中国在住の北朝鮮のIT技術者が、日本のスマートフォンアプリの開発を請け負い、報酬を不正送金させていたとされる事件で、神奈川県警は18日、送金に関与したとして、横浜市に住む韓国籍のタクシー運転手の男(57)を銀行法違反(無許可営業)の疑いで、東京都北区に住む朝鮮籍の無職の女(75)を同ほう助の疑いで、横浜地検に書類送検した。

 捜査関係者によると、技術者は、中国・遼寧省を拠点とする朝鮮籍の男で、40歳代とみられている。書類送検された男はその知人、女は親族で、ともに容疑を認めたうえで、「技術者に依頼された」などと供述している。県警は北朝鮮による外貨獲得の一環として、技術者が主導したとみて調べている。

 発表によると、技術者は知人の男名義で、フリーランスの技術者と企業などをマッチングするサービスに登録し、日本企業からアプリの開発を受注。知人の男は2019年6月14~18日頃、アプリ開発の報酬として受け取った計191万8300円から、「手数料」として1割を引いた額を女の口座に移し、女はその口座にひも付いたデビットカードを技術者に送り、技術者が中国で人民元を引き出していた疑いがある。

 知人の男は、過去に平壌(ピョンヤン)を訪れた際に、技術者の男と知り合った。技術者は日本でのアプリ開発のため、日本語が堪能な知人にマッチングサービスへの登録を依頼し、開発も共同で行っていたという。

 捜査関係者によると、技術者は2019年以降、複数企業から計7件のアプリ開発を受注しており、知人の男を通じて、同年2~6月に約400万円が送金されたとみられる。県警は今回、このうち、時効が成立していない同年6月分の送金について書類送検した。

 デビットカードは、海外の現金自動預け払い機(ATM)で日本円を現地通貨に替えて引き出すことができる。県警によると、こうしたデビットカードの利便性を悪用した銀行法違反事件の摘発は初めてという。