心地よい風が吹き抜ける立夏の候、皆様には一段とご清栄のご様子、心よりお喜び申し上げます。高等学校に入学し、早1ヶ月と半。私は程ほど無難に日々を送っております。近々、学校内で中間テストが実施されます。私は今、はじめての友人とも言える坂柳有栖様とチェスをするために学校内の図書館に居ます。周囲には私と異なる学年の生徒も多数見られますが、皆中間テストの勉強をしているように見えます。図書館ということもあり、皆静かに勉強をしていたのですが何やら騒がしくなってきました。図書館で騒ぐなんてモラルのない生徒も居るんですよ私の学校には、ですが気にすることはありません。何故なら赤の他人だからです。知り合いだったら止めたかも知れませんが、見ず知らずの人間なら放っておくのが難癖つけられることもないので1番ですよね。どうせあのような生徒は卒業するまでに居なくなります。ああ、居なくなるとは更生するという意味ではありません。学校から直接居なくなる、つまり退学ということです。中々に面白い学校ですよね。え?お前チェスをするために図書館に居るのに何でこんなことをしているか?それは私の前に居る子が盤面を見つめながら動かないのです。彼女の集中を切らすような真似はしたくないのでかれこれ5分程黙って座っています。この盤面を返す方法は1つだけ残されています。ちなみにですがその一手を打たられてしまうと一気に形勢が逆転され私の敗北が決定します。つまり私と坂柳有栖様のチェスの技量はほぼ互角、面白い程に拮抗しています。チェスをして久々に楽しめました。おっと、ようやく重い口を開いてくれるようです。
「ダメですね...私にはこの状況を打破できる手を思いつくことが出来ません。れいくんの様子を見るに勝つ術は残っていると思いますが、今の私の実力では貴方に勝つことは出来ないようです」
危ねぇ...普通に負けるかと思った。マジで強いぞ、俺は清隆とかいう化け物とホワイトルームにいる時ずっと対局してたからな、嫌でも強くなる。それに記憶力は清隆よりも優れていると勝手ながらに思ってる。この盤面の対処法は嫌でも覚えている。清隆にクイーンサクリファイスから大逆転された時はマジでビビった。
「いや割とギリギリだったぞ、有栖はいつからチェス始めたんだよ」
「私はホワイトルームで貴方を見てからです、貴方と対局することは私の夢でもあったんですよ」
「そうか夢が叶って良かったな。それにしても凄い集中力だな、周りがあんなにうるさいのに」
「あんな人たち眼中にありません。それに対局してる際もDクラスの生徒を見ていましたよね、そんなに綾小路くんが気になりますか?」
流石に気になる、いつ動くんだよアイツ。
「そりゃあそうだろ、義兄弟みたいなものだぞ」
俺は物心がついた頃にはあの空間にいた。死んだことは知ってるけど親の顔なんて知らない。血の繋がっている者が居ない孤独な人間だからな、だからこそ他の奴らも一緒に連れて来たかった。
「また見ましたね...今は私とれいくんの2人だけの時間なんですよ、私のことだけを見ていてください」
「ああ、と言ってももうすぐ終わりだな昼休み」
俺の言葉に有栖は溜息を零す。それと同時に席を立った、俺も続けて席を立つ。早めに教室戻るか。
「はあ、そうですね...1つ聞きたいことがあるんですが、貴方は同性愛者ではないですよね」
教室に戻りながら有栖が突然変なことを聞いてきた、何だその質問。
「うん、断言出来るよ、違います」
その通り、前にも言ったが俺の性癖はノーマルだ。
「ならいいです、そういえば友達は作れたんですか?もう2週間程経ちますが」
「一応声は掛けたんだけどなぁ、全く反応がないんだよ」
まだ悩んでいるのか、それとも無視されているのか、俺には分からない。
「あんな目立った行為をするからでは?流石の私でも驚きましたよ」
「だよなぁ、やり過ぎたかな」
昼休みの騒動の後真っ先に有栖に怒られた。仕方ないな、あれはもはや挑発じゃないなからな。
「れいくんにテスト勉強など不必要でしょう?この際だから綾小路くんと直接会いに行ってみればどうでしょう」
「そうだな、そろそろ声くらいは掛けておくか」
現状の把握、そして今後のことについてアイツと話をしなければならない。ぶっちゃけた話、俺は今の試験なんてどうでも良い。俺が何もしなくてもAクラスはトップに立ち続けるだろう、俺がすべきことは清隆が動いた場合の対応ぐらいだ。アイツが本気でAクラスを目指すなら全力を持って相手をする。
授業が終わり、放課後を迎える。明日は中間テスト本番だ。今日の授業はテストが近いということもあり、皆の雰囲気が違った。それにAクラスでは最終確認も含めてこれから勉強会をやるらしい、しかもこれには有栖と葛城両方が参加するみたいだ。つまり勉強会に参加するのはほぼ全員、実質あと1時間授業があるみたいなものだ。みんなが頑張ってる中で悪いが俺は勉強会に参加しない、これから会いに行く人物がいる。待ち合わせはケヤキモール内のカフェ、前に橋本たちと話をしたところだ。前と同じことにならないように早めに移動しよう。
「あれ?神谷は勉強会に参加しないのか?」
う、杉田か出来れば話しかけないで欲しかった。
「まあ、ちょっと用事があってな。申し訳ないけど参加できないんだ」
「用事なら仕方ねぇな、何だ?女か?浮気か?」
「違う、悪いがそろそろ時間だ。勉強会頑張ってくれ」
俺はそう言って教室を後にする。こんなことばかりしてたら嫌われても仕方ないな。
「遅かったな、零」
「お前が早いんだよ集合時間の20分前だぞ...まあ、あれだな久しぶりだな」
「ああ、そうだな」
俺が会いに来た人物、それはこいつ、綾小路 清隆 だ。
1年Dクラスの生徒。普段は目立たず、クラスでも影が薄い存在だ。そして俺と同様、ホワイトルームという施設で育てられ徹底した教育を学んでいて、本当は極めて高い身体能力と頭脳を持っている。今日俺が清隆をカフェに呼んだ理由は何故この学校の最底辺であるDクラスに所属されているのか、まずどうやってこの学校に入学したのか、何故この学校に入学したのか、今後どうするつもりなのか、一個ずつ挙げていったらキリがないな。時間も無限ではない、とっとと聞いてこの話を終わらせよう。
「時間も無限にあるわけじゃない、聞きたいことは山ほどあるんだ。早速だがお前はどうやってこの学校に入学したんだ?俺の方にはあまり追手は来なかったけどお前の方はヤバかっただろ?」
「そうだな、松雄という男を覚えているか?その松雄からこの学校を勧められた。それで今に至るって訳だ」
松雄、綾小路家の執事だな。その執事が雇い主であるあいつを裏切るとは、そんならことしたら只ではすまないだろうな。今は何をしているんだろう?
「俺からも同じことを聞きたい、お前はどうやって逃げ切れたんだ?俺とは違い頼れる奴は居なかっただろ?」
「悪いが、詳しく教えることはできないな。まあ、ある程度無茶はさせて貰った」
ある程度の無茶と言っても人は殺めてないからな、安心してくれ。それに清隆の言ったように俺は誰にも頼らず1人で日本に来た。マジで大変だったなぁ。
「そうか、話はこんなものか?」
「そんな訳ないだろ、俺がAクラスに居るのになんでお前はDクラスに居るんだよ」
単純な疑問だ、俺とこいつの能力はほぼ互角。俺がAクラスなら清隆もAクラスな筈だ。
「まあ入試で手を抜いたんだよ、俺は目立ちたくないからな」
「だとしても理解が出来ないな。お前が知っているか分からないが、この学校の理事長は俺たちがホワイトルーム生ということを知っている」
俺の言葉に清隆が分かりやすく反応を見せる。流石に驚くよな、そりゃあそうだ、こいつはこの学校で最低3年間は平穏な生活を送れると思っていたはずだし。
「...じゃあ俺がDクラスに配属された理由は他にあると」
「まだ俺も分からない。ここの理事長はどちらかと言うと俺たちの味方だと思うし、義務教育を受けてない俺たちが入れてる時点で怪しいんだよこの学校は」
「理事長が知っているということは、お前とよく居るAクラスの生徒もホワイトルームのことを知っているのか?」
「そうだな、なんなら1度俺たちを見に来ているらしい。ああ、安心してくれ有栖も俺たちの味方だ」
「そうか、今のが大事な話って奴か?」
「もう1つある。お前はもしこの学校生活でホワイトルームに連れ戻される可能性が出てきたらどうするんだ?」
「その時はその時だ、少なくとも今はお前のように目立つつもりはない」
「力を持っていながら、それを使わないのは愚か者のすることだ」
あいつの言葉を借りよう。俺はあいつが嫌いだ、だが感謝はしている、ここまで育ててくれたからな。
「不必要に実力を見せる意味はない、能ある鷹は爪を隠すって言うだろ?」
俺以外の生徒からしたら何言ってんだって話だ。誰も清隆の実力を見抜けない、それどころかまず存在を知らないんだろうな。上手く隠れてるなこいつ。
「能ある鷹は爪を隠すか?お前のためにあるような言葉だな。じゃあピンチの時には本気出すってか?それは今じゃないのか?」
Dクラスのクラスポイントは0、普通に見れば今がピンチだ。
「今回のテストは多分大丈夫だ、少しばかり俺も動いたが」
「何をしたんだ?図書館の様子を見ると相当ヤバい生徒も居るんだろ?そんな簡単に点数が上がるのか?」
「3年の先輩からポイントで中間テストの過去問を買った、お前も気付いてたんじゃないのか?」
「まあ、何となく考えはしたよ、予め情報がないと解けない問題もちらほらあったからな。まあ俺たちには必要ないけど」
「そうか、やはりAクラスと勉強面でははかなり差があるんだな」
「そうなるな、もしかしてお前もAクラスを目指して頑張ってるのか?」
「まあ、訳あってだが」
「もしDクラスが今後俺たちの脅威となる存在になるなら、俺は容赦なくお前たちを潰すからな」
「そうだな、俺も少しばかり考え方を変えよう。今回のテストは80点後半くらいの点数で調整する。お前がいるから対して目立たない筈だ、それに過去問もあるから高い点数を出しても誰も不思議に思わないからな」
「そうか、強制はしないからな。後に後悔するなよ。...話は終わりだな」
「待て、最後に頼みがある。予め口裏を合わせておこう。俺たちは幼馴染み、この設定でいいな?」
「ああ、問題ない。じゃあな、頑張ってくれ」
「そっちもな...」
話が終わり清隆は一足先に寮へ戻った。俺はこの際だから1人でケヤキモール内を回ろうと思う、それに一度行ってみたかった場所があるんだよ。ブー...携帯からバイブ音が鳴る、画面を見ると有栖からだ。あいつら勉強会の途中なんじゃないのか?移動しながら電話するか、歩きスマホになるけど許してくれ。
「もしもし?」
「もしもし、その様子だと話は終わったようですね」
有栖と通話しながら目的の場所へ向かう、近づくに連れて騒音が大きくなる。
「まあそうなるな、それで何かようか?」
俺の身体にセンサーが反応して自動ドアが開く、ここが中高生の遊び場で有名なゲームセンターか、ちらほら俺と同じ学年の生徒も居る。
「少しばかりお時間を頂いても宜しいですか?大事な話がありまして」
1プレイ100ポイント、機械の中に商品がありボタンでアームを動かして穴に落とす。これが噂のクレーンゲームか、そりゃあみんなプレイするよな、中にある商品は100ポイント以上の価値があるし、早めに取れたらお得だからな。お、このくまのぬいぐるみ中々かわいいな。有栖にプレゼントとして取ってくか。
「ああ、大丈夫だぞ」
アームで持ち上げるのが無難なやり方なんだろうけど、引っ掛けやすいタグがあるな、狙ってみるか。あ、取れた。割と簡単だな。ぬいぐるみを取り出し辺りを見回す、へぇー商品にはいろんな種類があるんだな。
「...あの、今どこにいるんですか?」
「ああ、食材とか切れてたし、ケヤキモールをうろちょろしてる」
勉強会に参加しないでゲームセンターで遊んでるなんてバレたら怒られるに決まってる。それに俺は嘘はついてない、現に今俺は板チョコのクレーンゲームをプレイしている。
「ケヤキモールの何処にいるんですか?」
う、嘘をついたらバレる。どうにか誤魔化そう。
「何処って言われてもなぁ、目的なく歩いてるよ。今はカフェの近くに居るよ」
カフェの近く、嘘はついてない。
「やけに周りが騒がしい気がするのですが」
「気のせいじゃないか?そういえば勉強会は終わったのか?」
「話を逸らさないでください。まあ、時間はあるんですね?」
「そうだな、どうかしたのか?」
「今から私の部屋に来てください」
「え?何でだよ」
「大事な話があるので」
「電話じゃダメなのか?」
「そうです、それとも私の部屋に来るのは嫌ですか?」
「別に嫌じゃないけど」
「それとも初めてのゲームセンターが楽しくてその場から離れたくないんですか?」
「気付いてたのかよ...はぁ、分かったよ。今から行くから少し待っててくれ」
「うふふ、楽しみに待ってますね」
何が楽しみなんだよ、それに俺今から異性の部屋に行かないといけないのか。少しばかり緊張感が、あと大事な話って何だろう?
ふぅ、ようやく着いた、この部屋だよな?女子寮だし、みんなの視線が痛いんだけど...俺はインターホンを押す、中から有栖の声が聞こえる。
「入っても大丈夫ですよ」
「お邪魔しまーす...」
有栖の部屋には手摺りなどのバリアフリーが備わっている。学校側が用意してくれたのだろう。それに俺の部屋とは違いとても女の子らしく可愛らしい部屋だ。
「相当楽しんでたんですね」
俺の両手にはゲームセンターで乱獲したお菓子やフィギュアなどが入った袋で手が塞がっている。
「う、初めてだったからつい。あ、これ有栖にやるよ」
俺はそう言ってゲームセンターで取ったくまのぬいぐるみを有栖に渡す。
「え、いいんですか?」
「ああ、プレゼントだプレゼント、ほら」
「ありがとうございます...」
「それで、話って何だよ?」
「えっと、あのですね...」
有栖が分かりやすく動揺している、もしかして俺たちの情報が外部にバレたのか?なら有栖が動揺するのも分かるけど、そんなミスをする人間じゃない、開幕見当もつかないな。でも有栖からこの話を切り出したということはそれ程大事な話であることに違いない。
「どうしたんだ?」
「れいくんは興味のある物事を深く知ろうとする、目的のためには手段を選ばない。そういうタイプの人ですよね?」
「まあ、そうだな。それが理由で抜け出したからな」
俺はそこらの人間と比べ物にならないくらいに好奇心旺盛だろうな、そういう面でこの学校に来て、とても良かったと思ってる。友人との会話、先生との会話、下劣な会話で盛り上がる男子、乙女の女心、嫌悪感、憧れ、恋心など数えていたらキリがない程、俺の知らないことばかりだ。俺はその全てを知りたい、非常に強欲な人間だ。
「色んなことを知りたいですよね、例えば恋愛感情...とか」
恋愛か、俺には無縁の話だな。俺には理解できない感情だ、何故なら教えられていないからだ。赤ん坊に言葉を教えるのと同じで、小さい時から教えられていないから到底理解できない。逆に自分と釣り合う人間以外関わることを許されなかった。育つ環境は人を変える、自分の才能なんて関係ない。急にだが、みんなは人間の肉を食べたことはあるだろうか?勿論、食べる気にもならないだろうな、なんなら考えたくもないだろう。それは何故か、そう教育されてきたからだ。だが、もし幼い頃から人間の肉は食べられるとそう教育されていたらどうなるだろうか...考えただけで恐ろしい、だがこの話は実例がある。パリでおきたとある事件を皆は知っているだろうか?この事件の加害者の男は凄く権力のある両親の元に生まれ、幼少期から幼い子供を誘拐して鍋で煮込んで食べるという魔法使いの話を祖父から何度も聞かされて育ったという、その話により食人に興味を持ったと言われている。この話、何かに似ていると思わないか?...そうホワイトルームだ、俺たちは恋愛は必要ない、弱者を蹴散らし自分自身が圧倒的強者であること、それが絶対的な教育方針だった。
「まあ、興味はあるな」
興味はある、恋愛は必要ない無駄なことだ。何故あの男はそう俺たちに教育していたのか、本当に必要のないことなのか、それとも人生において必要不可欠なのか、俺には分からない。あの男は言っていたガキなど感情がなくても作れると。
「そうですよね、なので私が教えてあげます...」
「教える?何をだ?」
俺はホワイトルームで育った、頭脳や身体能力だけでなく頭の鋭さなどの全てが最高峰になるまで教育された。自分の恋愛については知らないが、相手なら何となく分かる。俺は鈍くない有栖が俺に対して他の人間とは違う何か特別な感情を持っていることを理解している。だがそれが恋なのか、それとも別の物なのかは俺には分からない。
「...恋です」
「恋?」
「はい、そう言ってるんです。私が貴方に恋愛についてお教えします」
「なあ、有栖」
「何ですか?」
「お前は俺をどう思ってるんだ」
「え!そ、それは...」
「悪い質問の仕方を変える、ホワイトルーム生の神谷 零をどう思ってるんだ?」
この場の雰囲気が変わる。
「...あの日私は2人の人物の眼に惹かれました。この世の全ての物に価値がないと考えているような深い闇の眼を持った者、そしてこの世の全てに意味があり全てを知りたいと思う強欲に光り輝く眼を持った者。私はこの2人の眼に魅了されました」
前者は清隆、そして後者は俺だろう。有栖が見たのはチェスをしている俺たちの姿、清隆はただ作業的に最善手を打ち続けていた。片や俺は悪手とも言われる手などを打ちホワイトルームという監獄の中で許された、チェスという娯楽を少なくとも楽しんでいた。
「その2人の成長した姿は変わっていても眼だけは変わっていなかった。私も貴方と同じで強欲な女性、私は改めて思いました。2人を支配したいと」
有栖が俺の眼を見て語り出す、止まる気配はない。
「2人と出会ったあの日からずっと貴方たちのことだけを考えて生きてきました、そしてこの学校に入学して間もなく貴方と再会しました。もうすでにあの時から私は貴方のことしか見ていません、もしあの時綾小路くんと先に出会っていたら彼に興味が湧いていたでしょう、勿論今でも彼に興味はあります。ですが、貴方ほどではありません」
俺に対して一種の告白をして有栖の頬が薄っすらと朱く染まる。
「私が体育館に1人で向かっている際に貴方が言ってくれたこと覚えていますか?疾患持ちだからという理由で勝手に弱者のレッテルを貼られ可哀想と同情される、それが嫌だから1人で頑張っていた貴女は凄いとそう言ってくれたんです。私は小中学校の時、周りから天才と言われていました。実際、自分で言うのもあれですがそれは事実だと思っています。ですが、それが理由でテストで満点を取っても当たり前、そう思われるのが悔しいんです。天才とはいえ習っていないことは分かりません、だから裏では必死に勉強し努力しているのに私はその努力が認められませんでした」
「貴方が私の初めてなんです、認めてくれた面でもこうして本音を言い合える面でも。だから私も貴方の初めてになりたい...貴方を支配し、貴方に支配されたい。私にとって貴方は唯一無二の存在なんです。私はホワイトルーム生のれいくん、そして私のクラスメイトであるれいくんのどちらも好きなんです。...なので私が教えてあげます、私が貴方を振り向かせて見せます」
「貴方が恋を知らないということは充分承知です。その上でれいくん、私と...付き合っていただけませんか?」
有栖の俺に対する渾身の告白、俺はこれに対し非常に興味を持った。クラスの女王である有栖をここまでにする恋とは一体何なのか。
人は成長する生き物だ、そして学習を好む生き物である。俺は有栖と一緒に恋愛を学ぶ、この様子だと有栖自身も理解し切っていない。彼女も俺と同様、これまでの十数年の人生で学んでこなかったこと。俺の探究心、そして有栖に対する気持ちに俺は突き動かされる。
「分かった...改めて宜しく頼むよ、有栖」
「嬉しいです。うふふ、ありがとうございます」
「それにしても、何で今日なんだ?」
「私と貴方が出会って今日で3000日目です、どうです?ロマンチックじゃないですか?」
「確かにそうだけど、良く覚えてたな」
「当たり前です、先ほども言ったでしょう?貴方のことを考えてずっと生きてきたと」
「恋人になったんだし、こんくらいはしてもいいよな?」
俺はそう言って両手を伸ばして隣に座っている有栖の肩を掴む。
「え、えっと、その...何をするつもりですか?」
俺は言葉よりも行動で示すタイプだ、恥ずかしがり頬を朱く染めた有栖を優しく抱き寄せる。
「うふふ、れいくん私は今とても嬉しいです」
「ああ、俺もだ」
俺は恋愛を知らない。
恋を知らず、愛を知らない。
今俺はどんなら顔をしているのだろう、そんなことを考えていると偶然にも有栖の部屋に備わっている鏡が目の届く範囲にあった。
俺は笑っていた。
この笑みは恋によるものなのか、それともまた別のものなのか、今の俺には分からない。
今回は綾小路と有栖の二人がメインの話でした。普通の恋愛ならまだしも有栖の恋愛となると難しいところがあるので少し変かもしれませんがご了承ください。
オリジナルの特別試験は見たいですか?
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