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「有休がもらえない」くら寿司に新たな労基法違反疑惑

「週刊文春」編集部

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 現役店長の焼身自殺をきっかけに明るみに出た大手回転寿司チェーン「無添くら寿司」の過酷な労働環境。今回、新たに「有給休暇の取得」を巡る疑惑が……。

創業者・田中邦彦社長

 小誌はこれまで5週にわたり、くら寿司従業員のパワハラ被害などを報道。先週号では、複数の店舗で店長が自腹でアルバイトの給与を支払う“自爆雇用”が行われていたこと、その背景に慢性的な人手不足があることなどを報じた。

 すると先週号の発売直後、くら寿司に異変が起きた。HPのパート・アルバイト数が書き換えられたのだ。5月16日に小誌が確認した際は1万6339人だったが、5月21日にHPを見ると4万1339人に。突如2万5000人も“激増”したのだった。

 

 そんな中、新たな情報が寄せられた。

「くら寿司は、まともに従業員に有給休暇を取らせる気がありません」

 こう語るのは、17年4月から20年10月まで宮崎県の店舗などで勤務していた元社員Aさんだ。

 有休は法律で定められた労働者の権利。要件を満たせば、正規雇用・非正規雇用を問わず付与される。

 Aさんが憤る。

「18年、副店長だった時にアルバイトに有休の存在を教えてあげたんです。すると店長に『なぜ会社の不利益になるようなことをする。要らんことを言うな!』と叱責された。そのアルバイトは有休取得を希望しましたが、店長に『お前は勤務態度が悪いからダメ』と“拒絶”されました」

 Aさんは「有休を勝手に消化された」とも明かす。

「17年に風邪で3日間休んだことがあるんです。その時、上司から『有休使っといたわ』と言われました。もちろん自分で有休申請はしていません」(同前)

Aさんの給与明細。有休が残っているが……

 16年4月から20年5月末まで大阪府の店舗などで勤務した元社員Bさんも「勝手に有休を使われた」と証言する。

「18年1月にノロウイルスに感染して1週間休んだのですが、上司に『有休使っておいたから』と言われました。復帰後に『申請書を書け』と言われ、書いてしまったのですが……。結局、在職中に有休を申請したのは退職時の消化を除き、その1回だけでした」

 有休を巡っては労働基準法が改正され、19年4月から使用者(会社)は年次有給休暇が10日以上の全ての労働者に対し、毎年5日間、有休を取得させることが義務化された。しかし――。

 18年4月から21年6月まで都内の店舗などで勤務した元社員Cさんが語る。

「在職中、退職時の消化も含めて一度も有休を取得できなかった。取りたい気持ちはありましたが……」

 なぜ取れないのか。

「忙しすぎるからです。会社から取得を勧められることもないので、存在を知らない従業員も結構います。

 仮に有休を取っても上司に電話で『来い』と言われたら出勤。だから最初から申請しなかった」(同前)

 さらに有休を満足に取得できなかった元従業員は他にも複数確認できた。

 旬報法律事務所の佐々木亮弁護士はこう指摘する。

「有休の取得を拒絶することは労働基準法第39条違反です。有休の存在を周知したことを理由に叱責するのはパワハラで不法行為と言えるでしょう。本人の許可なく会社が勝手に有休を消化することも労働者の権利を侵害しています。

 19年4月の法改正以降に付与された有休を年5日取得させない場合も当然、労基法違反となります」

 

 くら寿司本社にHPの従業員数を書き換えた理由を聞いたが、回答しなかった。“有休拒絶”については、〈ご照会のような事項に関する当社への情報提供や通報等はございません。なお、当社は、当然のことながら、法令に基づいて労務管理を実施しており、管理者にもそのように指導しております〉などと回答した。

 全国のくら寿司従業員には今後、臆することなく労働者の権利である有給休暇を申請してもらいたい。

source : 週刊文春 2022年6月2日号

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