Ⅲ.革命と人々のための芸術
Revolution and Art for the People
19世紀はヨーロッパ全土に近代化の波が押し寄せた激動の時代でした。このセクションでは、市民社会の発展を背景にして、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家たちの名画18点を展覧します。
1789年に勃発したフランス革命は、フランスのみならず、全ヨーロッパの近代社会成立の転換点となり、その波は、各国で次々と民衆が蜂起した1848年に頂点に達しました。社会の急速な変化を受け、美術にも新たな潮流が次々と現れます。19世紀前半には、普遍的な理想美を追求するアカデミズムに対して、個人の感性や自由な想像力に基づき、幻想的な風景や物語場面を描くロマン主義が台頭します。そして世紀半ばになると、農民や労働者の生活情景や身近な風景を、理想化せずありのままに描くレアリスム(写実主義)が隆盛しました。
レアリスムの成果は、近代化が進むパリの都市生活の諸相を描いたマネやドガ、そして1870年代に印象派と呼ばれることになるモネやルノワールの絵画に受け継がれていきます。印象派の画家たちは、様々な気象条件のなかで、新しいパリの街並みや郊外の風景を観察し、その一瞬の印象を、 純色の絵具と斑点のような筆触で描き留めようと試みました。
1880年代後半になると、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホなど、ポスト印象派と総称される画家たちが躍進します。彼らの作風はそれぞれに異なるものの、形態の単純化、構図の平面性、原色を多用した鮮烈な色彩表現など、20世紀初頭の前衛芸術の先触れとなる要素を含んでいました。