性別による役割、固定観念やめて 内閣府がイラスト提供
街中のポスターや会議のプレゼン資料に添えられた、何げないイラスト。「育児をするのは女性」「工事現場で働くのは男性」などというのがよくあるパターンだが、ちょっと心がざわつくこともある。つい男女別で見がちな役割分担の偏りをなくそうと、内閣府男女共同参画局がイラストの無償提供を始めた。同じ仕事を、男女それぞれがしている画像40種類だ。「ジェンダー平等の実現」は、SDGsの17目標の一つにも掲げられる重要課題。イラストをつくったねらいは? 担当者に尋ねた。(編集部・竹山栄太郎)
男女の役割、決めつけていませんか?
イラストの提供は5月10日に始まり、内閣府男女共同参画局のホームページから、だれでも無料でダウンロードできる。
イラストは大きく「職業」と「社会生活の場面」に分かれている。職業は、「土木技術者」「溶接工」「飛行機のパイロット」「歯科衛生士」「保育士」「旅館従業員」「演台に立つ人」など25種類。社会生活の場面は、「炊事」「食事の片付け」「ゴミ捨て」「看病」「乳幼児の送迎」「保護者会への参加」など15種類を用意している。すべてに女性版と男性版がある。
制作の背景には、「官民を問わず、資料に利用されるイラストは、性別による固定的役割分担にとらわれたものが多かった」(担当者)という事情がある。無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)があることを見た人に認識してもらい、その解消につなげたい、としている。
職業や場面については、「現時点において、性別による固定的役割分担が比較的強いと思われるものを選んだ」(担当者)という。
これまでにダウンロードした人たちは、官公庁や教育機関、マスメディア、民間企業、個人ブログの運営者などさまざまで、広報誌や研修資料、ホームページでの利用といった用途が多いという。
利用者からは、「一般に出回っているイラストは、男女の役割が固定的なものが多く、使えるものが限られて困っていた」「小学校の道徳で、男女共同参画に関する授業をする際の資料に悩んでいた」「就職セミナーで、性別に関わりなく職業選択の自由があることを視覚的に伝えるために使いたい」といった声が寄せられているという。
ダウンロードにあたっては、団体・個人名や連絡先、使用目的などの入力が必要となる。また、素材そのものの商品化や、公序良俗に反するものへの使用などは禁じられている。
毎年6月23~29日の1週間は「男女共同参画週間」。今年度のキャッチフレーズは「女だから、男だから、ではなく、私だから、の時代へ。」だという。
「働く環境、考える契機にも」 内閣府の担当者
男女共同参画局の担当者に、イラスト制作のねらいを聞いた。
――性別による固定的役割分担について、日本の現状をどう考えますか。
無意識の思い込みは、程度の差はあれ、職業生活や家庭生活などあらゆる場面に存在していると認識しています。特に、地方により根強く存在していると考えています。
――イラストをどう使ってほしいですか。
官公庁に限らず、民間企業などにおいても、研修資料やプレゼン資料などに使用していただき、組織の人事管理や、育児を担う職員の働く環境整備などを改めて考える契機としてもらいたいです。育児を担う職員の働く環境が整備され仕事と家庭が両立することで、家庭生活の場面における男女の役割分担も変化していくのではないでしょうか。
――学校現場でもニーズがあるようです。
小学校などのプリントにイラストを使い、児童が視覚情報として認識することで、成長過程における無意識の思い込みの醸成を防ぐことができます。将来の職業選択の際に、「女だから」「男だから」という、選択の幅を狭める無意識の思い込みをなくすことにもつなげられると考えています。無意識の思い込みの醸成を防ぐことは、社会全体の性別による固定的役割分担意識の解消に寄与するものと考えています。
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