少年とガールズバンド   作:奏でるの

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作者の欲と欲にまみれた日常物語。






小説初挑戦なので何もかもがわからないです。いつ辞めるかもわからないです。不定期更新です。そんな人間が書く拙い小説ですが、誰かの心に留まると嬉しいです。生暖かい目でご覧いただければ……。


#1 幼馴染とか

〜♪ 〜〜♪

 

 

 

「………………」

 

 

朝。ベッドの上に寝ている俺は、カーテンの隙間から射し込む光をウザったらしく思いながら、スマホからが鳴る目覚ましのアラームを止めるべく、音が聴こえる方に手を伸ばす。が、そちらに顔は向けない。俺の安眠を妨げるスマホへのささやかながらもくだらない抵抗だ。お前相手には片手で十分…。

…………………………何処だスマホ…。音が近いからすぐソコにあるはずなのに、どれだけまさぐってもスマホを捉えられない。更に数秒粘ってみたもののやっぱりどこにもない。………ええぃ仕方ない。結局俺は音の鳴る方へ顔を向ける。まるでスマホに負けた気分だ。そもそも勝負なんてしてはいないんだが。

 

 

「………………」

 

 

すぐ横にありましたよスマホ。お前、一体今まで何処にいたんだよ。結構しっかり探したつもりだったのだが、こんな近くにあって何故見つけられなかったのか……。アレか、シュレディンガーの猫的なやつだろうか。ははん、つまり俺が観測するまでそこにスマホの存在は無かったということ。そういう事ならスマホを探り当てられなかったことにも納得が行く。だから俺はまだスマホに負けてない(?)

 

 

「……トドメだ…」

 

 

なんかカッコ良さげなことを言っているが、単にアラームを切っただけだ。画面の上で指をスライドするとアラーム用に鳴っていた曲が止まる。……この曲、大好きだったんだけど、毎日のようにこの曲に起こされていると何故だか嫌いになってしまいそうだ。曲変えようかな。でもそうしたらその曲も嫌いになりそうで…………なんかもういいや。朝から頭は使いたくない。そう考えて、無理やり体を起こす。

 

今日も新しい1日が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おはよう」

 

「んにゃん」

 

 

制服に着替え、2階にある自分の部屋から降り、リビングへの扉を開くと我が家のもう1人の住人を見つける。正確には人ではなく猫だが。名前は「しょうゆ」。醤油っぽい色しているからそう名付けた。名付け親は俺じゃないが。

かれこれ4年の付き合いである。ちなみにメス

 

 

「ほい」

 

 

しょうゆ用の朝ごはん(ちゅーる)を与え、俺も朝食をとる。昨日の夕飯のカレーをそのまま温めてだけだが。朝からカレーは少し重いか…?

我が家では朝と夜は必ず家族一緒で食べるようにしている。まぁ1人と1匹しか居ないのだが。

早々に朝食を食べ終わり、昼食用の弁当を詰め、俺が通っている「羽丘学園」の鞄を肩にかけ、玄関扉を開ける。

 

 

「にゃぁ」

 

「ん、行ってきます」

 

 

こうやってしょうゆが玄関まで見送りに来てくれるのもいつものことだ。

「うわ…」なんて、玄関扉を閉めながら呟く。まだ4月の末だと言うのに妙に日差しが強く暖かい。暑いのは嫌いだ。寒いのも嫌いだが。

幸い、羽丘の近くに引っ越して来たので、さして長い通学路ではないのが救いか。

俺は再度鞄を肩にかけ直し、歩き出す。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

無事に登校し、自身のクラスである1-Aの自分の席に着く。と同時に学校特有のチャイムが響く。このチャイム(『ウェストミンスターの鐘』というらしい)を初めて聞いた時は感動したものだが、入学してから3週間も経てば慣れてるくるものだ。

 

 

羽丘学園。その高等部に俺は在籍している。元々は女子校だったそうだが、少子高齢化問題のあれこれで去年から共学化している。が、2年生に男子生徒は1人も居ない。実際に入ったのは今年からだ。まぁ居たとしても、この学年での男子生徒の割合は絶滅危惧種程度しか居ないのだが。

 

 

こう聞くと、やれハーレムやら楽園やらで妬ましいだ羨ましいだの言われそうだが、なかなかどうして浮かれて居られない。ここいらでセクハラ行為もとい発言なんぞしようものならこの学園に居場所などなくなる。噂は光のように駆け巡り、尾ひれをつけて拡散する。恐ろしきかな情報化社会。そんな理由で男子生徒はかなり気を遣うことが多いのだ。

 

 

「おっす、おはようさんっ」

 

「おう」

 

 

だが、中には例外もいる。

俺に挨拶をしてきた短い茶髪でガタイのいいこの男。日並優太(ひなみゆうた)

この男は……

 

ガラ…

 

 

「……………」

 

「おっ、蘭ちゃんおはよう。今日も可愛いね」

 

「…気安く名前で呼ばないで、ていうか邪魔」

 

「アッそんな冷たい態度もいい……っ!!」

 

扉を開け、同じく登校してきた女子生徒。美竹蘭(みたけらん)を見つけると、すかさず口説きにかかる。

そう、コイツはこういう奴なのだ。可愛い女子と見るや開口一番口説き文句を放ち、帰ってくるのは大抵罵倒。ここまでが一連の流れ。さすが、初登校日の自己紹介で『女の子とイチャイチャしたくて羽丘に来ましたっ!』と叫んだだけの事はある。ある意味漢か。そんなトコロに痺れも憧れもしないけれど。

 

 

……っておいやめろ。そんなとこで自身を抱くように両手を回してクネクネするな。視線が集まってくるじゃあないか。見てるこっちが恥ずかしい。

美竹の冷たい態度がいい感じに刺さったのだろう。あぁ、なんて幸せそうな顔。キモイ。

 

「ねぇ、アイツ。どうにかならないの?」

 

「どうにかって……」

 

美竹とは席が隣同士だ。肩口まで黒髪で赤いメッシュが目立ち、少々近寄り難いイメージな彼女だが、友達想いの優しい娘である。こと幼馴染相手には特にそれが顕著だと思う。

そんな美竹が席につくなり俺に聞いてくる。

 

 

どうにか、と言われてもな…。あれだけバカをしておいて、周りの人間から白い目で見られているのは分かりきっているはずなのに、アイツはそれを『女子から構ってもらえる動機になる』と豪語する男だ。正直手遅れかと。それに、どれだけ罵倒されようとそれすら自らの活力に変換するあたりなかなかのマゾヒストである。エネルギー効率が良いな。無敵か?

まぁ要するに……

 

 

「どうしようもないだろ」

 

「……はぁ」

 

 

ため息をつく美竹。幸せが逃げるぞ?

まぁあんなのでも、高校生活がぼっちで確定しそうだった俺を救ってくれた男でもある。あまり長い時間一緒にいる訳では無いが、根はいい奴なのだろう。故に質が悪いとも思うが。

 

 

先生が教室に入ってきたのと同時に、俺は優太について考えるのをやめた。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

昼休み

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

鞄から弁当を取り出し、昼食を摂ろうした時。美竹から声がかかる。

 

 

「お昼、屋上で食べない?モカ達がアンタを連れて来いってさ」

 

 

そう言って美竹は自身のスマホのメッセージアプリを見せる。そこには『蘭〜、けー君も連れてきて〜』とのこと。

まぁ断る理由も無いし、素直に嬉しい。

 

 

「わかった」

 

「ん」

 

 

そう言って俺は席から立ち、屋上へ向かう。

この時、美竹が俺の後ろでガッツポーズをしていたことに俺は気付くはずもなかった。

 

 

 

 

 

「蘭ちゃんっ!俺もお昼ご一緒させてくれ!」

 

「ホント邪魔」

 

「ングベラッ!!」

 

「…………」

 

 

……もうダメだコイツ、早く何とかしないと…。

 

 

 

 

 

 

屋上までの階段を登りきり、扉を開ける。その瞬間。一気に吹き込む風の音と同時に、間延びしたようなゆるい感じの声が聞こえてくる。

 

 

「おー、やっと来た〜」

 

「もぉー遅いよー!」

 

「そうか?」

 

 

ゆるい感じの声の正体である銀髪ショートのパン好き少女。青葉(あおば)モカと、なんかこうピンクでアホっぽい感じの大きい娘(身長ではない)。上原(うえはら)ひまりが少し怒り気味に言う。いや多分怒っているのは上原だけだと思うが。

 

 

「よっ佳夏(けいな)

 

「こんにちは佳夏君」

 

「おう」

 

女子にしては高身長の赤毛イケメン姉御。宇田川巴(うだがわともえ)と、とにかく頑張るぞい、な感じの茶髪ショートの羽沢(はざわ)つぐみの挨拶に軽く返して、屋上の隅に座っている4人の輪の中に美竹と共に入っていく。

美竹も含めたこの5人は幼稚園からの幼馴染らしい。

 

 

何故知り合って間もない女子と昼食をご一緒できるのかと言えば、きっかけは些細な一言だ。

 

 

『もしかして、ギターやってたりする?』

 

 

入学式の日、初めて隣の席の美竹と顔を合わせた時に俺が放った言葉だ。何気ない一言だったが、コレをきっかけに音楽の話で盛り上がり、「バンド仲間を紹介する」との事で他のメンバーとも知り合った。

今思うと、話したことも無い赤の他人によく声をかけたものだ。あの時の俺グッジョブ。

その後も、学校以外でも会うとこが増え(商店街に行くと大抵誰かいる)、仲良くなって今に至るわけだ。

だが、いくらか仲良くなったとはいえ━━━━━

 

 

 

 

「何度来てもこの空間には慣れないな…」

 

 

上原が『コッチに来い』と隣の床をポンポンしていたので、そこに座りながら言う。

俺が座るなりズイっと近くに寄ってくる上原。なかなかに近い……と言うよりもうゼロ距離。

 

 

「えー?もう結構お昼一緒にしてるのにー」

 

「いやほらアレじゃん、俺ってばシャイだから。こう複数人女子がいる中に男1人だと…さ?」

 

「まーひーちゃんはともかく、超絶美少女のモカちゃんが隣にいればそうなるのも仕方の無いことなのだよ〜」

 

「なるほど」

 

「ちょっとモカ!どーいう事それぇ!」

 

 

いつの間にか隣に居た青葉の言葉に俺を挟んだ反対側から非難の声が。というか青葉、お前いつから隣に?つーかやっぱコイツも近い。なんなら上原より近い。パーソナルエリアどうなっているのだろう。日本の女子高生は皆こんな感じなの??

今気づいたけど青葉(コイツ)。俺の隣座ろうとしていた美竹と俺の間に無理やり入ってきたのか。なんてやつ。あーほら、美竹がめっちゃ睨んでるぞ青葉。眼力がこうー……すんごい睨んでる(語彙力)

 

 

「ちょっとモカ、なんでここに来んの?」

 

「いーじゃんいーじゃ〜ん。けー君誘うの手伝ってあげたんだからこれくらいはね〜」

 

「……別に手伝ってなんて頼んでないし」

 

「じゃあ次からは蘭から呼んでね〜♪」

 

「………」

 

……なんか青葉と美竹が話しているが、いかんせん声が小さくて聞こえん。なんで美竹は顔赤くしてんだろうか?

気になって耳を傾けてみるが、会話を聞く前に宇田川から声がかかる。

 

 

「シャイ?アタシから見て佳夏ってそんな緊張とかしてるようには見えないんだが?」

 

「そうだね、佳夏君っていつも落ち着いてる雰囲気だし」

 

「あまり顔に出てないだけだよ」

 

「あたし隣の席だからよく見るけど、顔に出無さすぎじゃない?」

 

「そんなことないだろ………………多分」

 

「なんでちょっと自信無くしてんだよ…」

 

 

宇田川に何故か呆れられる。

それより気になることが…。

 

「というか美竹。俺の顔なんて見てないで黒板の方見てろよ」

 

「なに〜蘭ー、もしかして見惚れてたの〜?」

 

 

青葉はニヨニヨと悪い顔を見せながら聞く。

 

「ッ!!はぁっ?!///」

 

美竹は顔を真っ赤にしながら青葉から距離を取るように勢い良く仰け反る。基本静かというか口数の少ない美竹からはあまり出ないであろう大声に俺は少しビックリした。

別にビビってはない。少し驚いただけだし。おそらく誰も気づいていないから大丈夫。

 

 

(佳夏、今ビクッてしてた……)

 

 

上原が気づいていた事に俺は気づかない。

 

 

「そ、そんな訳ないでしょっ!!///モカ!適当な事言わないでよ!ありえないからっそんなこと!ほんっとありえないからっ!!好きとかそんなんじゃないからっ!!!!//////」

 

「あらら〜」

 

「そんな言う?」

 

 

俺の顔をチラチラ見ながら早口で、言わなくてもいい事まで言って墓穴を掘り進める美竹。……でもそんな否定することなくない??

ただでさえ少ない自尊心がゴリゴリ音を鳴らして削られていく。泣いていーかな。

 

 

「だ、大丈夫だよ佳夏君!蘭ちゃんはちょっと恥ずかしがってるだけなんだよ。うん!」

 

「羽沢……!」

 

「ちょっと!つぐみっ!!///」

 

 

俺が落ち込んでいる事を察したのか、羽沢が優しくフォローを入れてくれる。ぐすん、嬉しい。めっさいい娘やん。俺のネガティブな思考もシャワシャワと浄化されていく気がする。

 

 

「それよりっ!早く食べないと昼休み終わる」

 

 

まだ顔の赤い美竹が弁当箱を開けながら話の流れをぶった斬る。これ以上の追求は耐えられないと判断したのだろう。

照れてる顔はグゥ可愛い。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「佳夏の弁当ってもしかして手作り?」

 

「ん?」

 

 

上原が俺の弁当箱を覗き込みながら聞いてくる。だから近いって言うとるやん、……いや言ってねぇな。心の中だけじゃん。

女子特有の柔らかい感じのいい匂いが弁当の匂いを押しのけて鼻腔をくすぐる。これが女子か…。凄い(小並感)

馬鹿な思考は何とか放棄し、とりあえず質問に答える。

 

 

「あぁ、まぁね。好きなんだよ料理」

 

「1人暮らしなんだっけ?」

 

「そ、猫もいるけど」

 

「大変じゃない?1人暮らしって。私はちょっと憧れるけど」

 

「どうだろ、人それぞれだと思うけど。俺は別に苦じゃないし」

 

日本(こっち)の生活にはもう慣れた?」

 

「ぼちぼち…だな。商店街の人達は良くしてくれるしいろいろと助かってる」

 

「何か困ったことがあったら羽沢珈琲店(ウチ)も頼ってね!」

 

「あぁ、何かあったら頼るよ。ありがとね、羽沢」

 

「うんっ!……えへへ//」

 

(((((可愛い…)))))

 

 

天使なのかと見まごうほどのエンジェルスマイル。もはや金が取れるレベル。こころなしか弁当も美味く感じる。この美味さを感じられるうちに感じておこうと、弁当を口に掻っ込む。我ながらキモイことしてるな。

 

 

会話の流れで分かるかもだが、俺は2ヶ月前まで海外に居た。場所はイギリス。小さい頃に両親を亡くした俺は、母親の友人である女性に引き取られ、その人が親代わりになって育ててくれた。そして、その人の仕事の関係でイギリスに行き、そこで学業なんかを学び、10年が過ぎて今に至る。詳しい話は今はしないでおく。

ちなみにこの5人には俺がつい最近までイギリスにいた事()()知らない。

 

 

「そういえば佳夏。昨日からバイト始めたんでしょ?どうだった?初バイト」

 

「お?佳夏バイト始めたのかよ」

 

「まーな」

 

「ほーそれはそれは〜。ちなみに何処で〜?」

 

「『CiRCLE』っていうライブハウス。美竹が勧めてくれたんだよ」

 

「お〜!『CiRCLE』ね!」

 

「何?知ってんの……って、あぁそっか」

 

「そうそう!私達バンド組んでるからねっ」

 

「皆でよく『CiRCLE』に練習に行くんだ!」

 

 

バンドを組んでいるこの5人。バンド名は『Afterglow』

凄くかっこいいと素直に思うバンド名だ。

美竹の話では、どうやら中学の頃、今まで同じクラスだったこの5人が3年生になったときに美竹だけクラスが別になったらしい。Afterglowは、そんな幼馴染達を繋げるきっかけのために作られたのだという。

この話を聞いてなにより驚いたのが、バンドをしようと初めに提案したのはまさかの羽沢からだということ。

意外とやる時はやる子らしい。さすが羽沢。マジ天使(関係ない)

 

 

「バイトなんて初めてだったけど、意外と楽しかった」

 

面倒事もあったけど……

 

「そ、ならよかった」

 

「あぁ、美竹のおかげだな。ありがと」

 

「ん……//」

 

 

小さい声でそう言うと、美竹は頬を少し染めて俯く。感謝を直接伝えられる事に慣れていないのだろうか。

 

 

「けー君バイト探してたんならモカちゃんに言ってくれれば良かったのに〜。モカちゃんのバイト先オススメだよ〜」

 

「青葉もバイトしてるのか」

 

「そ〜、コンビニバイト〜」

 

「コンビニかぁ」

 

「今ならモカちゃんと、もう1人美人の先輩もついてくるし〜「何っ??」」

 

「反応はやっ」

 

「どぉ〜?」

 

「あぁ…大変魅力的な提案d「佳夏……??」悪いな青葉。俺は『CiRCLE』でやっていくよ。だからそんな顔で睨まないでくれ美竹。頼むから」

 

「オヨヨ〜、振られてしまいましたぁ…」

 

「なんかすまんな」

 

(私もバイトしよっかなぁ……)

 

羽沢珈琲店(ウチ)で雇えたら良かったんだけど……)

 

(━━━━━とか、つぐは考えてんだろうな……)

 

 

 

「ちなみに今日Afterglowは『CiRCLE』来るのか?」

 

「んーん、今日はモカがバイトでつぐも家の手伝いだから、行くなら明日かな」

 

 

俺の質問に上原が答える。そういえば上原はAfterglowのリーダーだったな。美竹からAfterglowの話を聞いた時に羽沢のくだりの次くらいに驚いたのがリーダーが上原だということだった。てっきり美竹なんだとばっかり。そんなことを皆に話したら上原はプンスカと可愛いく怒っていたのを覚えてる。

 

 

「そうか、でも良かったじゃないか」

 

「?…何が?」

 

「いや、俺が『CiRCLE』の予定とかを把握出来れば、Afterglowの練習予定とか確認出来るし。なんなら予約もねじ込めるかもしれないだろ?バイトの俺にそんな権限が降りるかは分からんけども」

 

「「「「おおー!」」」」

 

「俺はそういうのを見越して、美竹が俺を『CiRCLE』に勧めたんだと思ってたんだが…」

 

「そうなの?蘭」

 

 

上原の問いに

 

 

 

「………………………………………………うん」

 

 

(((((絶対嘘だ)))))

 

 

美竹は何とも弱々しく答えた。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

昼休みの終了と共に解散した我らが一行。俺は美竹と共にA組へ戻る。

 

 

「……ハァ……ハァ……」

 

 

 

「………」

「………」

 

 

 

日並優太(この男)は、未だ床に突っ伏していた。あぁ、なんて幸せそうな顔。

 

 

俺達はソレを無視して自分の席へ向かう。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

あれから特に問題もなく時間は進み今は放課後。優太の野郎はどうしたのかって?……気付いたら普通に授業受けてたよ。

 

 

「また明日」と美竹と別れた俺はそのままバイト先であるライブハウス『CiRCLE』へ向かう。今日は3時間のバイトだ。

 

 

着きました『CiRCLE』。このライブハウス、なんとカフェも併設しているのだと言う。道理で楽器を持った女性客がパフェを片手に談笑している姿をよく見ると思った。……何故カフェ?やはり女性客が多いからだろうか。

美竹曰く、世は大海zじゃなくて大ガールズバンド時代、そしてこの街はその聖地らしい。確かにこの街、妙に女性比率が高いように思う。何となくだが。そう考えれば、"カフェのあるライブハウス"というのは売り文句としてはストライクなのかもしれない。

そんな事を考えながら、ロビーへ向かう。

 

 

「あ!佳夏君はやいね。お疲れ様っ」

 

「お疲れ様です、月島(つきしま)さん」

 

「うん♪今日もよろしくね!」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

俺を見つけると笑顔で挨拶してくれる、黒髪ボブの彼女は、ここの先輩スタッフ兼新人教育係にあたる月島まりなさん。歳は知らないが、恐らく20代前半。

優しい雰囲気が漂っている人だ。実際優しい。

 

 

俺は迷わずに『staff only』と書かれた扉の前に行き、一応ノックをする。反応は無い。誰も居ないことを確認して部屋に入る。え?ノックが必要かって?ノックは大事なんだぞ?これは言わば安全装置……この行為ひとつで面倒事は避けれたりする。ソースは俺。

自身のロッカーを開き、羽丘特有のグレーのブレザーを脱いでハンガーにかけ、ワイシャツ姿に。そしてほぼ新品の緑のエプロンをかける。

 

 

 

最後に『林道佳夏(りんどうけいな)』と書かれたネームプレートを左胸につけ。ロッカー室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




小説書くのって大変ですね……。
挿し絵なんてものもあるんですね。次はそれを入れてみようかな?

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