24日、アメリカ・テキサス州の小学校に男が侵入し、銃を乱射、児童ら21人を殺害した。容疑者は地元に住む18歳の男子高校生で、駆けつけた警察官がその場で射殺した。
【映像】「4chanに影響受けた」銃撃の様子をライブ配信…掲示板との関連性は
男子高校生は事件直前に殺傷能力が高いアサルトライフル2丁を購入。SNSで銃撃の予告をするなど、計画的な犯行だった。
これまでも銃撃事件が起こるたび、銃規制の必要性が叫ばれてきたアメリカ。今年はすでに213件、実に1日1件以上のペースで乱射事件が発生している。しかも学校では、30件以上も乱射事件が発生するなど、増加傾向にある。2020年は10代以下の若者・子どもの死因が、交通事故を上回り、銃撃がトップだった。この20年で銃の製造量も3倍近く増加している。
また、今月14日にニューヨーク州で発生し、10人が死亡した乱射事件では、拘束された容疑者が犯行をネットで中継。容疑者は「匿名掲示板の画像コンテンツに影響された」と供述している。CNNによると、その掲示板は『2ちゃんねる』創設者であるひろゆき氏が買収した『4chan』だという。よって、ひろゆき氏にも捜査が入る可能性さえ報じられている。
掲示板にアップされたコンテンツと銃撃事件に関係性はあるのだろうか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、実際に『4chan』の管理人であるひろゆき氏と共に議論を行った。
アメリカで銃乱射事件が相次いでいる背景には、何があるのだろうか。カリフォルニア州在住でコラムニスト・映画評論家の町山智浩氏は「人口と比べて銃が多すぎる。アメリカは国民が3億人に対して、国民の総人口よりも銃の数が多い。3億人という人口は赤ちゃんや老人も含めているので、実際はものすごく少ない人口に銃が集中している。軍隊や警察が持っている銃よりも、民間に流れている銃の方が多い。普通ではない戦国時代みたいな状況になっている」と話す。町山氏によると、銃乱射事件の増加によって「怖いから」と自分の身を守るために銃を持つ人が多くなるという。
24日に起きた銃乱射事件の犯人である男子高校生は、ひろゆき氏が買収した掲示板の『4chan』で「大量殺人事件の映像を見て影響を受けた」と供述している。
そもそも、ひろゆき氏はなぜ4chanを買収したのだろうか。ひろゆき氏は「元々の創業者の人が『こんなのもうやってらんねーよ。やめる』と言うので『じゃあ僕がやろうか』とそんな感じで話が進んだ」と回答。管理人は現在もひろゆき氏だが、運営は「別のスタッフだったり、ボランティアの人だったりという感じだ」と話す。
町山氏によると、アメリカでも4chanの影響がメディアで報じられているという。
「先日ニューヨーク州のバッファローで起きた、黒人だけを狙い撃ちして10人以上を殺した犯人が『4chanに影響を受けた』とはっきり声明文の中で書いている。180ページを超える声明文には『自分は4chanで初めて真実に目覚めた。テレビなどメインのメディアでは語り切れていないことを私は知った』というふうに書いてあった。内容を見ると、白人以外の人種の人口が増えていって白人が乗っ取られるとか、ユダヤ教陰謀論とか。そういった人種差別などの間違った科学の情報ばかりを4chanで彼は学んだ。新型コロナで他にみるものがなかったとも言っていて、今回の大虐殺に至ったと」
今、4chanは掲示板としてアメリカでどのように見られているのか。町山氏は「4chanだけではなく8chanというネット掲示板もある。それが連邦議会襲撃事件で襲撃犯たちの情報源になっていたといわれていて、テロなどの非常にアメリカ自体を揺るがすような思想みたいなものになっている。要するに差別(要素のある内容)などは、他のサイトには上げられないようになっていて、4chanだけそれが野放しだ。非常に危険なメディアになっている」と述べる。
町山氏の説明に、ひろゆき氏は「『4chanだけが野放し』とか嘘を言うのはどうかと思う」と反論。「利用者が多いだけで、しかもTwitterやFacebookと同じようにニューヨーク州から調査がされている。町山さんは嘘をついていないか」と指摘した。
町山氏が「Twitterは一応規制している。人種差別問題などの書き込みは、報告があると消される」と答えると、ひろゆき氏は「4chanもちゃんとルール通り規制はある。報告があると消すというのは4chanでも同じだ。アメリカの法律に従っているという意味では同じだと思う。『4chanだけが野放し』みたいな言い方は間違いだ」と応酬。町山氏は「最初から『8chanも』と言っている」と補足した。
ひろゆき氏によると、4chanではチャイルドポルノといった投稿も「自発的に削除している」という。4chanを買収し、管理し続けている理由やモチベーションはどこにあるのだろうか。
「儲かってはいない。創業者の人が『もうやめたい』というから(買収した)。4chan自体はなくなるのはもったいないから『じゃあやりますよ』という感じ。ちょっと説明をしておいた方がいいかなと思うのは、4chanが生まれる前からアメリカはクー・クラックス・クラン(※白人至上主義団体)などがあった。なので『4chanが何かをした』より、アメリカってそういう文化で、そういう人たちがいるよねという話。ネットのサイトがどうこうではないと僕は思う」
4chanが今注目されていることについて、どのように思っているのだろうか。
ひろゆき氏は「銃に問題があるわけではない」とした上で「別のところに問題があるとしたがるメディアやお金を持っている人たちがいるので『ネットが悪いよね』という形で『ネットが何とかなればいい』となって、アメリカは銃規制が進まないオチになると思う」とコメント。
「僕が『2ちゃんねる』をやっていたとき『2ちゃんねるがあるからこういうことが起きた』『2ちゃんねるでこういうことを知った』とよく言われた。よく使われるN対Nという、大勢対大勢がコミュニケーションする場所が『2ちゃんねる』だったり『5ちゃんねる』だったりで、Twitterの場合は1対Nで、1人が多くの人とやりとりする。一方で、Facebookは知り合い同士でやる。なので『多くの人が情報を伝達する場所(掲示板)では、それは情報を知る人が増えるよね』という話だ。そういった中で、英語圏で今最も大きい掲示板は『4chan』なので、そこで情報を知った人が多いよねと。そもそもの問題と、解答の方向性をごっちゃにするのは良くない」
元経済産業省キャリア官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏は「ひろゆきさんが言うことも町山さんが言うことも一理あるなと思っている」と話す。
「日本だと『秋葉原通り魔事件』が有名だ。トラックで人に向かって突っ込むかなり大きい事件だった。『目の前に銃がないから(事件が)起きない』という話があるが、ネットや銃だけが悪いというわけでもなくて、銃がなくても秋葉原通り魔事件のようなことが起こる。逆にネットがなくたって、銃があれば何か起こる。急には変わらないので『アメリカってそういう社会なんだよね』となってしまう。だから、日本は何としても銃は入らないで欲しいなと思う」
(「ABEMA Prime」より)