あの窓にさようなら(ドラえもん)

登録日:2019/06/26 (水) 00:19:01
更新日:2021/12/30 Thu 20:50:05
所要時間:約 4 分で読めます




「あの窓にさようなら」とは、漫画「ドラえもん」のエピソードのひとつ。小学四年生1978年11月号に掲載され、単行本には第19巻に収録。
「ひみつ道具で全てを解決する」わけではなく、道具の力でやっていることは「背中を押す程度の手助け」だが、それが心温まるラストにつながっている。

【あらすじ】

机に向かって、ぼんやりと窓の外を眺めるのび太。
それを見かねたドラえもんは



まただらけてる!ボヤーッと窓なんかながめて。こんなにいい天気なんだから外で遊んだらどう?



と、のび太を叱りつける。
すると、のび太は無言でドラえもんを睨みつけながら自分の片足を指さす。その足首から下には包帯が巻かれていた。それを見たドラえもんは、ようやくあることを思い出す。



悪い悪い。足をくじいて、三日も学校休んでるの、忘れてた。



うっかりとはいえ理不尽に叱られたことでふてくされてしまったのび太は
「どうせ、ぼくはいつもだらけてるから……」と、言いながら昼寝しようとするが
ドラえもんはそれを制止し、今の失言のお詫びにと「窓けしききりかえ機」を取り出す。
方角と距離を指定することで、離れたところにある窓からの景色をのび太の部屋の窓から見られるようになるという。
早速機械を操作するドラえもん。すると…



あ~っ、かわった。



窓から見える風景が瞬時に切り替わる。それは静香の部屋の窓からの眺めであり、庭では静香が焼き芋をしていた。
それを見たのび太は静香に「やきいもおいしいかい」と電話をかけて驚かせる。
次にジャイアンの部屋の窓からの眺めを見ようということになり、再び景色を切り替える。
切り替わった景色を見ながら「せまくるしくて、きたないながめだなあ」と、ぼやくのび太。
すると次の瞬間、窓が開いてジャイアンが入って来る。予想外のことに驚くふたりだが、ジャイアンの方が驚く。



あれえ?おれの部屋へしのびこんだつもりだったのに。かあちゃんに見つからないよう、窓から……。



どうやら景色が映し出されるだけでなく、「どこでもドア」のように窓の両側の空間が繋がるらしい。
ジャイアンは「おれどうかしたらしい。」と言いながら出て行った。
その後もどこかの物干し場や日本庭園、ビルの最上階からの眺め、飛行機の窓から見た青空などいろいろな景色を楽しむドラえもんとのび太。
今度はどこか遠くの景色を見ようと機械を操作すると、どこかの農家の庭先らしき景色が映し出された。
すると直後、青年がひとり、暗い表情で歩いて来るのが見えた。青年は立ち止まり、窓に向かって話し始める。



桃枝さん、おわかれにきたんだけど、るすで残念だ。



そのまま独白は続き、青年は「親戚が営む工場を手伝うために今から上京しなければならないこと」「桃枝さんがずっと好きだったこと」「自分は離れても桃枝さんを忘れないということ」「時々は自分を思い出してほしいということ」を、誰もいない窓に告げて去って行く。
どうしようもないのはわかっているが、青年が気の毒で気にかかるふたりはどこでもドアで桃枝さんの家に向かう。
景色を見るために方角と距離を指定したので場所を特定できたのだ。
ドアをくぐると先ほど見たのと同じ風景が広がっており、近くの窓辺にひとりの少女が立っていた。どうやら彼女が桃枝さんらしい。
窓に近づき、彼女に青年の想いを伝えようとするのび太だが、ドラえもんはストップをかけ「窓ビデオ」で録画しておいた青年の姿と独白を再生し、桃枝さんの見ている窓に映し出す。
桃枝さんはその青年…ひできさんを呼び止めようと窓を開けるが、映像なのでそこにはだれもいなかった。
一方、できることはやり、伝えることは伝えたものの、ふたりのその後が気になったドラえもんとのび太は「自動ついせきアダプター」でひできさんが今この瞬間に見ている景色をのび太の部屋の窓を通じて見ることに。
映ったのは、走り出した汽車の窓からの風景。すると、走って来る人影が見え、その直後…



ひできさあん。お手紙ちょうだいね~。わたしもだすからね~。



桃枝さんが叫びながら手を振っていた。
ふたりの想いが通じ合ったことを知り、部屋で見ているふたりは笑顔を浮かべるのだった。

【初登場のひみつ道具】

〇窓けしききりかえ機
リモコン型のひみつ道具。
ダイヤルで方角と距離を指定し、窓に向かってスイッチを押すと、指定した場所にある窓の外側と近くの窓の内側の空間が繋がり、離れたところにある窓からの景色を近くの窓から見られるようになる。
空間が繋がっていることは、窓の外からは分からない。
また「窓ビデオ」という録画機能が内蔵されており、録画した内容をいつでも別の窓に映し出さすことが可能。

〇自動ついせきアダプター
窓けしききりかえ機の付属品。
これを本体に取り付けて対象の人物を指定すると、対象がどこへ移動しても、その人物が見ている景色を近くの窓からリアルタイムで見続けることができる。

【アニメ版】

大山版

1986/2/7に放送。
基本的には原作通りの展開であるが、ひできさんが「ふみやさん」、桃枝さんが「きょうこさん」になっている。
ちなみに本作は、後にクレヨンしんちゃんの劇場版監督で知られる原恵一氏が演出・絵コンテを手掛けた作品の一つ。

わさドラ版

2009/10/23に放送。
こちらも基本的には原作通りの展開であるが、桃枝さんの兄(CV・関俊彦)が追加。ひできさんの事が気に入らないらしく、何かと突っかかっていたようだが…?
ラストシーンは一見の価値あり。


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最終更新:2021年12月30日 20:50