魚の培養脂肪で美味しい代替肉、日本人研究員が開発
(シンガポール)
シンガポール発
2022年05月26日
シンガポールのフードテック分野のスタートアップ、インパクファット(ImpacFat)の創業者、杉井重紀氏は5月18日、ジェトロとのインタビューで、2025年に同社が培養した魚の脂肪の商業生産の開始を目指す方針を示した。同社はこのほど、同国の非営利団体、テマセク基金主催によるアジア最大級の環境先端技術公募「2022年ザ・リバビリティ・チャレンジ」(2022年1月17日記事参照)で、400以上の応募企業・団体から最終選考者6社・グループの1社に選ばれた。
インパクファットは2022年3月創立のフードテック分野のスタートアップ。魚の培養脂肪の販売先とするのは、細胞培養肉や植物由来の代替肉を開発する企業だ。代替肉は現在、製品化の過程で油分が加えられている。しかし、その油分は現状、さまざまな加工がされている上、酸化しやすい弱点がある。杉井氏は、代替肉の油分として「魚由来の脂肪であれば、酸化しにくい。また、ナチュラルな脂で、健康に良く、美味しくできる」と指摘。体に良いオメガ3脂肪酸や、抗酸化剤として、脂溶性ビタミンを入れることが可能で、より自然なかたちで栄養を添加できるメリットがあるという。さらに、「環境に優しく持続可能な代替肉の市場は大きく伸びており、そこに貢献したい」と述べた。
杉井氏は、科学技術研究庁(Aスター)傘下の分子細胞生物学研究所(IMBB)の主任研究員で、脂肪由来の幹細胞の研究を専門とする。地元の魚やウナギなど6種類の魚から2019年に、細胞株を確立。2021年に最初の魚の培養脂肪のプロトタイプを開発した。今後、パイロット生産システムを完成させ、2025年の商業販売を計画している。インパクファットの販売先となる市場として、「米国、日本、中国の3カ国は外せない」と期待している。
ザ・リバビリティ・チャレンジの最終決戦日は6月9日で、インパクファットを含む6社・団体がピッチを行う。優勝者には、100万シンガポール・ドル(約9,200万円、Sドル、1Sドル=約92円)のプロジェクト資金が供与される。
(注)テマセク基金のザ・リバビリティ・チャレンジの最終決戦日はオンライン開催。詳細は同公募のホームページを参照。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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