磯地区の新駅、計画始動 仙巌園前に25年3月開業目標

仙崎信一
[PR]

 鹿児島市磯地区の仙巌園前への新設をめざすJRの「磯新駅」が今年、実施設計に向けて動き出す。開業目標は2025年の3月。コロナ禍後を見据え、関係者は「観光駅」としての早期利用に期待を込める。

 計画では鹿児島駅から約2キロ北の尚古集成館前の海沿いに設置。桜島を望む景観に配慮し、駅舎はつくらずホームだけのシンプルな構造になる見込みだ。

 構想は、16年に鹿児島経済同友会など経済3団体が市長に設置を要望したのが始まり。近くに磯海水浴場もあり、同友会によると、磯地区(約90世帯)の住民から長年、渋滞や駐車場不足の解消など交通アクセスの改善を求める要望が寄せられていた。

 15年、反射炉跡など旧集成館がユネスコ国連教育科学文化機関)の世界文化遺産明治日本の産業革命遺産」になると観光客がさらに増え、交通渋滞は悪化。クルーズ船の観光客も来るようになったが、渋滞の影響で船の出発時間に間に合わないというトラブルも起きたという。

 同友会の水流弘行事務局長(64)は「観光客が時間通りにストレスなく観光するためには定時性が重要」と駅設置の意義を強調する。観光客が鉄道を利用することで車の混雑が減るとみる。同友会は、アクセス改善により県全体で57億円の観光効果につながる、との試算も出している。

 経済3団体と県、鹿児島市、島津興業でつくる「磯新駅設置協議会」は昨年、JR九州と駅設置に関する覚書を交わし、JRは23年3月末までに実施設計を完了させることになっている。駅部分の総工費は約3億8千万円。世界文化遺産の関連地域でもあり、ユネスコの理解も得る考えだ。

 線路と国道10号の間にある空き地が駅前広場になる予定だ。鹿児島市中心部に向かう海岸道路のルートが変更になるため、渋滞を懸念する声もあるが、協議会は国道10号の交差点改良で対応できるとしている。

 水流事務局長は「コロナ禍の終息後に駅ができていないと観光地間競争に負けてしまう。新駅に向け、今年は目に見えるかたちで順調に進んでほしい」と期待を込める。(仙崎信一)