SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第11回「誕生日」

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公開日:2022/5/27

 今年も例年通り、一人で過ごす。もう何年も前からそうなのだが、誕生日当日はなるべく一人で過ごすようにしている。

 自意識過剰もここまでいくと大変におめでたいのだが、どこに行っても、誰と会っても、皆が私が誕生日だということを知っている気がするのだ。そのため私は勝手に大いに気を遣う。

 思った通りに祝ってもらえればなんだか恐縮してしまい、思惑から外れたら外れたで「おや」となってしまう気もする。どちらにせよ、なんだか申し訳がないのでここ何年かは一人を選んでいる。

 ここ何年か、と言ってはみたが、実は幼少期から誕生日は得意ではなかった。小学校一年生の一年間、幾人かの友達がお誕生日会を開催していた。何度もお呼ばれしているのを知っていた母ちゃんが、二年生になった時分に私に提案してくれたのだ、「お誕生日会やる?」と。私は少し悩んでから断った。自分が主役の会合を自分で開くなんて、と思ったのが一番の要因だったが、正直もう一つ、大きな要因があった。

 まーくんの誕生日会ではお母さんがたくさん料理を作って我々をもてなしてくれたのに対して、翌月呼んでもらったよっちゃんの誕生日会は買ってきたハンバーガーと冷たいポテトだった。

 まーくん家も、よっちゃん家も、おめでとうの気持ちに大小はないはず。それなのに、この差を目の当たりにした時、なんか心がくさくさした。事実にではなく、無意識に誕生日会に優劣をつけた自分に対してだ。

 同時に喜ばれるプレゼントと、そうでないプレゼントが存在することも知ってしまった自分はお祝いをする場所なのに、呼ぶ側も呼ばれる側もどこかで評価しあっているみたいでなんだか怖いと思ってしまったのだ。

 まア明らかに私の兼ねてからのものの考え方の問題なのだろう。ただ、形式を取るということが、純粋な気持ちに水を差す場合もあるのではないかと思ったのだ。

 あと義務感を覚えさせてしまうのも正直怖い。実体験として、近しい人間が誕生日で、当日までに贈り物を用意したいと考えていたその時に「やべエ、何も用意できてないから早く何か用意しないと」と少しだけ億劫に思ってしまったことがある。誕生日=何かを送る、がその人が歓んでくれるかもしれないというワクワクだけでなくて一瞬でも義務になってしまった場合、気持ちが少し不純になってしまう気がしたのだ。だからもし自分の誕生日に、誰かにそう思わせてしまうことがあるのだとしたら、なんだか少しだけ苦しくなる。

 なので誕生日に何かを贈り合うという習慣を私は作りたくない。贈り物は好きな時に、贈りたいと思ったものが見つかった時に贈るようにしている。

 

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渋谷龍太●1987年5月27日生まれ。ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2005年にバンド結成、2009年メジャーデビュー。2011年レーベルを離れ、インディーズで活動を開始し、年間100本のライブ活動をスタート。大型フェスにも参加し、2018年には日本武道館単独公演を開催。2019年に兵庫・ワールド記念ホールと2020年1月には東京・国立代々木競技場第一体育館で初のアリーナ単独公演を開催。チケットを即日ソールドアウトさせる。結成15周年を迎えた2020年4月にメジャー再契約。2021年、「愛しい人」がドラマ『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)の主題歌に、「名前を呼ぶよ」が映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用された。また、自身最大キャパとなるアリーナツアー「SUPER BEAVER都会のラクダSP〜愛の大砲、二夜連続〜」を日本ガイシホール、大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナで開催。2022年2月23日(水)にフルアルバム『東京』をリリース。3月26日(土)から全国20カ所を回るホールツアー「SUPER BEAVER『東京』Release Tour2022~東京ラクダストーリー~」をスタートさせる。
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