「娘をおもちゃにした」法廷に響いた父の慟哭 性欲のまま生きた「殺人警官」 イケメンマッチョ〝二股三股〟の不倫恋愛
衝撃事件の核心《やばめやろww》
《てか存在忘れてた》
相手の女性に既婚者であることがばれても、男に切迫感はなかった。あまり意識することのない、その他大勢の女の一人-。そして翌日、殺人事件を起こすに至る。妻に隠して交際していた社会福祉士、白田(しらた)光さん=当時(23)=を殺害したとして殺人罪に問われた元大阪府警巡査長、水内貴士(たかし)被告(27)。白田さんに「社会的制裁を受けてもらう」と言われ、激高したのが動機だった。「性欲のはけ口としか、見ていなかった」。娘を奪われた父親は大阪地裁の法廷で声を詰まらせた。妻と白田さん以外に、不適切な関係にあった女性はさらに6人。性欲のままに生きた現職警官。いさめる同僚もいなかった。
まさに「肉食系男子」
震災復興。その高潔な使命を背負い、水内被告が宮城県警に出向したのは平成25年4月のことだ。
それからひと月もたたない同28日、水内被告は仙台市内で開かれた「街コン」に参加、大学生の白田さんと出会った。
「学生さん?」
白田さんが席につくなり、水内被告が積極的に話しかけてきたという。そのとき一緒にいた友人の供述調書によると、水内被告の第一印象は次のようなものだった。
《目と鼻がくっきりしていてイケメン。チャラくて女性慣れしている感じ。ガツガツしていて、まさに肉食系男子だった》
白田さんに狙いを定めた水内被告はすぐさま無料通信アプリ「LINE(ライン)」の連絡先を交換。街コンが終わると「飲みに行こう」とさっそくメッセージを送り、仙台駅近くの居酒屋で2次会を開く。
《水内被告は、白田さんのひざを触ったり、じっと見つめたり、体を寄せてべったりしていた。白田さんは水内被告がベタベタしてくるのを嫌がっているようだった》
ところがその数週間後、白田さんは水内被告との交際をスタートさせる。別の友人に「最初はグイグイきて苦手なタイプと思ったけど、何日か遊んで、悪い人ではないと分かった」と打ち明けた。そして弾んだ声でこう告白した。「初めて自分から好きになった」
「どうせ『仙台の女』なのかな」
水内被告は警察官の身分も、大阪から来たことも明かしていた。ただ、後に妻となる女性を関西に置いてきたことは、もちろん話していない。
仙台の地で、白田さんがつかんだ幸せな時間。山形の実家にも「警察官の水さん」の存在を、うれしそうに報告した。だが、白田さんが「彼女」として大切に扱われた期間は、半年にも満たなかったようだ。
「どうせ私は『仙台の女』なのかな」
その年の秋には、友人にこんな悩みを漏らすようになった。「(水内被告は)スノーボードばっかり行っている。私に興味なくなったのかな」。連絡しても無視され、デートのキャンセルもしょっちゅうだった。
誕生日を迎えた12月、憂いはさらに深くなる。「誕生日なのに会ってくれない。遊んでくれないし、プレゼントもくれない。つらい。勉強に集中できない」
そんな恋の悩みを抱えながらも、白田さんは猛勉強の末、社会福祉士の資格を取得した。祖母と母をがんで失った経験から「一人でも多くの患者や、その家族の力になりたい」との思いからだった。大阪市東住吉区のがん治療の拠点病院にソーシャルワーカーとして就職が決まり、26年春に大阪に移住した。
同じころ、水内被告も宮城出向を終え帰阪。阿倍野署に配属された。2人の物理的な距離は近かったが、仙台のときと同様、水内被告の態度は冷たいまま。大阪での住所も教えてくれなかった。
大阪で2人が会ったのはようやく6月になってから。水内被告が白田さんのマンションに押しかけてきたという。「先輩と飲みに行って、酔っ払って終電を逃した。帰るのが面倒になって、白田さんのことを思い出した」(水内被告の公判供述)
それから事件が起きる今年1月までの間、水内被告が白田さんと会ったのはわずか3回だけだった。
遺族だけでなく…裁判員も涙
「なぜ白田さんに交際を申し込んだのか。性行為をしやすいからか」
被告人質問で検察官に問われると、水内被告は「そうですね」とあっさり応じた。
妻と入籍したのは昨年8月。その前後の期間に白田さん以外にも仙台で3人、大阪で3人の女性と付き合っていたという。
被害者参加制度で法廷に臨んだ白田さんの父、弘之さん(56)は、まな娘がどんな扱いを受けていたか、その冷酷な事実を公判で何度も突きつけられた。
「被告は光のことを性欲のはけ口と考えていた。邪魔になると、おもちゃを捨てるようにして殺した」と涙をこらえて意見陳述した。
続いて証言台に立った白田さんの姉、美優紀さん(29)は「光は都合のいい、どうでもいい女だったのか」と号泣し、過呼吸で法廷にうずくまった。弘之さんが背中をさすり、何とか陳述を終えた。裁判員も泣いていた。
「俺のこと好きやろ」と女心翻弄
身長183センチ、89キロ。精悍(せいかん)な顔立ちと、剣道で鍛え抜いた身体。水内被告はその容貌に加えて、女性たちを翻弄する手練手管もあわせ持っていた。
実は26年10月、白田さんは水内被告への思いを断ち切ろうとしていたのだという。証人出廷した白田さんの友人によると、自ら別れ話を切り出したのだ。このときすでに妻がいた水内被告にとっては、リスクのない形で関係を断ち切るチャンスだった。
ところが水内被告には「俺のこと好きやろ。別れられないやろ」と言われたという。白田さんは涙があふれ、別れることを諦めた。この証言については、水内被告は「覚えがない」と事実関係を否定している。
大阪で行きつけの居酒屋に白田さんを連れて行ったこともある。そこで後輩の警察官Aと引き合わせ、3人で食事をした。
Aは水内被告が既婚者であることを知っていた。水内被告の意図は分からないが、白田さんはAを紹介されたことがうれしかったようだ。「彼女」として承認されたように感じたのかもしれない。
とはいえ、クリスマスにも会ってくれない水内被告との交際に、白田さんは疲れきっていた。
そして今年1月12日、Aの知人のフェイスブックに投稿された1枚の写真を見てすべてを察知した。水内被告と妻の、結婚式の場面だった。
発覚しても緊張感のないLINE
結婚式の2次会のとき、水内被告は写真をフェイスブックに投稿しないよう、幹事を務めたAにお願いしていた。理由を尋ねると「まだ切れていない女の子がいる」と話した。
だが周到な根回しはなされず、事情を知らない出席者の1人がフェイスブックに載せた。それを白田さんが見たのだ。
白田さんは1月13日、自身のフェイスブックに《都合の悪いことは気づかないふりをしてきた》と結婚に気づいたことを示唆する書き込みをした。
Aはその記載を見つけ、水内被告に伝えた。だが水内被告とAとのラインのやりとりは、全く緊張感のないものだった。
A《そろそろ止めないと火噴くで(笑)》
水内被告《大噴火やな》
水内被告は問題をそのまま放置したうえ、懲りずにまた新しい女性との交際を始めていたという。
それでも、1月21日夜に白田さんが《社会的制裁を受けてもらう》と書き込むに及び、ようやく対処に動き出す。白田さんにラインでメッセージを送ったが、返信は来なかった。Aにラインで相談した。
水内被告《やばめやろww》
A《かなりな》
水内被告《このことは妻にも内緒な。(府警を)辞めたら笑い話にして》
A《言うわけないやろ》
水内被告《失敗したな。てか存在忘れてたわ》
水内被告はこのラインのやりとりをした翌朝の1月24日、白田さんの自宅を訪れた。そこで「制裁を受けてもらう」と言われたことでわれを失い、白田さんの首に手をかけた。「思い通りになる、自分より下の立場の女性」(論告)に追い詰められたことが、よほど頭にきたのだろう。
10月6日に言い渡された裁判員裁判の判決は懲役18年。警察官だったことを重視し、同種事案の量刑傾向より重い刑が言い渡された。
「魔の平成18年拝命」
浮気を繰り返す水内被告のような男も、世の中には少なくない。緊張感に欠けたAとのやり取りも、男同士ならよくある話だ。
だが、水内被告もAも一般企業のサラリーマンではない。不倫や不適切交際を禁じている警察組織の一員だ。
そもそも警察が不倫に対して厳しく臨むのは「不倫には必ず『嘘』がまじる。妻や相手への嘘、組織への嘘。その嘘は、さらに大きな不祥事の芽になる」(警察庁幹部)からだ。
とはいえ、男と女がいる限りその種のトラブルが絶えることはない。むしろ処分を免れるため、より隠微に、より巧妙になっている気配すらある。
大阪府警では9月、巡査部長と元巡査長の2人が、集団で女性に乱暴を加えた容疑で逮捕された(後に処分保留で釈放)。
水内被告とこの2人は同じ18年の採用だった。府警内部では「魔の18年拝命」という言葉もささやかれているという。
Aの対応を見る限り、下の年次も心許ない。
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