TBS報道特集「原発事故と甲状腺がん」炎上問題、偏向報道の代償はどこに降りかかるのか

報道のリテラシーが問われている
林 智裕 プロフィール

「情報災害」を誘発させる「風評加害」

近年、このような誤った情報によって本来避けられたはずの被害や犠牲が生じるケースを「情報災害」、偏向報道も含めて「情報災害」を誘発させる言説を「風評加害」と呼ぶ動きが広がっている。

今年3月に徳間書店より上梓した拙著『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』で今回のようなケースも含めた深刻な「情報災害」「風評加害」の実例と、それらにどう対峙していくべきかが記されている。

TBSの報道特集では、最後に元首相5人がEUに対し「福島では原発事故によって甲状腺ガンが多発した」かのように誤解させる書簡を送ったことを取り上げ番組の主張を正当化していたが、『「正しさ」の商人』では、この5人の首相の件についても「風評加害」の実例として問題点が徹底的に洗い出されているので、参考にして頂きたい。

TBS「報道特集」には多数の批判が殺到し、中にはBPO(放送倫理・番組向上機構)に訴えるべきとの主張も見られ、実際に通報も相次いだ。

さらに、総務省には「訂正放送制度」というものもある。その内容には以下の通りである。

【 第9条 放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から3箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から2日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない 】

今回の番組には当事者である多数の福島県民、さらには福島県議会議員からも抗議が寄せられている。該当が強く疑われるのではないか。

「風評加害」を行った番組に対し、今後どのような対応がなされるか。報道機関全体のリテラシーと自浄作用が強く問われている。

 

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