原爆ドーム

 2023年に日本である先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、岸田文雄首相(広島1区)は23日、被爆地の広島市で開くことを決めたと明らかにした。被爆地開催は1975年に始まったサミットでは初めて。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器の使用を示唆する中、首相は国際平和や核軍縮を話し合うのに最適の地と判断した。

 市へのサミット誘致は、広島県や市、広島商工会議所などが働き掛けてきた。市側は、参加する首脳たちによる平和記念公園(中区)での原爆慰霊碑への献花や原爆資料館訪問を外務省へ提案している。実現すれば、核兵器を持つ米国、英国、フランス3カ国のトップがそろって被爆の実態に触れる歴史的なサミットとなる。

 東京・元赤坂の迎賓館での日米首脳会談後の共同記者会見で、首相は「広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はない。核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを世界に示し、平和と世界秩序、価値観を守るために結束していくことを確認したい」と述べた。

 被爆地選出の首相は「核兵器のない世界」の実現をライフワークに掲げる。ウクライナ情勢に加え、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発や核兵器を持つ中国の覇権主義にもかねて警戒感を示し、核軍縮には国際協調が不可欠だと唱えてきた。

 23年のG7サミットを巡っては広島、福岡、名古屋の3市が誘致活動を繰り広げた。官邸は宿泊施設の収容能力やアクセスの利便性、警護のしやすさなどを見極めつつ、G7各国との事前調整で被爆地開催の賛否を探った。

 被爆地の訴えやその重みについては、首相と今月会談したローマ教皇フランシスコや欧州連合(EU)のミシェル大統領たちも共感を示し、国内でも与野党の間で広島開催を求める声が高まっていた。

 日本では過去6回、サミットが開かれた。16年の伊勢志摩サミット(三重県)では、先立つG7外相会合を広島市で4月に開催。岸田首相は当時外相を務め、5月には現職の米大統領では初めてだったオバマ氏の広島訪問にも立ち会った。

 <クリック>G7サミット 先進7カ国(G7)首脳が参加する国際会議。日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダがメンバー。欧州連合(EU)も加わり、安全保障や経済などを議論する。冷戦終結後にロシアが加わったが、2014年にウクライナ南部クリミアを強制編入したため排除された。議長国は持ち回りで、今年は6月にドイツで開催。日本では過去6回開かれ、1979年、86年、93年は東京都、2000年は沖縄県、08年は北海道、16年は三重県が開催地となった。