- 菌糸体(キノコの根)を使い、代替ベーコンを製造するAtlast Food Co.
- シリーズAの資金調達で4000万㌦を調達したと発表
- 新しい資金で製造施設と菌糸体の代替ホールカットステーキを作成予定
新たな資金で製造施設とステーキを作成
2021年4月15日、Atlast Food Co.(アトラストフード)はシリーズAの資金調達を行い、4000万㌦を確保したと発表。
この資金調達はViking Global Investorsが主導して、Stray Dog Capital、Footprint Coalition、Senator Investment Group LP、俳優のRobert Downey Jrなどが参加したと複数のメディアが発表しています。
Atlast Food Co.は菌糸体ベースのベーコン「MyBacon」を最初の製品として販売。
消費者からは好評を得ているとメディアは取り上げていました。その後、他の企業に菌糸体を材料として提供すると発表。
菌糸体はキノコの根にあたる部位で、植物肉よりも優れた繊維構造を持つ代替肉といわれています。
そのため菌糸体ベースの代替ベーコンは、本物のベーコンに似ており、原料はわずか6種類で構成されているということです。
今回の資金は、新しくホールカットの代替肉の作成と、アメリカで最大規模の菌糸体製造施設の建設に投入する予定とされています。
新しく建築される菌糸体製造施設は「気中菌糸農場(Aerial Mycelium Farm)」と呼ばれています。
語句説明:気中菌糸(きちゅうきんし)aerial mycelium
しめじ、しいたけに白い綿のような、カビのような付く場合があります。これが気中菌糸(きちゅうきんし)です。カビではありません。
参考サイト:雪国まいたけ
菌糸体を開発する企業
菌糸体のプラットフォームをさらに拡張するために、Atlast Food Co. (アトラストフード)は、スピンオフした古巣にあたる企業と提携。
提携先はニューヨークで菌糸体の家具や緩衝材を製造するバイオテクノロジー企業Ecovative。
Atlast Food Co.の菌糸体の技術は、もともとEcovativeで研究開発されたものを食品製造に特化させたものです。
メディア「The Spoon」は、ニューヨークのHonest Weight Food Co-opが、現在のところ菌糸体ベースの代替ベーコンを取り扱っている唯一の小売業者であると報じています。
Ecovativeの菌糸体製造のプラットフォームを利用すれば、Atlast Food Co.は製品を商業規模で供給でき、食品ブランド「MyEats」をさらに多くの消費者に販売することが可能になります。
2035年までに代替タンパク質の市場は2900億㌦に達すると予測されており、Atlast Food Co.はこの市場のシェアを確保に向かっています。
同じ分野で菌糸体ベースのステーキを作りだそうとしているのは、Atlast Food Co.に限った話ではありません。
スペインのスタートアップ企業Libre Foodsは、菌糸体ベースの代替タンパク質で世界的なプロバイダーになることを使命にしています。
2021年4月20日、同社は菌糸体と発酵技術を利用した「ホールステーキ作成」を計画中であるとメディア「Green Queen」は伝えています。
まだ植物肉や培養肉のように注目はなかなか集まりにくいですが、今後大きな話題を呼ぶ代替タンパク質となるでしょう。
その理由は菌糸体の繊維構造と製造に掛かるコストです。
シンプルでおいしい代替ベーコン
Atlast Food Co. (アトラストフード)の代替ベーコンの特徴は材料の少なさです。
自社ブログでは、菌糸体以外の原料は5つしかないと説明しており、製品の原材料欄には菌糸体、ココナッツオイル、砂糖、塩、スモークフレーバー、ビートジュース(着色料)のみとなっています。
さらに製造に必要な水は豚肉のベーコンの100分の1、収穫までは10日間であると説明しています。
動物たんぱく質の繊維構造をマネる
菌糸体は、動物たんぱく質の繊維構造をうまく模倣できるため、菌糸体ベースの代替肉は、豆のタンパク質で作った植物肉より、さらに肉に近い食べ心地を消費者に提供しているそうです。
加えて、味付けと香り付けも菌糸体は便利です。
菌糸体はニュートラルな味(無味に近い)で、作る製品に合わせて、味付けの自由が効きます。
マメ科のタンパク質を使う植物肉の場合、原材料が持っている特有の味や香りが製品づくりでネックになったりします。
菌糸体ベースのベーコン「MyBacon」も、豚肉のベーコンと同じように、クリスピーベーコン(焼いてカリカリにしたベーコン)で味わえると複数のメディアが報じています。
※アメリカではベーコンはカリカリにすることが好まれます。レストランによってはチップスと同じくらいカリカリするところあります。
ベーコン市場に切り込むMyBacon
建設が予定されている製造施設で、菌糸体ベーコンの生産量が増えれば、一般の食品小売業者への流通もはじまるでしょう。
そうなると、多くの人に菌糸体ベーコンの認知が進み、菌糸体製品の需要が増えるでしょう。
メディア「Forbes」は、アメリカだけで2020年のベーコン販売は60億㌦以上だと指摘。
Atlast Food Co.が提供するMyBaconがベーコンを食べるフレキシタリアンのターゲットにしていることを報じています。
参 考
企業HP
メディア情報
メディア「The Spoon」
メディア「Bloom Berg」
メディア「Forbes」
メディア「Green Queen」