■ iPod touchで七郷神社古墳へ
携帯音楽プレーヤーをiPod touch 16GBに変えた。
今迄使っていたiPod 5Gは容量が30GBと大きく、音楽/動画プレイヤーとして使える他、外付のHDDとしても使える等、大変便利で良く出来ており、購入した当初はその技術の素晴らしさに深く感心したものだが、今回iPod touchを手にしてみて受けた衝撃は、それを遥かに上回るものであった。

まず、第一にマルチタッチディスプレイを用いた操作系が凄まじい。例えば、再生するアルバムを選ぶ時は、ディスプレイ上で指を左右に動かすことより、本のページをめくるような感じでアルバムのジャケットがクルクルと切り替わっていくし、写真や動画は画面上で指を開くことで拡大、縮めることで縮小し、筐体を横に持ち替えれば自動で画面も横に切り替わるといった工合に、大変直感的というか、ある意味物凄くアナログなインターフェイスなのである。
初代Macintosh以来、直感的な操作性に優れているというのがApple社製品の最大の特徴で、私もその点に惹かれて同社製品を使い続けてきたが、このiPod touchのインターフェイスは正にその究極とも言えるものである。このマルチタッチディスプレイには、子供の頃、雑誌のSF特集等で語られていたような、ステロタイプ的な「未来」を感じることができた。

第二に、無線LAN環境という条件付ではあるが、インターネットへのアクセスが単体で可能になったことが挙げられる。標準でWebブラウザのSafariが搭載され、PCと同様のウェブブラウズが可能である。これも画面上で2本の指を開閉することで拡大/縮小することが出来、3.5インチディスプレイでもそれ程ストレスを感じることなくWebサイトを閲覧できる。無線LANのアクセスポイントは駅や公共施設をはじめ、最近はあちこちに設置されているので、古墳探訪の際、地図を忘れてきてしまったような場合でも、Google Map等で地図を確認することが出来る訳である。勿論地図も拡大/縮小は思いのままだ。
これ迄はPDAにGPSユニットを取り付け、予め地図データをインストールしておいてどうにかこうにか実現できていたようなことが、単体でしかも前準備なしで出来るというのは便利である。また、出先でとある古墳のことについて知りたいと思ったような場合も、自分のサイトや他の古墳系サイトにアクセスしたり、検索したりできるので、資料類を忘れてきても何とかなるし、出かける当日の朝になって、無理にあれこれと資料を揃えなくても良くなりそうだ。
もっとも、アクセスポイントが豊富にある東京都区部や県南の都市部ならともかく、郊外や山の中にあるような古墳群に出かけるような場合、わざわざアクセスポイントがありそうな市役所だとか図書館だとかに行くのか? という問題はある。携帯電話が使えるような場所であれば、携帯電話とiPod touchとの間で無線LAN通信し、携帯電話経由でネットにアクセスするという手が使えるが、地方の古墳群の場合、これすら難しい場合があるのも事実である。この場合、予め必要な情報をiPod touchに入れておくことでカバーするより他ない。まあ、持参するべき資料類を忘れないようにしておけば良いのではあるが、予めこれをやっておけば、例え資料類を忘れてきてしまっても何とかなるだろうし、予定に入れていなかった古墳に急に思い立って寄って見ようと思ったような場合にも対応できるので、便利だと思う。
このようにiPod 5Gを購入してから2年足らずで早くも隔世の感を感じてしまうiPod touchなのだが、そうは言っても所詮は音楽プレイヤーであり、標準の機能では出来ることには限りがある。その点は今迄使ってきたPalm等のPDAの方が遥かに多機能ではある。しかし、OSにはデスクトップやノートのMacと同じOS Xが搭載されており、潜在能力的には既存のPDA以上の「パームトップコンピューター」となり得る力を持っているのである。多分、将来的にはこの点を生かした様々な機能拡張がサポートされるのだとは思うのだが、現時点のユーザーとしては、どうしても宝の持ち腐れ感を感じざるを得ない。しかし世の中凄い人がいるもので、非正規な方法ではあるのだが、その潜在能力の一部を引き出す方法が編み出され、その方法が公開されているのである。

それは"Jailbreak"(脱獄)と呼ばれており、失敗するとAppleのサポートが受けられなくなるというリスクはあるものの、一旦脱獄に成功すれば、様々な機能を追加することができ、その使い勝手は格段に向上するのである。
左の画像は脱獄後の私のiPod touchのホーム画面である。こうした画面のキャプチャーができるのも"Jailbreak"のお陰である。

少々アイコンが見づらいが、最上段右から2番目に見える"Maps"というのは、海外で発売されているiPhone用のGoogle Map閲覧ソフトである。iPod touchはiPhoneから電話機能を省いたものにほぼ相当するので、こうしてインストールさえしてしまえば問題無く使える訳である。少ないメモリで地図も衛星写真もサクサク移動/拡大/縮小できて秀逸である。
"Mail"もiPhone用ソフトで、ネット接続可能なクセに何故かiPod touchには提供されなかったソフトである。まあ、Web Mailを使えということなのだろうが、やはり普段使っているPOP Mailも使えるに越したことはない。その他、テキストエディタやら高解像度用画像ビューア、PDFビューア、ファイル管理ソフト等をインストールしてある。こうしておけばWeb上のデータのみならず、予め、古墳関連資料をテキストやPDF、画像ファイルにしてiPod touchに入れておき、適宜閲覧することが出来るようになる訳である。
と、いうことで、昨日一杯は「脱獄」と各種アプリケーションのインストールに専念し、とりあえず「出来たらいいな」と思うことは一通り出来るようにしておいた。そこで本日は、倅のクリスマスプレゼントを購入するついでに、iPod touchの操作習熟を兼ねて、これを用いて古墳を見に行くことにした。場所は近所の東川口にある「七郷神社古墳」である。

東川口駅から歩いて15分程の所にある七郷神社の社殿裏手には円墳状の塚があり、一部の郷土史本では「古墳」として紹介されている。
以前、交通新聞社の『散歩の達人』で新郷古墳群を取り上げてもらった際に、編集部の方々とここにも取材に行ったことがあるのだが、9月上旬という時期であったため、草ぼうぼうでマウンドが良く見えなかった。この時期であれば下草も枯れ、多少は様子を見易くなっているだろうと思い、出かけてみた次第である。

近所故、凡その場所は分かっているのだが、駅から歩いて行ったことが無い為、駅からの道順が朧げであったので、早速iPod touchでGoogle Mapにアクセス。写真左のように東川口駅からの道順が分かるようにした上で、画面をキャプチャした。Google Mapでは七郷神社は表示されないのであるが、「戸塚第3緑地」の隣に該当する。このキャプチャーした画像を駅から出たら眺めつつ、七郷神社へ行こうという寸法である。

●七郷神社古墳

川口市戸塚3丁目の戸塚小学校隣に鎮座する七郷神社裏手の塚である。
一部の郷土史本では「円墳」として紹介されているが、『川口市史 考古編』等の考古系資料では全く触れられておらず、古墳なのか別な塚なのか正体不明な物件である。

尚、境内とその周辺からは弥生時代の集落跡と方形周溝墓が検出されており、弥生時代のムラの様子を伺い知ることが出来る資料として、この点についてのみ『川口市史』で紹介されている。

現時点で川口市内の古墳としては市域東南部の毛長川(旧入間川)の現在は埋没してしまっている支流沿いの台地縁辺上に展開していた新郷古墳群しか知られておらず、綾瀬川流域ではその存在は全く知られていない。ただ、上流のさいたま市見沼の東宮下から古墳跡と埴輪が検出されており、川口市内の綾瀬川沿いの自然堤防や台地縁辺にも古墳が存在した可能性はあるだろう。

左の画像はiPod touchの"Map"で表示した七郷神社古墳のGoogle Mapによる衛星写真である。無線LAN機能搭載の携帯電話と組み合わせれば、今、自分がいる場所の衛星写真をその場で確認することも出来るのだ。ま、そこまでしなくても、予め行く予定の場所の衛星写真をキャプチャーして保存しておき、適宜閲覧するというスタイルでも十分だろう。
画像中央の神社社殿背後(右手)の森が円形に盛り上がっているのが分かるだろうか?
地図をチェック

駅から出たら、早速iPod touchで先程キャプチャーしておいた地図画像を画像ビューアで表示。メタルを聞きながら要所要所で地図を確認でき、これは便利である。
七郷神社

東側に綾瀬川による沖積低地を見下ろす台地縁辺上に鎮座している。
マウンドを西南から

社殿向かって右奥にある相殿と焼却炉があるあたりの後ろに円墳状のマウンドがある。以前訪れた際は草ぼうぼうで、かろうじてそれらしいものがあるというのが分かる程度であったが、下草が枯れ、明瞭にその姿を見ることが出来た。径20m、高4m程度はあるだろうか。
頂上の様子

下草が無くなり、マウンドに立ち入ることが出来るようになっていたので早速突入。頂上には市の保存樹木に指定されているスダジイの大木が屹立していた。大宮西高にある側ヶ谷戸古墳群の稲荷塚古墳を連想させる姿であった。
マウンド上の様子

マウンド上は雑木林になっており、頂上にあるもの以外にも大きなスダジイの木が何本かあった。こうした木の生えっぷりからして近代以降のものではないのは明確であり、古墳ではないとしても何がしかの遺跡であることには間違いないだろう。
墳頂から北西の眺め

台地平坦面からの比高は結構ある。雑木林に覆われているので、外から墳丘の外観を観察するのは難しいのだが、マウンド上から四方を見回してみると、マウンドは円錐形であるように思われる。尚、遺存状況は良好なようで、社殿や他の建物で大きく削られていることはなさそうであった。
墳頂から東の眺め

戸塚第3緑地へと続く東側は綾瀬川による沖積地へと下る急斜面に面しており、県南では典型的な古墳の立地パターンであるように思える。境内を発掘した際にこの塚の調査はしなかったようで、市の遺跡地図にもこの塚自体はプロットされていない。

投稿者 Toyofusa : 2007年12月24日 23:31 Twitterにポスト Tumblrにポスト

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