸留であること
それぞれ聞き覚えがない人のためにさらにざっくりと解説します。
原料は「米麹(こめこうじ)」であり、一般的にタイ米(インディカ米)が使われています。ただ「タイ米でなければいけない」という理由はなく、実際弊社 久米仙酒造でもジャポニカ米を原料とした泡盛…具体的には熊本県産のヒノヒカリを使ったお酒「日本泡盛」を製造しています。
主にタイ米が使われている理由は、戦後すぐの状態ではジャポニカ米が手に入りにくかったことや、タイや東南アジアが泡盛のルーツだったことなどありますが、特に高温多湿の沖縄においては蒸した後の粘りが少なく、水分管理がしやすいタイ米が麹(こうじ)づくりに適しているため一般的に利用されています。
蒸留酒は…
(1)蒸したお米に麹菌(こうじきん)を繁殖させ、
(2)糖化したものに酵母を混ぜてアルコール発酵させ、
(3)できた醪(もろみ)を、蒸留してアルコール分を取り出したものを言います。
高温多湿な沖縄では、醪(もろみ)が腐敗する原因となる雑菌が繁殖しないように特にクエン酸を多くつくる黒麹菌(くろこうじきん・アワモリコウジカビ)が採用され、独特の旨みや風味を醸し出してくれます。
多くの本格焼酎は、米麹・水・酵母によって一次醪(もろみ)を作り、さらに原料(米焼酎なら米、芋焼酎ならサツマイモなど…)と水を加えて発酵させる「二次仕込み」が採用されています。
そんな中、泡盛は「全麹仕込み」という米麹(こめこうじ)を100%使い「一次仕込み」のみで醪(もろみ)が造られる方法がとられています。これも温暖な気候の沖縄で、醪(もろみ)に含まれるクエン酸を薄めないようにして、醪(もろみ)を腐敗させないための工夫です。
端的に言うと、1度だけ蒸留してアルコール分を取り出すのを「単式蒸留」
2度以上蒸留してアルコール分を取り出すのを「連続蒸留」と言います。
1度だけ蒸留することでアルコールの中に、熟成成分が多く残り、これが古酒(くーす)ができるために必要な旨みや風味・香りをつくる元となります。
蒸留の方法にも「常圧蒸留」と「減圧蒸留」という二種類があり、これによって熟成に適したお酒と、新酒のまま楽しむのに適したお酒が分かれます。
「山の山頂付近だと沸騰する温度が下がる」ということをご存知の方は多いかと思いますが、この原理を利用して、蒸留機内の気圧を下げることでお酒が沸騰する温度を下げて行う蒸留方法が「減圧蒸留」です。
実際40〜50度ほどでお酒が沸騰するようになり、華やかな香りで甘くスッキリした飲み口のお酒が出来上がります。一方、蒸留の温度が低いため、お酒の中に熟成成分が溶け出しにくく、飲みやすい反面「古酒(くーす)」には向かないお酒に仕上がります。
反対に「常圧蒸留」は、蒸留機内の気圧を下げることなく温度をしっかり上げて蒸留を行い、アルコールを取り出す製法です。熟成成分がたっぷりとお酒の中に溶け込むため、新酒のうちは濃厚で味や香りが荒々しい印象になりがちですが、時間を経るごとに古酒独特の旨みと香り高い風味に変化し、美味しい古酒(くーす)になります。
芋焼酎や米焼酎、麦焼酎、胡麻焼酎・蕎麦焼酎・黒糖焼酎など、今では多彩な種類の焼酎がありますが、こういった焼酎と泡盛との違いについて聞かれることがたくさんあります。そこで、ここまでの解説でも違いは色々出てきましたが、「泡盛と焼酎との違い」という視点からもう一度情報をまとめてみます。
泡盛は、南国でも醪(もろみ)が腐敗しないようにクエン酸を大量に生成する「黒麹(くろこうじ)」が必ず使われていることは先ほど触れました。
一方、焼酎の方は、黒麹(くろこうじ)を使った製品もありますが(霧島酒造の「黒霧島」などがそう)、それに限定されず「黄麹(きこうじ)」や「白麹(しろこうじ)」と言われる種類の麹も使われます。
日本南部で温暖な地域では、雑菌の繁殖を防ぐ黒麹(くろこうじ)。日本酒づくりの盛んな比較的涼しく冬は寒い地域では雑菌に弱い代わりに華やかでフルーティーな味わいの黄麹(きこうじ)。中間で白麹(しろこうじ)という地域の気候に合った住み分けがあるようです。
泡盛は、先ほど触れたように、醪(もろみ)の雑菌予防のために一次仕込みのみで造る「全麹仕込み」がルールとなっています。
一方、焼酎は一度仕込んだ醪(もろみ)に、さらに原料を仕込んで「二次仕込み醪(もろみ)」を造り、そこからアルコール発酵させます。芋焼酎ならサツマイモを、麦焼酎なら麦を、米焼酎なら米を、蕎麦焼酎なら蕎麦、黒糖焼酎なら黒糖など、ここで味わいや風味の違いが現れてくるんですね。
現在の焼酎は、飲みやすい「減圧蒸留」が主流です。
一方、泡盛も新酒では飲みやすさを重視して「減圧蒸留」で造られたお酒が増えてきていますが、「古酒(くーす)」への愛着が強いウチナンチュ(沖縄人)のニーズもあって今でも「常圧蒸留」が主流です。沖縄県内にある47酒造所の中では「常圧蒸留」でしか泡盛を造らない酒造所もあるほどです。
「泡盛」の正確な起源は明らかになっていませんが、「タイをはじめとする東南アジアから伝わったとされる説」「中国から伝わったとされる説」のどちらかが語られることが多いです。
1500年頃、琉球はすでに薩摩と交易をしていました。薩摩から見つかった歴史書に、泡盛のような酒の記載があることから、「15世紀には琉球で泡盛の製造が開始されていたのだろう」という説が一般的になっているようです。
このことから、泡盛は「日本初の蒸留酒」で“日本の本格焼酎のルーツ”とも言われていて500年の歴史がある古くからの蒸留酒であることがわかります。
今でこそ誰もが楽しめる泡盛ですが、古くは王族をもてなすための高級酒として重宝されていました。
誰もが自由に製造できた泡盛でしたが、18世紀になると琉球の王府が直接管理するようになり、「首里三箇」と呼ばれる限られた地域でしか製造が許可されなくなったのです。
また、庶民の間では製造だけでなく、飲酒も厳しく制限されていました。しかしながら、お祭りや婚礼の儀などのイベントでは既にお酒(泡盛)が必須になっており、各地で「密造」「密売」が行われていたそうです。
古くから沖縄(琉球)の庶民に愛されてきた泡盛。現在では日本全国で一般的に飲まれるようになりました。泡盛と聞くと「クセの強い味わい」「匂いが強い」といったイメージを思い浮かべる方も多いですが、泡盛も日々進化しており“トレンド”が生まれてきているんです!
一言で泡盛といっても、現在では多くの商品が販売されており、種類によってその味わいも大きく異なります。昔ながらのクセの強い泡盛もありますが、あえてクセを抑えた飲みやすいスタイルの泡盛なども多数あるのです。
また、泡盛に対するネガティブなイメージは、密造酒時代のなごりが影響している面もあります。現在は製造技術も進化し、安くて高品質な泡盛も増えました。水割りやソーダ割りにしてもコクがしっかり感じられることから、「食中酒として最適だ」という声も少なくありません。
若い世代の間では、泡盛を使ったカクテルが楽しまれることも多いんです。ジンやウォッカといった、スピリッツの代わりとして泡盛を使う「泡盛トニック」「泡盛ジンジャー」「泡盛コーラ」などのシンプルな飲み方も人気のようです!
また、沖縄のバーでは各店舗にオリジナルの泡盛カクテルがあることも珍しくありません。フルーツ使ったものや、素人には思いつかないような組み合わせの驚きのカクテルまで、そのレパートリーは様々。泡盛初心者や、お酒が強くない女性などにオススメです。